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エントリ内容の一覧
ミッシェル・フォアマン/ナウ・アンド・ゼン
2006年12月02日
Mitchel Forman/ Now & Then
ミッシェル・フォアマンという知る人ぞ知るピアニストによるビル・エヴァンスへのトリビュート・アルバムは前回ご紹介したエディ・ゴメスも参加しているピアノ好きには堪らない素敵なアルバム。パーソネルは、ミッシェル・フォアマン(p)、エディ・ゴメス(b)、ジャック・デジョネット(ds)。1992年録音。Novusレコード。
すでに2006年も12月に入り冬の寒さとともに過ぎ行く年月の儚さを実感する時節に相なりました。冬の静かな休日の昼下がりに暖かい屋内でこうした繊細で美的なジャズ・ピアノ演奏に耳を傾けていますと幸せな空気があたりを覆い尽くしてくれます。知リ尽くしたメロディとエヴァンス感覚の魅惑のフレージングに自然と心がなごみ、豊かなひとときを満喫することができるのです。
つい先日に京都の市街から北山の方まで数時間かけて歩く機会がありました。色づいた山々、鮮やかなイチョウ並木、冷徹で清浄な大気、それらの忘れがたい印象的な記憶が鮮明に蘇ってきます。数年ぶりに訪れた京都ですが、冬枯れの京都の山里の風情が私はやはりとても好きです。仕事とはいえずいぶんと早い目に京都に入って自分のために時間を余計にとった甲斐がありました。フォアマンのピアノに身を委ねていますとその時の満足感が呼び覚まされるのです。
エディ・ゴメスのベースが出しゃばらずごくごくオーソドックスです。ミッシェル・フォアマンのピアノも軽快なスイング感と適度な粘着性があってバランス感覚に優れた腕達者という印象です。実力のあるトリオが繰り出す音楽は、メニューだけ見てどんな料理が出てくるのかを待つ、まさにあのグルメ店にいて次なるディッシュを待つわくわく気分を喚起してくるのですね。見た目も鮮やかな彩りのある料理が芳香を放って、口に入れると微妙で繊細な味わいが広がる、そんな経験と類似しているかもしれません。
なぜか近頃は食に貪欲になりつつあるのか、旅に出ても食事の記憶ばかりが残ってしまいます。美音だけでなく美味を求める気持ちが強くなっているのです。今年も何回か海外に旅しましたが、香港で食べた中華の味付けの妙やアイルランドで食した濃厚ソースの仏風魚料理などの記憶が身体深く残っています。見知らぬ土地への旅の楽しみの一つとして今の私の中には明らかに食が存在しています。
フォアマンの豊穣なピアノ演奏には耳と舌の味覚が近接した関係にあることを実感させてくれる何かかがあるのです。バラッドにおけるエヴァンスほどの深みはないかもしれませんが、淀みなく流れゆくドライブ感覚が素晴らしい。贅沢な時間を演出してくれます。4曲目My Romanceや8曲目Now&Thenなどのミディアム調の料理加減が実にいい感じです。ゴメスとデジョネットのエヴァンス・トリオといえばモントリュー・ジャズ・フェスティバルの名ライブ盤(1968年)が思い起こされますけれど、ここでのフォアマンはエヴァンス・ライクであってもエヴァンスとは明らかに異なる爽やかな個性を発揮していますね。
1.Waltz for Debby
2.Very Early
3.Nardis
4.My Romance
5.My Foolish Heart
6.Perc Jazz
7.Gloria's Step
8.Now and Then
9.How My Heart Sings
10.But Beautiful
Mitchel Forman (p), Edie Gomez (b), Jack DeJohnette (ds). Recorded in 1992. Novus Records.
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Mitchel Forman/ Now & Then
Mitchel Formanについて詳しく知りたい方はこちらにどうぞ。
→ Wikipedia/Mitchel Forman
左はアイルランド・リムリックの有名店にてお昼1人で食したサーモン料理。濃厚なクリーム・ソースが新鮮なサーモンとハーモニーを奏でる。リムリックはグルメの街として有名なことを当地に着いてから知りました。
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投稿者 Jazz Blogger T : 16:01
ブラッド・メルドー/イントロデューシング・ブラッド・メルドー
2006年05月01日
Brad Mehldau/Introducing Brad Mehldau
ブラッド・メルドーが私にとってやはり今最も気になるピアニストですね。その十分に理解するにはあまりに深遠で、聴く毎に新しい発見をさせてくれる懐の深い音楽性、それらの魅力は強烈なドライビングフォースになります。メルドーの原点とも言える本作を興味深くこの1ヶ月くらい繰り返し聴いています。パーソネルは、ブラッド・メルドー(p)、ホルヘ・ロッシィ、クリスティアン・マックブライド(b)、ラリー・グレナディア、ブライアン・ブライド(ds)。1995年3月&4月NY録音。Worner Brothers。
連休に入ってのんびりと過ごしています。大した予定もなく何もしない日を享受することのありがたみを感じつつすでに3日目です。この9連休もきっとすぐに過ぎ去ってしまうのでしょう。そんな予感を抱きながら昨日に続いて好きな音楽のことを書いてみる気になりました。何事も思い立った時にやるべき事を片付けないとつい延び延びにしてしまうサボりの自分ですから。
ブラッド・メルドーは現在のジャズ・ピアノの新たな可能性を示し得る最右翼のピアニストでしょう。次々と聞く機会が増すごとにその才能が抜きん出て光っていることを感じます。デビュー作にはその芸術家の本質的な面が表れるものですが、若干24歳のメルドーの演奏には若さというよりすでに独特の老練と複雑性が生来の特徴のように備わっており、メルドーの特質が完全に開花していることがよくわかります。
本作でのメルドーはその音楽性がよく伝わってくるという点において明快で分かりやすいと思います。先日も少し書きました通り、私は音楽を聞いてすぐにその良さを理解するタイプではなく、何度も聴いて少しずつその音楽の輪郭を明らかにしながら好きになってゆくとても鈍感なタイプです。ジャズという音楽はその意味でもそうした嗜好がよく当てはまる音楽だと思っています。少し複雑な音楽の興趣、そう演奏者が意図したものを感じ取ってようやくその演奏者の感性レベルに達したときに共有されるもの、その道程は実に素敵な体験です。発見の過程の醍醐味です。
聴いてすぐに感じる人もいれば、いつまでも感じない人もいるのでしょう。私は感じるまでに時間と努力を要するけれど、一度感じ入れば深く深く長く長く感じることができます。ジャズ音楽、特に才能あるジャズマンの音楽を聴くことはそうした苦労とその先にある悦楽を受け入れる少し高尚な愉しみなのですね。これは登山に似ています。最初は何も見えず辛さだけの登りも少しづつ高みが見えてくるとしだいに登頂時の達成感が予感されて喜びが沸いてきます。遊びや道楽というのはこうしたかなりの労苦が一つの必須要件だと私は思うのです。
ブラッド・メルドーの音楽は私にとってまさにその類の典型です。初めて一度聴いたときと何十回も聴いた後とでは雲泥の差があります。メルドーのアドリブ・ラインが聞きなれたメロディになるまで消化されてはじめてやっとメルドーの表現したかったことのその一部が同じ意識として感じることができるというものです。その時に感じるメルドー音楽から得られる悦楽はメルドーって何て素晴らしいピアニスト、芸術家なのだろうと思い至らせてくれるですね。
テクニックが凄いとか技の部分がクローズアップされるメルドーですが、自分の音楽芸術を最適に表現するための道具としてのテクニックということだと思います。きっとまず芸術ありきなのですよ。全9曲。いずれも素敵な演奏です。難解なところのないとても分かりやすいメルドーで、メルドーの優れた特質を理解するには格好の作品だと思います。また、デビュー作というにはあまりの熟練と高い音楽性に驚きを禁じえません。
1曲目でいきなりメルドーの世界に引き込まれます。その淀みのないピアノの至芸と音楽性に脱帽です。この演奏を聴くだけで本作のレベルの高さが如実に予見されますね。2曲目はコルトレーン作の『ジャイアント・ステップス』に入っていた印象深い曲、疾風のごとく流れて行きます。3曲目はエヴァンスでお馴染みの美しいバラッド。メルドーは流石に粋な解釈をしてエヴァンスとは異なるフィーリングを示してくれます。沈静の中の品格ある安らぎ、糸を引くような粘っこいジャズ・テイスト、実に素晴らしい。
4曲目はメルドーのオリジナル、Angst、私はこの演奏が一番好きです。ミディアム・テンポのオーソドックスな演奏ながら粒立ちのよいメルドーのピアニスティックな音の流れはジャズ特有の芳香をあたり一面に撒き散らします。6~9曲はメンバーが変わります。6曲目エリントン、正確にはビリー・ストレイホーンの名曲Prelude To A Kiss、これは私の大好きな曲ですがその詩的な演奏が実にいい具合です。また、7曲目の典型的なブルースはメルドーに料理されるとこんな風になるのかをよく表していると同時にそのしっかりしたジャズ・センスが光っていますね。
1. It Might As Well Be Spring
2. Countdown
3. My Romance
4. Angst
5. Young Werther
6. Prelude To A Kiss
7. London Blues
8. From This Moment On
9. Say Goodbye
1~5; Brad Mehldau (p), Larry Grenadier(b), Jorge Rossy(ds), 6~9; Brad Mehldau (p), Christian McBride(b),Brian Blade(ds).Recorded March 13 and April 3, 1995. Worner Brothers.
iTunes Music Store では試聴可能です。→Introducing Brad Mehldau
詳しくはアマゾンでどうぞ。→Brad Mehldau/Introducing Brad Mehldau
JR.comでは試聴可能です。→Brad Mehldau/Introducing Brad Mehldau
関連エントリはこちら。
→ ブラッド・メルドー/ソングス Songs, The Art of the Trio Vol.3
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投稿者 Jazz Blogger T : 09:22
ビル・エヴァンス/ポートレイト・イン・ジャズ
2006年04月30日
Bill Evans/Portrait in Jazz
ビル・エヴァンスのベストの一枚と言えばやはりこれでしょうか。連休前の先日金曜に2泊3日の東京出張からの帰路にこのビル・エヴァンスを繰り返し聞いたのでした。飛行場や飛行機中など非日常の空間でどっぷりとエヴァンス世界を堪能しました。パーソネルは、ビル・エバンス(p)、スコット・ラファロ(b)、ポール・モチアン(ds)。1959年12月NY録音。Riverside Records。
ビル・エヴァンスが私はやはり好きなのですね。気乗りしないときは何でもないのですが、その気になって聴くとやはり格別に深い音楽だと思うのです。音と音の間がずしりと重く心の奥底に訴えかけてきます。その官能的な敏感な内奥の微細な肉襞が露になって麗しく輝き出しますと、その芳香はやがて全体を覆いつくしてエヴァンス世界が果てしない恒久の宇宙のように広がって行くのです。
この感覚はなかなかうまく説明しがたくとてももどかしいものです。でも多くの人は同じような感覚を抱いているに違いないとも思うのです。自分の場合はアルコールが少し入ったり、飛行機の中のような異質空間にいる際などにすぐにその世界に浸ることができます。このポートレイト・イン・ジャズは聴けば聞くほど重い音楽だと思います。私にとってはバド・パウエルのアメイジング・バド・パウエルVol.1のような印象になりますが、共通するものは才気が溢れていて独自の境地をまさに開かんとしている、近寄りがたい印象を形作っているのですね。
ジャズを聞き出した最初の頃はこのエヴァンスの魅力がいまいち分からなくて、今から思い返しましても不思議なくらいです。私の場合、その直観力が弱いと思います。最初の一回や二回聴いたくらいではすぐに好きにはなれず、何回も繰り返し聞くうちに少しずつ分かってきて深く深く好きになってゆくのです。最初からすぐに好きになったものは逆に飽きてゆくことが多いですね。最近ではブラッド・メルドーのピアノなどもそうした聞くほどに好きになってゆく類の音楽ですね。脳の中で音の流れの記憶がある程度定着してくれないとその魅力を感じることができないのです。その記憶作業に時間がかかるということだと思います。
全11曲(うち別テイク2)。1曲目からいきなり最もエヴァンスらしいスロー・バラッドCome Rain or Come Shineからスタートします。帳の下りた粘調な深夜の音楽に突入です。2&3曲目は枯葉の2テイク。こちらはミディアム・テンポで幾分明るいながらやはりそれはエヴァンスの典型的なハーモニックな演奏です。私のお好みは、5曲目When I Fall in Loveや8曲目Spring Is Hereなどのしっとりした美しいバラッド系の演奏です。ピアノ・トリオと思えない深みと広がりを感じます。特に、Spring is Hereでの斬新なアドリブ・ラインにはため息が出るほどです。私は限りない美をそこに観ることができます。9曲目Someday My Prince Will Comeや10&11曲目のBlue in Greenも本当に素敵な演奏です。エヴァンスは何て美しい音楽を創造したのでしょうか。
この一年余り毎月神戸の自宅から東京方面に仕事で数回出張する生活が続いています。神戸空港が開港して以来、新幹線のぞみから飛行機に完全にシフトしましたですね。3時間の密閉感と1時間のそれを比ぶれば後者の方が飽き症の私には圧倒的にいいみたいですね。最初は飛行機に乗ることが命がけの緊張ものでしたが、4~5回くらいで完全に馴れました。年に数回しか乗らなかったものが2週間空けずに乗るようになりますと慣性の法則が成り立つのですね。離着陸時や少しくらいの揺れにも緊張や動揺をしなくなりました。今回は飛行機の出発時間が30分くらい遅れたおかげで過剰のアルコールとエヴァンスの名演に埋没するよい機会となりましたとさ。
1.Come Rain or Come Shine
2.Autumn Leaves [Take 1]
3.Autumn Leaves [Take 2]
4.Witchcraft
5.When I Fall in Love
6.Peri's Scope
7.What Is This Thing Called Love?
8.Spring Is Here
9.Someday My Prince Will Come
10.Blue in Green [Take 3]
11.Blue in Green [Take 2]
Bill Evans (p), Scott Lafaro(b), Paul Motian(ds). Recorded Dec 28 1959.
