メイン・ページ > _Classic
【 カテゴリ _Classic 】 br>
エントリ名の一覧
【 カテゴリ _Classic 】 br>
エントリ内容の一覧
ジャン・イヴ・ティボーデ / Conversations With Bill Evans
2011年11月30日
Jean-Yves Thibaudet / Conversations With Bill Evans
一風変わったジャズ・ピアノ作品。フランスのクラシック・ピアニストであるジャン・イヴ・ティボーデがビル・エヴァンスの作品をソロで演奏した素敵なアルバムです。静かに流れるエヴァンス・ライクな演奏はとても印象深く、濃厚なジャズではなく、品のよいコンテンポラリーなピアノなのです。パーソネルは、ジャン・イヴ・ティボーデ(p)。1997年録音。
ジャン・イヴ・ティボーデ(1961〜)はラヴェルやサティら近代フランス作曲家のピアノ作品などで著名な中堅ピアニスト。テクニックがしっかりしており、音響に対するこだわりのあるクラシック・ピニアスト。クラシック以外にも関心が高く、ジャズでは本作品の他にデューク・エリントンやガーシュインの作品集があります。
このビル・エヴァンスとの会話と題した作品にはエヴァンスのレパートリーとしておなじみの著名なスタンダード曲が集められています。専門のアレンジャー4人によって編曲されたものをティボーデが譜面通りに演奏しているという形式のようです。ジャズ本来のインプロヴィゼーションは全くないと言ってよいですが、アレンジの中にその要素を組み込まれておりジャズ的なフィーリングもそこそこに楽しめることができます。
何と言ってもピアノの音色が美しく和音の響きが素晴らしいのですね。エヴァンスのピアノ・スタイルをかなり意識したアレンジになっており、和声の歌わせ方はエレガントを感じます。クラシックのピアニストが演奏するジャズはそれほど期待しない方がよいですが、本作品に関しては相当にいい線いっていると思います。それは編曲が十分にハイレベルなためであり、ジャズ・ファンに限らずピアノ作品が好きな人にとってはそれなりに楽しめる内容になっていると思います。
全12曲。どの曲にも上品さと洗練が感じられます。個人的には4曲目 Noelle's Theme が好きです。美しい響きと印象的な演出で、女性が好みそうな雰囲気のある美的な演奏です。6曲目Here's That Rainy Day もいいですね。10曲目 Peace Piece も素敵です。
1. Song For Helen
2. Waltz For Debby
3. Turn Out The Stars
4. Noelle's Theme
5. Reflections In D
6. Here's That Rainy Day
7. Hullo, Bolinas
8. Love Theme From 'Spartacus: Love Theme From 'Spartacus'
9. Since We Met
10. Peace Piece
11. Your Story
12. Lucky To Be Me
YouTubeからラヴェルの『鏡』から「道化師の朝の歌」をティボーデの2010年の演奏で。音がいいですし、ラヴェル作品の持つエスプリや香りがそこはかとなく表現された素敵な演奏ですね。音の響きが本日紹介したエヴァンス集と通じるものがあるのは決して偶然とは思えません。
VIDEO
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Jean-Yves Thibaudet / Conversations With Bill Evans
≪ 続きを隠す
投稿者 Jazz Blogger T : 21:41
エマニュエル・アックス/ハイドン・ピアノ協奏曲
2011年05月21日
Emanuel Ax / Haydn Piano Concertos
今日はハイドンのピアノ協奏曲集です。この素晴らしい音楽に出会ってからこの数週間毎日のように熱心に耳を傾けてきました。なぜこんなに素敵なのでしょう、今日はハイドン音楽の賛歌オンパレードになりそうです。パーソネルは、エマニュエル・アックス(p)、フランツ・リスト室内管弦楽団。1992年録音。
ハイドン(1732-1809)の楽曲が好きです。そのきっかけはピアノ協奏曲なのですね。ハイドンのピアノ協奏曲には3曲あり、これまで私はニ長調のみアルゲリチ、ルイサダ、キーシンらの演奏を聴いてよく知っていたのですが、今回、本作のエマニュエル・アックスの全3曲をすべて聴いていずれも素晴らしい音楽なのでハイドンへの興味が一気に広がったのでした。
ハイドンはよく知られるように多作の大家でしたので、交響曲、弦楽四重奏、各種協奏曲(ピアノ、ヴァイオリン、チェロ、フルートなど)などを量産していますね。ピアノ協奏曲は3曲だけであり、本アルバムに納められているものがすべてなのですが、モーツァルトのピアノ協奏曲を目の当たりにして創作意欲を失ったという説もあるようです。モーツァルトは早熟な天才であり夭折したためハイドンよりも24才も年下であったにもかかわらず、長生きしたハイドンと同時代を生き、逆にハイドンに多くの影響を与えていたようです。
ハイドンは様式的にはバロックの名残りが濃厚にありいくぶん古めかしいのですが、バッハやヴィヴァルディらが独特の魅力を失わないように、ハイドンにはハイドンの魅力があって、もっと多くのピアノ協奏曲を作曲してほしかったなあと残念に思われます。ピアノに限らず、ハイドンの協奏曲にはヴァイオリン、チェロ、フルートなどもあり、それぞれに輝く魅惑の優しいメロディと快活なオーラがあり、私にはどれもこれも魅力的に映るのです。いかにハイドンの音楽が自分にとって好ましいものであるかがよく分かるというものです。
私にとってのハイドン音楽の魅力は、美しくよく謳うメロディに加えて、端正な佇まいに落ち着きと調和のある世界。どこまでも優しく清らかな音楽。押し付けるところが無くあっさりと通り過ぎてゆくような音楽。決して暗くならず明るい太陽の輝きを感じさせ、一歩一歩天上の高みへと誘(いざな)ってくれる音楽なのです。決して陰鬱に沈み込むことを潔しとしない陽性の音楽。悲しみや嘆きは多少はあるにしても決して表面に出さず明るい前向きな響きを貫き通す大人な音楽。
日常のストレスや不条理に心が荒んでいる時にハイドンの音楽はそっと寄り添って優しく包み込んでくれることでしょう。孤独と誰かを希求する気持ちがあれば、それをさらに深め確かなものにしながら、どこかでそれを許してプラスの思考にしてくれるのではないでしょうか。モーツアルトの音楽が、一時、一般向けに、脳によいとか、リラックスするとか、そんなイメージで宣伝されていたけれど、ハイドンの音楽こそがまさにそんな音楽そのものでしょう。少なくとも私的にはぞう思われます。
とにもかくにも、休日前等のリラックスしたい夜に、一人の時間を享受すべくそんなハイドンを聴くという行為が私は大好きなのです。ハイドンに出会えて本当に幸せなのですね。著名で膨大な交響曲群、弦楽四重奏群はまだまだこれからですが、ピアノ、ヴァイオリン、チェロ、ホルンなどの各協奏曲が今の私の大のお気に入り音楽です。
バッハやベートーベンのような深刻な表情を、一瞬たりとも垣間見せないところが安心できてよいのです。私は音楽を聴くときは無意識についつい集中して聞いてしまうのですが、特にバッハは深奥に響き過ぎるのでちょっとしんどい音楽なのですね。よっぽど精神的に充実していないと聞けない音楽です。
アックスのハイドン演奏は丁寧かつ美音であることが実にいいです。ピアノ・ソナタでのアックスも美音で自然なフィ-リングが良かったですが、本作の協奏曲でもバランスとセンスの良さを感じずにおれません。3曲いずれにおいても、第1楽章でのきびきびと軽やかな雰囲気、第2楽章でのキュートで端正な佇まいがもう素敵過ぎるのですよ。深い闇もハイドンの音楽があればきっと救われるに違いないという確信、よくぞ出会えたという安堵感に満たされています。
1. ピアノ協奏曲ヘ長調: I. Allegro
2. 同: II. Largo cantabile
3. 同: III. Presto
4. ピアノ協奏曲ト長調: I. Allegro
5. 同: II. Adagio
6. 同: III. Rondo. Presto
7. ピアノ協奏曲ニ長調: I. Vivace
8. 同: II. Un poco Adagio
9. 同: III. Rondo all'Ungarese. Allegro assai
YouTubeからヴァイオリン協奏曲第1番の第2楽章から。ハイドンのデリケイトなメロデイック・センスがよく伝わってくる美しい曲です。こうした数々の名曲に次々触れることでハイドンへの信頼はますます厚くなるのでした。
VIDEO
アックスのピアノ協奏曲のCDについては詳しくはアマゾンでどうぞ。
→ Emanuel Ax / Haydn Piano Concertos
ハイドンのヴァイオリン協奏曲第1番はキーシンのピアノ協奏曲CDに入っていたのを偶然初めて聴いて感激したのが最初のきっかけです。詳しくはアマゾンでどうぞ。
→ キーシン / Haydn Piano Concerto in D
≪ 続きを隠す
投稿者 Jazz Blogger T : 23:17
マリア・ジョアン・ピリス/ショパン夜想曲集
2011年04月18日
Maria Joao Pires / Chopin The Nocturnes
今日はマリア・ジョアン・ピリスの弾くショパン夜想曲集です。マリア・ジョアン・ピリスはポルトガル出身で現代を代表するピアニストの一人。彼女の奏でるショパンはしっとりと情緒深く丁寧で細やか、その美音の連なりに心も身体も癒されます。パーソネルは、マリア・ジョアン・ピリス(p)。1995&96年録音。独グラモフォン。
ショパンの夜想曲は2番や5番、8番などが著名ですね。その夢見るようなメロディーにはうっとりさせられます。ピリスのピアノは本当に優しくゆったりとした語り口で限りなくロマンティックな世界に誘(いざな)ってくれます。そしてさらにそのピアノ音がまた堪らなくよい録音なのですが、私はピアノの音が一定レベル以上でないとダメなタイプであり、もっと言えば美音であれば点数が甘くなってしまうのかもしれません。
