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リー・コニッツ/ヴェリー・クール
2006年12月27日
Lee Konitz/ Very Cool
今日は白人アルト奏者のリー・コニッツ。その絶好調時の典型的な作品です。歌心が豊かかどうかという点では少し疑問もありますが、そのいかにも冷たく醒めた抽象的っぽい肌合いとインプロヴィゼーションにはクールな感覚とともに時にカタストロフィの美学を感じさせてくれるのです。パ-ソネルは、リー・コニッツ(as)、ドン・フェラーラ(tp)、サム・モスカ(p)、ピーター・インド(b)、シャドウ・ウィルソン(ds)。1957年録音。Verve レーベル。
ユニゾンではじまる独特のジャズ世界ではあります。そのクールと言うにはその語感の有するカッコよさげな雰囲気を今の私の耳はかなり抵抗を感じてしまいます。極めて無機的な異質世界、不思議なジャズ空間なのですね。ただ、何度も繰り返し聞いていますと、最初感じるそうした違和感、そう、コニッツのアドリブ・ラインってあまり旨みがないのでは?という印象が少しづつプラスの方向に取り崩されてゆくのです。
初めてコニッツのこうした特殊なアルトを繰り返し聴いたのが「インサイド・ハイ・ファイ」という本作と同時期の作品です。狭い下宿で時折その皺がれた音質の堅気なアルトとテナー(B面ではコニッツのテナーが聞ける)を思い出したようにターンテーブルに載せていたのは20歳そこそこの学生時代でした。それはコニッツ的世界、その真摯、生真面目といったジャズに対峙するコニッツ的姿勢に浸ることでもありました。他のジャズではそうそう味わうことのできないsomethingを感じる機会でもありました。
本作ではトランペットが入ることで幾分こうした求道的とも言えるような雰囲気が少し和らげられてエンターテイメント性が増しているように感じられます。私にとって白人アルトと言えば、ポール・デスモンドか、このリー・コニッツ、次いでフィル・ウッズといったところですが、こうしてたまにじっくりとコニッツの円熟期の作品を繰り返し聞いていますとその流石の至芸にあっさりと納得させられるのです。ユニゾンの出だしには多少の古さというか時代の違いを感じますものの、前のめり気味に剛速球で畳み掛けてくる低音アルトの音の流れには逆らうことができません。不思議な魅力を持つ混沌の潮の流れに身を委ねつついつの間にか遠くひとり大海に漂っている自分がそこにいるのでした。
1. Sunflower
2. Stairway to the Stars
3. Movin' Around
4. Kary's Trance
5. Crazy She Calls Me
6. Billie's Bounce
Lee Konitz (alto saxophone); Don Ferrara (trumpet); Billy Bauer (guitar); Peter Ind (bass); Dick Scott (drums). Recorded live at the Midway Lounge, Pittsburgh, Pennsylvania on February 15, 1957. Originally released on Atlantic (1273). Includes liner notes by Lee Konitz.
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Lee Konitz/ Very Cool
関連エントリはこちら。
→ リー・コニッツ/サブコンシャス・リー
→ リー・コニッツ/モーション
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投稿者 Jazz Blogger T : 21:11
アート・ペッパー/ゲッティン・トゥゲザー
2005年12月25日
Art Pepper / Gettin' Together
今日はアート・ペッパーの『ゲッティン・トゥゲザー』です。名盤『ミーツ・ザ・~』から約3年再びマイルス・バンドのリズム隊を迎えての60年の録音です。正直なところ個人的にはこちらの方がジャズ本来の寛ぎがあって安心して聞けるという点で好みに合ってます。パーソネルは、アート・ペッパー(as,ts)、コンテ・カンドリ(tp)、ウイントン・ケリー(p)、ポール・チェンバース(b)、ジミー・コブ(ds)。1960年LA録音。Contemporary Record。
アート・ペッパーは56、57年頃の神がかり的な演奏こそがやはり最高と言えましょうが、少し凡人っぽさが見えてきた60年前後の演奏には肩の凝らないジャズらしい興趣があって、こちらはこちらで長く座右に置いて日常的に愛好する類の音楽でありましょう。本作などはまさにそんな一枚でして、私同様に結構聞き込んでいらっしゃる方が多いのではないかと密かに思っているのです。
ウイントン・ケリーのピアノが流石にいいですね。レッド・ガーランドよりもペッパーとの相性がよいと思われます。両者はブルースという共通言語によって全く違和感無く溶け込んでいるかのようです。ケリーに触発されたペッパーが実にいい味を出しているとも受け取れますが、まあペッパーにすればこれは本領を発揮したに過ぎないのでしょう。
1. Whims of Chambers
2. Bijou the Poodle
3. Why are we afraid
4. Softly, as in a morning sunrise
5. Rythm-a-ning
6. Diane
7. Gettin' together
8. Gettin' together(alternate)
9. The way you look
Art Pepper (as,ts), Conte Candoli (tp), Wynton Kelly (p), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds). Recorded at Contemporary Record studio in LA, Feb.29, 1960.
アマゾンでは試聴可能です。→ Art Pepper / Gettin' Together
詳しくはアマゾンでどうぞ。→Art Pepper / Gettin' Together
関連エントリはこちら。
→アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション
→リターン・オブ・アート・ペッパー
→モダン・アート
→ジ・アート・オブ・ペッパー
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投稿者 Jazz Blogger T : 21:12
チャールズ・ロイド/ザ・ウォーター・イズ・ワイド
2005年12月18日
Charles Lloyd / The Water Is Wide
今日はチャールズ・ロイドの『ザ・ウォーター・イズ・ワイド』です。今朝ダイヤモンド・ヘッドへの登山途中にずっと耳にしていた官能的な音楽。美しい海と早朝の柔らかい日差しの中を実に気分よく過ごせたのでした。そう今日はホノルルにある某ホテルから、バカンス昼下がりの投稿です。パーソネルは、チャールズ・ロイド(ts)、ブラッド・メルドー(p)、ジョン・アバークロンビー(g)、ラリー・グレナディア、ダレク・オレス(b)、ビリー・ヒギンス(ds)。1999年LA録音。ECM。
つい以前にもチャールズ・ロイドのCDをご紹介したばかりですよね。ボボ・ステンソンとのコラボレーションが絶妙な不思議な音世界でしたが、本日のこちらのCDでは、やはりピアノに超一流のブラッド・メルドーを起用していまして、期待にたがわず深い精神世界が映し出されているのです。そういえば、フォレスト・フラワーでのキース・ジャレットもそうでしたが、このロイドさんはその方面のお眼が高いに違いありません。
特に、9曲目のLady Dayのエロティックなほどのチャールズ・ロイドの感覚派テナーと、あくまで思慮深いメルドーの音楽性豊かなピアノとが素敵な空間を形成しているのです。ベースとドラムのサポートもいい具合でして、これはこれは本当に素晴らしいジャズに仕上がっていると思われます。
ホノルルの中心地から東へ海沿いに美しい景色に包まれながら歩くこと小1時間、ぐるりとダイヤモンドヘッドを回りこむようにして反対側からクレーターの中に入りますとそこに登山口がありました。そこからはよく整備された登山道を歩くこと約30分くらいで頂上に到着です。このトレッキングの話はまた写真を交えて帰国後報告するとしまして、この快適なトレックの間ずっとこのロイドとメルドーのLady Dayを繰り返し聴いたのでした。
iPodを携えたウォーキングはごく珠に異次元の感覚を与えてくれるときがありますが、今日のトレッキングはまさにそんなありがたい類のものでした。本来音楽など必要ないくらいに快適なのですが、そこに美しい音楽を組み合わせることによって、また別の意外なセンスが生まれてくる、そんなことが私の場合によくあります。ロイドの粘着質のテナーには私の求める美意識は実のところそれほどありませんが、メルドーが加わることにより相乗的に醸し出されるその空間には何やら惹き付けて止まない吸引力が備わっていると思われるのです。
このLady Dayという曲は、ウェイン・ショーター作の曲で、ショーターの傑作『預言者』に収録されております。そこでは、マッコイ・タイナーのピアノが実にリリカルな好演を示していまして、このビリー・ホリデイの渾名を冠した小品を忘れがたい名曲に仕立てあげています。
1.. Georgia
2. The Water Is Wide
3. Black Butterfly
4. Ballade And Allegro
5. Figure In Blue
6. Lotus Blossom
7. The Monk And The Mermaid
8. Song Of Her
9. Lady Day
10. Heaven
11. There Is A Balm In Gilead
12. Prayer
Personnel: Charles Lloyd (tenor saxophone); Brad Mehldau (piano); John Abercrombie (guitar); Larry Grenadier, Darek Oles (acoustic bass); Billy Higgins (drums). Recorded at Cello Studios, Los Angeles, California in December 1999.