アマゾンでは試聴もできます。詳しくはこちら。
→Bill Evans/Portrait in Jazz
iTunes Music Store では試聴可能です。→Bill Evans/Portrait in Jazz
関連エントリーはこちら。
→ アート・ファーマー『モダン・アート』(1958)
→ ビル・エヴァンス『エブリバディ・ディグス』(1958)
→ ビル・エヴァンス『オン・グリーン・ドルフィン・ストリート』(1959)
→ ビルエヴァンス『ポートレイト・イン・ジャズ』(1959)
→ キャノンボール・アダレイ『ノウ・ホワット・アイ・ミーン』(1961)
→ ビル・エヴァンス『エクスプロレイションズ』(1961)
→ ビル・エヴァンス『ムーン・ビームス』(1962)
→ デイブ・パイク『パイクス・ピーク』(1962)
→ ビル・エヴァンス『シェリーズ・マンホールのビル・エヴァンス』(1963)
→ スタン・ゲッツ『スタン・ゲッツ&ビル・エヴァンス』(1964)
→ モニカ・ゼタールンド『ワルツ・フォー・デビー』(1964)
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投稿者 Jazz Blogger T : 09:23
ザ・スリー・サウンズ/ムーズ
2005年07月16日
The Three Sounds / Moods
今日はBlueNoteのいわば専属ピアノ・トリオ、スリー・サウンズを聞きましょう。『ムーズ』はジャケットに何とBlueNoteオーナー、アルフレッド・ライオンの奥方を起用するという入れ込みようで、内容も彼らの魅力を湛える代表的なアルバム。パーソネルは、The Three Sounds、ジーン・ハリス Gene Harris (p)、アンドリュー・シンプキンス Andrew Simpkins (b)、ビル・ダウディ Bill Dowdy (ds)。1960.6.28.NJ録音。BlueNote4044。
このアルバムは日頃何気なくよく聴いている一枚です。ジーン・ハリスの明快にスイングするピアノがいいですし、ベースが重心重くて骨太、それに音響がブルーノートらしい奥行き感のあるサウンド。ピアノの音は決してピアニスティックで繊細な表情を映すものではなく芯が太くて野暮ったいもの。それが返ってブルージーやドライブ感を表現するには最適なものとなってるのでしょう。
レコードを聞きながらジャケットに見入ったり、英文ライナーノーツを読んだりというのが私の密かな楽しみですが、本作の後にA・ライオン夫人となるルース・メイソンの何と魅力的なことでしょう。他のジャケットではBN4114でも眺めることができますし、BN4060のドナルド・バードのライブ盤では司会者としてその肉声を聞くこともできます。
そのジャケットが醸す軟弱な雰囲気とは一線を画するジャジーな内容のアンバランス加減がおもしろいのですね。安易に聞けるという意味では確かに軟派なのかもしれませんが、これもまさしくBlueNoteのジャズの一端なのだと思います。しかも60年前後といいますとBlueNoteが最もBlueNoteらしい時期ですからね。多少リバーブがきつ目に感じられる録音は気のせいでしょうか。何とかプッシュしたいという製作者の雰囲気を感じたりします。
1曲目のLove For Sale はキャノンボール・アダレイの有名盤『サムシン・エルス』で聞かれる同名曲と雰囲気が似ていますが、これはベースの音感と動きに類似点があるからだと思います。3曲目のOn Green Dolphin Street でもベースがアクセントを示していましてその上をジーン・ハリスのグルーヴィーなピアノが心地よくスイングしています。この2曲を聞けばスリー・サウンズの基本的コンセプトがよく理解できると思います。私にとってお好みの極めて上質でエンターテイメントなピアノ・トリオなのですね。7曲目Tammy's Breeze などは本当に素敵ですぞよ。
BlueNoteのアルフレッド・ライオンの嗜好は日本のジャズ・ファンにとって共鳴するものがあるのだと思います。ドイツから移民として渡ってきたライオン、それにジャケット写真はフランシス・ウルフ、それに録音はご存知ルディ・ヴァン・ゲルダーです。このトリオはジャズ史上に輝くBlueNoteレーベルを築いてきたのでした。下の写真はライオン(左)とウルフ(狼)ですね(笑)。
1. Love For Sale
2. Things Ain't What They Used To Be
3. On Green Dolphin Street
4. Loose Walk
5. Li'l Darlin'
6. I'm Beginning To See The Light
7. Tammy's Breeze
8. Sandu
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ The Three Sounds / Moods
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投稿者 Jazz Blogger T : 09:43
ビル・エヴァンス/ニュー・ジャズ・コンセプション
2005年07月15日
Bill Evans / New Jazz Conception
今日はビル・エヴァンスの記念すべき初リーダー作品の『ニュー・ジャズ・コンセプション』をご紹介しましょう。バド・パウエルの影響を感じ取れるバップ系の響きの中に後年のエヴァンスの臭いをほのかに感じさせる大変魅力的なアルバムなのです。パーソネルは、ビル・エヴァンス(p)、テディ・コティック(b)、ポール・モチアン(ds)。1956.9.27NY録音。Riverside Records。
ビル・エヴァンス(1929~1980、ウィリアム・ジョン・エヴァンス)は私の最もお好みのジャズマンなんだと最近は素直に感じています。ジャズを聞き始めた頃はそうでもなくて例えばピアノではバド・パウエルの方がよいと断じていたのでした。それがジャズに深く入り込むほどに自分の中のエヴァンスの存在が少しずつ大きくなってくるのでした。
今はエヴァンス初期~中期の作品、そう56年から65年くらいのアルバムに深いジャズ・テイストを感じています。例えば、初リーダー作の本作、2作目の『エブリバディ・ディグス』(1958)や3作目の『オン・グリーン・ドルフィン・ストリート』(1959)など、有名な4部作直前のこれらのアルバムにはそれぞれに深い味わいがあって、名人が名人になってゆく道程が刻まれています。特に本作と2作目あたりのエヴァンス流の模索具合には新鮮な魅力があるのです。
本作において否が応でもすでにエヴァンス特有の美学の片鱗が垣間見えます。5曲目のスタンダード曲Easy Living での粘着質のリリシズムは当時エヴァンスのみが示しうる類のものです。確かにホーンライクで粘っこいアドリブ・ソロにはパウエルの音を予感させますが、静かな中にも熱い思いを秘めた内省的な響きはエヴァンス独特の世界を感じさせてくれます。この演奏は本当に感動的なものでしてエヴァンス・ファンならずとも味わうべき素晴らしいピアノ演奏です。
本作がもしエヴァンスの作品でなければ50年代名作としてもっと著名になったのではないかと思われます。後年の多数の名作に隠れる形であまり注目を集めることがないのが残念です。エヴァンスの軌跡途上の作品という位置づけなのでしょうが、一個のバップ系のピアノ・トリオ作品として聞きますと大変に面白みのあるピアノ・アルバムに違いありません。才能がほとばしっている感があります。
次作の『エブリ~』は誰しもが認める傑作でしょう。この2者の間には確かな飛躍があります。本作はまだ少し開きかけの、でもまだまだ開ききらない花の蕾、確実に極上の美を示すであろうことが容易に類推できるような素敵な蕾、そんな印象になりますね。11&12曲目のNo Cover, No Minimum などはパウエルにホレス・シルバーを足したようなまさにバップ系のピアノですが、そこはかとないハーモニック・センスの美意識を感じとることができます。そして、8曲目Waltz For Debby の可憐な佇まいはすでにこの時点でほぼ完成されていることがわかります。
1. I Love You
2. Five
3. I Got It Bad And That Ain't Good
4. Conception
5. Easy Living
6. Displacement
7. Speak Low
8. Waltz For Debby
9. Our Delight
10. My Romance
11. No Cover, No Minimum - (take 1, bonus track)
12. No Cover, No Minimum - (bonus track)
JR.comでは試聴可能です。→Bill Evans / New Jazz Conception
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Bill Evans / New Jazz Conception
関連エントリーはこちら。
→ アート・ファーマー『モダン・アート』(1958)
→ ビル・エヴァンス『エブリバディ・ディグス』(1958)
→ ビル・エヴァンス『オン・グリーン・ドルフィン・ストリート』(1959)
→ ビルエヴァンス『ポートレイト・イン・ジャズ』(1959)
→ キャノンボール・アダレイ『ノウ・ホワット・アイ・ミーン』(1961)
→ ビル・エヴァンス『エクスプロレイションズ』(1961)
→ ビル・エヴァンス『ムーン・ビームス』(1962)
→ デイブ・パイク『パイクス・ピーク』(1962)
→ ビル・エヴァンス『シェリーズ・マンホールのビル・エヴァンス』(1963)
→ スタン・ゲッツ『スタン・ゲッツ&ビル・エヴァンス』(1964)
→ モニカ・ゼタールンド『ワルツ・フォー・デビー』(1964)
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投稿者 Jazz Blogger T : 09:44
エンリコ・ピエラヌンティ/プレイ・モリコーネ
2005年07月13日
Enrico Pieranunzi / Play Morricone
今日はエンリコ・ピエラヌンティのピアノ・トリオを聴いています。『プレイ・モリコーネ』は映画音楽で著名な作曲家エンリオ・モリコーネの作品だけで製作されたピアノ・アルバムです。エンリコ・ピエラヌンティはイタリア出身の現代ジャズ・ピアノを代表する一人ですね。繊細で流麗なタッチは独特の美意識に貫かれています。パーソネルは、エンリコ・ピエラヌンティ(p)、マーク・ジョンソン(b)、ジョーイ・バロン(ds)。2001年録音。
エンリコ・ピエラヌンティは1949年生まれということですから現在50代半ばなのですね。80年代より活躍していまして、ビル・エヴァンス系の耽美的な音で適度に絡みつく粘着質のピアノなのですね。そのフレージングには独特の個性が感じられますが、さわやかに香る美的なセンスは万人を魅了する芳香を有しています。
90年前後から10年以上毎年数枚のアルバムを次々とリリースしていましてその多産ぶりが伺えます。以前にご紹介した『ナイト・ゴーン・バイ』(1996年)も極めて上質なピアノ・トリオ作品でしたが、本作もほぼ同様の路線上の作品です。やはりその耽美的な感性が際立っています。4曲目の流れるように美しいピアノの音の連なりはほんと素晴らしいと思います。しっかりとしたジャズ・フィーリングに裏打ちされているからこそ、その魅惑的な吸引力は絶大なものとなるのですね。
う~ん、やっぱりたまらないですね。これは病み付きになる音です。4曲目と10曲目がいいです。映像が自然に浮かんでくるようです。私の場合、音楽を聞いていて映像など音以外の神経に結びつくものは最上の類の音楽との認識です。脳が刺激を受けて異常に活性化されている状況なんだろうと思っています。音の流れに没頭すること、それが必須の要件ですが。ジャズを聴いて喜びを感じること、それは耳に響く音に興味を持つこと、そしてその自分にとって好ましいと思える音に精神を集中することではじめて得ることができるのだと思います。
1. Addio Fratello Crudele
2. Mio Caro Dottor Grasler
3. Voglia Matta
4. Just Beyond The Horizon
5. Incontro
6. Jona Che Visse Nella Balena
7. Le Mani Sporche
8. ....Correva L'anno Di Grazia 1870
9. Escalation
10. Stanno Tutti Bene
11. Quando Le Donne Avevano La Coda
iTunes Music Store では試聴可能です。→Enrico Pieranunzi / Play Morricone
Jazzitaliaでは試聴可能です。→Enrico Pieranunzi / Play Morricone
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Enrico Pieranunzi / Play Morricone
関連エントリーはこちら。→エンリコ・ピエラヌンティ『ナイト・ゴーン・バイ』
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投稿者 Jazz Blogger T : 09:45
トミー・フラナガン/ムーズヴィル
2005年07月12日
Tommy Flanagan / Moodsville
今日はトミー・フラナガンのトリオ・アルバムを聞きましょう。『Moodsville』は珠玉のピアノ演奏を堪能できるとてもキュートなアルバムです。私はこういうセンスに弱いのです。一見カクテル・ピアノ風でいながらじっくり聞けば本物の上品な香りが臭い立つそんなピアノなのですね。パーソネルは、トミー・フラナガン(p)、トミー・ポッター(b)、ロイ・ヘインズ(ds)。1960年録音。Prestige Records。
トミー・フラナガンのピアノは小気味よくスイングするハード・バップ・ピアニストとして筆頭格の名手の一人。『サキソフォン・コロッサス』や『ジャイアント・ステップス』などでの名脇役ぶりで忘れがたいピアニストです。本作ではそんな切れ味鋭いピアニズムを懐の中に仕舞い込んで情緒的な優しいメロディを実に丹念に見事に歌い上げています。
決してベタには流されないところが流石に名人でして、品格漂う珠玉のピアノ作品に仕上げているのです。これはあの繊細なタッチ・センスのアル・ヘイグのピアノ作品に通じる世界です。微妙に黒人特有のアーシーでグルーヴィーな雰囲気は隠しようもないのですね。そのセンスが露骨に感じ取れるのは6曲目のJes' Fine のみかもしれませんが、他の美しいバラッド演奏にもそこはかとなくそうしたセンスがかすかに匂っていまして、そこのところが本作の魅力の本質かとも思われます。
いずれにせよ歌ものが大好きでジャズ・ピアノに目が無い私のようなジャズ・ファンには座右に置いておくべき魅惑の世界が展開されているのですね。全7曲。最初の1曲目でふら付きだして、2曲目のYou Go To My Head がはじまる頃にはほぼにダウン寸前、そして3曲目Velvet Moon で完全にノックアウト状態ですね。4曲目のエリントンの名曲Come Sundayが来ますと夢心地になりまして、その後はもう忘我の境地といったところです。
1. In The Blue Of The Evening
2. You Go To My Head
3. Velvet Moon
4. Come Sunday
5. Born To Be Blue
6. Jes' Fine
7. In A Sentimental Mood
JR.comでは試聴可能です。→Tommy Flanagan / Moodsville
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Tommy Flanagan / Moodsville
関連エントリはこちら。
→ トミー・フラナガン/エクリプソ (1993)
→ ジョン・コルトレーン/ジャイアント・ステップス (1959)
→ ソニー・ロリンズ/サキソフォン・コロッサス (1956)
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投稿者 Jazz Blogger T : 09:45
ウィントン・ケリー/ウィスパー・ノット
2005年07月04日
Wynton Kelly / Whisper Not
今日はウィントン・ケリーのピアノを満喫するのに好適な一枚を選んでみました。『ウィスパー・ノット』はギターのケニー・バレルを迎えたカルテット演奏によるブルージーでグルーヴィーな渋いアルバムです。パーソネルは、ケニー・バレル(g)、ウィントン・ケリー(p)、ポール・チェンバース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)。1958年NY録音。Riverside Records。
ウィントン・ケリーは50年代後半から60年代前半にかけて大活躍したモダン・ジャズを代表するピアニストですね。マイルス・デイヴィスのグループにも参加しています。そのブルージーでよく転がる演奏は同時期のトミー・フラナガンやソニー・クラークらと並んで取分け印象深いものがあります。
そのウィントン・ケリーがサイドメンとして参加した録音は数多く残されていますが、ピアノ・トリオ演奏は数枚というほど意外に少ないものです。以前にこのブログでも紹介した『ケリー・アット・ミッドナイト』がその筆頭格で、他には『枯葉』くらいでしょうか。そして、本作はケニー・バレルが加わったカルテットですが、ケリーのピアノがほぼ主役ということではトリオ演奏と同等にケリーのピアノを堪能することができるアルバムだと思われます。
バレルのギターはご存知の通りブルース感覚に卓越したケリーとは言わば同類のセンスを持つジャズマンだけにごく自然な調和を感じさせてくれます。ケリーのピアノも幾分かあっさりした感じに聞こえて、濃いブルースに少々食傷気味の私などにとっては中庸を得て丁度心地良いところに落ち着いているのです。何を聴こうかなって困った時などについつい手が伸びてしまう魅力的で身近な一枚なのですね。
全7曲プラス別テイク1。どれも思わずにんまりしてしまいそうな渋~いgoodな演奏なのです。6曲目のDon't Explainでのアーシーなセンスなどは格別な味わいがあります。それに4曲目Strong Manや5曲目I'll Windなども実に言い感じです。1曲目のWhisper Notなどはまさに想像できる通りの期待に違わぬグルービ~な演奏といえるでしょう。
1. Whisper Not
2. Action
3. Dark Eyes
4. Strong Man
5. Ill Wind
6. Don't Explain
7.You Can't Get AwayDark
8. Eyes - (take 2, bonus track)
Wynton Kelly (p), Kenny Burrell (g), Paul Chambers (b), Philly Joe Jones (ds). Recorded on January 31,1958.