これまで、ショパンの夜想曲集では、ルービンシュタイン、アシュケナージ、フー・ツォン、クラウディオ・アラウ、マガロフ、フランソワ、ピリス、バレンボイムらの演奏を聴いてきましたが、その中ではピリス、アラウ、マガロフらの演奏が好みで、特にピリスとアラウの演奏が大好きです。ピリスは情念が入りすぎているというか、オーバー気味なその表現に食傷する向きもあるかもしれませんが、私の場合はこれくらいが丁度いい具合です。淡々とさらりと弾き流すことで、逆にその曲の持つ本来のロマンを引き出させるケースもあるのでしょうが、内省的な曲調のショパン夜想曲はある程度の感情移入がより好ましいように思われます。
マリア・ジョアン・ピリスさんは1944年ポルトガル出身の女流ピアニスト。本作で『レコード芸術』誌の1996年レコード・アカデミー大賞を受賞。女性らしい柔らかい感性としっとりしたセンスが日本人の私の心に沁み込みます。モーツアルトのソナタや協奏曲の演奏が名高く有名ですね。また、グールドやリヒテルらもそうですが、YAMAHAのピアノを弾く名手としても知られています。以下、YAMAHAのHPからの引用です。まさにその通りと同感できる文章であり、ピリスさんのピアノがなぜ素敵なのかが少し理解できます。
『ポルトガル出身のピアニスト、マリア・ジョアン・ピリスは、とても素朴で真摯で温かい心をもった人である。彼女は「音楽は神への奉仕」と考えている。それゆえ、作品に余分な解釈を付け加えたり、余計な装飾を加えることはいっさいしない。作曲家が意図したものをひたすら追求して楽譜を深く読み込み、自らのテクニックと表現力を磨き上げ、作品の内奥へと迫っていく。だからだろうか、ピリスの演奏はいつ聴いても心に深く響いてくる。神に奉仕しているピリスのかたわらで頭を垂れ、ひざまづき、全身全霊で音楽を聴き、また、祈りを捧げているような気分になるのである。そして終演後は、心が浄化したような思いを抱き、脳が活性化したような気分になる。』
(引用元はこちら→マリア・ジョアン・ピリスさん )
そんなピリスさんの演奏をYouTubeで探して見ましたらショパン夜想曲1番の映像がありましたのでここにアップしておきましょう。
本CDの詳しい情報はアマゾンでどうぞ。
→ Maria Joao Pires / Chopin The Nocturnes
≪ 続きを隠す
投稿者 Jazz Blogger T : 21:11
オレグ・ボシュニアコーヴィチ/ショパン:作品集2
2011年04月17日
Oleg Boshnyakovich / Chopin
今日は最近たまたま出会って衝撃を受けたクラシック・アルバムから。ショパンのピアノ曲集。DENONの『ロシア・ピアニズム名盤選』シリーズの中に、ボシュニアコーヴィチという聞き慣れないピアニストの作品が数枚あります。その中でも世評の高い本アルバムはその瑞々しいタッチと芳醇な香によって私を魅了してやみません。
最近、クラシック・ピアノを好んでいろいろたくさん聴いています。そのきっかけの一つが本作との出会いにあることは間違いありません。ボシュニアコーヴィチの奏でるショパンは、瑞々しく香ばしく、よく知る曲がとても新鮮に聞こえるのでした。繊細だけど力強く、一音一音が丁寧ながらとても流麗な感じがあります。素晴らしいとしかいいようがないですね。クラシック・ピアノ音楽の楽しみ方の一つに、きっと、自分が好ましいと思う曲の新たな演奏との出会いや発見というものがあるのでしょう。
また、本作の録音が私の好みにぴったり合っていることも一役かっているようです。ピアノ演奏の録音には本当にいろいろあって、時代やロケーションにもよるのでしょうが、最新技術を駆使していても好みの問題で賛否が別れますね。私の場合は、表現が難しいのですが、ピアノから少し物理的距離を置くとでも言うのでしょうか、俯瞰全体的な音響がよく感じ取れて、太いというより多少軽い目の音だけれど高音にしっかりとした艶や鮮明さが感じられるような録音がよいように思います。本作はまさにそんな録音です。
ボシュニアコーヴィチが本作で演奏する、舟歌、幻想ポロネーズ、バラード第4番らは実に素敵です。これらはいずれも数多くあるショパンの名曲の中でも指折りの名曲なだけに、他の著名演奏家の演奏を聞く機会も多々ありますが、ボシュニアコーヴィチの演奏はトップクラスに素敵なのではないでしょうか。ルービンシュタイン、リパッティ、ホロヴィッツ、フランソワ、ポリーニ、アシュケナージ、アルゲリッチ、ブーニン、ツィマーマン、キーシンなど著名人の演奏をいろいろ聴いてきましたが。あと、マズルカの演奏がまたいいですね。大のお気に入り曲、作品17-4がきわめて詩的に歌われます。作品24-4も青春を思い出させてくれる苦く優しい懐かしのメロディ。
『ロシア・ピアニズム名盤選』シリーズについては、すでに本ブログにおいて、ソフロニツキーとヴェデルニコフの二人の巨匠に触れています。ソ連時代に国外に知られる機会の少なかったロシアの巨匠ピアニスト達の演奏がこのシリーズで聞くことができます。共産支配が崩壊してから知られるようになりましたが、それ以前は西側に亡命するしかその演奏に触れることはできなかったのですね。ロシア・ピアニストにはホロヴィッツ、リヒテル、アシュケナージ、ブーニン、キーシンなど有名人が目白押しですね。ちなみに、ショパン生誕200周年に当る昨年2010年のショパン・コンクールでの優勝アヴデーエヴァもそうでしたし、入賞者10人中5人がロシア人ということでした。
本日のオレグ・ボシュニアコーヴィチ(Oleg Boshnyakovich,1920-2006)はネイガウスの弟子にあたり、ソフロニツキーやヴェデルニコフらとは同世代に当たります。ネイガウス、ソフロニツキー、ヴェデルニコフ、ボシュニアコーヴィチは現在でこそ名が知れ渡るようになりましたが、その実力はホロビッツら世界的な巨匠と同等レベルであったかと思われます。
1. 舟歌嬰ヘ長調 作品60
2. マズルカ イ短調 作品17の4
3. マズルカ 変イ長調 作品59の2
4. マズルカ 嬰ハ短調 作品50の3
5. マズルカ 変ロ短調 作品24の4
6. マズルカ 嬰ハ短調 作品30の4
7. マズルカ イ短調 作品68の2
8. ポロネーズ第1番嬰ハ短調 作品26の1
9. ポロネーズ第2番変ホ短調 作品26の2
10. 幻想ポロネーズ変イ長調 作品61
11. バラード第4番ヘ短調 作品52
ショパンの音楽が好きだということを人前で公言するのは男子としては少々憚れることではあります。少女趣味のようで軟弱な人と思われるかもしれないと危惧するからですが、それはまあクラシックにあまり縁のない人達に対してであって、ショパンの音楽をよく知るクラシックに詳しい人相手には特にそういう態度を取る必要がありません。実は私がジャズ音楽に開眼したのは丁度20才の時ですが、ショパンは中学生の頃から聞きはじめそれ以来ずっと魅了され続けてきました。
昔、FM-NHKで大音楽家の時代という番組があって、私が中学生の時にショパン特集が1年かけて放送されていました。それを毎週聞いて紹介される曲をエアチェック(テープレコーダーに録音)することで、有名曲だけでなく本当にたくさんのショパンのピアノ曲を知ると同時に多くの感激を味わうことができました。テープレコーダーなんてもう何十年も見たりしていませんが、その時の録音ボタンを押す感触やテープを巻き戻したりの操作を今でもはっきりと思い浮かべることができます。思えば、私の青春は、未知の音楽の美しさに少しでも多く触れたいという欲求にその一部が支配されていました。
今はiPodはじめ音楽を聞く環境が大変便利になりました。ソニーのウォークマンが出た頃は音楽を聞きながら野外を歩いたり電車に乗ったりすることが可能となり、見慣れた風景が音楽を伴うことで違って見えたり、いつも音楽が聞ける幸せ感に心底感激したことを思い出します。レコードやテープで音楽を聞き保存するという行為は今から思うと大変な作業と労力を伴うものでしたね。今ではPCやiPodで音楽を聞くのが当たり前なんですよね。
音楽美に対するどん欲さと情熱は、今もなお私の中に根付いて残っており、近頃は感激の頻度も深さも減じてはいますが、たまには想定外の発見があったりして、そういうことがやはり楽しみであるのです。今日ご紹介したアルバムはそんな発見の一枚だということです。好みのショパン曲をこんなにも素敵に弾くピアニストがいたとは、驚きと共に嬉しい悲鳴でした。また、自身のアンテナの力不足を痛感し、もっとどん欲に追求せねばという戒めを感じました。
本作品の詳細はアマゾンでどうぞ。
→ オレグ・ボシュニアコーヴィチ/ショパン:作品集2
関連エントリはこちらから。
→ ポリーニ/ショパン24の前奏曲
→ マルタ・アルゲリッチ/The LEGENDARY 1965 RECORDING
→ ルービンシュタイン/ショパン・マズルカ集
→ ソフロニツキー/スクリャービン・リサイタル
→ アナトリー・ヴェデルニコフ/ロシア・ピアニズム名盤選10
≪ 続きを隠す
投稿者 Jazz Blogger T : 23:10
エフゲニー・ザラフィアンツ・ピアノ・リサイタル
2011年03月27日
VIDEO Evgeny Zarafinants Piano Recital
今日、仙川アヴェニュー・ホールで、ロシア出身クロアチア在住のピアニスト、エフゲニー・ザラフィアンツ氏のリサイタルと公開レッスンを聞いてきました。強靭なパワーとしなやかでソフトなタッチで曲想を自在に操る素敵な演奏と、それに造詣深く示唆に富んだレッスン指導に感激した6時間でした。上の動画はYouTubeから2010年のショパン・ノクターンの映像です。同曲は本日のリサイタルでもアンコールで演奏されていました。
プログラムは、
① シューマン 「ユーモレスケ 変ロ長調Op20」
② 同 「蝶々 Op2」
③ ショパン ポロネーズ第2番Op26-2」
④ 同 「幻想曲 ヘ短調Op49」
⑤ 同 「幻想ポロネーズ 第7番変イ長調Op61」
の5曲でしたが、最初に被災者への追悼の意を込めて、
ショパン 「夜想曲 第20番嬰ハ短調遺作」
が演奏され、さらに、アンコールとして、以下2曲が演奏されました。
ショパン 「夜想曲 第11番ト短調Op37-1」
同 「夜想曲 第8番ニ長調Op27-2」
公開レッスンの方は、3名の受講者で以下の内容でした。
受講者①杉井夕起さん バッハ 平均律第1巻よりNo.8 プレリュード・フーガ
ベートーベン ピアノソナタ第18番第1,2楽章
受講者②安達朋博さん ショパン 舟歌 嬰ヘ長調Op60
