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セロニアス・モンク/ウィズ・ジョン・コルトレーン

JAZZ others 1

2005年02月20日

monk with coltrane.jpeg Thelonious Monk / Thelonious Monk With John Coltrane

 今日はモンクですが、ジョン・コルトレーンを迎えた歴史的な演奏を捉えたアルバムです。パーソネルは、①ジョン・コルトレーン John Coltrane (ts)、セロニアス・モンク Thelonious Monk (p)、ウィルバー・ウェア Wilbur Ware (b)、シャドウ・ウィルソン Shadow Wilson (ds)。Ruby, My Dear, Trinkle Tinkle & Nutty。1957.4.16.NYC録音。②レイ・コープランド Ray Copeland (tp)、ジジ・グライス Gigi Gryce (as)、コールマン・ホーキンズ Coleman Hawkins (ts)、ジョン・コルトレーン John Coltrane (ts)、セロニアス・モンク Thelonious Monk (p)、ウィルバー・ウェア Wilbur Ware (b)、アート・ブレイキー Art Blakey (ds)。Off Minor & Epistrophy。1956.6.26.NYC録音。

 ジョン・コルトレーン(1926~67年)は遅咲きながら1955年にマイルス・デイヴィスのクインテットに加わって一躍頭角を現すことになるテナーです。伯楽マイルスと出会って個性が開花しその後10年を先鋭的テナーとして時代をひた走ることになります。その最初の先鞭となるきっかけが57年のモンクとのセッションにあるというのが定説です。評判のファイブ・スポットでの演奏は記録に残っていませんが、その一端を伺える演奏が本アルバムに収められたコルトレーン1管のクァルテット演奏3曲です。1曲は『Monk's Mood』にも収録。

 コルトレーンが直近の前年に参加したマイルスの『'Round About Midnight』が56.9、『Relaxin'』『Cookin'』が56.10で、ましてロリンズとの『Tennor Madness』が56.5ですから、本作の57.4の演奏を聴き比べますとその違いは明白です。特に、2曲目Trinkle, Tinkleや4曲目Nuttyではそのシーツ・オブ・サウンドという言葉でアイラ・ギトラーが捉えた複雑多彩な連続する音の奔流、すなわちテナー・スタイルの新主流がほぼ完成されていることが分かります。

 ここまでは定説であり、ではなぜモンクとの邂逅がこうした進化発展をコルトレーンにもたらしたかということが問題になります。苦労人コルトレーンはその演奏技術については人一倍の努力によってロリンズに並ぶ位置にまで上りつめましたが、モンクに引っ張られて一緒に演奏することにより触発されるものが確かにあったということだと思います。モンクの音楽は独創的であり、そのうまいとは決して言えない朴訥なピアノがなぜあれほどの超一流のジャズ・フィーリングを醸しだすかということを鑑みることである程度の答えが出ていると思います。そこはコルトレーンとモンクが同じ空間を共にして何かが生れないはずがないということです。

 モンクの音の間の空間を生かす絶妙なセンスと、コルトレーンの音で空間を埋め尽くすシーツ・オブ・サウンドとは全く方向が正反対と言えます。これは、モンクと一緒に演奏すればきっと誰しもこうならざる得ないというところがあるのではと私は思うのですね。マイルスとコルトレーンのコンビの場合には静と動の対比でもって全体的に高度な芸術的バランスが保たれたように、モンクの音楽性と調和してなおかつ均衡を保つにはさらなる徹底的な饒舌こそが必要であったのだと。それはコルトレーンの美学のなせる技であると。今も繰り返しコルトレーンの一種脅迫観念にも似た、それでいて極みに達しつつあるテナーをモンクのソロと並べながら聞き入っているところですが、そんなことを感じています。

 結局のところ、モンクが主導する音楽には常に最高のジャズ芸術が宿るのであって、メンバーとしてそれに応じようとすることで結果的に優れた成果が生み出されるのだと思います。当時のコルトレーンこそはその発展の途上にありながらもモンクの意図した期待に最も対応しうる一人であったのでしょう。

 全6曲。コルトレーンの音が前年のマイルス・グループ在団時と変化して新しい世界が開かれつつあることが感じられます。1,2,4が例のクァルテット演奏。スリルある斬新な感覚がとても素晴らしいと思います。このアルバムの後のコルトレーンの音楽は、『ブルー・トレイン』『ソウル・トレイン』『ジャイアント・ステップス』という名盤で聴かれる通りもう留まることなく突き進むことになります。

1. Ruby, My Dear
2. Trinkle, Tinkle
3. Off Minor
4. Nutty
5. Epistrophy
6. Functional

iTunes Music Store では試聴可能です。→John Coltrane & Thelonious Monk - Thelonious Monk With John Coltrane

詳しくはamazon.co.jpでどうぞ。→ Thelonious Monk / Thelonious Monk With John Coltrane

関連エントリはこちら。
 →セロニアス・モンク/プレイズ・デューク・エリントン
 →セロニアス・モンク/アローン・イン・サンフランシスコ
 →セロニアス・モンク/セロニアス・ヒムセルフ
 →セロニアス・モンク/ミステリオーソ
 →セロニアス・モンク/ストレート・ノーチェイサー

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