iTunes Music Store では試聴可能です。→ Wynton Kelly / Whisper Not
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Wynton Kelly / Whisper Not
関連エントリーはこちら。→ウィントン・ケリー『ケリー・ブルー』
→ウィントン・ケリー『ケリー・アット・ミッドナイト』
→ウィントン・ケリー『フル・ヴュー 』
→ウィントン・ケリー『ケリー・グレイト 』
→ウェス・モンゴメリー『フル・ハウス』
→ケニー・バレル『ミッドナイト・ブルー』
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投稿者 Jazz Blogger T : 09:46
リニー・ロスネス/星に願いを
2005年07月02日
The Drummonds / When You Wish Upopn A Star
今日は最近お気に入りのピアニストであるリニー・ロスネスのアルバムを紹介させていただきます。ヴィーナス・レーベルの『星に願いを』。ザ・ドラモンズこと、ビリー・ドラモンドとレイ・ドラモンド兄弟がリニー・ロスネスを迎えて珠玉のピアノ・トリオ演奏を残しました。パーソネルは、リニー・ロスネス(p)、ビリードラモンド(b)、レイ・ドラモンド(ds)。1999年NY録音。Venus Records。
このブログを始めるまで最近のジャズ・シーンに極めて疎い私でした。このブログを毎日のように更新することになって否が応でも現在のジャズ・シーンに目を開かされるのでした。そして、その収穫が大好きなピアノでは、ビル・チャ-ラップとこのリニーロスネスなのでした。あ、それに、アーマッド・ジャマルやキース・ジャレットの素晴らしさに開眼したのも実は最近のことなのです。まあ、それは置いといて、と言いましても、ジャマルは絶対的に素晴らしいと思うのですが、ジャレットはワン・パターンかなという気がしないでもないですが。
確かにブログを書くようになりまして、「今」どんなのが巷で流れているのかが結構に気になってくるのですね。もっといいのが出てきているんじゃないか、自分はそんなことも知らず取り残されて一人よがりのことを書いているんじゃないかって不安になるものです。ですから、最近できるだけ枠を広げるように少しは努力をしているというわけです。ほんの少しですけれどね。そして、やっぱり、ちゃんといるじゃないですか、才能は着実に次々と出てきているってことを実感している今日この頃ではあります。
リニー・ロスネスってピアニスト、以前にご紹介した『レター・トゥ・ビル・エヴァンス』で一辺に惚れ込みました。一般にどのような評価がなされているのかほとんど知らず、全くの主観なのですが「すごくよい」と思うのです。そして、本アルバムを聴いてそれが確信に変わりました。抜群のセンスの良さが光っています。泉のように湧き出るイマジネーションと粘着質のリリアカルなタッチはビル・エヴァンスの流れを踏襲しながらも洗練の極みを示す現代を代表するジャズ・ピアニストではないのかと私は密かに感じているのでございます。
いや超のつくような美形だからとかの贔屓目は全く関係ございません。それに見かけだけで言いますと小生の趣味とは若干違う部分があります。純粋にそのピアノ演奏に参っているのです。例えば、4曲目ミディアム・テンポのAlone togetherに耳を傾けてみますと、7分の演奏時間の内5分くらいを占めるロスネスのインプロヴィゼーション、これがほのかな叙情性を発散しながらリズムに乗りつつよくコントロールされたアドリブ・ラインには思わず唸らされますね。この心地よい緊張感が素晴らしい。
1.Nature Boy
2. Autumn In New York
3. Over The Rainbow
4. Alone together
5. When You Wish Upon A Star
6. Danny Boy
7. Lullaby Of Birdland
8. The Sound Of Silence
9. Polka Dots And Moonbeams
10. Like Someone In Love
iTunes Music Store では試聴可能です。→ The Drummonds / When You Wish Upopn A Star
J-Waveでは試聴可能です。→ リニー・ロスネス『星に願いを』
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ The Drummonds / When You Wish Upopn A Star
当ブログでの関連エントリーはこちら。→リニー・ロスネス『レター・トゥ・ビル・エヴァンス』
それにしても先週訪問した吉祥寺のジャズ喫茶『メグ』のことまだ記事にしていません。すみません。
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投稿者 Jazz Blogger T : 09:47
ビル・エヴァンス/オン・グリーン・ドルフィン・ストリート
2005年06月21日
Bill Evans / Green Dolphin Street
今日はビル・エヴァンスの『オン・グリーン・ドルフィン・ストリート』です。15年ほどお蔵入りしていたとは決して思えないようなエヴァンス・スタイルがほぼ確立された高水準のピアノ・トリオ作品。パーソネルは、ビル・エヴァンス(p)、ポール・チェンバース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)。1959年1月録音。Reverside Records。
スコット・ラファロとポール・モチアンとの黄金のトリオが結成される前夜、名作『エブリボディ・ディグス』(58年12月)の直後、マイルス・グループでの『カインド・オブ・ブルー』(59年3月)の直前の作品です。この録音時期からして悪かろうはずが無いのですね。ポール・チェンバースとフィリー・ジョー・ジョーンズとはマイルス・グループである程度手の内を知り合った仲ですし、エヴァンスが自由に振舞うことが許されているのですから。硬質なタッチとシングル・トーンが光る渋いエヴァンスを聞くには最適なお勧めの一枚です。
1曲目の「あなたと夜と音楽と」は大分と以前にTVーCMにも使われたことのある著名な好演。チェンバースのリズムに乗ったエヴァンスの快調なピアノが披露されます。この曲を聞くとなぜかバド・パウエルの「クレオパトラの夢」を思い起こしてしまいますが雰囲気が似ているのでしょうか。さらに、余談ですが最近立ち上げたばかりの私のサイトにこの名前が似ています。「iPodと英会話と音楽と」(笑)。別に意図したわけでもなく、冗談でもないのですが、偶然の結果です。ただ、その頃にこのアルバムをiPodに入れて頻繁に聞いていたことは事実です。まだまだ中途半端な内容ですがiPodや英語にご興味のある方に活用されるサイトを目指してします。
3曲目のOn Green Dolphin Streetも文句なしの名演でしょう。この演奏を聞くためにこのアルバムを何度も聞いてきたのでした。1曲目よりこちらが圧倒的に好みなのです。デューク・ジョーダンのすがすがしい好演がすぐに脳裏を掠めますが、このエヴァンスの枯淡で内省的な美意識を湛えた演奏にも深い味わいがあるのですね。ブロック・コードを多用したソロが印象に残ります。→デューク・ジョーダン『フライ・トゥ・デンマーク』
1. You And The Night And The Music
2. My Heart Stood Still
3. On Green Dolphin Street
4. How Am I To Know?
5. Woody'n You - (take 1)
6. Woody'n You - (take 2)
7. Loose Bloose
JR.comでは試聴可能です。→Bill Evans / Green Dolphin Street
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Bill Evans / Green Dolphin Street
今日は実は出張先のホテルで書いています。最近出張が増えてまして何とか出張先でも記事の更新をせねばと思っていましてやっと実現したというわけです。それにしても便利な世の中になりましたね。
関連エントリーはこちら。
→ アート・ファーマー『モダン・アート』(1958)
→ ビル・エヴァンス『エブリバディ・ディグス』(1958)
→ ビル・エヴァンス『オン・グリーン・ドルフィン・ストリート』(1959)
→ ビルエヴァンス『ポートレイト・イン・ジャズ』(1959)
→ キャノンボール・アダレイ『ノウ・ホワット・アイ・ミーン』(1961)
→ ビル・エヴァンス『エクスプロレイションズ』(1961)
→ ビル・エヴァンス『ムーン・ビームス』(1962)
→ デイブ・パイク『パイクス・ピーク』(1962)
→ ビル・エヴァンス『シェリーズ・マンホールのビル・エヴァンス』(1963)
→ スタン・ゲッツ『スタン・ゲッツ&ビル・エヴァンス』(1964)
→ モニカ・ゼタールンド『ワルツ・フォー・デビー』(1964)
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投稿者 Jazz Blogger T : 09:48
フィニアス・ニューボーンJr/ア・ワールド・オブ・ピアノ
2005年06月03日
Phineas Newborn Jr. / A World of Piano
今日はフィニアス・ニューボーンJrの傑作アルバム『ア・ワールド・オブ・ピアノ』です。そのテクニックはジャズ・ピアノ史上恐らくトップでしょう。そのフィニアス・ニューボーンJrの代表作といえば本作です。パーソネルは、フィニアス・ニューボーンJr(p)、ポール・チェンバース、サム・ジョーンズ(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ、ルイス・ヘイズ(ds)。1961年LA録音。Contemporary Records。
両手ユニゾンなどに見られる驚くべきテクニックは、一歩間違えばバカテクの類になりかねないところなのですが、このフィニアス・ニューボーンJrは十分に高い音楽性を伴っていているのですね。フィニアス・ニューボーンJrは1931年米メンフィス出身。56年にニューヨークでデビュー後、初レコーディングはプログレッシブ盤、ついでリーダー作をアトランティックに1枚、RCAに4枚、ルーレットに2枚、そして、61年以降は本作も含めたコンテンポラリーに3枚というハイ・ペースでリーダー・アルバムを残してゆくことになります。本ブログでも以前にお気に入りのRCA盤についてはご紹介しています。→ 『フィニアス・レインボウ』
50年代デビュー当時にはそのテクニックを披露すべくもっぱら急速調の演奏が多かったのですけれど、60年代の本作などに至りますと成熟したジャズ・ピアノ音楽を聴くことができますね。例えば、3曲目のビリー・ストレイホーンのスタンダード曲「ラッシュ・ライフ」などのバラッド演奏にはファンタジーでブリリアントな側面が見事に現れています。
余談ですが、曲の冒頭にラベルのピアノ曲「ソナチネ」のフレーズが出てきて面くらいますね。アルゲリッチのアルバム『夜のガスパール』のB面に入っていて聴きこんでいる曲だけにその覚束なさを少し感じたりします。ジャズマンがときにクラシック曲をまともに演奏することがありますが私はあまり好きではありません。このフィニアス・ニューボーンJrの場合はまだ許せる範囲ですが、私共が耳にする機会の多いクラシックの超一流プロの演奏と比べますとやはり脇の甘さなどが目についてしまうのですね。
また、7曲目、ベーシスト、ルロイ・ヴィネガー作でピアニスト、カール・パーキンスに捧げられた「フォー・カール」でのリリカルなジャズ・ワルツ演奏には可憐な佇まいの哀感があって実によい具合なのですね。カール・パーキンスをフィニアス・ニューボーンはフェイヴァリット・ピアニストの一人として挙げているそうですが、私も大好きなピアニストです。以前ご紹介したアルバムはこちらです。→ カール・パーキンス『イントロデューシング』
テクニック抜群のピアニストですぐ思いつくのがスペイン出身の盲目のピアニスト、テテ・モントリューです。こちらはラテンの血を感じさせる饒舌で情熱的なピアノなのですね。以前ご紹介したアルバムはこちらです。→ テテ・モントリュー『テテ』
話にまとまりがありませんが、本作は全8曲収録、素敵なピアノ・ジャズ・アルバムだと思います。尖がった個性を感じるのは50年代デビュー間もない頃の演奏、洗練されて円熟したピアニスティックなピアノなら60年代以降、特に本作は申し分のないハイ・レベルの演奏かなというところです。
1. Cheryl
2. Manteca
3. Lush Life
4. Daahoud
5. Oleo
6. Juicy Lucy
7. For Carl
8. Cabu
JR.comでは試聴可能です。→Phineas Newborn Jr. / A World of Piano
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Phineas Newborn Jr. / A World of Piano
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投稿者 Jazz Blogger T : 09:49
バド・パウエル/バド・パウエルの芸術
2005年05月24日
Bud Powell / Bud Powell
今日はバド・パウエルの歴史的名盤の『バド・パウエルの芸術』です。ジャズの魅力に取り付かれたある往年の日々に教科書のように繰り返し聴いたなつかしのアルバムです。パーソネルは、バド・パウエル(p)、ジョージ・デュヴィヴィエ、カーリー・ラッセル(b)、マックス・ローチ、アート・テイラー(ds)。1947年、1953年録音。Roost。
ジャズを積極的に聴くようになった20才前後の頃、アルバイトで得た小銭を中古レコードにつぎ込むようになってすぐにこのレコードには出会うべくして出会ったのでした。その素晴らしいバド・パウエルのピアノを実際に耳にしたときの感動、そして、毎日のように聴いたその琥珀のような音の連なりはいまだに青春の日々を彷彿とさせてくれる貴重な記憶になっています。
しかしながら、ある時そう20代半ばの頃、ずっと下宿にTVのない生活を過ごしていたのですが、ひょんなことから近くに住む大学研究室の1年後輩にTVを借りることになり、そのお礼にと、このレコード、中古で買って擦り切れるように聴いたレコードを差し上げたのでした。彼の下宿(薄汚い大学の寮でしたが)に行くとビル・エバヴァンスの『ワルツ・フォー・デビー』があったりしまして少しジャズに興味があるとかということで、先輩としては自慢のバド・パウエルのレコードをこっちの水はもっとおいしいかもよといったノリで自信を持って提供することにしたのでした。