受講者③中西明日香さん スクリャービン ピアノソナタ第4番 嬰ヘ長調Op30
エフゲニー・ザラフィアンツ氏は、1959年ロシア・ノヴォルシビルスク生まれ。1993年ポゴレレリッチ国際コンクール2位入賞。2006年ザグレブ国立音楽院講師就任し、現在クロアチア在住でドイツや日本で活躍中。CDはすでに19枚リリースし、国内「レコード芸術」誌の特選盤や英「グラモフォン」誌の月間ベスト10に選ばれるなど高く評価されている。オフィシャル・サイト http://www.zarafiants.com/
今回なぜリサイタルに参加したかと言いますと、実は最近ブラームスの間奏曲Op119-1がお気に入りでよく聴いているのですが、YouTubeでつい3日ほど前にザラフィアンツ氏の同曲の演奏を聞く機会があり、悪くないと感じると同時に週末に東京でリサイタルがあるという情報を得て、当日券でも参加できるとのことで行ってみたのでした。
ザラフィアンツ氏を身近に見た印象は体格のよい手の大きな人。強靭な音響と繊細なタッチを併せ持つ、ロシア人らしい素晴らしいピアニストだと感じました。私はロシア人のピアニストには一目置いておりますが、ザラフィアンツ氏も期待に違わずしっかりした基礎技術の上に情感をしっとりと指先に伝え表現できる才能ある方と思われます。小ホールに響き渡る氏のピアノの大音響が今も印象深く耳奥に残っているようです。
ピアノはFAZOLIという初めて聞くピアノでした。帰宅してからネットで調べて見ますと、イタリア人パオロ・ファツィオリ氏が1978年に工業製品と化した現代ピアノ製法の常識を覆すべく弦楽器の王「ストラディヴァリウス」と同じ木材を使うなど最高品質のピアノを製造しようと立ち上げたという、日本にまだ数台しかない優れものだったのでした。確かに高音域が艶というか独特の張りがあるのですね。ただ、コンクリート打ち放しの壁による音響のせいか、あるいはザラフィアンツ氏の打鍵が強すぎるのか、中音域が多少だぶつく感じがしたのは残念でした。このFAZOLIは、ショパン・コンクールの公式ピアノにも2010年に選定されたとのこと。また、ホール自体も音響学のノーベル賞と言われる「レイリー・メダル」(イギリス音響学会)を受賞された著名な建築家の橘秀樹氏の設計とのことでした。
プログラムはあっという間に終わりましたが、個人的にはショパンの④幻想曲と⑤幻想ポロネーズが力強さの中に繊細な感覚があって大変感動しました。加えて、公開レッスンでの指導に興趣を感じました。通訳がロシア音楽学者である一柳富美子さんという方で、造詣のある言葉が分かり易く日本語として伝わってくる大変によい通訳であったことが大きかったのでしょう。
公開レッスンの中にショパン舟歌とスクリャービンの第4番ソナタという、いずれも日常的に繰り返し聞いてきた大好きな曲があり、おかげでたっぷりと楽しむことができました。スクリャービンの音楽の持つ魅力、神秘性と恍惚感をいかに演奏でうまく引き出して表現するか、そのからくりがよく分かる内容になっていました。技術的なことだけでなく、作曲家の特徴や曲の持つ精神性とその解釈など、演奏の内面に深く掘り下げた洞察が感じられるものでした。ショパンやバッハ、ベートーベン、そしてスクリャービンのピアノ曲への理解が深まる良い機会にもなりました。
≪ 続きを隠す
投稿者 Jazz Blogger T : 22:20
イーヴォ・ポゴレリチ/ハイドン・ピアノ・ソナタ 46&19番
2010年08月22日
Ivo Pogorelich/Haydn Piano Sonata No.46 & 19
今夜は静かにクラシック・ピアノです。ハイドンのピアノ曲は明朗かつ清澄、アンビエント・ミュージックとして日常的に楽しんでいます。最近、本作のイーヴォ・ポゴレリチのピアノに興味を持って聴いています。その明晰なタッチ、透徹した美意識、尋常でない情念が際立っています。
ハイドンのピアノ音楽は軽やかで心地よい音楽。そっと流しておけば場が和むといいますか、品のある音環境が形作られます。聞き流すには持ってこいのアンビエントな音楽です。もちろん、じっくり聴けばそれなりに鑑賞にも堪えてくれますね。
ハイドンのピアノ曲にはバッハやベートーベンのような深い闇が感じられず、また、モーツアルトのような美辞麗句を並べた装飾過多でもなく、あくまで軽くシンプルかつ明朗で決して悩んで立ち止まることがないのです。どこか南欧地中海の光を感じさせてくれます。
そんなハイドンのピアノ曲をポゴレリチが弾くとどうなるのでしょう。クリアな音質と響きが生かされて鮮明な輪郭がくっきり明確。これは素晴らしいですね。同時に、1音1音が大事にされて深い精神性が宿っているように思われます。
ポゴレリチと言えば第1980年第10回ショパンコンクールにおいて22歳ながら尖った個性を発揮して聴衆や審査員アルゲリチの圧倒的な指示にも関わらず本選に進めず入賞を逃して話題になりました。当時の審査員によれば、楽譜通りに弾かないポゴレリチの演奏を認めるわけにいかないというようなことが要因であったようです。
ポゴレリチは今春来日して非常に個性的な演奏を披露して物議を醸していましたね。異常に演奏時間が長く、pppやfffなど極端なほど強弱を強調する演奏であったと。曲への思い入れが強く、曲の解釈が個性的なのでしょう。
ポゴレリチの演奏では本作のハイドンを最近よく聞いていますが、他に、ショパン、バッハ、スカルラッティ、モーツアルト、ブラームス、ラベルなども少しは聞いています。自分的には、ハイドン、バッハ、スカルラッティが好みになります。あっさりした曲を明瞭に大切に弾かれたものがいいように思われます。個性的でありすぎると好みが別れます。個性の出にくい音楽で個性が少し感じられるくらいが自分的にはちょうどよいようです。
ポゴレリチの演奏は壷にはまると実に素晴らしいのですが、その例として下の画像をアップさせていただきました。スクリャービンのおなじみの曲が3曲演奏されています。この演奏を初めて見たのは1年くらい前のことですが、そのあまりの美しい演奏にショックを受けました。特に詩曲作品32-1の官能的な響きと同作品32-2の明瞭な輪郭と音響の素晴らしさにはポゴレリチの際立った美意識を感じずにおれません。
詳しくはアマゾンでどうぞ。試聴も可。→ Ivo Pogorelich/Haydn Piano Sonata No.46 & 19
関連エントリはこちら。→ マルタ・アルゲリッチ/ハイドン・ピアノ協奏曲ニ長調
≪ 続きを隠す
投稿者 Jazz Blogger T : 10:37
ルービンシュタイン/ショパン・マズルカ集
2008年10月17日
ルービンシュタイン/ショパン・マズルカ集
今日はクラシックからショパンのマズルカを聞いています。ショパンのピアノ曲には綺麗なものが多く日常的に聞く機会も多いですね。その中でマズルカはショパンの故国ポーランドの民族的な舞曲で、ショパンらしい独特の世界が魅力ですね。アルトゥール・ルービンシュタインのマズルカ演奏はオーソドックスで好きです。
中学生の頃からショパンは大好きでした。夜想曲、ワルツ、練習曲、バラード、前奏曲、マズルカ、ポロネーズなどのジャンルがあって、本当に素敵な曲がたくさんありますね。私にとって数あるショパンのピアノ音楽の中で特に好きな曲を挙げるとすれば、それはマズルカ13番イ短調作品17-4と前奏曲4番ホ短調作品28-4の2つです。いずれも物悲しい旋律の中に限りない美がひっそりと息づいているそんな感じの曲なのです。
ショパンの音楽の中でマズルカは特別なものですね。ポーランドの独特のリズムのワルツ総称。クヤーヴィヤク、 マズル、オベレクと分類されて順にテンポが速くなってゆきます。13番イ短調作品17-4は不思議な和音で始まり不思議な和音で終わるとても印象的な曲調の典型的なクヤーヴィヤクです。酔っ払いのユダヤ人の嘆きと金持ちの結婚式の行列を描いたという説があるそうです。
マズルカ13番イ短調に初めて出会ったのは高校1年くらいの時でした。FM-NHK『大作曲家の時間』という休日の午前にやっている番組があって、その年は半年以上に渡って毎週ショパンを1時間特集しているのでした。毎週聞いて紹介される曲をせっせと自分のテープレコーダーに録音しておりました。間違いなくルービンシュタインの演奏だと思うのですが、13番作品17-4を初めて聞いて感激してそれ以来ずっと心に残っています。その番組では多くの曲、しかも決定的な名演奏を紹介していてとても印象に残っています。
レコードで買ったのは大学に入ってからです。第1集と第2集に分かれていて私は第1集のみを持っています。ピアニストのアルトゥール・ルービンシュタインは大変に著名なロシアの巨人ですが、15歳下のホロヴィッツの活躍に刺激を受けて50歳近くになって研鑽を積んだとのことで、本録音はそのすぐ後のものだそうです。私はルービンシュタインのノクターン集もたまに聞きますがやはり円熟味のある好ましい演奏です。24歳年下の妻とともに幸せな家庭人であったとのこと。
あと、このマズルカ13番イ短調は映画『戦場のピアニスト』でも使われていましたね。あまり一般には聞かない曲なので映画の中で突然に出会って驚きつつも嬉しく思いました。曲調があまりに暗すぎるのですね。でも私にとってはショパンのマズルカといえばこの曲なのです。
思い入れのある13番イ短調作品17-4のことばかり書いてしまいましたが、その他にも魅力的な曲がもちろん多くあります。5番変ロ長調作品7-1、17番変ロ短調作品24-4、25番ロ短調作品33-4などは愛らしいメロディで誰しも一度は聞いたことのある著名な曲ですね。
iTunes Music Store では試聴も購入(ダウンロード)も可能です。
ルービンシュタイン/ショパン・マズルカ集 →
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ ルービンシュタイン/ショパン・マズルカ集
≪ 続きを隠す
投稿者 Jazz Blogger T : 17:12
マルタ・アルゲリッチ/ハイドン・ピアノ協奏曲ニ長調
2008年10月06日
マルタ・アルゲリッチ/ハイドン・ピアノ協奏曲ニ長調
今日はここ数年来お気に入りのピアノ協奏曲をご紹介しましょう。ハイドンのピアノ協奏曲11番ニ長調。淡白で透明な限りなく美しい音楽。アルゲリッチのピアノは天上の音楽のように至高の高みを示しています。マルタ・アルゲリッチ(p)、イェルク・フェルバー指揮ハイルブロン・ヴュルテンベルク室内管弦楽団、1993年1月ルートヴィヒスブルク録音。