JR.comでは視聴可能です。→ Charles Lloyd / The Water Is Wide
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Charles Lloyd / The Water Is Wide
関連エントリはこちら。
→チャールズ・ロイド『オール・マイ・リレイションズ』
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投稿者 Jazz Blogger T : 21:14
ウェイン・ショーター/ナイト・ドリーマー
2005年11月20日
Wayne Shorter / Night Deamer
今日はウェイン・ショーターの『ナイト・ドリーマー』ですね。ショーターにとってはBN第1作です。アート・ブレイキーのジャズ・メッセンジャーズを抜けてマイルス・バンドに加わる前の64年はショーターにとってその個性が輝き出した重要な時期に当ります。パーソネルは、リー・モーガン(tp)、ウェイン・ショーター(ts)、マッコイ・タイナー(p)、レジー・ワークマン(b)、エルヴィン・ジョーンズ(ds)。1964年NYC録音。BlueNote4173。
64年から66年くらいにかけてのショーターの音楽が大好きです。音楽というとちょっと大げさですが、ショーターの残した録音ということです。ウェイン・ショーターは59年にデビューした後、ブレイキーのジャズ・メッセンジャーズの音楽監督に就くこと数年、64年前半にそこを辞して、その後すぐにマイルスの傘下に入るまでの約半年の間にブルーノートに2枚のリーダー作を残します。本作はその第1作に当ります。
この時期、ショーター本来の個性がいよいよ全開して光り輝いているように思います。新主流派としての新鮮な感覚はこの以前よりありましたが、神秘主義的な雰囲気は本作より明確になってゆくのです。それに一人のテナー奏者としてもこの時期が旬の時期に当ると思えるのです。それは例えばマイルス名義のシカゴでの『プラグド・ニッケル』(1965)のライブ演奏を聞けば明らかなことです。
この時期のショーターの軌跡を手繰ってみるべく、下に参加アルバムを時系列に列挙してみました。
1964年4月 ウェイン・ショーター『ナイト・ドリーマー』
8月 ウェイン・ショーター『ジュジュ』
9月 マイルス・デイヴィス『イン・ベルリン』
12月ウェイン・ショーター『スピーク・ノー・イーブル』
1965年1月 マイルス・デイヴィス『E.S.P.』
3月 ウェイン・ショーター『預言者』
10月 ウェイン・ショーター『ジ・オール・シーング・アイ』
12月 マイルス・デイヴィス『アット・ザ・プラグド・ニッケル』
1966年2月 ウェイン・ショーター『アダムス・アップル』
10月 マイルス・デイヴィス『マイルス・スマイルス』
(リンクは本ブログの過去エントリです。)
流石に凄い密度ですね。特に65年の4作は生涯最高の出来ではないかと思います。本作のナイト・ドリーマーはそれらの最初の第一歩という感じですが、すでに後年の成熟を予感させる内容になっています。特に、1曲目Night Dreamer でのワルツのリズムに乗った素敵な進歩的ジャズはショーターが得意とするアレンジの一つですし、3曲目Virgo では独特のショーター美学がほぼ満開といったところです。BNのA.ライオンが施したという、マッコイ、ワークマン、エルヴィンという当時のコルトレーン・グループのリズム隊も最適なサポートをまっとうしています。
1. Night Dreamer
2. Oriental Folk Song
3. Virgo
4. Black Nile
5. Charcoal Blues
6. Armageddon
Wayne Shorter (tenor saxophone); Lee Morgan (trumpet); McCoy Tyner (piano); Reggie Workman (double bass); Elvin Jones (drums). Liner Note Authors: Nat Hentoff; Bob Blumenthal. Recording information: Van Gelder Studios, Englewood Cliffs, New Jersey (04/29/1964).
JR.comでは試聴可能です。→Wayne Shorter / Night Deamer
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Wayne Shorter / Night Deamer
関連エントリはこちら。
→ウェイン・ショーター『イントロデューシング・ウェイン・ショーター』
→ウェイン・ショーター『ネイテイブ・ダンサー』
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投稿者 Jazz Blogger T : 21:15
クリフ・ジョーダン/クリフ・クラフト
2005年11月19日
Cliff Jordan / Cliff Craft
今日はクリフ・ジョーダンのテナーが心地よい『クリフ・クラフト』です。共演のアート・ファーマー、ルイス・ヘイズらと共に当時ホレス・シルヴァーのクインテットで活躍中であり、ソニー・クラークのピアノも印象深く快調なハードバップ・アルバム。パーソネルは、アート・ファーマー(tp)、クリフ・ジョーダン(ts)、ソニー・クラーク(p)、ジョージ・タッカー(b)、ルイス・ヘイズ(ds)。1957年NYC録音。BlueNote1582。
50年代のハードバップ・テナーとしてのクリフ・ジョーダンは極めて優等生だと思うのですね。ホレス・シルヴァーに見込まれ、アルフレッド・ライオンにも認められた実力と個性はクセのないオーソドックスなスタイルながら明朗なグルーヴ感とブルージーなセンスに溢れており、典型的なブルーノート・サウンドの一角を照らすわけであります。
やはり、アート・ファーマーとの2フロントの上に、ソニー・クラークやジョージ・タッカーが脇を固めて、さらに好選曲とくれば、これはもう素敵な内容となることが約束されたようなものです。その期待に違わず、本当に好ましい出来だと思われます。クリフ・ジョーダンの安定した自在な歌い回しには、シルヴァー・クインテットの黄金期メンバーとしての面目を示すに余りがあるほどに魅力的なものと言えるでしょう。
1曲目Laconiaの魅惑の主題メロディを手際よく調理するのはまずもってファーマーの貴重なミュートではあります。次いでクラークの特徴的なシングル・トーンが間を繋いだ後、主役ジョーダンが豪快なテナーで味わい深いソロを2コ-ラス奏でます。このソロがとても魅力的です。ずしりと重い重量級ながら軽快なブローが心地よいのですね。最後はファーマーとの2重奏で主題を繰り返してエンディングとなります。
2曲目Soul-Lo Blues のいかにもソニー・クラークっぽいブルースも一聴に値するものです。また、4曲目パーカー作のConfirmation ではジョーダンの卓越したテナーが存分に真価を発揮しています。細やかな部分でも決してぶれることのない技量とメロディック・センスが光っています。チャーリー・パーカー『ナウズ・ザ・タイム』の最後に収録されている名演を思い出します。ジョーダンのおおらかな個性が感じられる好演です。
1. Laconia 7:06
2. Soul-Lo Blues 8:31
3. Cliff Craft 6:32
4. Confirmation 7:34
5. Sophisticated Lady 6:46
6. Anthropology 7:03
Art Farmer(tp), Cliff Jordan(ts), Sonny Clark(p), George Tucker(b), Louis Hayes(ds). NYC, 1957. 11.10.
amazon.comでは試聴可能です。→Cliff Jordan / Cliff Craft
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Cliff Jordan / Cliff Craft
関連エントリはこちら。
→ホレス・シルヴァー『ファーザー・エクスプロレイションズ』
→チャーリー・パーカー『ナウズ・ザ・タイム』
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投稿者 Jazz Blogger T : 21:16
ジョニー・グリフィン/ブローイング・セッション
2005年11月07日
Johnny Griffin / A Blowing Session
今日はジョニー・グリフィンのNYデビュー2枚目、ブルーノート2作目の『ブローイング・セッション』です。超豪華メンバーを従えてグリフィンが主役をこなす最高のハード・バップ・アルバム。パーソネルは、リー・モーガン(tp)、ジョニー・グリフィン(ts)、ジョン・コルトレーン(ts)、ハンク・モブレイ(ts)、ウィントン・ケリー(p)、ポール・チェンバース(b)、アート・ブレイキー(ds)。1957年NY録音。BlueNote1559.
参加メンバーが何といっても凄いですね。フロントはリー・モーガンにジョン・コルトレーンとハンク・モブレイの4管、リズムは、ウィントン・ケリー、ポール・チェンバース、アート・ブレイキーといった少し変則ですがビッグネームばかり。流石にグリフィンの力量を見込んだ製作者側の意図が十分に汲み取れるというものです。そしてその期待以上に申し分のないブローを繰り広げるグリフィンのテナーは超一流の証を示しえたのでした。
ジョニー・グリフィンは出身地であるシカゴでアーゴ盤『JG』 (1956)でデビューし、NYに出てきてBlueNoteに『イントロデューシング・ジョニー・グリフィン』 (1956)を吹き込んでいまして、本作は通算3作目にあたります。前2作はいずれもワン・ホーンの力作でしたが、本作はセブンステットという4管7人編成なのです。前2作で披露されたその凄まじいまでのノリ具合が本作でも見事に全開しております。尽きることの無いその圧倒的なインプロヴィゼーションはコルトレーンやモブレイらの同じテナーを向こうにまわして存分な存在感を主張しています。
例えば、私のお好みのスタンダ-ド3曲目All the things you are に耳を傾けてみますと、最初にグリフィンによるテーマ紹介があり、続けてグリフィンのソロに突入しますが、そのいつもながら次から次に展開してゆくソロの広がり具合、さらには混沌へと入り込まんとする醍醐味といいますのは流石に心地良い最高の境地なのですね。グリフィンの後に、コルトレーン、モブレイ、モーガンと受け継がれるソロは、いずれも味わい深いものではありますが、やはりグリフィンの最奥に分け入って独り我行かんといった孤高の意気込みといいますのは聞くものの胸に響いてくるものがあるというものですね。勿論、この時期のコルトレーンも実に素晴らしいものがありますが、まあそれに匹敵するグリフィンというところです。
ジョニー・グリフィンは本作の後、同年の1957年10月にBNにもう一枚ソニー・クラークとの共演ワン・ホーン作を録音して、さらには1958年にはモンクとの定評あるライブ共演を果たします。やはりこの時期のグリフィンは旬の人なのだと思われます。どの作品にもパワー全開の元気なグリフィン、いつも主役のグリフィンがいます。私の中では、ロリンズ、コルトレーン、グリフィンの3人がモダン・ジャズ・テナーのベスト・スリーとなりますですね。
1. The Way You Look Tonight 9:41
2. Ball Bearing 8:12
3. All The Things You Are 10:14
4. Smoke Stack 10:10
Johnny Griffin, Hank Mobley, John Coltrane (tenor saxophone); Lee Morgan (trumpet); Wynton Kelly (piano); Paul Chambers (bass); Art Blakey (drums). Producer: Alfred Lion. Recorded at the Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey on April 6, 1957. Originally released on Blue Note (1559).