それ以来、20年くらい、このバド・パウエルの『芸術』に触れることなく、昨年末にCDを入手して再会することになるのでした。音の記憶といいますのは、臭いや味の記憶も同様だと思いますが、相当にしぶといものがありますようで、私はそのことを改めて心地よく思い知らされました。8曲目のEverything Happens to Me や4曲目のI Should Care などの美しいメロディとパウエルの魅惑的なアドリブを耳にしますと涙が出てくるように昔の感激が蘇ってくるのです。おお~ありがとう、といった感謝にも似た感情がしみじみと湧き上がってくるのでした。
レコードのA面1~8が47年録音の初リーダーセッション、B面9~16が53年の録音です。精神状態がいずれも良かったとのことで、本来の天才的なひらめきやソロ・イディオムの構築感を堪能することができます。今、こうして聴いていますと、47年録音は勿論文句なしの名演なのですが、53年の録音の方もその深い音楽性が感じられて妙に納得させられるのです。
いずれも曲頭が詩的に始まりますね。それに、例えば、12曲目You'd Be So Nice to Come Home Toや14曲目My Devotionでの後のエヴァンスを感じさせるような斬新な解釈、15曲目 Stella by Starlightでの左手の達観したようなコード、16曲目のWoody 'N Youなどでの説得力のあるフレージング、などなど芸術と呼ぶに相応しいような工夫が随所に施されているのですよ。勿論、10曲目Burt Covers Budや11曲目My Heart Stood Stillでの典型的なパウエル調の長くてキュートなソロは大のお気に入りです。
1. I'll Remember April
2. (Back Home Again In) Indiana
3. Somebody Loves Me
4. I Should Care
5. Bud's Bubble
6. Off Minor
7. Nice Work If You Can Get It
8. Everything Happens to Me
9. Embraceable You
10. Burt Covers Bud
11. My Heart Stood Still
12. You'd Be So Nice to Come Home To
13. Bag's Groove
14. My Devotion
15. Stella by Starlight
16. Woody 'N You
iTunes Music Store では試聴可能です。→ Bud Powell/バド・パウエルの芸術
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Bud Powell / Bud Powell
バド・パウエルの過去のエントリー。→『アメイジング・バド・パウエルVol.2』
→『バド・パウエル・イン・パリ』
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投稿者 Jazz Blogger T : 09:50
ハンプトン・ホーズ/ザ・トリオVol.1
2005年05月17日
Hampton Hawes/ Hampton Hawes Trio Vol.1
今日はハンプトン・ホーズのご機嫌なピアノを聴いて我を忘れています。このリズム感はやはりハンプトン・ホーズならではの格別のものがありますね。フニクリ・フニクラが絶好調の『ザ・トリオ Vol.1』です。パーソネルは、ハンプトン・ホーズ(p)、レッド・ミッチェル(b)、チャック・トンプソン(ds)。1955年LA録音。Contemporary Records。
このアルバムは長く愛聴してきたものだけに結構に思い入れがあります。米西海岸で50年代半ばから後半のジャズが全盛期の頃に最も活躍したピアニストと言えばこのハンプトン・ホーズでしょう。そのピアニスティックかつスインギー、それに圧倒的なドライブ感は他の追随を許さないものがあります。特にブルース系の曲での「フニクリ・フニクラ」と言われた独特のアドリブ・ラインと西海岸特有の乾いた感触はジャズ・ファンなら誰しも納得できるセンスだと思うのですね。
このザ・トリオはVol.1からVol.3までありまして、Vol.2はこのブログでもご紹介しています。→『ザ・トリオVol.2』。甲乙付け難い内容ではあるもののこのVol.1が最も人気があるようですね。ホーズの特徴が最もよく出ているということでしょう。キュートなメロディのスタンダード曲がいずれもホーズ節に手際よく料理されていまして、揚げたてのてんぷらの香ばしい食感が堪らないといったところなのですね。
全10曲。いずれも高水準の名演ばかりなのですが、1曲だけ選ぶとすれば、8.All The Things You Areですね。もともとこの曲自体が好きなのですが、パーカーとガレスピーの『ジャズ・アット・マッセイ・ホール』での演奏とともにこのホーズの演奏が特に大好きなのです。ここでのホーズの快調なソロには脱帽です。ホーズ節の真骨頂、ほんと素晴らしい。
バラッド演奏も実は十分なものがありまして、4や7は演奏はとても魅力的です。特に、コール・ポーター作のミュージカル『キス・ミー、ケイト』(1948)の挿入歌、4.So in loveの美しいメロディは中年の方ならよくご存知のあの淀川長治さんの『日曜洋画劇場』のエンディング曲でしたね。私はこのメロディが大好きでした。その日の映画が素敵なものであるほどこのラストに流れるメロディが麗しく響くのでしたね。
全編に渡ってホーズの好調なソロを存分に満喫できますが、それを支えているのがレッド・ミッチェルの重心の低いベースです。9. These Foolish Thingsや3. Blues The Mostを聴きますとミッチェルがこのアルバムにおいて重要な位置を占めていることに改めて気づかされます。そういう視点で全体を聴き直してみますと、ミッチェルとホーズの高等なスリルある掛け合いという違った面白みがあるように思いますね。やはりコンテンポラリー盤の『フォー・リアル』というホーズの名作がありますが、ここでのベースがスコット・ラファロでして、ホーズのあの独特のスイング感は好ベースとの組み合わせが案外キーなのかもと思われたりもします。
1. I Got Rhythm
2. What Is This Thing Called Love
3. Blues The Most
4. So In Love
5. Feelin' Fine
6. Hamp's Blues
7. Easy Living
8. All The Things You Are
9. These Foolish Things (Remind Me Of You)
10. Carioca
iTunes Music Store では試聴可能です。→ Hampton Hawes Trio Vol.1
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Hampton Haws/ Hampton Haws Trio Vol.1
関連エントリはこちら。
→ハンプトン・ホーズ/オールナイト・セッションVol.1
→ハンプトン・ホーズ/ザ・トリオVol.2
→ハンプトン・ホーズ/フォア・リアル
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投稿者 Jazz Blogger T : 09:51
デューク・ピアソン/テンダー・フィーリンズ
2005年05月11日
Duke Pearson/ Tender Feelin's
今日はデューク・ピアソンのピアノ・トリオ盤『テンダー・フィーリンズ』です。定評ある人気盤として有名なアルバムなのですね。日本人好みの端整な佇まい、それにハイ・センス。パーソネルは、デューク・ピアソン(p)、ジーン・テイラー(b)、レックス・ハンフリーズ(ds)。1959年録音。BlueNote。
連休が明けて3日目、大型連休の名残もほぼ消失の感がありまして通常の日常に戻りつつありますね。皆様いかがお過ごしでしょうか。私めはありきたりの毎日の中にもiPodを通勤の供にするという真新しいアクセントを感じている日々ではあります。音楽だけでなく英語学習という大義名分が家族の手前にはありますものの、それもまた楽しからずやといったところでしょうか。
というわけで、本日はデューク・ピアソンさんにご登場願いました。そのピアノ・タッチが実によき具合でして、今宵、心疲れた水曜の夜などには格別に深奥に響き渡るというものですね。あっさりとしていながら痒いところに手が届きつつしっかりツボを押えているという、馴染みの古女房のようななごみの世界なのですよ。聞くほどにじんわりと奥深くに嵌ってしまっている自分がいるのですね。
本ブログでは以前にも初リーダー作のやはりトリオ作品『プロフィ-ル』を同様に好意的にご紹介しています。本作はほぼ同時期の同一メンバーによる同様な雰囲気のセッションに仕上がっていまして、安定したピアソンの魅惑的なピアノを堪能することができます。大好きな曲「グリーン・ドルフィン・ストリート」の淡白な味わいが実に素敵です。
1. Bluebird Of Happiness
2. I'm A Fool To Want You
3. I Love You
4. When Sunny Gets Blue
5. The Golden Striker
6. On Green Dolphin Street
7. 3 A.M.
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Duke Pearson/ Tender Feelin's
最近、実はiPodに特化した新サイトを立ち上げました。まだまだこれからですが、キーワードを選ぶとYahooやMSNでいきなり上位にランクされて我ながら驚いています。そのうち当ブログでも宣伝させてもらうことになるかと思います。
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投稿者 Jazz Blogger T : 09:52
ハービー・ハンコック/インヴェンションズ&ディメンジョンズ
2005年05月09日
Herbie Hancock/ Inventions and Dimensions
今日はハービー・ハンコックの登場です。ピアノ・トリオ・プラス・パーカッションというコンボでの『インヴェンションズ&ディメンジョンズ』。この中の「ミモザ」という曲が妙に気になるのですね。心地よいリズムと憑かれたような魅惑のメロディに今宵もジャズ世界に身を沈めるわが身がここに.....。パーソネルは、ハービー・ハンコック(p)、ポール・チェンバース(b)、ウィリー・ボボ(ds)、オズワルド・マルティネス(conga)。1964年10月録音。BlueNote。
私はこのアルバムを"Succotash"という全くジャケットの異なる輸入盤として購入したのでした。京都のピッコリーハウスという中古レコード屋です。20年少し前の学生時代です。なぜかよく覚えています。東山通りと叡山電鉄のチンチン電車とが交差するする踏切の南側にあったお店です。960円という値札シールがいまだについています。
私はしばらくの間このアルバムを名も無いアルバムと思っていたのですが、『インヴェンションズ&ディメンジョンズ』という名でメジャーに売られていることを知って愕然としたのでした。それだけでなく、名曲「ミモザ」を自分だけの大切なもののように感じていたことが錯覚であることを思い知らされたのでした。それによく聴きますと、「サコタッシュ」、「トライアングル」、「ア・ジャンプ・アヘッド」など他の曲もモード色があって実によい具合なのですね。
このアルバムの録音に全メンバーが事前の打ち合わせなく全くのぶっつけ本番で望んだとのことで、そういう主旨のアルバム製作だったようです。ウィーリー・ボボとポール・チェンバースという強者(ツワモノ)を相手に、さらにはオズワルド・マルティネスのコンガが独特の彩りを添えており、ピアノ・ジャズにしては奥行感のある不思議な世界が映し出されているように思われます。それに、ハンコックの自信に満ちたタッチやメロディック・センスがいつもながらのモーダルな新感覚とそこはかとない美意識を伴って発散されています。
全5曲。マイルス・グループで示されたハンコックの確かな存在感が感じられます。「ミモザ」での淡白な美を湛えたピアノ・タッチは何度聞いても忘れがたい印象をもたらしてくれますね。
1. Succotash
2. Triangle
3. Jack Rabbit
4. Mimosa
5. Jump Ahead
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投稿者 Jazz Blogger T : 09:53
ケニー・ドリュー&ニールス・ペデルセン/デュオ・ライブ・イン・コンサート
2005年05月07日
Kenny Drew&Niels Pedersen/ Duo Live in Concert
今日はケニー・ドリューとニールス・ペデルセンのデュオ・アルバムです。ニールズ・ペデルセンは先月4月に58才の若さで亡くなったとのことで、私にとってすぐに思い浮かんだのがこのアルバムというわけです。パーソネルは、ケニー・ドリュー(p)、ニールス・ペデルセン(b)。1974年6月8日、オランダ・ユトレヒトのHet Hochtでのライブ録音。
ペデルセンといいますと、ニールス・ヘニング・エルステッド・ペデルセンと呼ぶ方が私には馴染みがありますが、そのベース演奏は、通常、左手人差し指は中指を添えて押えるところを各指一本でギターを弾くように弾くことからピチカートの速弾きを可能として超絶技巧のテクニシャンと言われてきました。1946年デンマーク生れで、終生コペンハーゲンを拠点に活動しています。ケニー・ドリューとは70年代前半よりスティープル・チェイス・レーベルに続けざまにデュオやトリオ作品を発表しています。ちなみに、ケニー・ドリューは既に93年に亡くなっています。
この二人の残した作品として『デュオ』『デュオ2』『ダーク・ビューティ』など他にも有名なアルバムがありますが、ライブ盤である本作が最もよく聴きこんだ親しみのある作品となります。落ち着きがあって大人のジャズの醍醐味も感じ取るとることができますね。ドリューのピアノが力みの無い自然体な上、流石に流麗でピアニスティックな演奏をしています。ペデルセンは時に重いリズムを刻んで全体を引っ張り、時にメロディアスな演奏でアクセントをつけたりと、ベースとは思えない自在な演奏と高い音楽性を感じさせてくれます。
1. In Your Own Sweet Way
2. My Little Suede Shoes
3. You Don't Know What Love Is [#]
4. My Shining Hour
5. Viking's Blues
6. Oleo [#]
7. You Don't Know What It Means to Miss New Orleans [#]
8. Serenity
9. All Blues [#]
10. Trubbel
11. There's No Greater Love
12. Oleo
([#] 印はボーナストラック)