ピアノ協奏曲といえばやはりモーツァルトが真っ先に来るのですが、ベートーベンはじめシューマン、チャイコフスキー、グリーク、ショパン、ラフマニノフらの有名なものが来て、さらにこのハイドンの本作が別格の存在として私の中にはあります。
ハイドンの交響曲はあまり聞く機会がありませんが、ピアノ・ソナタと本作の協奏曲は好みになります。あっさり淡白な味わいなんです。じっくり聞き込まないとなかなかその良さが分らない薄味なのですね。でもその微妙な味覚が時に異様に鋭敏にキラ星のごとく光輝いてくることがあるものなのです。
第1楽章は軽やかな弦による主題の提示から始まります。陽光ふりそそぐ素敵な朝のイメージです。さあ今日も元気な一日のスタート。ピアノが同じメロディを奏して巧みな変奏を繰り返しながら弦楽器と一体となりながら調和ある音楽へと昇華してゆきます。
第2楽章は落ち着いた雰囲気で気品のあるメロディの主題が弦楽器により紹介され、引き続いてピアノによる同メロディのより詳しい記述。優しくて麗しく端正な曲想です。弦との会話を交換しつつ印象的な主題メロディが次々に修飾されながら展開されてゆきます。後半ピアノによる美しいカデンツァで高みに達してあるプラトーを迎えます。その美の佇まいが極めて静かで透明で清澄なのです。
第3楽章はハイドンらしい愛嬌のある主題が足早に走り去ってゆきます。気が付けばいつのまにか終っています。
モーツァルトも結構に淡白で白身魚で言えば鯛や平目などの高級魚なのでしょうが、こちらハイドンはもっと淡白な味わいでカレイやタラのように微妙に脂が旨い繊細な感じ。心静かにひっそりと一人で味わいたい音楽です。
アルゲリッチのピアノにこんなに繊細な表現力があったとは意外でした。このハイドンの協奏曲をアルゲリッチは1980年にも録音しており、私はまだ聞いていませんがそちらも定評があるようですね。また、本CDに含まれるショクタコーヴィチのピアノ協奏曲についてはコメントを差し控えます。
1.ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲 第1番 ハ短調 作品35
第1楽章:Allegro moderato-Allegro(6:03)
2.第2楽章:Lento-Largo-attacca:(8:21)
3.第3楽章:Moderato-attacca:(1:41)
4.第4楽章:Allegro con brio-Presto-Allegretto poco moder(6:39)
5.ハイドン:ピアノ協奏曲 ニ長調 HOB.XVIII:11
第1楽章:Vivace(7:26)
6.第2楽章:Un poco Adagio(7:20)
7.第3楽章:Rondo all’Ungarese.Allegro assai(4:02)
iTunes Music Store では試聴可能です。→
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ マルタ・アルゲリッチ/ハイドン・ピアノ協奏曲ニ長調
≪ 続きを隠す
投稿者 Jazz Blogger T : 22:12
クララ・ハスキル/モーツァルト・ピアノ協奏曲23番
2008年10月02日
クララ・ハスキル/モーツァルト・ピアノ協奏曲23番
今日はモーツァルトのピアノ協奏曲23番イ長調K488です。クララ・ハスキルがウィーン・フィルと共演する20番と23番がカップリングされたフィリップスのレコードは学生時代からの愛聴盤。CDでの発売はないようですので、23番のみ収録された本CDを掲げています。クララ・ハスキル(p)、パウル・ザッヒャー指揮ウィーン交響楽団、1954年10月録音、Philips。
モーツァルトはたまに思い出したように聞きますが、ピアノ協奏曲が一番のお好みです。最近はピアノ・ソナタも聞くようになりました。モーツァルトのその淡白な味わいはジャズなどの饒舌で複雑な音楽に辟易したときに聞くと一種の清涼剤のように心と身体にすっと入り込んできて不要なものを洗い流してくれるかのようです。
よく聞くのは23番、20番、19番、13番、27番、26番、21番など。モーツァルトのピアノ協奏曲はいずれも3つの楽章からなり、荘重で華麗な第1楽章、優しく美しい第2楽章、軽やかで溌剌たる第3楽章。ポピュラーになるくらいにメロディが印象的な第2楽章がやはり分りやすく魅力的ですね。
好んで聞く演奏はクララ・ハスキルのものが中心です。ハスキルの演奏はまろやかでしなやか、モーツァルトの微妙な陰翳や明朗さをシンプルかつ詩的に表現してくれます。録音が古いので音質がいま一歩という難がありますが、それを余すに足る興趣があると思うのですね。
この23番イ長調は魅惑のメロディが満載の分りやすい音楽です。第1楽章アレグロの主題はモーツァルトらしい生命力と快活さを感じさせる素敵なメロディ。ピアノによって次々にいろいろな変奏が施されて高みに登ってゆく感覚が素晴らしい。ジャズの優れたインプロヴィゼーションを聞いているようです。
第2楽章アダージョは第1楽章とは対照的に憂いに満ちた物悲しい主題メロディ。それがまた映画音楽のようにとても印象深いものです。ちょっと俗っぽい感じは否めないけれど、馴染みやすくて繰り返し聞きたくなるのですね。ピアノのみで静かに始まり、弦楽器が重なってゆくにつれ悲しさが倍増してゆきます。若い時にこんな音楽を聞いていったい何を考えていたのだろうとふと昔を懐かしくなりますね。
第3楽章はまた対照的にとっても元気です。跳ねるような主題が印象的。悲しみを背負いつつも力強く遠くへ走り去ってゆくようなイメーシです。ピアノは縦横に装飾的に動き回りつつある収束に向かってゆくようです。元のテーマ・メロディに舞い戻ることで落ち着きとバランスを取り戻すと、曲はあっけなく終わります。
フィリップスに1950年代に残されたクララ・ハスキルのモーツァルトのピアノ協奏曲やソナタは私にとって大切な宝物になっています。悩みや時を忘れてひと時の安らぎに心身を委ねることができるせいかもしれません。
1. ピアノ協奏曲 第23番 イ長調 K.488 第1楽章:Allegro <モノラル録音>
2. ピアノ協奏曲 第23番 イ長調 K.488 第2楽章:Adagio <モノラル録音>
3. ピアノ協奏曲 第23番 イ長調 K.488 第3楽章:Allegro assai <モノラル録音>
4. ピアノ協奏曲 第9番 変ホ長調 K.271≪ジュノム≫ 第1楽章:Allegro <モノラル録音>
5. ピアノ協奏曲 第9番 変ホ長調 K.271≪ジュノム≫ 第2楽章:Andantino <モノラル録音>
6. ピアノ協奏曲 第9番 変ホ長調 K.271≪ジュノム≫ 第3楽章:Rondeau (Presto) <モノラル録音>
7. コンサート・ロンド イ長調 K.386 <モノラル録音>
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ クララ・ハスキル/モーツァルト・ピアノ協奏曲23番
クララ・ハスキル Philips歴史的名盤シリーズ → クララ・ハスキル Philips
≪ 続きを隠す
投稿者 Jazz Blogger T : 11:24
アナトリー・ヴェデルニコフ/ロシア・ピアニズム名盤選10
2008年09月29日
Anatoly Vedernikov / ロシア・ピアニズム名盤選10
今日はスクリャ-ビンの「24の前奏曲」作品11なのですね。スクリャービンは私のお気に入りの作曲家。この「24の前奏曲」は派手な美しさはないもののいぶし銀のような透徹した美意識に貫かれた愛すべき味わい深いピアノ音楽。ヴェデルニコフはスクリャービンの清澄な音宇宙を淡白ながらピュアに理想的に奏でていると思います。
ショパンの「24の前奏曲」(作品28、1838年)の方が大変に有名ですが、私はスクリャービンのこちら「24の前奏曲」(作品11、1897年)の方が圧倒的に好みです。若きスクリャービン(主に23~24歳時に作曲)のこの音楽には瑞々しい才能が光輝いています。耽美的な右手の魅惑の主題とともに、対比的に左手が別の音楽のように自由に動きながら音楽全体に深みと厚みを与えています。
例えば、1曲目ハ長調の短いパッセージに耳を傾けると清らかな小川のせせらぎのような美しい響きにまず感激します。2曲目イ短調も憂いのある愛らしい小品。5曲目ニ長調も沈静したメロディを持つ魅力的な楽想。8曲目嬰へ短調はやはり奥行きのある劇的な楽想。9曲目ホ長調も静かな憂いを含む音楽。11曲目ロ短調の何とも甘美で美しい曲想。いずれも左手の生きいきした表情がピアノ曲とは思えない広がりある音楽に仕立てています。
また、13曲目変ト長調ではロシア的なロマンチシズムが感じられる曲想が印象的です。後半は、名曲の練習曲8-12や練習曲42-5に聞かれる流麗なダイナミズムを持った曲が何曲かあります。14、18、19、20、24曲目らは、それぞれに個性的な楽想を示しています。21曲目変ロ長調も美しい音楽。
スクリャービンのピアノ音楽には、それぞれに、ロシア的な憂いのある深い音楽、情念を感じさせるダイナミックな音楽、清らかな愛らしい音楽があり、それらは美しいメロディを基調としながら、自在な左手のサポートによりピアノ曲とは思えない重厚な世界を醸しています。
演奏者のヴェデルニコフは完璧な指使いとペダルのテクニックでもってスクリャービンの透徹した美学を淡々と詩的に奏でています。録音状態が存外によいのも嬉しい限りです。スクリャービンのピアノ曲を十分に堪能するには、ピアノ音の低音から高音までその響きや共鳴が十分に伝えられる必要がありますが、本作品はそれを高いレベルで満たしていると思います。
アナトリー・ヴェデルニコフ(1920-1993)はロシアを代表する名ピアニスト。ロシアが満州に建設した都市ハルビンで生まれ、10歳でデビューし、15歳の時に日本に1年ほど滞在して、翌年、両親と共にモスクワに帰国してモスクワ音楽院入学。直後に両親が静粛により逮捕され、父は処刑され母は強制収容所送りという悲劇を体験する。その後、ヴェデルニコフは才能を認められ、著名ピアニスト及び音楽大学の教授となるものの諸事情から60台になるまで外国公演を行なう事が許されず、ソ連崩壊後の1993年日本を訪れようとした矢先に急死することになります。