JR.comでは試聴可能です。→A Blowing Session
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ A Blowing Session
関連エントリーはこちら。
→ジョニー・グリフィン『JG』 (Argo, 1956)
→ジョニー・グリフィン『イントロデューシング・ジョニー・グリフィン』 (BN, 1956)
→セロニアス・モンク『ミステリオーソ』 (1958)
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投稿者 Jazz Blogger T : 21:17
ジョン・コルトレーン/コルトレーン
2005年11月01日
John Coltrane / Coltrane
今日はコルトレーンの名作『コルトレーン』です。50年代半ばから急速に変化を遂げてきたコルトレーン・ジャズがほぼ完成の域に達した62年春のImpulse録音。メンバーも、トレーン、マッコイ、ギャリソン、エルヴィンというジャズ史上最強とも言えるカルテットの記念すべき第1作。自信に満ち溢れたコルトレーン入魂の情念ほとばしる剛速球です。パーソネルは、ジョン・コルトレーン(ts,ss)、マッコイ・タイナー(p)、ジミー・ギャリソン(b)、エルヴィン・ジョーンズ(ds)。1962年録音。Impulse。
感覚派の管理人にとってまずもって素敵なジャケットに心を奪われます。テナー・サックスとそれを吹く真摯なコルトレーン、そして全体のくすんだブルーからグリーン系の配色、それらが独特の渋い雰囲気を醸し出しています。コルトレーンの数多いアルバムの中でこのジャケットが最も好ましいと私は感じています。
さて本作は、61年12月にヴィレッジ・バンガードでの著名なライブ録音を残した直後の62年春に録音されています。50年代半ばにマイルスに見出され桧舞台に出て以降、遅咲きを取り返すかのような勢いでひたすら精進を重ねてきた結果、コルトレーン・ジャズと呼ぶに相応しい一つの頂点に達した時期に当ります。メンバーも最強と言われるマッコイ、ギャリソン、エルヴィンに固定された最初の録音ですね。このすぐ後の62-63年はエリントンとの共演やバラード集など、ある意味で歩調が止まった一種のスランプ状態の時期となりますので、本作はその意味ではコルトレーンが求めてきた一つの最終目標を示しているに違いないと私には思われます。
実際、その音楽の隅々にまで感じられる揺るぎない自信に満ちた表情、それがとても印象的です。独特の体臭を放つまさに典型的なコルトレーン的世界が映し出されている作品と言えるでしょう。1曲目Out Of This World に聞かれる圧倒的な吹奏に耳を傾けてみましょう。全開するコルトレーン流ブルースのテナー、それを煽り続けるエルヴィンのドラミング、そして、ギャリソンの神秘的に歌うベースとモード奏法のマッコイ節、この4者の渾然一体となった不思議空間、これは聞く者を別世界にいざなってくれますね。
2曲目Soul Eyesでは、後の『バラード』の原型がここにあることが分かります。切ないテナーが印象に残ります。それに、マッコイ・タイナーのピアノがコルトレーンが指摘するbeautyを如実に映しています。マッコイのピアノは私の大のお気に入りですが、本来のモード手法の合間に時折垣間見せるこうした叙情的な側面を実に美しいと思うのです。
1. Out Of This World 14:06
2. Soul Eyes 5:26
3. The Inch Worm 6:18
4. Tunji 6:34
5. Miles' Mode 7:31
John Coltrane(ts, ss) McCoy Tyner(p), Jimmy Garrison(b), Elvin Jones(ds). 1962.4.11, 5.21, 5.29
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→ John Coltrane / Coltrane
ジョン・コルトレーンのディスコグラフィはこちら。
→John Coltrane Discography
関連エントリーはこちら。
→ セロニアス・モンク/ウィズ・ジョン・コルトレーン(1957)
→ ジョン・コルトレーン/ブルー・トレーン(1957)
→ ジョン・コルトレーン/ソウル・トレーン(1958)
→ ジョン・コルトレーン/ジャイアント・ステップス(1959)
→ ジョン・コルトレーン/マイ・フェイバリット・シングス(1960)
→ ジョン・コルトレーン/プレイズ・ブルース(1960)
→ ジョン・コルトレーン/オレ・コルトレーン(1961)
→ ジョン・コルトレーン/インプレッションズ(1961)
→ ジョン・コルトレーン/ライブ・アット・ザ・ビレッジ・ヴァンガード(1961)
→ ジョン・コルトレーン/ジョン・コルトレーンとジョニー・ハートマン(1963)
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投稿者 Jazz Blogger T : 21:19
チャールズ・ロイド/オール・マイ・リレイションズ
2005年10月24日
Chrales Lloyd / All My Relations
今日はチャールズ・ロイドのECM盤から素敵な1枚をご紹介しましょう。スエーデンを代表する耽美派ピアニスト、ボボ・ステンソンのピアノ伴奏が光る美しいアルバム。パーソネルは、チャールズ・ロイド(ts,fl)、ボボ・ステンソン(p)、アンダース・ジョーミン(b)、ビリー・ハート(ds)。1994年オスロ録音。ECM Records。
ECMとチャールズ・ロイドという意外な組み合わせには通常最初は違和感を持ちますね。ヤン・ガルバレクなら聞く前からだいたい想像がついて抵抗ないのですが、ロイドの粘着質のテナーとボボ・ステンソンに代表される独特の耽美的ECMサウンドがどんな音空間を形作るのか実際に聞くまでは予断を許さないという感じです。
まずもって2曲目Little Peace でのフルート演奏に耳を傾けますと清澄な世界が映し出されていて少し驚かされます。そのクールでブルージーな感覚が素晴らしい。乾いたフルートの音とステンソンの醒めたピアノの織り成す抽象的な音宇宙が均整のとれた調和を生んでいることに予想が良い方向に外れたことを感じさせられます。
そして、5曲目のEvanstide, Where Lotus Bloomの美しいステンソンのピアノ演奏と途中から満を持して出てくるロイドのテナーが素晴らしい空間を形作っています。特に、ステンソンのピアノの素敵なことといったら、私の朴訥な言葉ではうまく表現できないほどです。ジャズ・スピリットに裏打ちされたしっかりとしたグルーヴ感を伴った耽美的なピアノとでもいえましょうか。やはりボボ・ステンソンは最高という思いが湧き上がってきます。音楽美に打ちひしがれるとはこういう体験を言うに違いありません。チャールズ・ロイドの豪放なテナーがまた一段とたくましく感じられると同時にそこには切ない孤独の影が亡霊のように付きまとっているのです。この演奏のためだけにでも本アルバムを購入した甲斐があるというものです。
1. Piercing The Veil
2. Little Peace
3. Thelonious Theonlyus
4. Cape To Cairo Suite (Hommage To Mandela)
5. Evanstide, Where Lotus Bloom
6. All My Relations
7. Hymne To The Mother
8. Milarepa
Charles Lloyd (saxophone, flute, Chinese oboe); Bobo Stenson (piano); Anders Jormin (acoustic bass); Billy Hart (drums). Recorded at Rainbow Studio, Oslo, Norway in July 1994. Includes liner notes by Charles Lloyd.
JR.comでは試聴可能です。
→Chrales Lloyd / All My Relations
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投稿者 Jazz Blogger T : 21:20
ジョン・コルトレーン/マイ・フェイバリット・シングス
2005年10月08日
John Coltrane / My Favorite Thing
今日はジョン・コルトレーンの『マイ・フェイバリット・シングス』ですね。アトランティック時代のコルトレーンの音楽にはとても惹かれます。特にリズムが斬新です。本作はその典型的なもの。パーソネルは、ジョン・コルトレーン(ss,ts)、マッコイ・タイナー(p)、スティーヴ・デイヴィス(b)、エルヴィン・ジョーンズ(ds)。1960年録音。Atlantic。
アトランティック時代のコルトレーンは50年代末~60年代初の数年ですが、従来のハードバップからコルトレーン独自のシーツ・オブ・サウンドと呼ばれるモード手法のスタイルが確立された重要な時期に当ります。音楽自体も斬新でスリルに満ちた面白みのあるジャズの一世界を形作っていると言えましょう。私にとりましても機会ある毎に耳を傾ける愛着のある音楽です。ただ凡庸なジャケットのデザインだけは許しがたいものがありますが。
『ジャイアント・ステップス』(1958.3)
『コルトレーン・ジャズ』(1959.11)
『マイ・フェイヴァリット・シングス』(1960.10)
『アフリカ・ブラス』(1961.3)
『オレ!コルトレーン』(1961.3)
こうして列挙してみますと、コルトレーンの独特の体臭が発散されてくるのがわかります。努力の末に早吹きの超テクを身に着けて、その先に見つけたものはアフリカやインドなどへの回帰路線でありました。そして、そこには付随する新鮮なリズムの発展形が認められます。ベースやドラムに聞かれる従来にはない興味深い複雑性はコルトレーン音楽を際立った個性に仕立て上げる思わぬ副産物であったに違いありません。特に、スティーブ・デイヴィス、レジー・ワークマン、ジミー・ギャリソンらに受け継がれてゆくベースによる土着的な新しい響きにはコルトレーン音楽の哲学的な側面を顕在化させる一助になったと思われるものが感じられるのです。
それに、そのリズムの複雑性を確実に魅力的な音楽的なものとするのがエルヴィン・ジョーンズのドラムの卓越性にあります。ポリリズムと呼ばれるドラミングにはコルトレーンのサックスと対等に渡り合える華があります。表題曲のリズムに耳を傾けてみてください。「サウンド・オブ・ミュージック」の素敵な歌曲には到底似つかわしいとは思えないアフリカというか土の香りのする重いリズムなのですね。ベースとドラムとで形成するそのリズムにはよく聞けば聞くほどに不可思議な雰囲気がかもし出されていることに感心させられます。その上をコルトレーンのソプラノ・サックスが美しいメロディを分解しながら凄まじいソロを披露してゆきますが、その組み合わせの妙といいますか、そこには純然たる独自のコルトレーン音楽の存在を感じずにはおれません。
さらに、個人的な好みを加えさせていただけるなら、マッコイ・タイナーのピアノが私にとってはその美意識に共鳴することができるものであるということです。コルトレーンかマッコイかのいずれかが大抵の場合にソロを執っているのですが、たくさん出てくるマッコイのソロも実に魅力的だということです。例えば、1曲目の後半に聞かれるマッコイの長いソロなどは不思議な魅力のあるリズムを背景にしたとても興味ある新しい響きのピアノ・トリオ演奏になっています。本当に素敵な印象です。さらに、2曲目の可憐なマッコイ・タイナーのピアノには参ってしまいます。快調なリズムの上をひた走る右手のピアニズムに私はマッコイの好ましい美学を感じ取ることができます。
1. My Favorite Things
2. Everytime We Say Goodbye
3. Summertime
4. But Not For Me
John Coltrane (soprano & tenor saxophones); McCoy Tyner (piano); Steve Davis (bass); Elvin Jones (drums). Recorded at Atlantic Studios, New York, New York on October 21, 24 & 26, 1960.