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投稿者 Jazz Blogger T : 09:54
ジャッキー・バイアード/ハイ・フライ
2005年05月01日
Jaki Byard/ Hi-Fly
今日はジャッキー・バイアードです。バイアードは60年前後から独特の音楽性でその鬼才ぶりを認められていた個人的にお好みのピアニスト。トリオでの代表作といえば本作です。パーソネルは、ジャッキー・バイアード(p)、ロン・カーター(b)、ピート・ラロッカ(ds)。1962年録音。
私にとってジャッキー・バイアードといえばミンガス・グループにおいてその独特のセンスで光彩を放ってきたとても気になるピアニストの一人です。そのバイアードがロン・カーターとピート・ラ・ロッカという当時気鋭のメンバーとともに残した62年録音のいぶし銀のようなピアノ・トリオ盤です。
その鬼才ぶりはたとえサイドメンであっても少し耳にすれば一目瞭然なほどに当時のバッパー達とは一線を画するものですが、本作はそうしたバイアードの個性と音楽性が全方向から全開しているという点で間違いなくバイアードの代表作の一つでしょう。
黒くてブルージーそれでいて極めてピアニスティックな演奏スタイル、それに新鮮な感覚のハーモニー、さらには意外性のある全体の組み立てなど、バイアードのピアノにはオンリーワンの個性が毅然たる風貌で直立しているのです。
例えば、「ラウンド・ミッドナイト」に聞かれる静かでブルーだけれど情念の発露を隠しようもない内的表現にはバイアードの持つ本質的な美学が結晶となって輝いているかのようです。また、カーリン・クローグとアーチー・シェップの名演が思い浮かぶキュートなメロディの名曲、「ハイ・フライ」ではバイアードのテーマ主題の扱いについての尖がった独特の感覚と共にメロディストとしてのリリカルな一面が垣間見えますね。
1. Hi-Fly
2. Tillie Butterball
3. Excerpts From "Yamecraw"
4. There Are Many Worlds
5. Here To Hear
6. Lullaby Of Birdland
7. 'Round Midnight
8. Blues In The Closet
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投稿者 Jazz Blogger T : 09:55
ビル・エヴァンス/シェリーズ・マン・ホールのビル・エヴァンス・トリオ
2005年04月19日
Bill Evans/ At Shelly's Manne Hole
今日はビル・エヴァンスですね。週の半ばはちょっと疲れ気味でして安易ながら敬愛するエヴァンスさんにご登場願いました。『シェリーズ・マン・ホール』、何気なく聴くにはもってこいの音よし演奏よし雰囲気よしの何拍子も揃った愛聴盤なのですね。パーソネルは、ビル・エヴァンス(p)、チャック・イスラエル(b)、ラリー・バンカー(ds)。1963年ハリウッド、シェリーズ・マン・ホールで録音。
ジャズを聴くときは大抵アルコールを入れながらとなりますが、ほんとリラックスしたいときはいつも聴いている定番を聴きくことになりますね。今日はそんな感じで逝かせてもらいます。逝くってちょっと語弊ありありですがまあちょっと洒落っ気です。いや酔っ気ですかな。私の場合、大体19時から20時くらいに帰宅いたしまして、夕食の際に晩酌としてビール大1本を消費した後、深夜にかけて少し濃いやつをロック数杯飲む慣わしになっております。ふふ、慣わしというほどのもんじゃ焼きではありませんが、まあそんな感じでここ数年過ごしておるというわけです。どんな感じって、そう週に1本くらい空けるペースでしょうか。
今週はそれが当りの週なのです。探求者である限りは常に当りはずれがあるのが宿命なのですが、バーボンのYellow Stone、これがなかなかのヒットということで今日は悦に入りつつエヴァンスを鳴らしながらもっと深みに嵌ろうという魂胆なのです。うまいお酒とジャズ、この組み合わせは生きていて良かった、という慰みの世界だと思うのですね。いろいろ試行錯誤してきました、苦節20年、ジャズ+アルコール遍歴の旅はこのバーボンとエヴァンスの組み合わせでひとつの頂点に達していると我ながら思うのであります。ちょい今だけの気分かもしれないという危惧は対象が何にしても私の場合に常にあるのですけれど。
神戸元町鯉川筋下山手通り少し下る、って京風の地名ですがな、その辺りに地元では有名な格安アルコール店があります。私が毎週のようにワイン、ウィスキー、バーボン、それに焼酎などをやたら購入しているお店どす。近隣のスナックやらの飲食屋さんがこぞって大量買いするような超お安いお店どすがな。そこで先週土曜、このケンタッキー・ストレイト・バーボンのYellowStoneを迷いに迷って1200円何がしかで入手したのでした。種類がたくさんありすぎて迷うのですね、それも楽しみではありますが。そのYellowStoneは色が赤みがかっていて樽熟成に余念がないことがわかっていましたので、直観的に口に触れる前から期待感で打ち震えていたのですね。
このYellowStoneというお酒は同名の国立公園で作られている伝統あるバーボンなのだそうです。まあバーボンといえばアメリカ独自のお酒でして、日本の日本酒同様に、上等なものほど酒飲みに鍛え上げられた上等の味がするのですね。本当か嘘かちょっと怪しいのですが、1200円プラスアルファとはいえ普通は倍の2400円するとのことで上等らしいのですね。私の場合、750mlで2000円を越えますとこれはたまに飲む上等ものという勝手な定義にしていまして、日々たしなむのは1000円台が多いのです。
これが芳香と甘い口当たりがクセになるような品のあるお酒なのですね。仕事しながらその舌触りを思い起こしては思わずにんまりしてしまうような、そして少しでも早くおうちに帰って飲みたいなと思わせるパワーがあるのですね。これはひょっとしなくてもほとんどアル中の世界かもしれませんが(笑)。
というわけで、ちょっと危機感を感じつつ、一方ではそんにゃことどうでもいいがなと開き直りつつ、ビル・エヴァンスの深い誘惑の罠に心地よく嵌っている自分がここにいるのです。タイム・マシンに乗ってハリウッドにあるシェリーズ・マン・ホールのライブ演奏に観客と一緒にエバンス・トリオの至芸に耳を傾けます。音が実に良いですから40年前という感覚が麻痺しています。これは現代21世紀のピアノ・トリオ演奏の音と遜色ないレベルだと思いますね。
スコット・ラファロとともに残した歴史的な録音よりもちょっと肩の力が抜けた感じがよいですね。聴く側としましても楽しめる余裕を少し与えてもらえますのでね。そのスキがないと芸術鑑賞という高尚なものになってしまうのですね。まあそれはそれでいいのですが、リラックス・ミュージックとしてはこれくらいのほどよい真摯さとエンターテイメント具合がよいと思うのですね。その意味でエヴァンスを気軽に楽しむには、中核部分の59~61年くらいを前後に少し外した57、58年、62~65年くらいが丁度よいかもと思う今日この頃なのでございます。枝雀師匠はとうにお亡くなりになっていますがな。
1. Isn't It Romantic
2. The Boy Next Door
3. Wonder Why
4. Swedish Pastry
5. Our Love Is Here To Stay
6. 'Round Midnight
7. Stella By Starlight
8. All The Things You Are - (bonus track)
9. Blues In "F"
BILL EVANS (p) CHUCK ISRAELS (b) LARRY BUNKER (ds). Recorded on May 30, 31, 1963.
iTunes Music Store では試聴可能です。→
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Bill Evans/ At Shelly's Manne Hole
関連エントリーはこちら。
→ アート・ファーマー『モダン・アート』(1958)
→ ビル・エヴァンス『エブリバディ・ディグス』(1958)
→ ビル・エヴァンス『オン・グリーン・ドルフィン・ストリート』(1959)
→ ビルエヴァンス『ポートレイト・イン・ジャズ』(1959)
→ キャノンボール・アダレイ『ノウ・ホワット・アイ・ミーン』(1961)
→ ビル・エヴァンス『エクスプロレイションズ』(1961)
→ ビル・エヴァンス『ムーン・ビームス』(1962)
→ デイブ・パイク『パイクス・ピーク』(1962)
→ ビル・エヴァンス『シェリーズ・マンホールのビル・エヴァンス』(1963)
→ スタン・ゲッツ『スタン・ゲッツ&ビル・エヴァンス』(1964)
→ モニカ・ゼタールンド『ワルツ・フォー・デビー』(1964)
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投稿者 Jazz Blogger T : 09:55
カール・パーキンス/イントロデューシング
2005年04月12日
Carl Perkins/ Introducing
今日はカール・パーキンスの傑作『イントロデューシング』です。若くしてこの世を去った西海岸の名ピアニスト。不自由だった左手のことを全く感じさせない圧倒的なスイング感と粒だった小気味よさは極上のピアノです。パーソネルは、カール・パーキンス(p)、ルロイ・ヴィネガー(b)、ローレンス・メイラブル(ds)。1955&56年録音。Dootone。
率直に言ってカール・パーキンスのピアノは実に素晴らしい。幼い頃に左手が不自由になって左はコードしか弾けないのですが独特の奏法を生み出して本当に素晴らしいピアノを奏でます。本作は初リーダー作。サイドメンとしてはクリフォード・ブラウン&マックス・ローチ・クインテットの『イン・コンサート』やアート・ペッパーの『ジ・アート・オブ・ペッパー』など多くの西海岸のアルバムに参加しています。惜しくも自動車事故で29才で夭逝。同姓同名の著名なロカビリー歌手がいますがその方とは別人です。
本作はピアノ・トリオの名作だと思いますね。西海岸にしては黒っぽいこってり感がほどよくあります。ハンプトン・ホーズに近いですが、粘りのあるグルーヴィー感は聴くほどにいい味わいが出てくるのですね。これはピアノ・ジャズを愛する方には絶対にお勧めできる内容です。「この渋いピアノいったい誰?」と聞かれてさりげなく「いいでしょ。カール・パーキンスっていう人なのさ。」と応じる得意満面な場面が脳裏に浮かんだりします^^;。
全12曲。どれも素敵な演奏です。決して飽きることのないお手頃感があります。若干カクテル風なところもありますが、エロール・ガーナーほどでもなくずっと真摯なジャズです。お勧めは、まず、11.Carl's Bluesです。これはピアニスティックで見事な演奏です。後半リズムに乗るところの感じが実にいいですね。2.You Don't Know What Love Isも同様な路線。5.Woody 'N Youはパウエルの名演がすぐ思い出だされますが、内容は最初ホーズ調のフニクラがちょっとあって後は渋いパーキンス節といった小気味よいジャズ・テイストがいい具合です。
1. Way 'Cross Town
2. You Don't Know What Love Is
3. Lady Is a Tramp
4. Marble Head
5. Woody 'N You
6. West Side AKA Mia
7. Just Friends
8. It Could Happen to You
9. Why Do I Care?
10. Lilacs in the Rain
11. Carl's Blues
12. West Side AKA Mia [Alternate Take]
iTunes Music Store では試聴可能です。→ Carl Perkins/ Introducing
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Carl Perkins/ Introducing
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投稿者 Jazz Blogger T : 09:57
ジョージ・シアリング/九月の雨
2005年04月09日
George Shearing/ September in the Rain
今日はジョージ・シアリング・クインテットです。洗練されたクール・ジャズの名作『九月の雨』。ピアノとヴィブラフォンとのユニゾンによる演奏には独特のエレガントな雰囲気があります。パーソネルは、ジョージ・シアリング(p,accord)、チャック・ウェイン(g)、ジョン・レヴィ(b)、デンジル・ベスト(ds)、マージョリー・ハイアムス(vib)。1949年、1950年録音。Verve。
ジョージ・シアリングのピアノ・クインテットの演奏を休日前の静まりかえった深夜にそっとBGM代わりに流したりしますと実によい雰囲気になって満たされた気分が広がりますね。何といいまますか、落ち着いた気品があるのですね。シアリングの音楽がナット・キング・コールやシナトラと同様にジャズ・ファンだけでなく一般の音楽ファンにも高い人気があることになるほどとうなずけるのですよね。
ジョージ・シアリングは1919年ロンドン生まれ。生来の盲目です。47年に米国に渡り、49年にピアノ、ヴァイブ、ギター、ベース、ドラムスの編成の定番コンボをスタートさせます。ブロックコードを用いたプレイと室内楽的な演奏によってアメリカで大衆的な人気を得ることになります。作曲家としても、「バードランドの子守歌」や「コンセプション」など有名曲を作っています。70年代以降も活躍をしておりクインテットでなくピアノトリオや歌手との共演など多くのアルバムを残しています。
本作は全25曲。49年から50年にかけての音源を編集したベスト盤です。いずれも3分くらいまでの短い演奏です。シアリングはピアノ以外にもアコーディオンを演奏しています。ブロック・コードとはトップノートのオクターブ下に同じラインを入れて使うのですが、シアリングの場合には左手のメロディーをレガートで弾くのがコツになっているとのこと。
1.SEPTEMBER IN THE RAIN
2.GOOD TO THE LAST BOP
3.BOP, LOOK AND LISTEN
4.I DIDN'T KNOW WHAT TIME IT WAS
5.THE CONTINENTAL
6.NOTHING BUT DENZIL BEST
7.EAST OF THE SUN
8.IN A CHINESE GARDEN
9.IN A CHINESE GARDEN
10.CONCEPTION
11.I'LL REMEMBER APRIL
12.LITTLE WHITE LIES
13.CARNEGIE HORIZONS
14.JUMPIN' WITH SYMPHONY SID
15.NOVEMBER SEASCAPE
16.HOW'S TRIX?