ロシア・ピアニズム名盤選シリーズは圧倒的な力量を誇りながら西欧世界に知られなかったロシアの巨匠ピアニストたちの貴重な録音が記録されています。以前紹介したウラジミール・ソロニツキーの演奏も多数含まれています。尚、本CDには、紹介しませんでしたが、スクリャービン以外に2曲が含まれています。
1. 24の前奏曲op.11(スクリャービン)
2. ピアノ・ソナタ第5番ハ長調op.135(38)(プロコフィエフ)
3. ペトルーシュカ組曲(ストラヴィンスキー/ヴェデルニコフ編)
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ アナトリー・ヴェデルニコフ / ロシア・ピアニズム名盤選10
≪ 続きを隠す
投稿者 Jazz Blogger T : 16:28
ヴァレリー・アファナシエフ/ブラームス後期ピアノ作品集
2008年09月18日
Valery Afanassiev / ブラームス後期ピアノ作品集
実は最近クラシック音楽を聞く機会が増えていまして、ブラームスの音楽はあまり好みではなかったのですが、本作はじめ晩年の飾り気のないピアノ曲にはいつも感銘を受けています。ピアニストのヴァレリー・アファナシエフ氏は1947年ロシア生れ、74年ベルギー亡命。一音一音を慈しむようなゆっくりした独特の演奏スタイルが人気です。本作は1992年のレコード・アカデミー賞受賞作品。
もう昨年のことになりますが12月7日に東京オペラシティでアファナシエフ氏のピアノ・リサイタルを聴きました。内容はオール・シューマン・プログラムと題してシューマンの3作品「子供の情景 op.15」、「3つの幻想的小曲 0p.111」、「交響的練習曲 op13」。いずれも斬新な演奏でしたが、最後の交響的練習曲が特に印象深い演奏で感激した記憶が鮮明に残っています。高音のピアノの音がいまだに耳にこびりついているようです。ホロビッツの演奏で聞きなれている子供の情景はかなり違和感のあるものでしたね。そして、ご一緒した女友達に今日ご紹介するこのCDをプレゼントしたのでした。
さて、本作はアファナシエフさんの深い情念が宿る重みのある音楽なのです。例えば、印象深い2曲目の作品117-2にはすぐに耳を奪われますが、その悲しくも美しいメロディが生命を持って心に突き刺さってくるのです。暗い哀愁の中に淡白な美がひっそりと息づいています。同様に、3曲目作品117-3では、主題が暗い情念を抱くメロディなのに対し、途中から流れる優しいピアニスティックな副主題はそれとは対照的にとても優しいメロディなのです。
また、作品118-2は典型的なブラームスの優れた作品だと思いますが、やはりそうした悲哀感と優しさに満ちたメロディが交錯する感銘深い演奏です。私はこの種の露骨な旋律には必ずしも心を動かされないはずなのでした。恥ずかしさが先に立つとでも表現すればよいのでしょうか。露骨な旋律だけでなく、優しくいとほしい可愛げのある旋律が配されていることが救いです。
ブラームスの晩年の作品にはそうしたひっそりと佇んでいるような優しさ可愛さがときどきふと垣間見えるのです。私はそうした可憐なイディオムに癒されるのだと思います。アファナシエフの演奏はそうしたブラームスの情念と優しさをともに慈しむように大切に表現しています。秋の静かな夜に、この一見淡白だけれど深く心に響く音楽に耳を傾ける時、想いは千里を駆け巡る。
1~3. 3つの間奏曲op.117-1~3
4~9. 6つのピアノ小品op.118-1~6
10~13. 4つのピアノ小品op.119-1~4
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ ヴァレリー・アファナシエフ/ブラームス後期ピアノ作品集
≪ 続きを隠す
投稿者 Jazz Blogger T : 18:37
ウラジミール・ホロヴィッツ/展覧会の絵
2005年04月17日
Vladimir Horowitz/ Pictures at an Exhibition
今日はホロヴィッツのピアノでムソルグスキーの『展覧会の絵』です。昼間山歩きをしながらFMでラベル編曲の同曲(東京フィルハーモニーの2005年2月ライブ演奏)をたまたま聞きまして、それが色彩感のある大変に良い演奏でしたので、今日はこの曲のことを書こうと思い立ったのでした。前から気になっていたホロヴィッツのピアノ・バージョンをここではご紹介したいと思います。1951年のライブ録音。トスカニーニ指揮のチャイコフスキー・ピアノ協奏曲第1番とのカップリングです。
私が中学生の頃に我が家にはじめて家具調の立派なステレオなるものがお目見えしまして、音楽に関心のない父親が子供のために買ってきてくれた記念すべき最初のレコードがイムジチのビバルディ「四季」と小澤征爾指揮シカゴ響の「展覧会の絵」なのでした。ただ最初はB面に入っているブリテン「青少年のための管弦楽入門」の方が分かりやすくて楽しめたことを記憶しています。それに丁度その頃嵌っていたプログレッシブ・ロックっていうのがありまして、その中の著名グループのエマーソン・レイク&パーマー、ELPが同曲をムーグ・シンセサイザーを駆使して演奏したライブ・レコードが出て一挙にこの曲に親近感を抱いたのでした。この「展覧会の絵」はそういう意味で私にとりましてとても馴染みのある曲だったわけで、プロムナードのメロディなどは耳にこびりついているようですね。
それでこのホロヴィッツの演奏です。ご存知の通りムソルグスキーの原曲は実は純然たるピアノ曲でして、モーリス・ラベルが20世紀になってオーケストラ用に編曲したものが現在一般によく知られているものなのですね。ピアノ大好きの私は当然のごとくにピアノによる原曲を聴いてみたいという欲求があり、このホロヴィッツの演奏にすぐに遭遇することになりました。47年のスタジオ録音と51年のライブ録音の主に2種が入手可能です。本アルバムは後者で音質が十分に鑑賞に堪えるものです。
ホロヴィッツのピアノ演奏は、確かに音の魔術師と呼ばれたラベルの手に掛かかるオーケストラ版ほどの色鮮やかさは希薄ではありますが、ピアニスティックで力強く輝きのある見事な演奏だと思います。むしろピアノの方が適していると思える部分が結構にあると思いますね。例えば、カタコンブの詩的な響きやキュートで美しいCon Mortuisのメロディなどはやはりピアノならではと思われますし、サミュエル・ゴーデンバーグなどもピアノの方が面白いですね。チュイルリーや牛車のところもピアノで必要十分かもと思えます。それに、最後を飾る圧巻のキエフの大門などではホロヴィッツのピアノは十分にそのフィナーレの盛大さ、構築美、大地のような重いリズムなどの特徴を伝えることに成功していると思います。
この演奏はホロヴィッツ自身が少し編曲しているとのことですが、ムソルグスキーの原曲の美しさがしみじみとわかる演奏だと思いますね。ムソルグスキーの偉大さを噛み締めます。そういえば「はげ山の一夜」なども実に凄い曲ですよね。それにしましてもホロヴィッツのピアノの力量というのは大したものだと改めて感嘆いたします。ホロヴィッツはこの後80年代になっても素晴らしい演奏を繰り広げましたから半世紀間常にトップに君臨したということですね。本当に息の長い、まさに20世紀を代表するピアニストですね。
あと、このアルバムにはチャイコフスキーのピアノ協奏曲が入っていまして、音質がかなり劣る点が残念です。名指揮者でホロヴィッツの叔父でもあるトスカニーニ指揮の劇的な内容の演奏になっています。もちろんピアノはホロヴィッツですが、これはおまけという感じですね。
1. 展覧会の絵*組曲
作曲 ムソルグスキー
演奏: ホロヴィッツ(ウラジミール)
2. 水辺で
作曲 ムソルグスキー
演奏: ホロヴィッツ(ウラジミール)
3. ピアノ協奏曲第1番変ロ短調
作曲 チャイコフスキー
演奏: NBC交響楽団, ホロヴィッツ(ウラジミール)
指揮 トスカニーニ(アルトゥーロ)
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Vladimir Horowitz/ Pictures at an Exhibition
ブログランキングに参加中です。よろしかったらクリックをお願いします。日々の記事更新の励みにさせていただきます。→人気ブログランキング
≪ 続きを隠す
投稿者 Jazz Blogger T : 10:11
カルロス・クライバー/ベートーベン交響曲第5番&7番
2005年04月16日
Carlos Kleiber/ Beethoven Symphony No.5 & No.7
今日はベートーベンの交響曲をクライバー指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏で聴いています。ベートーベンの第5番と第7番をカップリングした超お得な一枚です。クライバーの名を轟かせ、未だにこの2曲の最高の演奏と言われる名演です。第5番は1974年、第7番は75年&76年録音。独グラモフォン。
カルロス・クライバーは昨年2004年7月に74才で亡くなっています。残されたCDはその巨匠ぶりからすると意外に少ないように思いますが、ベートーベンの4番や5番、7番は躍動する疾走感が魅力的なクライバーを代表する名演奏ですね。というより現代の最高の名演の一つと言えるようですね。
5番「運命」は中学性の頃より親しみのある曲です。このクライバーとウィーン・フィルの演奏はスピードと緊張感のある若々しい音楽で、そのリズムが生命力があって凄いなと思います。ジャズやロックを聴く感覚で楽しめるところがあります。
それと、7番って結構に名曲なんですよね。「運命」「田園」「合唱」という名が付いているものだけじゃないですよね。奥が深くてふくよかな音楽という印象です。特に第4楽章などは実に素晴らしい。あきの来ない長く楽しめる類の音楽だと思います。4番と7番がこれほど人気になったのもクライバーの名演のおかげなのですよね。
1. 交響曲第5番ハ短調 作品67
第1楽章 Allegro Con Brio
第2楽章 Andante Con Moto
第3楽章 Allegro
第4楽章 Allegro
2. 交響曲第7番イ長調 作品92
第1楽章 Poco Sostenuto- Vivace
第2楽章 Allegretto
第3楽章 Presto
第4楽章 Allegro Con Brio
amazon.comでは試聴可能です。→Carlos Kleiber/ Beethoven Symphony No.5 & No.7