iTunes Music Store では試聴可能です。→
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ John Coltrane / My Favorite Thing
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→ セロニアス・モンク/ウィズ・ジョン・コルトレーン(1957)
→ ジョン・コルトレーン/ブルー・トレーン(1957)
→ ジョン・コルトレーン/ソウル・トレーン(1958)
→ ジョン・コルトレーン/ジャイアント・ステップス(1959)
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→ ジョン・コルトレーン/インプレッションズ(1961)
→ ジョン・コルトレーン/ライブ・アット・ザ・ビレッジ・ヴァンガード(1961)
→ ジョン・コルトレーン/コルトレーン(1962)
→ ジョン・コルトレーン/ジョン・コルトレーンとジョニー・ハートマン(1963)
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投稿者 Jazz Blogger T : 21:21
ソニー・クリス/ディス・イズ・クリス
2005年10月05日
Sonny Criss / This Is Criss !
今日はソニー・クリスのワン・ホーン・アルバムをご紹介いたしましょう。そのソニー・クリスの明朗で腕達者なアルトはすでに50年代に開花していましたが本作での渋くて円熟味の増した演奏ぶりにはモダン・ジャズの最高の楽しみを如実に伝えてくれる説得力があります。パーソネルは、ソニー・クリス(as)、ウォルター・デイヴィスJr(p)、ポール・チェンバース(b)、アラン・ドーソン(ds)。1966年NJ録音。Prestige。
ソニー・クリスはそれほど著名とは言えない黒人アルト奏者ですが、その明るいフレージングと圧倒的な技術には50~60年代ソニー・スティットやキャノンボール・アダレイらと並ぶ最高の逸材を予感させるものがあります。ブルージーながらもスティット同様少し根アカ系の吹奏のために湿っぽさを好む日本のファンからはあまり省みられることが多くないジャズマンと言えるかもしれません。
ただし、本作はまさに直球アルト・ワン・ホーンの典型的見本のような上出来の内容ですので、サックス好きに限らずより多くのジャズ・ファンに味わっていただきたいお勧めのアルバムということになります。確かに、好き嫌いの別れる類でしょうし、上手すぎて味がないとか、陰翳感が足りないとか、いろいろなご批判もあろうかと思います。しかしながら、そのアルト1本でめくるめく官能的なソロを延々と続けるさまには、ジャズ本来の醍醐味といいますか、ジャズ・インプロヴィゼーションの面白みを直に感じ取れるのではないかと思われるのです。
1. Black Coffee
2. Days Of Wine And Roses
3. When Sunny Gets Blue
4. Greasy
5. Sunrise, Sunset
6. Steve's Blues
7. Skylark
8. Love For Sale - (bonus track)
Sonny Criss (alto saxophone); Walter Davis Jr.(piano); Paul Chambers (bass); Alan Dawson (drums). Recorded at the Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey on October 21, 1966. Originally released on Prestige (7511).
JR.comでは試聴可能です。→This Is Criss !
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Sonny Criss / This Is Criss !
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投稿者 Jazz Blogger T : 21:22
キャノンボール・アダレイ/キャノンボールズ・ボサ・ノヴァ
2005年10月04日
Cannonball Aderley / Cannonball's Bossa Nova
今日はキャノンボール・アダレイのボサノヴァの名盤をご紹介しましょう。『キャノンボールズ・ボッサ・ノヴァ』は本当に素晴らしいアルバムです。私にとってはあのスタン・ゲッツ、ジョアン・ジルベルト、アントニオ・カルロス・ジョビンらによる歴史的名作『ゲッツ・ジルベルト』に匹敵する内容と思われます。ボサノヴァを超一流のジャズマンの演奏で聞きますとこれはもう間違いなくこの世の究極の音楽となりますね。キャノボールやゲッツはその意味では最適な人材に違いありません。パーソネルは、キャノボール・アダレイ(as)、セルジオ・メンデス(p)他。1962年NY録音。Riverside Records。
キャノンボール・アダレイのアルト・プレイには安心して身を委ねられる円熟の至芸がありますね。こうしたボサ・ノヴァの名曲と最高の雰囲気のアレンジの下ではそうした特性が最大限に生かされると思われます。癒し系の音楽としてこれほど高級なものは他にないに違いないと私は自信を持って主張することができることでしょう。
例えば、3曲目の「コルコヴァド」に耳を傾けてみましょう。その素敵なアルトの響きと美しい主旋律にまず心を奪われますね。そして次第にキャノンボールのアルトが複雑なメロディをいとも簡単そうに醸し出し始めますとそこには広大な桃源郷の世界がひそやかに拡がってくるのです。深くて広くて豊かな世界観が心の深奥にじわりじわりと染み渡ってくるという感じですね。アダレイさん、本当にありがとう、と感謝に似た感情の高ぶりが心の中に満ち溢れてくるのが分かります。
ちょっと下世話な話ですが、私はこのアルバムが心底大好きで高く買っていますので、アマゾンに記された本アルバムについてのカスタマー・レビューのアダレイに対する低評価に対して本当に不愉快な気分にさせられてしまいます。本作のように素敵なアルバムを始めとしてリーダー作の多くがモダン・ジャズ史上の名作になっているアダレイのことをよくもまあ「もうひとつ冴えない」アルトとか何とか最もらしい批評ができるものかと怒り心頭であります。ジャズを心から愛する人々の気持ちを少しは考えてもらいたいと正直なところ思いますですね。キャノンボール・アダレイといえば50~60年代に当代髄一のアルト吹きと世間一般に広く認められた逸材であります。恐らくその某若無人の批評者は本当にはジャズの素晴らしさを理解していない、半端な人に違いないと私は勝手ながら確信しているのです。
全10曲。俗っぽいと言われれば、はい、すみません、とお応えせざる得ないのかもしれません。が、しかし、そこには、真のジャズマンのみが示しうる美しいジャズ的世界が確かに映し出されているとも言えるに違いありません。キャノンボールには俗に流されるよりもさらにその上を行く上質のセンスと技術が万全に備わっているのだと私は思います。その上、ボサノヴァの心地よい異質な雰囲気に包み込まれてはいますが、その中心部にはしっかりとしたジャズ魂の存在が根深くかつ確実に内在していることが感じられるのです。そのジャズ特有の自律性が魅惑のボサと融合してこそ、音楽の有する最高の境地の一面が発現されていることを感得せずにはいられません。本当に今日もありがとうと、とにかくお伝えしたい君こそ、キャノンボール・アダレイさんですぞよ。
1. Clouds
2. Minha Suadade
3. Corcovado
4. Batida Diferentes
5. Joyce's Sambas
6. Groovy Sambas
7. O Amor Em Paz :: Once I Loved
8. Sambops
9. Corcovado - (alternate take, bonus track)
10. Clouds - (single version, bonus track)
Personnel: Cannonball Adderley, Paulo Moura (alto saxophone); Pedro Paulo (trumpet); Sergio Mendes (piano); Durval Ferreira (guitar); Octavio Bailey, Jr. (bass); Dom Um Romao (drums). Producer: Orrin Keepnews. Reissue producer: Orrin Keepnews, Michael Cuscuna. Recorded at Plaza Sound, New York, New York on December 7, 10 & 11, 1962. Originally released on Riverside (9455).