17.CHANGING WITH THE TIMES
18.STROLLIN'
19.WHEN YOUR LOVER HAS GONE
20.AS LONG AS THERE'S MUSIC
21.ROSES OF PICARDY
22.FOR YOU
23.MOVE
24.PICK YOURSELF UP
iTunes Music Store では試聴可能です。→ George Shearing/九月の雨
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投稿者 Jazz Blogger T : 09:58
セロニアス・モンク/アローン・イン・サンフランシスコ
2005年04月08日
Thelonious Monk/ Alone in San Francisco
今日はモンクのソロ・ピアノです。傑作『アローン・イン・サンフランシスコ』です。モンクの代表作を1枚だけ挙げるとすれば、私にとってはソロ演奏の名盤『サンフランシスコ』か『ヒムセルフ』になるのですね。そして、どちらかに決めよと言われれば本作が最高作かなと思うのですね。パーソネルは、セロニアス・モンク(p)。1959年サンフランシスコ録音。Riverside。
PCに向って時間に余裕があるときは好んでYahoo!ゲームの将棋をやることが多いです。見知らぬ方々とネット対局をするのですが、その際に例のソニーのイヤホンをつけて音楽を聞きながら対局しますと気のせいかもしれないですれど妙に好調なんですね。音楽は右脳を活性化させてくれますので、論理的な左脳に頼りがちな将棋においては左右の脳のバランスが取れて大局観や勘がうまく機能するのでは?なんて勝手に考えています。これって単に自分の中で音楽を聞きながらだと勝てるというジンクスみたいになっていて、その自信が良い結果に繋がっているだけなのかもしれません。
ちなみに棋力はレート1750くらいです。これはアマ2段クラスだと思います。私の場合できるだけ自分より上位の相手とするようにしていますので勝敗数だけでいいますと負け越しているのですが。少し上のレート、そう100くらい上の相手とやりますと効果的に強くなれるように思いますね。
いきなりなぜか将棋の話で始まりましたが、最近将棋をするときはモンクのピアノを聞くことが多くて、特にこの1ケ月くらいは本作『アローン・イン・サンフランシスコ』を好んで聞いているのですね。経験的にモンクを聞くと勝てるんです、いや勝ってるような気がするのですね。不思議な感覚のピアノが結構いい刺激になっていると思うのです。
さて、本作、録音がFugazi Hallというところで客はいないのですがライブで録られています。その音質がとてもよい具合です。ピアノの響きがナチュラルで、残響がしっくりきます。『ヒムセルフ』(57年)がモノーラルっぽくて重めなのと比べてかなりbetterになっていると思います。モンクのピアノには独立した単音がキーンと伸びたりする機会が多くて、結構にピアニスティックなところがあるのです。
全10曲プラス1曲。不協和音が少なくてモンクにしては妙に小綺麗にまとまっているように思います。お勧めは、第1に8. Rememberです。出だしの部分はまるでドビュッシーのようじゃあ~りませんか。それにしてもチャーリー・ミンガスでなくて、チャーリー・パーカーでもなくて、チャーリー・ハマーいやチャーリー浜は最近見かけなくなりましたね(また脱線かい?)。
モトイ、元井。昔私の通っていた高校の先生でしきりに「もとい!」とおっしゃる古典の先生がいらして、最初は「元井」君?そんなやつはこのクラスにはおらんはずやとか何のことだかわからなかったのですが、どうも「元に戻せ」と自分に言ってらっしゃるのですね。言い間違いをすぐに訂正する場合にまず「もとい!」と言って言い直すことを宣言してその後に正しいことを言うのです。妙に潔い響きが気になって、私もたまに使うことがあったりするのです。あ~長~。チャーリー浜からここまで引っ張るか?
というわけで何の話かわけわからんようになってきましたが、そうモンクのソロ・ピアノ、名作『サンフランシスコ』はいつもの不思議大好きの超のつく感覚が少しだけ芸術的な香りのする正統的なものを醸しているのです。7.Pannonicaから11.Reflectionsまでの5曲が実に素晴らしい。ピアニスティックな音感がまず美しく、そして音の構築美が最高に詩的です。8. Rememberや10. There's Danger In Your Eyes、それに11. Reflectionsでも途中から満足気なうなり声を上げていましてモンクが乗りに乗って演奏している感じがよくわかります。右脳を直撃してくれるモンクのピアノは私のよき味方なのです。
1. Blue Monk
2. Ruby My Dear
3. Round Lights
4. Everything Happens To Me
5. You Took The Words Right Out Of My Heart
6. Bluehawk
7. Pannonica
8. Remember
9. There's Danger In Your Eyes, Cherie - (take 2)
10. There's Danger In Your Eyes, Cherie - (take 1, bonus track)
11. Reflections
iTunes Music Store では試聴可能です。→ Thelonious Monk/ Alone in San Francisco
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Thelonious Monk/ Alone in San Francisco
関連エントリはこちら。
→セロニアス・モンク/プレイズ・デューク・エリントン
→セロニアス・モンク/セロニアス・ヒムセルフ
→セロニアス・モンク/ミステリオーソ
→セロニアス・モンク/ウィズ・ジョン・コルトレーン
→セロニアス・モンク/ストレート・ノーチェイサー
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投稿者 Jazz Blogger T : 09:59
デヴィッド・ヘイゼルタイン/不思議の国のアリス
2005年04月06日
David Hazeltine/ Alice In Wonderland
今日はヴィーナス・レコードからデヴィッド・ヘイゼルタインのピアノ・トリオで、『不思議の国のアリス』と行きましょう。エヴァンス・トリオを少し彷彿とさせてくれる高水準のトリオ演奏です。パーソネルは、デヴィッド・ヘイゼルタイン(p)、ジョージ・ムラツ(b)、ビリー・ドラモンド(ds)。Venus Record。2003年7月録音。
日本のレーベルであるヴィーナス・レコードのアルバムを最近かなり聴くようになりました。私のような単純な感覚派人間はまずもってそのきわめて良い音質にまんまと騙されてしまうわけです。そこそこの演奏レベルであればいとも簡単に名作の一丁上がりということになります。それでもいいものはいい!と自分が納得したものを厳選してご紹介するのが私めの役目と思っております。どうぞご安心あれ。
というわけで、今日のピアニスト、あまり聞き慣れない名前のヘイゼルタインさんです。ヘイゼルシュタインなら許せるけれどヘイゼルタインって音感ちょっと拍子抜けして変でないかい? まあ、そんなこたあどっちでもいいんです、そのピアノ自体がいい塩梅なのですから。一応、スイング・ジャーナル誌選定ゴールド・ディスク、私は最近これあまり当てにはしていないんですけどね。
ベースのジョージ・ムラーツさんがいつものごとくに盛んにメロディアスに歌います。今回は重めの録音で軽々しさは感じないんですが結構耳につきますね。ビル・エヴァンスの名演奏曲が何曲も入っていまして、ムラーツさんはラファロのことをイメージさせてくれますね。インタープレイという点では満足なレベルだと思います。ライナーの寺島氏がドラムのビリー・ドラモンドのシンバルのことをしきりに褒め称えていらっしゃいます。私にはその違いがわかるほどまだ年季が足りませんが。それと、氏によるとこのドラモンドさんの奥方はあの実力派美形ピアニストのリニー・ロスネスなんだそうで。それはまあいいんですが気になるのは氏がロスネスのことを超のつく美形と書いてらっしゃることですね。ジャケットでしか知らないんですよね、残念。参考MyFavorites→リニー・ロスネス『レター・トゥ・ビル・エヴァンス』
全9曲。納得のピアノ・トリオ演奏です。ヘイゼルタインのピアノは特徴は乏しいかもしれませんが、十分に心地よくスイングしていますし、ソロでのメロディック・ラインはエヴァンスライクでとてもよい具合だと思います。それにベースとドラムがピアノと対等に活躍していまして、いかにも現代のピアノ・トリオ演奏ですよという感じが伝わってきます。お勧めは、「3.不思議の国のアリス」、「5.星に願いを」、「9.テンダリー」などでしょうか、どの曲も高水準の出来です。
1. ビューティフル・ラブ
Beautiful Love 《V. Young, W. King, Van Alstyne 》( 4 : 43 )
2. スイート&ラブリー
Sweet & Lovely《G. Arnheim, H. Tobias, J. Lemare 》( 6 : 13 )
3. 不思議の国のアリス
Alice In Wonderland《S. Fain 》( 7 : 06 )
4. 枯葉
Autumn Leaves《J. Kosma 》( 5 : 45 )
5. 星に願いを
When You Wish Upon A Star《L. Harline 》( 7 : 20 )
6. フォー・ビル
For Bill《D. Hazeltine 》( 5 : 47 )
7. 愛は海よりも深し
How Deep Is The Ocean《I. Verlin 》( 6 : 55 )
8. ダニー・ボーイ
Danny Boy《Trad 》( 4 : 47 )
9. テンダリー
Tenderly《W. Gross 》( 7 : 18 )
Venus Recordのホームページでは試聴可能でしかも寺島氏のライナーも読めます(上から4枚目)。→ David Hazeltine/ Alice In Wonderland
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ David Hazeltine/ Alice In Wonderland
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投稿者 Jazz Blogger T : 10:00
ビル・チャーラップ/ス・ワンダフル
2005年03月22日
Bill Charlap/ 'S Wonderfull
今日はビル・チャーラップのピアノ・トリオ演奏で『ス・ワンダフル』。歌心のあるピアニスト、ビル・チャーラップはニューヨーク・トリオを率いる気鋭のジャズマンとして今やvenusレコードの顔になりつつあります。パーソネルは、ビル・チャーラップ(p)、ピーター・ワシントン(b)、ケニー・ワシントン(ds)。1998年NY録音。
ご存知の通りニューヨーク・トリオは安心して聞ける高水準のトリオですね。このブログでも今年になって2本、『過ぎし夏の日』(2002年)、『星へのきざはし』(2004年)をご紹介しています。本作はニューヨーク・トリオとして売り出す少し前の作品ですが、さすがにそのオーソドックスで上質な品のある芳香を醸すピアノ演奏には完全に脱帽です。
このCDには寺島靖国氏の解説が付いていまして、ビル・チャーラップに対する敬愛の念を感じてうれしくなってくるのです。少しだけ引用させていただきますと、例えば、
「ビル・チャーラップのピアノ、皆さんはどのようにお聴きになったであろうか。一瞬めざましい特徴のないピアノである。オーソドックスである。しかし私に言わせればオーソドックスがすごくハイ・レベルのところで到達したピアノなのである。従ってモンクであるとかエバンスであるとか、そういうスタイル上の特色を見出そうとして耳をとがらせてもあまり意味がない。たくさんの人から採取したのが、ビル・チャーラップのスタイルであり、その上に立って彼はスタイル以上のものを表現しようとしているのだ。それは追々述べてゆくことにしよう。」
なんていうくだりがありまして、実に的を得た指摘であると感心します。多数の著作にも見られる氏の明快な直球の論調は核心的であり大変に参考になるのですね。それに、
「ビル・チャーラップという人はそうした人なのである。なにしろ彼には歌がある。歌の心が身体の中を溢れている。針でちょっと彼の皮膚に穴をあければすぐさま5~6曲飛び出してくるだろう。歌が彼のジャズの中心部になっているから難解になりようがないのだ。」
なんてのもなるほどと唸ってしまいますね。
全10曲。実に素晴らしい。音もよい、演奏もよい、選曲もよい、とよいことづくめです。エリントンの『極東組曲』に収められているビリー・ストレイホーンの名曲「イスファハン」などが入っていて少しビックリですがその品格は流石です。チャーラップの特徴をあえて挙げるとすれば6や7などのミディアム曲に聞かれる弾けるようなスインギーでピアニスティックな演奏、これはやはり素敵ですな。旬を感じます。すがすがしい演奏の9.Summer Serenadeなどもベニー・カーターのあまり取り上げられない曲です。ほんと歌を知り尽くした渋い選曲です。