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ クライバー/ベートーベン交響曲No.5 & No.7
SACD対応のハイブリッド仕様はこちら。→ 同上 SACD
ブログランキングに参加中です。よろしかったらクリックをお願いします。日々の記事更新の励みにさせていただきます。→人気ブログランキング
≪ 続きを隠す
投稿者 Jazz Blogger T : 10:12
ゲルギエフ/チャイコフスキー交響曲第6番「悲愴」
2005年03月12日
V.Gergiev/Tchaikovsky Symphony No.6
今日は話題の指揮者ゲルギエフのチャイコフスキー「悲愴」のことを書いてみたいと思います。チャイコフスキーの交響曲や管弦楽曲はこれまで結構好んで聞いていますが、このゲルギエフの演奏はロシアの大地を思わせるようなスケールとエネルギーを感じさせる凄い演奏です。キーロフ歌劇場管弦楽団、1997年7月録音。幻想序曲「ロメオとジュリエット」も収録。
チャイコフスキーの音楽は美しいメロディと豊かな情感があって取っ付きがよいですから、ポピュラーを聞くような感覚で中学生の頃から長く付き合ってきました。交響曲4~6番やバレエ音楽、管弦楽曲などは日常的に好んで聞いています。その中でこのゲルギエフという指揮者のこのチャイコフスキー悲愴は最近特によく聴いています。
ゲルギエフは1953年生まれ1988年よりキーロフ・オペラの音楽監督となり近年はウィーン・フィルの主席指揮者として現在最も活躍している指揮者の一人です。昨年2004年11月にはウィーン・フィルとの来日公演を果たしたばかりでご存知の方も多いと思います。
チャイコフスキーの音楽といいますと通常は繊細な色彩感と浪漫的な香りがその魅力の中心になるのですが、このゲルギエフとキーロフ劇場管の演奏にはさらに生命力に満ち溢れた力強さとパッションが感じられます。オーケストラが一丸となって壮大な構造物を築き上げるようなダイナミズムといったものを感じるのです。チャイコフスキーの音楽に意外な魅力を感じ取ることができるというわけで、音楽を聞く楽しみのひとつはこういう予想外の遭遇にあるのかもしれません。
まず第1楽章でその異様なほどのエネルギーを感じ取ることができます。劇的な中に美しい第2主題が荘厳な輝きを放っています。第2楽章のロシア的な濃厚で陰鬱な雰囲気もいいですが、第3楽章スケルツォの圧倒的な躍動感には脱帽です。第4楽章の深い闇の底を思わせる悲しみにもやはり内に秘めた膨大な力がみなぎっていることを感じます。全体を通じて一環して持続する緊張とやり場のなり情念の発露とを感じさせます。そして聞き終わったあとに残る心地よい余韻はまさに満足な芸術体験でのみ得られる充足感に違いありません。
同時に収録されている幻想序曲「ロメオとジュリエット」は私の大好きな曲です。こちらも同様に素晴らしい内容です。魂の声を聞くような劇的で美しい音楽です。これは病みつきになる類の音楽ですね。
チャイコフスキー交響曲第6番「悲愴」
第1楽章 アダージョ~アレグロ・ノン・トロッポ
第2楽章 アレグロ・コン・グラツィア
第3楽章 アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ
第4楽章 アダージョ・ラメント
チャイコフスキー幻想序曲「ロメオとジュリエット」
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ V.Gergiev/Tchaikovsky Symphony No.6
ブログランキングに参加中です。よろしかったらクリックをお願いします。日々の記事更新の励みにさせていただきます。→人気ブログランキング
≪ 続きを隠す
投稿者 Jazz Blogger T : 10:14
マルタ・アルゲリッチ/The LEGENDARY 1965 RECORDING
2005年02月24日
Martha Argerich / Chopin: Piano Works: Martha Argerich The LEGENDARY 1965 RECORDING
今日はマルタ・アルゲリッチです。やはりこの人のピアノが好きです。『The LEGENDARY 1965 RECORDING』。ショパン・コンクールで優勝した1965年に吹き込まれそのまま34年間封印されていたという録音。その内容はアルゲリチの数多い名品の中でも屈指の素晴らしい内容です。みずみずしい感性、ほとばしる情熱、流麗なピアニズム、これこそ芸術、私はアルゲリッチの音楽に今宵は酔いしれます。
昨日のマルサさんの欲求不満を払拭するにはこのアルゲリッチさんくらいのエネルギーが必要でした。それも名盤の誉れ高く、聴くたびにいつも私の心を強く打ち、内なる魂を呼び覚ましてくれる『The LEGENDARY 1965 RECORDING』です。
このアルバムではショパンの愛すべき音楽が全く違う世界観として映し出されています。確かに劇的すぎて節操がないのですが自在の華麗さがそこに芸術の極みを感じさせ、あるいは一種の潔さにまで昇華しうるという驚くべきピアニズムがあるのです。そう、そのピアニズムは、さらには、ショパンの音楽に完全に同化して自分の魂の声として歌いきる情念をもはらんでいるかのようです。
よい例えではないかもしれませんが、ここにはモダン・ジャズ名人の素晴らしいインプロヴィゼーションに現れる官能と同種の音楽的な高みを見出すことができます。クラシックの枠を越えたいかにも自由な即興音楽、そんな自然な歌心が伝わってくるのですね。
1~4のピアノ・ソナタ第3番がとにかく素晴らしいです。完璧なテクニック、流れるような音のせせらぎ、心が洗われます。9.スケルツォ第3番や10.英雄ポロネーズもダイナミックなだけでなく疾風のごとく潔い音楽です。
1.Piano Sonata No.3 In B Minor, Op.58: I. Allegro maetoso
2.Piano Sonata No.3 In B Minor, Op.58: II. Scherzo: Molto vivace
3.Piano Sonata No.3 In B Minor, Op.58: III. Largo
4.Piano Sonata No.3 In B Minor, Op.58: IV. Finale: Presto, non tanto
5.Mazurka No.36 In A Minor, Op.59 No.1
6.Mazurka No.37 In A-flat, Op.59 No.2
7.Mazurka No.38 In F-sharp Minor, Op.59 No.3
8.Nocturne No.4 In F, Op.15 No.1
9.Scherzo No.3 In C-sharp Minor, Op.39
10.Polonaise No.6 In A-flat, Op.53
amazon.co.jpでは試聴も可能です。→ The LEGENDARY 1965 RECORDING
昨日のマルサさんの記事で何とランクが上りましたですね。私と同じく微妙なんですね皆さんも♪ とりあえず感謝ですルンルン。 →人気ブログランキング
≪ 続きを隠す
投稿者 Jazz Blogger T : 10:15
ソフロニツキー/スクリャービン・リサイタル
2005年02月04日
Vladimir Sofronitsky / Scriabin Recital
今日はクラシックからウラジーミル・ソフロニツキーです。「ロシア・ピアニズム名盤選」からの一枚です。ソフロニツキー(1901~61)は日本でこそ知名度は低いものの、ロシアでは1961年の死後40年を経て今なおカリスマ的人気を誇る伝説のピアニスト。本アルバムはソフロニツキーの最も得意としたスクリャービンの作品集2枚組CDです。1959&60年録音。
ソフロニツキーは演奏活動が国内に限られていたために、ロシア以外では「幻のピアニスト」として謎に包まれつつ、一部の熱狂的な崇拝者たちの間でその名前が語り継がれてきた存在だったようです。ソ連崩壊後、西側でもその録音がリリースされるようになりましたが、日本で最初に紹介されたのは「ソフロニツキー大全集」(CD30枚)というアルバムで1996年の発売です。本作はその5枚からピックアップして再発された2枚組アルバムということになります。
本アルバムはスタジオ録音とライブ録音でソフロニツキー芸術の最高到達点と呼ぶべき圧倒的な名演奏と言われています。音質もそう悪くはありません。収録曲には、練習曲op.8、練習曲op.42、前奏曲op11、13、16、詩曲op.32、op.52などのお馴染みの名曲が並びます。私は、最近このCDを入手したのですが本当に素晴らしい演奏だと思います。まさに病み付きになるような身体に悪い類の音楽です。
詩曲op.32-1の臭い立つような美しい響きには魂が打ち震えます。練習曲op.8-12や同op.42-5など流麗な曲での力強さとピアニズムの絶妙のバランス感覚が凄い。それに、アルバムのページop.45-1や練習曲op.8-8、11での官能的な可憐さには唸らされます。いずれの曲にもエクスタシーや官能の美学が込められているのを感じ取れる演奏だと思います。スクリャービンを堪能するには最高の作品の一つに違いありません。
Voxレーベルのミカエル・ポンティの演奏でいずれも聴ける内容ですが、全く異なる曲と思えるほどにソフロニツキーの演奏には何か特殊なもの、そうスクリャービンが神秘和声で伝えたかった世界を直に肌で触れるように感じることができるとでも言えるのでしょうか。また、ホロビッツの華麗なピアニズムに彩られたスクリャービンの魅力とはまた違った、もっと奥深いもの、そうロシア的な濃厚なロマンと閉ざされた闇とが表現されているように思います。スクリャービンの本質はこちらソフロニツキーの方がより近い距離で捉えられているのかもしれません。
op.が50番を越える辺りから神秘和音を多用した難解な音楽になってゆきますが、このソフロニツキーの演奏で聴きますとそれほどの違和感を感じさせません。説得力があるというのでしょうか。
ご購入はamazon.co.jpでどうぞ。→ Vladimir Sofronitsky/Scriabin Recital 1500円以上は送料無料です。
ブログランキングに参加中です。よろしかったらクリックをお願いします。日々の記事更新の励みにさせていただきます。→人気ブログランキング