JR.comでは試聴可能です。→Cannonballl's Bossa Nova
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Cannonball Aderley / Cannonballl's Bossa Nova
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投稿者 Jazz Blogger T : 21:22
ジョン・ジェンキンス/ジョン・ジェンキンスとケニー・バレル
2005年09月28日
John Jenkins / John Jenkins and Kenny Burrell
今日はジョン・ジェンキンスです。パーカー派の実力あるアルト・サックス奏者ですね。少し哀感のある麗しい音色と流麗な歌心があって私にとってはお好みのとても気になる存在ですが、その活動期間が1957~58年の1年に満たないという夢幻のようなジャズマンなのです。パーソネルは、ジョン・ジェンキンス(as)、ケニー・バレル(g)、ソニー・クラーク(p)、ポール・チェンバース(b)、ダニー・リッチモンド(ds)。1958年録音。BlueNote1576。
ほんとご無沙汰してしまいました。実は現在先週の土曜から名目は仕事ですが半分以上お遊びのような北海道出張中です。函館、札幌、小樽と来まして今週末は道東という8泊9日の旅です。今日は宿泊中のホテルからこのエノトリーを投稿しているのです。思えば先週の連休は今回の出張の準備などでほとんど休みのない1週間でしたが今週は時間的余裕が十分にあってやれやれというところです。
さらに余談が続きますが、今日は午後時間がありましたので小樽の街を散策してきました。札幌から電車で40分の距離で、レトロな建物がいっぱいの素敵な街ですね。昔は横浜、神戸に次いで盛んだった港、戦前は海軍基地などもあった街ですが、今は観光を中心としたのんびりした風情ある街です。お寿司屋さんが100軒ほども立ち並ぶ寿司屋通りというストリートがありまして思わず暖簾をくぐってしっかり食してまいりましたですよ。アワビやほたて、カニ、いくら等々、特に貝系が美味でした。ここんとこ毎日のようにラーメンと寿司三昧の日々ですので感激はそれほどでもないという贅沢極まりない感想になりますですが。
小樽の街は運河があったりレンガ造りの古くて立派な建造物がそこかしこに見られたりするいい感じの街並ですが、その一角に蔵を1軒ごとお店にしたジャズ喫茶が目につきまして思わず入ってしまいました。名はFree-Lance。2階にはモノクロ写真が飾ってあったりしてお洒落な空間になっています。ここで今日は久しぶりにテテ・モントリューのピアノを聞きました。トリオ演奏です。さすがにうれしくなりました。独特の早弾きピアノにはそこかしこにクセが見つけられますが、そうそうこれがテテ・モントリューだと一人ごちるというわけですね。Free-Lanceのwebサイトはこちら。→Free-Lance
前置きが長くなって肝心のジョン・ジェンキンスのことを忘れそうになってきましたね。本作はiPodに入れてこの旅の期間中、飛行機の中やそこかしこで何度も繰り返し聞いてます。そういえば往きの飛行機ANAのスチュワーデスさん、いや今はキャビンアテンダントと言うのでしたね、その中に素敵な方がいらっしゃいました。一番前の座席でしたのでついつい見とれてしまいましたですね。何度も目が合いましたが先方も慣れているのかさわやかな微笑でさらりとかわすというような感じですね。愛想良くいろいろお世話をしていただきますとますます鼻の下を長くしてしまうという我ながらみっともない中年おじさんを実感したのでした(笑)。
それとついでですがつい先ほど夕食にラーメン屋で味噌&麺をすすっていましたら、そこに地方の場末のお店には全く似つかわしくないこれまた素敵すぎる妙齢の美女が一人で入って来られましたですね。店員さんとその方の話に耳を傾けていますと東京から来たとかで、その立ち居振る舞いと受け答えの洗練された品のあることといったら、ああ今もまたため息が出てしまいそうですね。恥ずかしながらいい年になっても旅中にいますとついつい色気づいてしまう今日この頃です。もちろん言うまでもなく今こうしてホテルの一室で一人ブログに向かっているということは残念ながらその後何もなしというわけですがね、ふふふ。まあこの禁欲生活、いつまで持ちますことやら当人にとっては全く自信はありません。
というわけで紙数がつきてきましたので、ジョン・ジェンキンスさんのことはまた次回に、とか、いやそういうわけにもまいりませんですね(笑)。ここ数日毎日のようにiPodで聞いていますし、そのアルトの響きに惚れ込んでいるのですから。ジャッキー・マクリーンに似ているとか言われますが、私にはマクリーンよりも上手い上に音色に艶があるように聞こえますよ。マクリーンにはぶきっちょなところがあって、それがまた彼の魅力でもあるのですが、ジョン・ジェンキンスにはこれといった欠点がないと思えるくらいに優等生なのです。クセがないってのは癖もの?なのかもしれません。
サイドにケニー・バレルとソニー・クラークが参加していることが本作を決定的に素晴らしいものにしています。ジェンキンスのワン・ホーンにバレルのギターが一枚加わることで厚みのあるサウンドになり、ソニー・クラークのピアノがブルージーな雰囲気の外枠をしっかりと埋めています。ブルーノートの1500番台の多くはハードバップの名作です。本作もあまり目立ちはせずともジェンキンスの快調なアルトを記録した貴重で内容の濃い純正ハードバップの隠れた名作といえるでしょう。いや~本論が短かくてあっさりしすぎですね。サッポロラーメンのこってり具合とは対照的!
1. From This Moment On 7:37
2. Motif 6:14
3. Everything I Have Is Yours 6:10
4. Sharon 7:47
5. Chalumeau 5:56
6. Blues For Two 4:42
7. Sharon [stereo take] 6:27
8. Chalumeau [stereo take] 5:58
John Jenkins (as), Kenny Burrell (g), Sonny Clark (p), Paul Chambers (b), Dannie Richmond (ds). Recorded at 1958.2.9.
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ John Jenkins / John Jenkins and Kenny Burrell
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投稿者 Jazz Blogger T : 21:24
フィル・ウッズ/ウォーム・ウッズ
2005年08月28日
Phil Woods / Warm Woods
今日はフィル・ウッズの50年代の傑作『ウォーム・ウッズ』です。パーカー直系のテクニックとフレージングに抜けのよい明朗な音色でハード・バップを代表するアルト奏者。まさに安心して聞けるジャズです。パーソネルは、フィル・ウッズ(as)、ボブ・コーウィン(p)、ソニー・ダラス(b)、ニック・スタビュラス(ds)。1957年録音。
フィル・ウッズのアルトは同じ白人のアート・ペッパー、ポール・デスモンド、リー・コニッツらよりは、むしろソニー・スティットやソニー・クリスらの黒人のアルトに近いものを感じます。それはパーカー直系のフレージングによるのかもしれません。特に50年代のウッズは音色に柔らかな憂いがある上、あまり黒っぽいクセもなく取り付きのよい正統派アルトといえましょう。
本作はPrestige『ウッドロア』(1955)と並んでウッズ初期の代表作です。明るい西海岸の太陽を思い起こさせるようなとても爽快なワンホーン・アルバムに仕上がっています。スタイルこそ違いますが、やはりテクニックと歌心のあるズート・シムスのテナーに聞かれる潔さと同類の心地よさを感じますね。とにかく一点の曇りもなく明るく前向きに歌い上げます。その志と技量にはただ感服する思いです。
全8曲。いい感じです。自然と気持ちが華やかになってきますね。圧倒的なテクがあり歌があり、余裕を感じさせる見事な吹奏です。ハードドライビングに高い側に吹き切られた音はちょっと付いてゆけないかもしれませんが、中音域の人間的な木質の響きには妙に惹かれるものを感じます。
1. In Your Own Sweet Way
2. Easy Living
3. I Love You
4. Squire's Parlor
5. Wait Till You See Her
6. Waltz For A Lovely Wife
7. Like Someone In Love
8. Gunga Din
Phil Woods (as), Bob Corwin (p), Sonny Dallas (b), Nick Stabulas (ds). Rec Date: Sep.11, Oct.18, Nov.8,1957.
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Phil Woods / Warm Woods
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投稿者 Jazz Blogger T : 21:24
キャノンボール・アダレイ/イン・サンフランシスコ
2005年08月21日
Cannonball Adderley / In San Francisco
今日はキャノンボール・アダレイの人気盤『イン・サンフランシスコ』です。ファンキーで最高にノリのよい実に素晴らしいライブ演奏。パーソネルは、キャノンボール・アダレイ(as)、ナット・アダレイ(cor)、ボビー・ティモンズ(p)、サム・ジョーンズ(b)、ルイス・ヘイズ(ds)。1959年サンフランシスコ録音。Riverside Records。
キャノンボール・アダレイの特徴ある声のアナウンスで始まるライブ録音。アルト・サックス同様に結構におしゃべりだったのかもと思わせる多弁ぶりです。You know what I mean? というキャノンボールの口癖が何度も聞こえてきておもしろいですね。ビル・エヴァンスとの名共演盤の題名にもなったあの"Know what I mean?"です。
キャノンボール・アダレイのアルト・サックスは安心して耳を傾けることができますね。完全にコントロールされたアルトですからね。駄作がないと言ってよいほどの名アルト吹きだと思われます。テクニック、歌心、リズム感、音色、何をとっても欠点らしきものが見当たらず、チャーリー・パーカー以後のハード・バッパーの中でも屈指のアルト奏者に違いありません。
私にとってのキャノボール・アダレイはもう好きとか嫌いとかの些末な私心を超越した偉大なるアルト職人というところです。本作でもその最高水準のアルトが相変わらずの鋭い切れ味を示しています。もう、キャノン様にかかれば、モードだろうがファンキーだろうがボサノヴァだろうが何でもござれといった按配です。さらに、本作では息の合ったコルネット奏者の弟ナット・アダレイを従えて自他共に完全にキャノンボールがリーダーであり、またライブ演奏ということもあってか、キャノンボールの奔放で自由な吹奏を十分に堪能することができます。
ボビー・ティモンズの参加と最初の1曲目がティモンズ作のThis Hereだったりして、確かにファンキー調が際立ってはいます。ただこれは当時のハード・バップのライブ・ジャムセッションとしては総じてこんなものだったに違いないと思えるのです。全6曲。うち5曲が10分前後の長尺演奏です。その時間を全く感じさせないノリに乗った快演です。典型的なハード・バップの醍醐味とスリルを見事に伝える好演と言えるでしょう。それにナットもボビーも申し分のない出来であることを付け加えておかねばなりません。
1. This Here (12:27)
2. Spontaneous Combustion (11:52)
3. Hi-Fly (11:07)
4. You Got It! (5:04)
5. Bohemia After Dark (Birdland After Dark) (8:03)
6. Straight, No Chaser - (bonus track) (11:43)
Cannonball Adderley (alto saxophone); Nat Adderley (cornet); Bobby Timmons (piano); Sam Jones (bass); Louis Hayes (drums). Recorded live at The Jazz Workshop, San Francisco, California on October 18 & 20, 1959.
詳しくは試聴もできるアマゾンでどうぞ。→ In San Francisco
キャノンボール・アダレイ関連の過去エントリー
→ キャノンボール・アダレイ『ノウ・ホワット・アイ・ミーン』(1961)
→ キャノンボール・アダレイ『イン・シカゴ』(1959)
→ キャノンボール・アダレイ『サムシン・エルス』(1958)
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投稿者 Jazz Blogger T : 21:25
アート・ペッパー/ジ・アート・ペッパー・カルテット
2005年08月18日
Art Pepper /The Art Pepper Quartet
今日はアート・ペッパーの名作『ジ・アート・ペッパー・カルテット』です。名演「ベサメ・ムーチョ」をはじめとして憂いと艶のあるアート・ペッパーのアルトが連綿と冴え渡ります。パーソネルは、アート・ペッパー(as)、ラス・フリーマン(P)、ベン・タッカー(b)、ゲイリー・フロマー(ds)。1956年ハリウッド録音。Tampa Records。
やはりアート・ペッパーの56年後半の録音はいいですね。奇跡の半年と言えましょう。ペッパー生涯の名作がこの時期に集中しています。下にそれらを列記してみました。本作は④に相当します。すでに他に3作についてエントリー済みです。
①The Return of Art Pepper (Jazz West) 1956.8. →「リターン・オブ・アート・ペッパー」
②Marty Paich Quartet Featuaring Art Pepper (Tampa) 1956.8~9.