1. Time After Time
2. My Shining Hour
3. Blue Room
4. Boy! What Love Has Done to Me!
5. Isfahan
6. Lover
7. Something to Live For
8. 'S Wonderful
9. Summer Serenade
10. Only the Lonely
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Bill Charlap/ 'S Wonderfull
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投稿者 Jazz Blogger T : 10:02
リニー・ロスネス/レター・トゥ・ビル・エヴァンス
2005年03月16日
Renee Rosnes/ レター・トゥ・ビル・エヴァンス
今日は女流ピアニスト、リニー・ロスネスの登場です。ロスネスはアイルランド人の父とインド人の母の間にカナダで生まれたリリカルなピアノで定評のある現代を代表するピアニストの一人です。パーソネルは、リニー・ロスネス(p)、ビリー・ドラモンド(b)、レイ・ドラモンド(ds)。2000年録音。
うーん、この粘り気のあるフレージングがいいですね~。エヴァンスの後にエヴァンス系とひとくくりにされて呼ばれたピアニスト達が多勢いますが、この粘り気はなかなか真似できないんですよね。エヴァンスが猫背にしてピアノにへばりつくように"うらめしや~"の格好で弾くピアノには独特の美学があるわけですが、その一つがこの音の連なりの糸を引くような異様とも思える粘着質な響きだと思うのです。そして、この洗練された粘着タッチを生来持ち合わせているピアニストはそうそういない、そうこのリニー・ロスネスとデニーザイトリンくらいかなと思うのでございます。勿論、他の要素が一定の水準を満たしているという前提ではあります。
リニー・ロスネスのピアノには味があります。"コク"があります。このコクこそエヴァンスが示してみせた特有の粘りっ気です。コープや生協の納豆でなくてわらに包まれた水戸納豆の粘着ぐあいです。絡み付いて容易には拭いとれないしつこい類ですね。しかも臭いが残るような。実は私こういうのが大好きなんです。さそり座生まれというのがどこまで関係しているのか知らないですし、あまり信じてはいませんが、執念深い、情念、といった臭いを不思議と敏感に我が体臭のように身近にかつ好ましく感じ取れるのですね。
というわけで、美形女流ピアニスト、リニー・ロスネスがビル・エヴァンスへの手紙と題して作ったピアノ・トリオ・アルバム、これはとてもいい感じなのです。決して"カワイコちゃん"を売りにしてはいません。音だけで勝負できる、明らかに最高水準の実力派ピアニストです。エヴァンス好きには納得の内容です。全9曲。エヴァンスの初期のバラッドの名演をロスネス風に分かりやすくリリカルに示しています。今晩はこのロスネスと二人してインドとアイルランドへ旅をするそんな夢を見そうだな(笑)。
1. あなたと夜と音楽と
2. マイ・ロマンス
3. パ・ドゥ・トロワ
4. トゥ・ヤング・トゥ・ゴー・ステディ
5. エミリー
6. アイ・ヒア・ア・ラプソディ
7. ハウンテッド・ハート
8. ハウ・マイ・ハート・シングス
9. 帰ってくれたら嬉しいわ
J-Waveでは試聴可能です。→リニー・ロスネス/レター・トゥ・ビル・エヴァンス
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投稿者 Jazz Blogger T : 10:03
ジュニア・マンス/ジュニア
2005年03月14日
Junior Mance/ Junior
今日はジュニア・マンスのピアノ・トリオの名作『ジュニア』です。小気味よくブルージーにスイングするピアノ・トリオ・ファン必携のおすすめアルバムです。パーソネルは、ジュニア・マンス(p)、レイ・ブラウン(b)、レックス・ハンフリーズ(ds)。1959年NY録音。Verveレコード。
ジュニア・マンスは1928年生まれで、ダイナ・ワシントンの歌伴(54-55年)、キャノンボール・アダレイのコンボ(56-57年)、ディジー・ガレスピーのコンボ(58-59年)などを経て60年に独立、61年にはダウン・ビート誌国際批評家投票新人ピアニストとして1位に選ばれている実力のあるジャズマンです。そのピアノ・スタイルはアート・テイタムやオスカー・ピーターソンらの流れを汲みながら、ブルースを得意とする小粋によくスイングする類です。
本作は名手レイ・ブラウンとの共演ということで快適なピアノ・トリオ作品に仕上がっています。とても渋い一枚です。何を聴こうかと迷ったときなどつい手が伸びるような、何気なく聞くにはもってこいのアルバムです。ベースとドラムが結構活躍しており、なかなかのインタープレイを繰り広げています。まあもちろんオーソドックスな演奏なのですけれど、典型的なピアノ・トリオの良さが凝集されているような一枚だと思うのですね。それにレイ・ブラウンのベースを堪能するアルバムという価値もあります。
全10曲。ブルースが中心です。あまり黒くはなくて十分に堪能できるお洒落な感じのブルースです。例えば、8のBirk's Worksなどのグルーヴィーな感覚はそうそう他では味わえないでしょう。それにスタンダード曲4.Love for Saleでの急速調でのスイング感や、5.Lilacks In The Rainでのリリカルなタッチも特筆できると思います。あと、1や2でのブルージーかつグルーヴィーな感触はほんとクセになります。
1. Smooth One
2. Miss Jackie's Delight
3. Whisper Not
4. Love For Sale
5. Lilacks In The Rain
6. Small Fry
7. Jubilation
8. Birk's Works
9. Blues For Beverlee
10. Junior's Tune
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投稿者 Jazz Blogger T : 10:05
エディ・コスタ/ザ・ハウス・オブ・ブルー・ライツ
2005年03月10日
Eddie Costa /The House of Blue Lights
今日は鬼才白人ピアニストのエディ・コスタです。31才でこの世を去ったコスタの傑作ピアノ・トリオ・アルバム『ザ・ハウス・オブ・ブルー・ライツ』。パーソネルは、エディ・コスタ(p)、ウェンデル・マーシャル(b)、ポール・モチアン(ds)。1959年録音。DOT Records。
エディ・コスタのことはこれまでにもサイドメンとして参加したアルバムの中でご紹介しています。シェリー・マン『2-3-4』やタル・ファーロウ『タル』です。スタジオ・ミュージシャンとして売れっ子になりますが、ジャズのレコード録音にはピアノよりもヴィブラフォン奏者としてにサイドで起用されることが多かったようです。57年にダウンビート誌でこの2部門で新人の部のポールウィナーを受賞。62年に自動車事故で31才で死亡。
そのピアノ演奏は大変に個性的でいつでもどこでもすぐに「エディ・コスタだ!」といいあてることができるほどに特徴的です。打楽器のような独特のタッチ・センス、濃厚なブルージー・フィーリング、ハード・ドライビングを支える小気味よい抜群のテクニック。これはヴィブラフォン演奏にも通じるものがあります。本作の『ザ・ハウス・オブ・ブルー・ライツ』はコスタの唯一のピアノ・トリオ作品です。コスタの代表作として名作の誉れ高く、ジャズ・ピアノ・ファンのコレクションに加えられるべき1枚としてお勧めのアルバムです。
全6曲。耳慣れない興味深い演奏ですが、ジャズ・フィーリングに満ち満ちていることがすぐにわかると思います。また、高音から低音までピアノを目一杯に鳴らします。特に低音側を多用することによって色合いが特徴付けられています。それに強烈なブル-スのセンス。名バラッドの2.MyFunnyValentineも濃ゆいブルースとして表現されており風変わりな解釈が独創的です。3.Dianeはペッパーの曲とは異なるようですがタッチ・センスの素晴らしさを感じとれる演奏が好ましく感じられます。
1. The House of Blue Lights
2. My Funny Valentine
3. Diane
4. Annabelle
5. When I Fall in Love
6. What's to Ya
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投稿者 Jazz Blogger T : 10:06
ビル・エヴァンス/ムーン・ビームス
2005年03月08日
Bill Evans /Moon Beams
今日はビル・エヴァンスのピアノ・トリオです。私の大の愛聴盤『ムーン・ビームス』。ジャケットは軟弱っぽく見えますが中味は極上のピアノ・トリオ演奏です。パーソネルは、ビル・エヴァンス(p)、チャック・イスラエル(b)、ポール・モチアン(ds)。1962年NY録音。Riverside。
名作『ワルツ・フォー・デビー』を最後に盟友スコット・ラファロを自動車事故で失ったエヴァンスはしばらくの間落ち込むことになりますが、約1年を経過した本作ではベースにチャック・イスラエルを迎えてようやく本来の本領を発揮しています。重心重く落ち着きのあるチャック・イスラエルの伴奏でエヴァンスのピアノは内省的で深みのある見事な演奏を展開しています。
実に素晴らしい。私はRiverside4部作と言われる『ポートレイト・イン・ジャズ』『エクスプロレイションズ』『サンデイ・アット・ザ・ビレッジ・ヴァンガード』『ワルツ・フォー・デビー』もよいと思いますが、『エブリバディ・ディグス』と本作『ムーン・ビームス』の2作も同等の名品だと私は考えています。4部作にはスコット・ラファロの参加で斬新なピアノ・トリオ演奏になっているのですが、あとの2作ではベースがあまり強く主張しない分だけバラッド演奏でのエヴァンスのピアノがしっとりとしたマイ・ペースで存分に独特のエヴァンス・テイストを醸し出していますね。アクが強くないという点で日常的に聴く機会としてはその2作が圧倒的に多いのですね。
特にこの『ムーン・ビームス』では全編スロー~ミディアムのバラードですので格別にエヴァンス・ハーモニーが100%開放されているといった感じです。全8曲、全体に甘口とはいうもののもう安心して身をゆだねることができます。どの曲も素敵な仕上がりです。特に、5.If You Could See Me Now などが好みで聴くたびに痺れてしまいますね。2.Polka Dots And Moonbeamsも後半の解釈が素晴らしい。7.In Love in Vainなどもガラスのように繊細な感覚にはため息が出るように唸らされますね。8.Very Earlyもキュートなメロディを限りなく美しく響かせています。あ~、参ります。やっぱエヴァンスは凄いですな。
ビル・エヴァンスをこれから聴くという方には4部作よりも本作をまず最初に試されることをお勧めしますよ。間違いなくピアノ・バラードの最高峰です。エヴァンスの魅力満載。鬱々とした神経くさいエヴァンス、繊細無比のエヴァンス、暗い虚ろな中にキラリと輝く閃光のエヴァンス、いずれもビル・エヴァンスの圧倒的な個性そのものです。エヴァンスの音楽は聴く側の心を映す鏡のようです。今日はエヴァンスのピアノにガラス細工の美を見出している自分がここにいます。
1. Re: Person I Knew
2. Polka Dots And Moonbeams
3. I Fall In Love Too Easily
4. Stairway To The Stars
5. If You Could See Me Now
6. It Might As Well Be Spring
7. In Love In Vain
8. Very Early
Bill Evans (p), Chuck Israels (b), Paul Motian (d). Recorded on May 17&29 and June 5, 1962.
iTunes Music Store では試聴可能です。→
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Bill Evans /Moon Beams
関連エントリーはこちら。
→ アート・ファーマー『モダン・アート』(1958)
→ ビル・エヴァンス『エブリバディ・ディグス』(1958)
→ ビル・エヴァンス『オン・グリーン・ドルフィン・ストリート』(1959)
→ ビルエヴァンス『ポートレイト・イン・ジャズ』(1959)
→ キャノンボール・アダレイ『ノウ・ホワット・アイ・ミーン』(1961)
→ ビル・エヴァンス『エクスプロレイションズ』(1961)
→ ビル・エヴァンス『ムーン・ビームス』(1962)
→ デイブ・パイク『パイクス・ピーク』(1962)
→ ビル・エヴァンス『シェリーズ・マンホールのビル・エヴァンス』(1963)
→ スタン・ゲッツ『スタン・ゲッツ&ビル・エヴァンス』(1964)
→ モニカ・ゼタールンド『ワルツ・フォー・デビー』(1964)
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投稿者 Jazz Blogger T : 10:07
ヨーロピアン・ジャズ・トリオ/哀愁のヨーロッパ
2005年03月07日
European Jazz Trio / Europa
今日はヨーロピアン・ジャズ・トリオがギタリストのジェシ・ヴァン・ルーラーをフィーチャーした哀愁3部作の最後を飾る人気アルバム『哀愁のヨーロッパ』です。パーソネルは、ジェシ・ヴァン・ルーラー(g)、マーク・ヴァン・ローン(p)、フランス・ホーヴァン(b)、ロイ・ダッカス(ds)。
1曲目標題曲はいきなりなつかしい曲、あのサンタナの名曲ですね。綺麗な曲ではありますが極めて俗っぽくなりがちで神経を使うことになると思います。ジェシ・ヴァン・ルーラーのギターはジャズ・センスよく無難にまとめています。続くマーク・ヴァン・ローンのピアノが登場しますともう安心して浸ることができます。さすがに卒のない粋なソロを展開しています。
2曲目はアントニオ・カルロス・ジョビンの名曲です。名前は違いますが中身は「白と黒のポートレイト」ですね。名作『エリス&トム』で聞けます。ここでのローンのピアノが粘りがあって繊細でとてもいい感じです。
7曲目は今でもやっているのか知りませんがFM番組「クロスオーヴァーイレブン」で流れてくるようなフュージョン系の響きです。ルーラーのギターが戻ってきて心地よい音空間が形作られています。これはまさにBGM音楽です。ローンのピアノもウィンダム・ヒルのようなおおらかなリズムと清澄感のある美しげな佇まいです。アルバム全体にまろやかな色合いの中でこの曲&演奏が最も好きですかね。
他の曲はいずれもポピュラーですし甘すぎてあまり言うべきことがないです。静かな喫茶店でBGMとして流れているような雰囲気です。よく聞けばジャズ・フィーリングが満ちていることがわかるのですが、そこは敢えて抑えてわかりやすくまとめておきましょうという制作側の意図を感じますね。残念ですけれど。
今日はジャケットの良さに魅かれてちょっとお気楽にまとめてみました。このジャケット、最近TVコマーシャルで新小学1年生が桜並木とともに出てくる松下のコマーシャルを見ていて思い出してしまいましたのです。
1. Europa
2. Zingaro
3. Maria (West Side Story)
4. Thank You For The Music
5. Concierto De Aranjuez
6. Both Sides Now
7. Phase Dance
8. Tell Him
9. Blackbird
10. Tears In heaven
11. I Say A Little Prayer
12. What A Wonderful World
詳しくはamazon.co.jpでどうぞ。→ European Jazz Trio / Europa
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投稿者 Jazz Blogger T : 10:08
ミッシェル・ルグラン/シェリーズ・マン・ホールのミシェル・ルグラン
2005年03月06日
Michel Legrand/ Michel Legrand at Shelly's Manne Hall
今日はミッシェル・ルグランのピアノ・トリオ・アルバムをご紹介しましょう。ルグランといえば映画音楽の名作を数多く作曲したフランスを代表する音楽家です。このアルバムはピアニストとしてルグランの1968年シェリー・マンのクラブ「シェリーズ・マン・ホール」でのライブ演奏を捉えたを貴重な録音です。パーソネルは、ミッシェル・ルグラン(p)、レイ・ブラウン(b)、シェリー・マン(ds)。1968年LA録音。
ミッシェル・ルグランの映画主題曲には、「シェルブールの雨傘」、「エヴァの匂い」、「華麗なる賭け」、「思い出の夏」、「ロシュフォールの恋人達」などとても美しくて印象的なメロディがありますね。若かりし頃はジャズにも相当にのめり込んでおり、『ルグラン・ジャズ』というマイルス、コルトレーン、ビル・エヴァンスといった面々を起用した名作アレンジ・アルバムを残しています。