今日は音楽ジャンルで何位になっているでしょうか。
≪ 続きを隠す
投稿者 Jazz Blogger T : 10:16
マルタ・アルゲリッチ/デビュー・リサイタル
2005年01月14日
Martha Argerich/ Debut Recital
今日はマルタ・アルゲリッチのデビュー盤をご紹介します。ご存知の方も多いと思いますがアルゲリッチは間違いなく20世紀最高の女流ピアニストでしょう。情熱的で奔放、流麗な疾走感、それに完璧鉄壁のテクニック。デビュー・リサイタルと題された本アルバムは1960年というアルゲリッチ19才時の輝かしい記念すべき、まるで才能が音を立ててほとばしり出るような録音です。
マルタ・アルゲリッチは私の大好きなピアニストです。クラシック・ピアニストではもう一人ホロヴィッツも同じくらいに好みです。ともに感性に直接訴えるピアニズムが魅力です。アルゲリッチの演奏では、ラヴェル、ショパン、リスト、バッハ等を好んで聴きます。
マルタ・アルゲリッチが5年に一度に開かれるショパン・コンク-ルで優勝するのが1965年です。本作はその5年も前の作品です。すでに成熟の域にあるピアノであったことがよくわかります。16才でブゾーニ国際コンクール、ジュネーヴ国際コンクールで優勝という輝かしい経歴がありました。
本作は実に凄いアルバムです。エネルギーが満ちています。若き血潮が溢れ出るというやつです。それに情念がびしびし伝わってくる演奏です。下品というそしりを受けかねない類ですが、コントロールされたピアニズムが芸術性を保つに十分です。身に応える演奏で、真剣に聴き入りますと身体を悪くするような悪魔的とさえいえるような音楽です。
アルゲリッチには他にも洗練された名盤、私にとっての愛聴盤など数多くありますが、やはり本作をまず第一にもってこなければならないと思います。アルゲリッチの原点があります。音楽ジャンルにとらわれず音楽好きでピアノの好きな方なら、この音楽美、芸術美に強く打たれることでしょう。
1.ショパン スケルツォ第3番嬰ハ短調
2.ブラームス 2つのラプソディ1番ロ短調
3.ブラームス 2つのラプソディ2番ト短調
4.プロコフィエフ トッカータ
5.ラヴェル 水の戯れ
6.ショパン 舟歌
7.リスト ハンガリー狂詩曲第6番変ニ長調
8.リスト ピアノ・ソナタ ロ短調
JR.comでは試聴OKです。→ Martha Argerich/ Debut Recital
詳しくはアマゾンでどうぞ。→> Martha Argerich/ Debut Recital
最後までお読みいただきありがとうございました。よろしかったらクリック をお願いします。日々のブログ更新の励みにさせていただきます。 →人気ブログランキング
≪ 続きを隠す
投稿者 Jazz Blogger T : 21:16
ベートーヴェン交響曲第9番/フルトヴェングラー指揮バイロイト祝祭管弦楽団
2004年12月30日
Beethoven: Symphony no. 9 / Furtwangler
こんにちは。今日はベートーヴェンの弟9です。歴史的名演と言われるフルトヴェングラー指揮バイロイト祝祭管弦楽団1951年録音のレコードを学生時代から愛聴しています。特にその第3楽章(アダージョ・モルト・エ・カンタービレ)が大好きで繰り返し聴いてきました。
ベートーヴェンは日頃それほど多く聴くことはないのですが、交響曲やピアノ協奏曲、ピアノ・ソナタなどをたまに想い出したように手持ちの限られたCDやレコードで聴きます。あとは、ラジオやTVなどで触れる程度です。ベートーヴェンの持つ叙情的な曲でのおおらかでまろやかな音楽美を私は大変好んでいます。この第9の第3楽章はベートーヴェンの叙情的メロディとその構築美の一面を示す最も典型的なものだと思います。
このフルトヴェングラーの演奏はいろいろ論じられているようですが名演であることに間違いがありません。この演奏以外ほとんど知らない私には論じる資格はありませんが、第3楽章はゆっくり目の演奏で弦が流麗で統一感がある、といった感じを持ちます。この楽章は全体で20分くらいの演奏ですが、前の10分くらいはスローで、後半少しづつアップテンポとなります。この前半部分の弦主体のアダージョが何とも素晴らしくて私にとっては天上の音楽という印象です。2つの主題がともに美しいのです。
ベートーヴェン時代のこの種の音楽の特徴は、一つの楽章に主題と副主題の2つくらいのモチーフを設定し、そのモチーフに少しずつ変化をつけながら、すなわち変奏を繰り返しながら、徐々に盛り上げてゆくパターンですね。美しいメロディが形を変えながら聞き手の内奥に染み渡ってきまして、より高い境地の感動にいざなってゆくという感じです。
ジャズで言いますと、主題のメロディを崩しながらインプロヴィゼーションという即興演奏に持ち込みそこで聞き手の心を掴むのですね。それは形式的に楽譜がきちんとあるかないかという点の違いであって、主題の変奏部分とジャズ・インプロヴィゼーションというのはその目的とするところは共通しているように思えるのですが。モーツァルトのピアノ協奏曲などで聴けるピアノ演奏というのはまさにジャズのインプロヴィゼーションに相通じるものを感じます。
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Beethoven: Symphony no. 9 / Furtwangler
今どんなブログが人気でしょう。→人気ブログランキング(音楽)
≪ 続きを隠す
投稿者 Jazz Blogger T : 10:18
小山実稚恵/ラヴェル作品集
2004年12月18日
小山実稚恵/ラヴェル作品集
こんにちは。今日は日本人ピアニスト小山実稚恵さんのラヴェル作品集です。ご存知の通り、小山実稚恵さんは1982年チャイコフスキーコンクール3位、1985年ショパンコンクール4位入賞という輝かしい経歴を持つ、ショパン、リスト、ラフマニノフ、スクリャービン、ラヴェルらのロマン派ピアノ等を得意とする現代日本を代表する女流ピアニストです。1994年録音。
このラヴェル集は、小山実稚恵さんの豊かな音楽性と鮮やかなテクニックが結実した素敵なアルバムです。私にとって最近繰り返し聴いている大好きなアルバムです。どうしてもアルゲリッチと比較してしまいますが、アルゲリッチの奔放な演奏に決して引けをとらない自由さや、確かな感性とピアニズムを感じる素晴らしい一枚だと思います。
1.ラ・ヴァルス
2.亡き王女のためのパヴァーヌ
3.道化師の朝の歌
4.水の戯れ
5.ソナチネ
6.夜のガスパール
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ 小山実稚恵/ラヴェル作品集
よろしければクリックお願いします。→ 人気ブログランキング
≪ 続きを隠す
投稿者 Jazz Blogger T : 10:19
ラヴェル作品集
2004年11月26日
ラヴェル:ボレロ / ラ・ヴァルス / ピアノ協奏曲 / ツィガーヌ (2CD)
こんにちは。今日はお買い得のラヴェル作品集CDをご紹介したいと思います。ラヴェル主要曲の代表的な名演を収めた2枚組です。オムニバス盤ではありますが、マルタ・アルゲリッチによる"夜のガスパール"が収録されていましたので、あえてご紹介いたします。
収録曲は以下の通りです。①ボレロ(カラヤン指揮ベルリンフィル)、②ラ・ヴァルス(ブーレーズ指揮ベルリンフィル)、③ピアノ協奏曲ト長調(アルゲリッチ・ピアノ、アバド指揮ロンドンフィル)、④スペイン狂詩曲(小澤征爾指揮ボストン響)、⑤水の戯れ(アルゲリッチ・ピアノ)、⑥亡き王女のためのパヴァーヌ(小澤征爾指揮ボストン響)、⑦ダフニスとクロエ(アバド指揮ボストン響)、⑧夜のガスパール(アルゲリッチ・ピアノ)、⑨ピアノ3重奏曲(ボザールトリオ)、⑩ツィガーヌ(アッカルド・ヴァイオリン、アバド指揮ロンドンフィル)。
まさに名曲名演揃いです。私のようなラヴェル好きにとっては堪らないCDです。②ラ・ヴァルスや⑦ダフニスとクロエなどがお勧めです。ラ・ヴァルスはそのエスプリの雰囲気が仏的なエレガンスを感じさせますね。ダフニスとクロエはバレエ音楽なのですがその曲調の趣きと佇まいに一級の品格を感じます。勿論、アルゲリッチの③ピアノ協奏曲、⑤水の戯れ、⑧夜のガスパールはいずれも耳に入れておくべき超お勧め演奏です。私にとってのラヴェルの魅力は、どちらかといいますと定評ある管弦楽曲よりも、ピアノ曲でのガラス細工のような精巧な構築美や不思議だけど独特の美意識に裏付けられた和声にあります。
私ラヴェルが好きなものですからレコードを結構多数所有していますがCDになってないものやCDジャケット写真が入手できないものが多いのですね。愛聴盤のアルゲリッチの夜のガスパール もジャケット写真がないため本サイトでの紹介をためらっています。このCDには他にソナチネや高雅で感傷的なワルツが収められていまして共に素晴らしい演奏です。管弦楽曲もクリュイタンス指揮パリ音楽院管 のお洒落な名演や、ダフニスとクロエも全曲版などをご紹介したいところですが同理由です。
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ ラヴェル作品集
よろしければクリックお願いします。→ 人気ブログランキング
≪ 続きを隠す
投稿者 Jazz Blogger T : 10:20
キャスリーン・バトル/モーツァルト・アリア集
2004年11月20日
Kathleen Battle / Sings Mozart
こんにちは。今日はキャスリーン・バトルです。クラシックの声楽はまあほとんど聴く機会が少ないのですが今後はもう少し攻めてみたい領域です。例外的なアルバムが今日ご紹介するバトルのモーツァルト・アリア集です。パーソネルは、キャスリーン・バトル(ソプラノ)、アンドレ・プレヴィン指揮、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団。1985年録音。キャスリーン・バトルは1948年米オハイオ州生れ。
キャスリーン・バトルは80年代に入って急速に頭角を現し、この85年頃は最も注目される若手として大人気の気鋭のソプラノ歌手でした。ウィーン・フィルのニュー・イヤー・コンサートに招待されたのもすぐ後の90年頃だと思います。このEMIに録音されたモーツァルト・アリア集はバトルの初期の代表的な名演と言われており、その透き通ったクリーンでまろやかな歌声はモーツァルトの美しいメロディーを存分に引き立たせているようです。