③Playboys/Chet Baker & Art pepper 1956.10.
④Art Pepper Quartet (Tampa) 1956.11.
⑤Modern Art (Intro) 1956.12~57.1. →「モダン・アート」
⑥Art Pepper Meets the Rythm Section (Contemporary) 1957.1. →「アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション」
ブルースやラテン系のリズムでのペッパーの特徴あるアルトの響きは何とも魅力的なものですね。湿っぽい泣きの入った音、人情の機微を示すような繊細な表情に富む音なのです。そのマイナー調の芳しい音の連なりが自在かつ巧みに操られて次から次に繰り出されてくるのです。ペッパーのアルトを聴くこと、それはまさに最高の快楽の一つと言ってよいくらいに至福の時に思われます。
少し誉め過ぎかもしれませんが、実際、ペッパーを聞きながら時にその種の感激を味わう瞬間がままあることは紛れもなく事実です。日本の演歌の懐かしい風情を洋楽に移してカッコよくしたような印象とでも言いましょうか。心に響くものを感じるのですね。収録は全7曲。プラス別テイク5曲。いずれも絶好調のペッパーです。得意のミディアム・テンポのブルースが主体です。3曲目の妻のことを曲にした美しい曲調のDianeや6曲目の渋めのブルースBlues At Twilight などに聞かれる麗しい演奏は忘れがたいものがあります。
1. Art's Opus
2. I Surrender, Dear
3. Diane
4. Pepper Pot
5. Besame Mucho
6. Blues At Twilight
7. Val's Pal
8. Pepper Pot - (alternate take)
9. Blues At Twilight - (alternate take)
10. Val's Pal - (alternate take)
11. Val's Pal - (alternate take)
12. Val's Pal - (alternate take)
Art Pepper (alto saxophone); Russ Freeman (piano); Ben Tucker (bass); Gary Frommer (drums). Recorded in Hollywood, California on November 25, 1956.
JR.comでは試聴可能です。→Art Pepper /The Art Pepper Quartet
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Art Pepper /The Art Pepper Quartet
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投稿者 Jazz Blogger T : 21:30
ウェイン・ショーター/ネイティブ・ダンサー
2005年08月15日
Wayne Shorter / Native Dancer
今日はウェイン・ショーター70年代の人気盤『ネイティブ・ダンサー』を聞いています。ミルトン・ナシメントを迎えたブラジル色の濃い心地よいクロス・オーバー音楽。ショーターの宙に拡散するソプラノと高い音楽性が豊穣で優しい空間を醸し出しています。パーソネルは、ウェイン・ショーター(ss,ts)、ミルトン・ナシメント(g,vo)、ハービー・ハンコック(p)、アイア-ト・モレイラ(ds)他。1974年LA録音。Capitol Records。
ウェイン・ショーターの音楽は私のお好みの一つです。ジャズ・メッセンジャーズ、マイルス・デイヴィス・クインテット、ウェザー・リポートとデビュー以後ジャズ界最前線で常に活躍をしてきました。近年もライブ活動を行い、そのベスト・アルバムが2枚ほど立て続けに素晴らしい内容で話題を呼んでいますね。
私の中では60年代までのショーターがやはり一番で、正直なところウェザー・リポートらの70年代以降の音楽には少し距離を感じてきました。そう言いつつ少しずつでも、わがショーターへの理解を深めるべく探索活動は続けておるというわけでして、本作はつい最近の成果の一つと言えるものです。本来的にブラジル音楽への嗜好が強い私にとりましては極めて取り付きのよいwelcomeな内容なのですね。
ナシメントの歌声によってボサノヴァ独特のけだるい雰囲気が流れているところへ、ショーターの広がりのあるおおらかなサックスが響きます。これはリゾート音楽ですね。モダン・ジャズとはかなり遠い世界。ショーターの間口の広い音楽性がすべてを包容してくれるようです。
全9曲。一番のお勧めは8曲目Lilia。その先鋭的なリズムがおもしろいですね。感性の確かさを感じさせられます。ショーターのソプラノも素晴らしい。それに3曲目のTarde。こちらは心地よいブラジル音楽です。ナシメントのボーカルに絡みつくショーターのテナーがエロティックな空間を形作ります。それに4曲目Miracle of the Fishesでのショーターらしいアブストラクトなサックスのインプロヴィゼーションが素晴らしいっす。あと9曲目Joanna's Themeではハービー・ハンコックの美しいアコースティック・ピアノとショーターの透明なソプラノのランデブーが聞かれます。映画「狼よさらば」のためにハンコックが作った曲。
1.Ponta de Areia
2.Beauty and the Beast
3.Tarde
4.Miracle of the Fishes
5.Diana
6.From the Lonely Afternoons
7.Ana Maria
8.Lilia
9.Joanna's Theme
Wayne Shorter (soprano & tenor saxophones); Milton Nascimento (vocals); Herbie Hancock, Airto Moreira, Dave McDaniel, Roberto Silva, Wagner Tiso, Jay Graydon, Dave Amaro. Recorded at Village Recorders, Los Angeles, California on September 12, 1974.
JR.comでは試聴可能です。→Native Dancer
アマゾンでも試聴可能です。→Native Dancer
ウェイン・ショーター関連の過去エントリー
→ ウェイン・ショーター『アダムス・アップル』(1966)
→ ウェイン・ショーター『預言者』(1965)
→ ウェイン・ショーター『イントロデューシング』(1959)
→ マイルス・デイヴィス『プラグド・ニッケルのマイルス・デイヴィス』(1965)
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投稿者 Jazz Blogger T : 21:27
ジョニー・グリフィン/イントロデューシング・ジョニー・グリフィン
2005年07月28日
Johnny Griffin/Introducing Johnny Griffin
今日はジョニー・グリフィンのBN初リーダー作の『イントロデューシング』です。シカゴ出身のパワフルなテナー奏者ジョニー・グリフィンにとってアーゴ盤『JG』に次ぐ2枚目のリーダー作品です。パーソネルは、ジョニー・グリフィン(ts)、ウィントン・ケリー(p)、カーリー・ラッセル(b)、マックス・ローチ(ds)。1956年NY録音。BlueNote1533.
何とも凄いテナーです。力強い音色と完璧なテクニック、それに尽きることのない歌心。ソニー・ロリンズやジョン・コルトレーンらの最高峰と比肩できる数少ないテナーの一人に違いありません。単純に楽しめるという点ではむしろ彼らの上を行く存在かもしれないと私は密かに感じているのです。
私がそうしたグリフィンのテナーに初めて接したのはセロニアス・モンクのファイブ・スポットでのライブ盤『ミステリオーソ』でした。ジャズに興味を抱いて間もない大学1年時に大阪千日前のワルツ堂にて中古品で購入したのでした。そしてそのブローしまくるテナーの魅力にはすぐに参ることになります。ワン・ホーンで難なく何コーラスも吹ききってまさに独壇場とするその芸当には年季の入った職人気質の仕事に通じるものを感じるのでした。
本作はシカゴからNYに出てきてすぐのBN初登場のアルバムですが、その圧倒的なテナーが全開しています。全く申し分のない上質のジャズに仕上がっています。上手すぎて俗に流される少し手前で流石に一流のジャズメンとしてのバランスが示されていまして、音楽的に十分に楽しめるというところが味噌なのです。テナーのワン・ホーン・アルバムの最高の一枚と断言できるほどの内容と言えると思われます。
全7曲。ほぼ全曲でグリフィンの見事なソロを聞くことができます。その余裕たっぷりのブロー具合というのはグリフィンの真骨頂を表しているものと思われます。7曲目ラバーマンなどでのソロにはユ-モアも感じられると同時にそのスポンテイニアスで自在な吹奏はほとんど千両役者の一人舞台というやつです。ほんと凄いです。ピアノのウィントン・ケリーも当時まだ無名に近い存在ながら当然のごとくに味のあるピアノを聞かせてくれます。
1. Mil Dew
2. Chicago Calling
3. These Foolish Things
4. Boy Next Door
5. Nice And Easy
6. It's Alright With Me
7. Lover Man
Johnny Griffin (ts), Wynton Kelly (p), Curly Russell (b), Max Roach (ds). NYC. 1956. 4. 17.