本作はレイ・ブラウンとシェリー・マンをバックに本格的なピアノ・トリオにチャレンジした意欲的な作品です。ジャズ・ピアノが本業ではありませんので、スマートで流暢なソロは決して望めませんが、意外にも転がるピアノがそれなりにスイングしていて鑑賞に堪える内容になっています。それにやはり抜群の音楽的センスがそこはかとなく漂っていまして、通常のジャズでは聞けない新鮮で不思議な魅力を持っています。多分にレイ・ブラウンのベースがしきりに刺激を与えて鼓舞しているような節があります。
全8曲。ライブ演奏ですが聴衆のノリがとてもよくてルグランのピアノを暖かく見守っている雰囲気がとてもいいです。音質が素晴らしくよいのでライブの臨場感が直に伝わってきます。1曲目から特徴的な少しせわしなげなピアノが快調に飛ばします。4曲目のルグラン自作曲ウォッチ・ホワット・ハプンズが仏のエスプリを感じさせて私には特に好ましいですね。5曲目のマイ・ファニー・バレンタインではヨーロッピアンのスキャットをレイ・ブラウンを相手に披露していましてこれには思わず唸ってしまいます。続くピアノもなかなか味わいがあってなるほどという演奏です。全体にルグランという著名な作曲家のピアノ演奏家としてのセンスが露骨に示されているという点で貴重なものといえるとともに、1枚のジャズ・アルバムとしても結構に楽しめる内容に仕上がっていましてたまにはこういうのもいいかなと思いますね。
1. Grand Brown Man
2. Time for Love
3. Ray's Riff
4. Watch What Happens
5. My Funny Valentine
6. Another Blues
7. Willow Weep for Me
8. Gatos
amazon.comでは試聴可能です。→Michel Legrand at Shelly's Manne Hall
詳しくはamazon.co,jpでどうぞ。→Michel Legrand at Shelly's Manne Hall
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投稿者 Jazz Blogger T : 10:09
セロニアス・モンク/セロニアス・ヒムセルフ
2005年03月01日
Thelonious Monk / Thelonious Himself
今日はセロニアス・モンクのピアノ・ソロ『セロニアス・ヒムセルフ』です。モンクの芸術をダイレクトに味わうにはピアノ・ソロが最も適しています。本作はその典型的な対象として長く座右に置いておくべき1枚です。自らの感性の変化を測る座標軸となるような深く思索的なアルバムです。パーソネルは、1~7&9.セロニアス・モンク(p)。8のみジョン・コルトレーン(ts)、セロニアス・モンク(p)、ウィルバー・ウェア(b)。1957年NY録音。Reverside。
モンクのピアノは不思議です。拙い演奏でありながらもジャズ的なセンスは申し分のないものでして、ジャズの魅力を堪能するという意味では最右翼のアーティストかもしれません。やはり音楽は演奏テクニックがすべてでない、ということだと思います。あのボサノヴァの世界でも、ジョアン・ジルベルト、アストラッド・ジルベルト、アントニオ・カルロス・ジョビンらの歌はまさに素人っぽくて決して上手いと言えるものではありませんが、その音楽から得られる官能は十分すぎるほどに魅力的なのですね。
モンクのピアノ・ソロ、これぞ20世紀ポピュラー・ミュージックの究極の姿なのではないかと、ちょっと大げさに捉えたくなるほどに、私にとって、ある意味、深遠な高みの世界であり、ジャズの醍醐味を知らしめる象徴的な音楽なのです。
全9曲。いずれも凄みのあるモンクです。まさしく絵に描いたような天才そのものなのです。鋭敏な感覚なくしてこの種の音楽を構築することはできません。独創的で斬新無比です。9のボーナス・トラック、ラウンド・ミッドナイトは20分を越す演奏でして、テープを回し続けて途中に製作者のアナウンスが入ったりして録音風景を直に伝える内容になっています。
モンクのピアノは繰り返し聴くことです。繰り返し聴くほどに耳に馴染んできて、心地よさがにじみ出てくるのです。モンクの意図することがおぼろげながら見えてきてその美意識を少しでも共感することができた時、モンクの虜になると同時にジャズを少し理解している自分がそこにいることがわかるはずです。孤高の天才詩人モンクの表現に我々凡人はすぐに理解が及ばないのは当然のことなのですよ。ただその価値はジャズ・ジャイアンツの10人の一人に必ず入るほどにほぼ確定しているのです。歴史的にその位置が定まっているのです。
1. April In Paris
2. Ghost Of A Chance With You, (I Don't Stand) A
3. Functional
4. I'm Getting Sentimental Over You
5. I Should Care
6. 'Round Midnight
7. All Alone
8. Monk's Mood
9. 'Round Midnight - (in progress, bonus track)
iTunes Music Store では試聴可能です。→ Thelonious Himself
詳しくはamazon.co.jpでどうぞ。→ Thelonious Himself
関連エントリはこちら。
→セロニアス・モンク/プレイズ・デューク・エリントン
→セロニアス・モンク/アローン・イン・サンフランシスコ
→セロニアス・モンク/ミステリオーソ
→セロニアス・モンク/ウィズ・ジョン・コルトレーン
→セロニアス・モンク/ストレート・ノーチェイサー
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投稿者 Jazz Blogger T : 10:10
ウォルター・ビショップ・Jr/スピーク・ロウ
2005年02月27日
Walter Bishop Jr / Speak Low
今日はウォルター・ビショップ・Jrの定評ある名盤『スピーク・ロウ』です。ピアノ・トリオ好きの方にはお勧めのアルバムです。パーソネルは、ウォルター・ビショップ・Jr(p)、ジミー・ギャリソン(b)、G.T.ホーガン(ds)。1961年録音。Jazztime JT002。
ウォルター・ビショップ・Jr(1927~98)は40年代からパーカーらとのセッションに加わってきた生粋のバップ系ピアニストです。本作はビショップの代表的というだけでなく、数あるピアノ・トリオ作品の中でもとびきりの名作の一枚です。当時気鋭のジミー・ギャリソンの重いウォーキング・ベースの響きが新鮮です。
全6曲+3別テイクです。やはり、6.Speak Lowが素晴らしいですね。ギャリソンのベースがここでも曲調を支配していますが、ビショップの存分なハード・ドライビングには心地よいジャズ的な空間が醸成されています。この感覚はそう簡単に出会えない、わかりやすくて極上のジャズ・ダイナミズム。今日も繰り返し何度も聴いていますが、聴くたびに新たな発見があります。
それに大好きな3,Green Dolphin Street。これも最高にアーシーな仕上がりです。ビショップのソロには次々と新たなアイデアが無尽蔵に沸いてくくるようですね。この3と6にはいつもながら脱帽です。6の別テイクも素晴らしいです。ビショップの奥さんは日本人だったんですね。エルヴィン・ジョーンズの奥さんも日本人、こちらは有名です。
1.時には楽しく
2.ブルース・イン・ザ・クローゼット
3.グリーン・ドルフィン・ストリート
4.アローン・トゥゲザー
5.マイルストーンズ
6.スピーク・ロウ
7.時には楽しく(別テイク)
8.ブルース・イン・ザ・クローゼット(別テイク)
9.スピーク・ロウ(別テイク)
iTunes Music Store では試聴可能です。→ Walter Bishop Jr / Speak Low
詳しくはamazon.co.jpでどうぞ。→ Walter Bishop Jr / Speak Low
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投稿者 Jazz Blogger T : 10:12
ニューヨーク・トリオ/星へのきざはし
2005年02月22日
New York Trio / Stairway to the Stars
今日はニューヨーク・トリオの1月新譜『星へのきざはし』です。スイング・ジャーナル誌2004年10月号でニューヨーク・トリオで聴きたいベスト10を読者からのリクエストで募りレコーディングした1枚。現代ジャズ・ピアノの典型を示す音よし演奏よし選曲よしの3拍子揃ったお勧めの1枚です。パーソネルは、ビル・チャーラップ(p)、ジェイ・レオンハート(b)、 ビル・スチュアート(ds)。Venus Record。
ニューヨーク・トリオは先月にもその3作目『過ぎし夏の日』をご紹介したばかりですが、今日は先月発売になったトリオ4作目を先日購入しましてやはり期待通りよかったものですから早めに取り上げたというわけです。今やニューヨーク・トリオはエディ・ヒギンズと並んでVenus Recordで2枚看板にですね。もちろんこちらの方が現代ピアノ・ジャズのエッセンスが充満しています。今後も活躍する予感があります。それにしましてもVenusのジャケット、確かにそのセンスの良さを認めますが少し恣意的で胡散臭いというかワンパターンを感じますよ。
内容はほんと充実しています。ビル・チャーラップの小気味よいピアノが快感です。まず1曲目での玉が弾み転がるような右手の感覚が面白くて心地よくて脳髄に直接訴えてきます。そこへベースのレオンハートが重心重いながら自由に動き回り、スチュアートの軽快なブラッシュが巧みに絡んでくるという、これはピアノ・トリオの王道、もう病み付きになりますね。それにいつもながらVenusの音質の良さがその快楽を否が応にも助長してくれますね。
全10曲。流石にスタンダードが並びます。以前にご紹介したエディ・ヒギンズの『懐かしのストックホルム』も同様にSJ誌上(2002年11月号)での人気曲でしたね。選曲についてはどちらがどうということはありませんが、演奏としては本作の方が私には断然好ましいですね。やはりジャズ本来のスリルがこちらの方が勝っていますよ。
美しいメロディを限りなく美しくということで、スロー・テンポのバラッドはいずれも素敵な演奏ですね。特に10のステラ・バイ・スターライトでのチャーラップのアプローチが好きです。標題曲2なども素敵なとてもよい演奏です。ただ、チャーラップの良さを堪能するには、ミディアムの1,3,8あたりの方がbetterかなと私の好みですが思います。
1. Lover come back to me 恋人よ我に帰れ
2. Stairway to the Stars 星へのきざはし
3. Lullaby of the leaves 木の葉の子守歌
4. Smoke gets in your eys 煙が目にしみる
5. I'll be seeing you
6. Can't help loving dat man
7. Body and soul 身も心も
8. The man I love
9. A sleeping bee
10. Stella by starlight 星影のステラ
HMVでは試聴が可能です。→ ニューヨーク・トリオ/星へのきざはし
詳しくはamazon.co.jpでどうぞ。→ New York Trio / Stairway to the Stars
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投稿者 Jazz Blogger T : 10:12
ブラッド・メルドー/ソングス
2005年02月13日
Brad Mehldau / Songs, The Art of the Trio Vol.3
今日はブラッド・メルドーです。現代ジャズ・ピアノを担う逸材と評判の1970年生れの若手。最近のジャズに疎い私ですがこのメルドーはまさしく本物、本アルバムは素晴らしいの一語に尽きます。パーソネルは、ブラッド・メルドー(p)、ラリー・クレナディア(b)、ホルヘ・ロッシィ(ds)。1998年NY録音。
この音の間がいいですね。芳醇な芳香を感じさせるピアニストです。詩的なセンスが素晴らしい。抜群のテクニックを持っていてこれだけの抑制のきいたピアノが弾けるというのは極めて高い芸術的な感性を有しているということだと思います。凄く才能を感じます。ビル・エヴァンスのあの深海のような広がりのある世界に通じるものがあります。本人はエヴァンスの影響を否定しているようですが。
こんなに素敵なピアノにはなかなか出会えないです、きっと。ブルージーではない。ECM的な音です。ヨーロッパの文化的な深さや豊かさを感じさせます。スタンダード曲の3や7を聴いてみれば一目瞭然です。決して甘さに流されない知性があります。その美学と構築力には全く脱帽ですし、平伏しながらも共感します。
全10曲、オリジナル曲とスタンダードを取り混ぜてます。少しだけですが下のリンクで試聴が可能ですので、まだ、聞いたことが無くジャズ・ピアノがお好きな方がいらしたらこの機会に是非とも試聴されることをお勧めします。
1. Song-Song
2. Unrequited
3. Bewitched, Bothered and Bewildered
4. Exit Music (For A Film)
5. At A Loss
6. Convalescent
7. For All We Know
8. River Man
9. Young At Heart
10. Sehnsucht
iTunes Music Store では試聴可能です。→
ご購入はamazon.co.jpでどうぞ。→ ブラッド・メルドー/ソングス
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投稿者 Jazz Blogger T : 10:13
アーマッド・ジャマル/バット・ノット・フォー・ミー
2005年02月11日
Ahmad Jamal / But Not For Me
今日はアーマッド・ジャマルの代表作「バット・ノット・フォー・ミー」です。ジャズ・レコードとしては異例の大ヒットを飛ばした記念すべきアルバムです。パーソネルは、アーマッド・ジャマル(p)、イスラエル・クロスビー(b)、バーネル・フォーニア(ds)。1958年1月6日、シカゴ、パーシング・ラウンジにてライブ録音。Argo LP628。
去年の秋にこのブログでジャマルのアルバム「Ponciana Revisited」をご紹介しています。実のところ、アーマッド・ジャマルのピアノの素晴らしさに開眼したのがここ1~2年の最近のことなのです。この「But Not For Me」も先のアルバムがあまりによかったのでその後すぐに耳にしたものの一つです。それが前回のものにもまして実に心地よいジャズです。やはりジャマルのピアノは堪らなく素敵だなあと、このブログでも早々に2枚目を紹介することにしました。
前回のRevisitedに比べて少し寡黙な感じでしょうか。というより、本作が58年、前回が69年ですから少し饒舌になったということでしょうか。でも本質はあまり変わりません。通常の天才的なピアニストのように加齢によって平凡になってゆくというところがなくずっと同じ路線のスタイリスティックなピアノを維持しているようです。
バップの流れとして、チャーリー・パーカーやバド・パウエルらの鋭い急速長のインプロヴィゼーションこそがその特徴としてありましたが、ジャマルのピアノはセロニアス・モンクのように打楽器の要素と音の間が誘発する微妙な感覚を生かした、従来のバップとは異質な音楽的美学を映していました。
50年代後半マイルス・デイヴィスがジャマルのことを絶賛し、レッド・ガーランドにジャマルのように弾くように要請したことは有名なエピソードになっています。60年代前半のマイルスのモード奏法~音の間を最大限に活用した独特の雰囲気を持つあるジャズ~と一脈通じるものをすでにこの「But Not For Me」で感じとることができるようです。
ライブ録音ということですがいつもこういう演奏をしていたのでしょう全く平静な完璧かつくつろぎの感じられるジャズ・ピアノです。全8曲。音質も良いです。6.Poincanaは当時大衆的な人気を博した口当たりのよいカクテルのような魅惑ある演奏です。1、3、5、8あたりはミディアム・スローの演奏ですがジャズの魅力を存分に味わえるエンターテイメントな世界です。ハード・バップとは全く異なるものです。エロール・ガーナーに少し近い感触の、とにかくわかりやすくて楽しめるいい音楽です。
1. But Not for Me
2. Surrey With the Fringe on Top
3. Moonlight in Vermont
4. (Put Another Nickel In) Music! Music! Music!
5. No Greater Love
6. Poinciana
7. Woody 'N You
8. What's New?
iTunes Music Store では試聴可能です。→ Ahmad Jamal / But Not For Me
ご購入はamazon.co.jpでどうぞ。→ Ahmad Jamal / But Not For Me
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投稿者 Jazz Blogger T : 10:27