まず1曲目から麗しげな曲調と情感を抑えた優しい歌声に魅了されてしまいます。最初の歌いだしから思わず心の中で拍手喝采をしたくなります。素晴らしい。ほんと素晴らしい。こういう形の音楽美ってのもあるのだなという思いです。明らかに齢を重ねるごとにこのキャスリーン・バトルの歌声が内奥深くに染み込んで来るようになってきました。2~4曲目も同様に素晴らしいものです。いつか死を迎える時はこういう音楽を聴きながら死ねたらよいなと少しまじに考えています。
Amazon.comでは試聴OK。→ Kathleen Battle Sings Mozart
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Kathleen Battle / Sings Mozart
よろしければクリックお願いします。→ 人気ブログランキング
≪ 続きを隠す
投稿者 Jazz Blogger T : 10:21
ポリーニ/ショパン24の前奏曲
2004年09月07日
ショパン24の前奏曲/マウリツィオ・ポリーニ こんにちは。今日はショパンです。中学生の頃からショパンを数多く聴いてきました。お気に入り曲はたくさんあります。その中でとりあえずまず1枚選ぶとすれば、ポリーニの24の前奏曲がしっくりくるように思います。この曲は、他にアルゲリッチの演奏 やアシュケナージのものもよく聴いていましたが、ポリーニの硬質で機械のように完璧な演奏を好んで繰り返し聴いてきました。ショパンの良さをこのポリーニの演奏で教えてもらったということです。
ポリーニのショパンでは12の練習曲 もよいですね。70年代初の同時期の録音ですが、やはりカチッとした完全な演奏です。24前奏曲もそうですが、この中の「別れの曲」や「革命」などのおなじみの曲も、私にとってはポリーニの演奏がスタンダードになっています。生れたヒヨコがすぐ身近のものを親と思うように。アルゲリッチやホロビッツの良さを理解するのはずっと後になってからでした。
24前奏曲の第4曲ホ短調は悲しい調べですが、美しい曲ですね。漆黒の闇に咲く一輪の花、おぼろげに輝いています。よく見れば限りなく美しい。マズルカにもいくつかこの種のものがありますね。
この第4曲をジャズでもジェリー・マリガンが取り上げています。ナイト・ライツ というCDです。この演奏は、昔、ジャズ評論家の油井正一さんのFM番組アスペクト・イン・ジャズのテーマ音楽でしたね。渋い演奏です。バリトンサックスの音色が深夜にじんわりとやって来くるのですよね。ご存知の方は結構よいお年かもしれませんね(笑)。
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ショパン24の前奏曲/マウリツィオ・ポリーニ
関連するblogをもっと読む→人気ブログランキング
≪ 続きを隠す
投稿者 Jazz Blogger T : 10:22
フランソワ/ラヴェル 夜のガスパール
2004年09月04日
ラヴェルピアノ全集/サンソン・フランソワ こんにちは。今日はラヴェルのピアノ曲"夜のガスパール"です。ラヴェルといえば管弦楽曲の"ボレロ"が有名でオーケストレーションの魔術師などと呼ばれていますが、私にとってのラベルは精緻な構築美とダイナミズムをピアノという楽器で表現し、ピアノの魅力を最大限に引き出しえた作品を数多く残した偉大な作曲家ということになります。
その中で、この"夜のガスパール"はピアニズムの極致を示す最も典型的なラベルの代表作品です。オンディーヌ、絞首台、スカルボという趣の異なる3曲からなる組曲です。オンディーヌは水の精で、"水の戯れ"というやはり素晴らしい小品に似た印象派っぽい曲、スカルボは圧倒的なドライブ感のあるこれぞピアノ芸術と呼べる完璧無比の作品です。
この曲は演奏の困難なピアノ曲としても有名ですので、十分に聴かせることのできるピアニストは限られてきます。これまで聴いた中では、フランソワ、アルゲリッチ、ギーゼギングらの演奏がとてもよいと思います。特に、フランソワとアルゲリッチの演奏は私のFavoritesです。フランソワは天才的なピアニストで時にムラっ気がありますが、このラベル集の"夜の~"と"クープランの墓"は文句なく絶品でしょう。マルタ・アルゲリッチはご存知の通り当代随一の女性ピアニストですが、スカルボでの彼女はそのコントロールされた完璧なテクニックとほとばしる情念が素晴らしいですね。このスカルボについてはアルゲリッチに軍配を上げたくなります。
ラベル"夜のガスパール"/マルタ・アルゲリッチ
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ラヴェルピアノ全集/サンソン・フランソワ
関連するblogをもっと読む→人気ブログランキング
≪ 続きを隠す
投稿者 Jazz Blogger T : 10:24
ハイフェッツ/序奏とロンド・カプリチオーソ
2004年08月27日
ハイフェッツ/ツィゴイネルワイゼン~ヴィルトゥオーゾ・ヴァイオリン
こんにちは。今日は生れて初めて自分で買ったレコードの話です。中学1年だったと思いますが、それまで我が家の音源といえばラジオとラジカセだけだったのが、ステレオというものが家庭に持ち込まれました。すぐにイムジチのビバルディ「四季」や小沢征二指揮シカゴ響のムソルグスキー「展覧会の絵」などを親が買ってきました。その頃自分で初めて購入したレコードがアントルモンのドビュッシー「子供の領分」とこのハイフェッツの古いレコードでした。大阪心斎橋にパルコというビルがありそこで中古レコードフェアというものがあるということで駆けつけたように記憶しています。
ヤッシャ・ハイフェッツ(1901-1987)はご存知の方も多いと思いますが、冷徹なまでに磨きぬかれたテクニックと力強くかつ麗わしい音色を持った真のヴィルトゥオーゾ、20世紀を代表するヴァイオリニストです。実際に購入したレコードは、A面にラロ「スペイン交響曲」、B面にサラサーテ「ツィゴイネルワイゼン」、サン・サーンス「序奏とロンドカプリチオーソ」「ハバネラ」の計4曲が収められていました。スタインバーグ指揮RCA響、1951年録音。現在CDでは発売されていないのかもしれません。
有名なツィゴイネルワイゼンは学校の音楽の時間に聞いて有名な曲と知っていましたので購入したのだと思いますが、実際購入してみて気に入った曲はサン・サーンスの「序奏とロンドカプリチオーソ」でした。とても劇的でロマンティックなメロディーに思春期の中学生はメロメロとなるのでした。ビートルズやカーペンターズなど分かりやすい音楽を受け入れていた背伸び盛りの中学生にとりまして、少し高尚で異国の世界を匂わせる美しい音楽は夢中になるべき格好の対象だったのでしょう。初恋の時期と重なって、曲の最初の部分が流れてくるだけで今でもその頃の胸の高鳴りを思い起こすことができます。音の記憶というものは大したものですね。一時期毎日のように聴いては悲恋のやるせない気持ちを慰めていたように思います。大人になってからはA面のラロも聞くようになりましたが、B面のサン・サーンスの2曲は中高生の頃の大のお気に入りのクラシック曲でした。今でもたまに聴く機会がありますが、今の私にとっては昔の純真な心を懐かしむことのできる貴重な音楽になっています。
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ハイフェッツ/ツィゴイネルワイゼン~ヴィルトゥオーゾ・ヴァイオリン
≪ 続きを隠す
投稿者 Jazz Blogger T : 10:25
ホロヴィッツ/スクリャービン・アルバム
2004年08月21日
スクリャービン・アルバム/ウラディミール・ホロヴィッツ
こんにちは。スクリャービンのピアノ曲は私のFavoritesです。特にこのホロヴィッツの弾くスクリャービンは別格の最高です。クラシックはあまり熱心なファンではないのですが、ピアノ曲などの器楽曲や協奏曲は結構好んで聴いています。特に、ラベルとスクリャービンがお好みで、バッハ、モーツアルト、ショパン、シューマン、ラフマニノフらもよく聴きます。スクリャービンという作曲家をご存知の方も多いと思います。ラフマニノフと同世代のロシアの作曲家です。例えば次のような紹介サイトもありますのでご参考に。→日本人のためのスクリャービン
このスクリャービンのピアノ曲が何とも魅力がありまして、一度その虜になりますとクセになるというそういうタイプの音楽です。晩年は神秘主義という思想にはまり難解な音楽になってしまいましたが、初期中期のピアノ小品はショパンのピアニズムに濃厚なロシア的ロマンが溶け合ったような惹きつけて離さない魅力があります。
ホロビッツは幼い頃にスクリャービンに会っているとのことですが、スクリャービンのピアノ曲を数多くレコードに残しています。ショパンやシューマン、スカルラッティらの華麗なピアニズムを要求するピアノ曲を得意とする20世紀最大のピアニスト、ホロビッツが奏でるスクリャービンはテクニックに裏打ちされた一点の曇りもない造形美と悪魔的とさえいえるロマンティシズムなど他の追随を全く許さないものでしょう。アシュケナージのソナタ集も有名ですがホロビッツのスクリャービンが私には圧倒的に好ましく思えます。
B面はちょっととっつきにくいですが、A面1~8はいずれも素敵な小品です。1のアルバム・リーフという簡潔だけど素晴らしいモチーフの小品にまず驚かされることでしょう。
1.アルバム・リーフop.45-1
2.エチュード第2番嬰ヘ短調op.8-2
3.エチュード第11番変ロ短調op.8-11
4.エチュード第10番変ニ長調op.8-10
5.エチュード第8番変イ長調op.8-8
6.エチュード第15番嬰ヘ長調op.42-3
7.エチュード第16番嬰ヘ長調op.42-4
8.エチュード第17番嬰ハ短調op.42-5
9.ピアノ・ソナタ第10番ハ長調op.70
10.2つの詩曲op.69
11.焔に向かって(詩曲)op.72
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ スクリャービン・アルバム/ウラディミール・ホロヴィッツ
ホロビッツのCD
スクリャービンのCD
関連するblogをもっと読む → 人気ブログランキング
≪ 続きを隠す
投稿者 Jazz Blogger T : 10:26