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Johnny Griffin/Introducing Johnny Griffin
関連エントリーはこちら。
→ジョニー・グリフィン『JG』
→セロニアス・モンク『ミステオリオーソ』
→ウェス・モンゴメリー『フルハウス』
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投稿者 Jazz Blogger T : 21:32
ジョン・コルトレーン/インプレッションズ
2005年07月22日
John Coltrane / Impressions
今日はジョン・コルトレーンの『インプレッションズ』といきましょう。パーソネルは、ジョン・コルトレーン(ss,ts)、エリック・ドルフィー(bcl)、マッコイ・タイナー(p)、レジー・ワークマン、ジミー・ギャリソン(b)、エルヴィン・ジョーンズ(ds)。1961~3年録音。Impulse Records。
このジョン・コルトレーン『インプレッションズ』は学生時代に狭い下宿でいやというほど繰り返し聴いた思い出深いアルバムなのです。特に1曲目の「インディア」。レジー・ワークマンとジミ・ギャリソンの2ベースにエルヴィン・ジョーンズのドラミングが作り出すインド風東洋的なリズムの上をコルトレーンのソプラノ・サックスとドルフィーのバスクラが哲学的な響きでもって駆け抜けて行きます。この耳慣れない不可思議な音世界に私は妙に魅かれるのでした。貧相でむさ苦しい下宿部屋が広大な宇宙に繋がる感覚というのでしょうか、ジャズ音楽に象徴される「自由」の感覚を満喫させてくれるのでした。
ライブ演奏の1曲目と3曲目「インプレッションズ」の2曲は名作『ライブ・アット・ザ・ビレッジ・ヴァンガード』と同じ時(61年)の録音なのですね。残りは後の62年と63年のスタジオ録音を追加したものです。60年代に入ってコルトレーンはインド音楽、特に、第一人者ラヴィ・シャンカールに影響を受けます。後にビートルス、特にジョージ・ハリソンがもっと直接的に影響を受けてロックの世界にインド伝統楽器シタールが入り込みましたよね。
50年代のジャズとは明らかに一線を画する新しい感覚です。これは、コルトレーンの『オレ・コルトレーン』以降のアトランティックやインパルス・レーベルでドルフィーが参加した一連の作品にそのニュアンスが感じ取れます。アフリカ回帰や東洋思想というところでしょうか。西洋的でない哲学的で内省的な世界としてのジャズの一端が映し出されています。
1. India - (live)
2. Up 'Gainst The Wall
3. Impressions - (live)
4. After The Rain
5. Dear Old Stockholm - (bonus track)
John Coltrane (ss,ts); Eric Dolphy (bcl); McCoy Tyner (p); Reggie Workman, Jimmy Garrison (b); Elvin Jones, Roy Haynes (ds). Producer: Bob Thiele. Reissue producer: Bryan Koniarz. Recorded at the Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey on September 18, 1962. and April 29, 1963. and live at the Village Vanguard, New York, New York on November 3, 1961.
JR.comでは試聴可能です。→John Coltrane / Impressions
iTunes Music Store では試聴可能です。→
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ John Coltrane / Impressions
関連エントリーはこちら。
→ セロニアス・モンク/ウィズ・ジョン・コルトレーン(1957)
→ ジョン・コルトレーン/ブルー・トレーン(1957)
→ ジョン・コルトレーン/ソウル・トレーン(1958)
→ ジョン・コルトレーン/ジャイアント・ステップス(1959)
→ ジョン・コルトレーン/マイ・フェイバリット・シングス(1960)
→ ジョン・コルトレーン/プレイズ・ブルース(1960)
→ ジョン・コルトレーン/オレ・コルトレーン(1961)
→ ジョン・コルトレーン/ライブ・アット・ザ・ビレッジ・ヴァンガード(1961)
→ ジョン・コルトレーン/コルトレーン(1962)
→ ジョン・コルトレーン/ジョン・コルトレーンとジョニー・ハートマン(1963)
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投稿者 Jazz Blogger T : 21:33
ジェリー・マリガン/アット・ストリーヴィル
2005年07月20日
Gerry Mulligan / At Storyville
今日はジェリー・マリガンの『アット・ストリーヴィル』です。マリガンはチェット・ベイカーとの双頭カルテットを解散した後の54年にトロンボーンのボブ・ブルックマイヤーとコンビを組んで60年台初頭まで活動を行います。シンプルなジャズ・センスと精妙なアンサンブルを大変好ましく感じています。パーソネルは、ジェリー・マリガン(bs)、ボブ・ブルックマイヤー(tb)、ビル・クロウ(b)、デイヴ・ベイリー(ds)。1956年録音。Pacific Jazz。
私はこの時期のマリガンが好きです。本作や『パリ・コンサート』などのライブ盤が特にお好みで気軽に頻繁に聞いてきたアルバムです。マリガンのバリトンの魅力を一言で表現するのは容易ではありませんが、その搾り出されてくる苦みばしった音色と確かなスイング感が独特の味があってある種クセになるものがあります。
その端的なところは、例えば、3曲目Baubles Bangles And Beads に聴くことができます。ミディアム・テンポのブルース調の曲でして、マリガンのソロが実に見事なアヤを示しています。焚き火などで木を燃やしたりしている際に、時折バキっという金属音が鳴ることがあります。あれは木が割れる音だと思いますがマリガンのバリトンも丁度そのような音を発するのです。それはまさに急速調で力強いアドリブ・ソロを演っている最中によく鳴ります。それが私の場合に一種の快感となるのです。
ブルックマイヤーの柔らかい音と心地よい対照を形作っていることも成功している点だと思います。それにビル・クロウのベースがしっかりとした時を刻んでいましてこれがまたよいのですね。ビル・クロウと言えばそのジャズ関連の著作でも有名ですね。例えばこちら。→ ビル・クロウ / ジャズ・アネクドーツ
全15曲。米国東海岸ボストンにある老舗「ストリーヴィル」でのライブ録音。50年という時の隔たりがあまり感じられません。聴衆の話声がしきりに聞こえ、拍手もまばらで、こじんまりしたジャズ・クラブの雰囲気がとてもいいですね。ジャズのことが好きになるにつれてマリガンの音楽をもっと聞きたくなる、私の場合はそんな印象があって、本作はそうした意味で大変貴重な一枚なのです。
1. Bweebida Bwobbida
2. Birth Of The Blues
3. Baubles Bangles And Beads
4. Rustic Hop
5. Open Country
6. Storyville Story
7. That Old Feeling
8. Bike Up The Strand / Utter Chaos
9. Blues At The Roots
10. Ide's Side
11. Can't Get Started
12. Frenesi
13. Flash
14. Honeysuckle Rose
15. Limelight / Utter Chaos
Gerry Mulligan(bs), Bob Brookmeyer(tb), Bill Crow(b), Dave Bailey(ds). Pacific Jazz 1228. 1956.12.録音.
JR.comでは試聴可能です。→Gerry Mulligan / At Storyville
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Gerry Mulligan / At Storyville
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投稿者 Jazz Blogger T : 21:34
フィル・ウッズ/フィル・アンド・クイル
2005年07月14日
Phil Woods / Phil and Quil
今日はフィル・ウッズのアルトに耳を傾けています。ジーン・クイルとの2サックス盤『フィル・アンド・クイル』。50年代のフィル・ウッズは正統なパーカー派というだけでなくその憂いのある美しいアルトの響きに独特の魅力があって忘れがたい名白人サックス奏者です。パーソネルは、フィル・ウッズ、ジーン・クイル(as)、デイブ・マッケナ(p)、バディ・ジョーンズ(b)、シャドウ・ウィルソン(ds)。1957年録音。
フィル・ウッズは50年代以降も常に第一線で活躍してますが、60年代以降は金属的な音色とハード・ドライビングでラジカルな印象です。私にとってはデビュー間もない50年代半ばのフィル・ウッズがお好みです。初めてウッズに接したのは丁度その頃のクインシー・ジョーンズ『私の考えるジャズ』でしたが、その角ばっていながらしなやかで湿っぽいところのある特徴的なアルトの響き、それにパーカー直系の細やかでリリカルなフレージングにはつくずく納得させられまして、フィル・ウッズの存在が大きく輝いて見えるのでした。
フィル・ウッズとジーン・クイルの2アルトによる心地よいサックス・バトルが快調かつハード・バッピシュに繰り広げられています。2サックスによる麗しいユニゾンやハーモニーもなかなか魅力があるのですよね。各々のソロも目一杯楽しめまして、まさに元気が出てくるジャズですね。ウッズのアルトを存分に味わうのにとても適した快演になっています。
全11曲。ミディアム・テンポの曲調が中心です。いずれも最初の出だしのテーマ紹介のところが2サックスによるアンサンブルでそれぞれに工夫が施されています。とてもいい具合なのです。各ソロになりますと申し分のないハード・バップの香りが思い切り発散されていまして、自然とご機嫌な気分になってくるのです。4、10、11曲目など、渋いブルース系の曲ではウッズのしなやかなアルトが冴えわたっていますね。
1. Sax Fifth Avenue
2. Ready Rudy
3. Cabeza
4. Twin Funkies
5. Rib Roast
6. High Stepping Bizzes
7. Four Flights Up
8. Dig Your P's And Q's
9. Dry Chops In The Moonlight
10. Pottsville, U.S.A.
11. Frank The Barer
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Phil Woods / Phil and Quil
関連エントリーはこちら。→クインシー・ジョーンズ『私の考えるジャズ』
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投稿者 Jazz Blogger T : 21:35
スタン・ゲッツ/スウィート・レイン
2005年07月11日
Stan Getz / Sweet Rain
今日はスタン・ゲッツですね。『スウィート・レイン』は60年代後半のゲッツの名作です。ボサノヴァ・ムーブメントで一世を風靡したスタン・ゲッツはデビュー間もないチック・コリアを招いて新世代のジャズにトライしています。パーソネルは、スタン・ゲッツ(ts)、チック・コリア(p)、ロン・カーター(b)、グラディ・テイト(ds)。1967年録音。Verve Records。
スタン・ゲッツについてはすでに何枚かのアルバムをご紹介しています通り、私の好みはやはり50年前後のクールなゲッツなのです。本作は60年代の作品ながら全体を覆う雰囲気にはそこはかとなくクールな臭いが漂っています。本作を好ましく思える理由を敢えて挙げるとすればそういうことかなと思います。このクールの源を探り当てようとしますとその背後に当時のウェイン・ショーターの影響を感じずにおれません。テナー・スタイルだけでなくその音楽性にもショーターの持つ独特の覚醒した宇宙感の臭いを私は捉えてしまいます。
スタン・ゲッツは50年代以降は稀代のメロディニストにしてさらにエネルギッシュさを加えつつ60年代前半にはアントニオ・カルロス・ジョビンやジョアン・ジルベルトらと共にボサノヴァ音楽の勃興に一役買って大ブレイクします。本作はそのブームが少し落ち着いた頃の録音で、ボサノヴァ系でなく正統なモダン・ジャズです。マイルス・デイヴィスのグループがウェイン・ショーターを音楽監督としてショーター色の強いアルバムを4部作を世に送っていた頃です。
本作へのチック・コリアの参加とショーター風のゲッツの吹奏が新世代ジャズを感じさせてくれます。1曲目や3曲目を聞けばその特質は明らかです。チック・コリアの硬質なタッチが素敵な空間を創っていてとりわけ美しいですね。3曲目のゲッツの幻想的なソロも格別のものがあります。王様スタン・ゲッツのテクニックを持ってすれば何でもござれというところなのでしょう。あんたが大将、あんたが一番。
1. Litha 8:33
2: O Grande Amor 4:45
3: Sweet Rain 7:12
4: Con Alma 8:08
5: Windows 8:58
Stan Getz(ts), Chick Corea(p), Ron Carter(b), Grady Tate(ds). Rec. on Mar. 30, 1967.
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Stan Getz / Sweet Rain
関連エントリはこちら。
→ スタン・ゲッツ/スタン・ゲッツ・クァルテット (1949, 50)
→ スタン・ゲッツ/ザ・サウンド (1950, 51)
→ スタン・ゲッツ/スタン・ゲッツ・プレイズ (1952)
→ スタン・ゲッツ/スタン・ゲッツ&ビル・エヴァンス (1964)
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投稿者 Jazz Blogger T : 21:36
チャーリー・パーカー/ナウズ・ザ・タイム
2005年07月07日
Charlie Parker / Now's The Time
今日はチャーリー・パーカーの名作『ナウズ・ザ・タイム』といきましょう。やはりチャーリー・パーカーのアルト・サックスを聞かずしてジャズを語ることはできません。40年代後半から50年代前半にかけてパーカーが残したアルバム群にはその後のモダン・ジャズ・サックスの本質的な全容がまるで達人のデッサンのごとくに明瞭に描き出されています。パーソネルは、チャーリー・パーカー(as)、アル・ヘイグ、ハンク・ジョーンズ(p)、テディ・コティック、パーシー・ヒース(b)、マックス・ローチ(ds)。1952、53年NY録音。Verve。
チャーリー・パーカーのアルバムの中で最も好きなものは以前にご紹介したダイアル・セッションの名演を集めた『バード・シンボルズ』です。理性的に抑制されたバラード演奏にバランス感覚に優れた極上のジャズ・センスを感じ取ることができます。アドリブを知り尽くした天才プレイヤーが研ぎ澄まされた神経で刻んだ選りすぐられた音の連なりにはあたかも崇高な精神性が宿っているようです。
その天才のアドリブの全体像をそこそこの音質で聴くのに最も適した一枚が本作の『ナウズ・ザ・タイム』だと思います。40年代のダイアルやサヴォイの各レーベルにこそ絶頂期のパーカーが捉えられているのでしょうが、如何せん音質がいまいちのために日常的に鑑賞するには少し面白みに欠けるきらいがあるのですね。
その圧倒的なアドリブ(というよりインプロヴィゼーションという方がパーカーの場合は当っているかもしれませんが)に耳を傾けますと、すでにその後50年に及ぶジャズの歴史の基礎がすでに築かれていることが明らかになります。そう、すでにパーカーが40年代の後半にほぼ完成したアドリブ様式であって、その後の多くのジャズマン、特にサックス奏者はほぼすべてそのパーカー流を踏襲しているのだなといったことが分かるでしょう。
パーカーのクセと思えるような個性的なフレージングまでもがバップのスタンダードのアドリブ様式の一部になっているようにも聞こえます。少々思い入れが過ぎるかもしれませんが、それくらいに普遍性に富んだものを提示しているように思われます。確かにその後のハード・バッパー達の音と純粋に比較すればパーカーは少し手先が器用かなという程度に聞こえるかもしれませんが、彼以前にはこうした奏法をする人がいなかったということを考慮すればその真価はおのずと定まってくるのですね。
全13曲。別テイクが5曲も入っています。パーカーのアルトの音色はすぐにそれと分かるくらいに個性的な音ですし、そのアドリブラインは完全にコントロールされ余裕に満ちた高度なものです。非凡な才能を感じずにはおれません。例えば7~10曲目Chi-Chiでの4つの別テイクを通して繰り返しパーカーの至芸を味わうこと、それはモダン・ジャズの本質に限りなく近づいていることを意味しているに違いありません。
1. Song Is You
2. Laird Baird
3. Kim
4. Kim [Alternate Take]
5. Cosmic Rays
6. Cosmic Rays [Alternate Take]
7. Chi-Chi
8. Chi-Chi [Alternate Take1]
9. Chi-Chi [Alternate Take2]
10. Chi-Chi [Alternate Take3]
11. I Remember You
12. Now's the Time
13. Confirmation
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Charlie Parker / Now's The Time
関連エントリーはこちら。
→チャーリー・パーカー『バード・シンボルズ』
→チャーリー・パーカー『ジャズ・アット・マッセイ・jホール』
→チャーリー・パーカー『バード・アンド・ディズ』
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投稿者 Jazz Blogger T : 21:37
ジョン・コルトレーン/ソウル・トレーン
2005年07月06日
John Coltrane / Soul Trane
今日はジョン・コルトレーンですね。『ソウル・トレーン』はコルトレーンのワン・ホーン・アルバムとして実力&内容ともに最高の頂点を示した一枚に違いありません。自信に満ちた力強いテナーの響きは60年代とはまた異なる輝きに満ちています。パーソネルは、ジョン・コルトレーン(ts)、レッド・ガーランド(p)、ポール・チェンバース(b)、アート・テイラー(ds)。1958年2月録音。Prestige Records。
ジョン・コルトレーンのサックスの魅力はジャズに深入りすればするほど増大してくるように思われます。その真価を把握することは容易でないということの証なのかもしれません。虎穴に入らずんば虎子を得ずの例えのごとく、山なみの奥深くに分け入らないとその頂を見ることができないという類なのでしょうか。コルトレーンはいつもそこに悠然と佇んでいるのでした。
本作の深い味わいを噛みしめることができる境地に自分もようやく達することができてとても幸せに感じられる今日この頃なのです。57年の『ブルー・トレーン』(BN1577)、59年の『ジャイアント・ステップス』(atlantic)の有名作に挟まれて少し地味目の本作ですが、この『ソウル・トレーン』(prestige)こそがコルトレーンが示した最高の頂点ではないかと密かに思うというわけです。ここにコルトレーンの真髄があると。
60年代以降も納得できる部分があります。特に61年くらいまでは。それ以降はちょっとついていけません。『バラッド』なども名盤の誉れが高いですが、本作『ソウル・トレーン』の2曲のバラッド演奏を聴けばはるかに生命力に溢れていることがわかるはずです。『バラッド』では諦観というかむしろ枯れたニュアンスを醸していますが、私にはそれがいかにももの哀しく聞こえるのです。やはりジャズは演奏者本人がどこかで確実に楽しんでくれていないと聞いている側はもっと楽しめないのかなと思うのですね。
50年代のコルトレーンは遅咲きながらマイルスのグループで個性を発揮して、ロリンズやモンクらとの共演を経てひたすら生真面目に努力することによって独自の境地を切り開きました。シーツオブサウンドという他人に容易に真似されることのない早弾きテクニックを身に着けて、50年代末はハードバップから新主流に脱皮する過渡期に当り、本作がバップでの最後、次作が新境地の最初という位置づけでしょうか。
バップを完全に制してさらにその先に突き進まんというエネルギーが感じられます。本作には隅々にまでそうした自信に満ち溢れた力強いものが行き渡っていて、コルトレーン絶好調の雰囲気がひしひしと伝わってくる演奏なのです。この演奏に深い魅力を感じるとすれば、それは演奏者の心にある深い喜びや充実した精神性が聞く者に直に伝わってきているということに起因しているのだろうと思えるのです。
全5曲。2曲目と4曲目がスローバラッド。1曲目と3曲目がミディアム、5曲目がアップ・テンポです。コルトレーンのテナーには凄まじい説得力が感じられます。ポール・チェンバースの重いベースがコルトレーンのパワフルで饒舌なテナーとよき対をなしていて全体の色調が決められています。レッド・ガーランドのピアノはいつもながら美しさを湛えておりアクの強いコルトレーンの音楽のアクセント付けに一役買っています。
1.Good Bait
2.I Want To Talk About You
3.You Say You Care
4.Theme For Ernie
5.Russian Lullaby
アマゾンでは試聴可能です。→ John Coltrane / Soul Trane
JR.comでも試聴可能です。→ John Coltrane / Soul Trane
関連エントリーはこちら。
→ セロニアス・モンク/ウィズ・ジョン・コルトレーン(1957)
→ ジョン・コルトレーン/ブルー・トレーン(1957)
→ ジョン・コルトレーン/ジャイアント・ステップス(1959)
→ ジョン・コルトレーン/マイ・フェイバリット・シングス(1960)
→ ジョン・コルトレーン/プレイズ・ブルース(1960)
→ ジョン・コルトレーン/オレ・コルトレーン(1961)
→ ジョン・コルトレーン/インプレッションズ(1961)
→ ジョン・コルトレーン/ライブ・アット・ザ・ビレッジ・ヴァンガード(1961)
→ ジョン・コルトレーン/コルトレーン(1962)
→ ジョン・コルトレーン/ジョン・コルトレーンとジョニー・ハートマン(1963)
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投稿者 Jazz Blogger T : 21:38
ハンク・モブレイ/ハンク・モブレイ
2005年07月05日
Hank Mobley / Hank Mobley
今日はハンク・モブレイの隠れた名盤をご紹介しましょう。『ハンク・モブレイ』は、ブルーノートでのハンク・モブレイ6作目の作品です。これぞ真性ハードバップ。ソニー・クラークのブルーノート・デビュー作でもあります。パーソネルは、ビル・ハートマン(tp)、カーティス・ポーター(as,ts)、ハンク・モブレイ(ts)、ソニー・クラーク(p)、ポール・チェンバース(b)、アート・テイラー(ds)。1957年NY録音。BlueNote1568。
ハンク・モグレイとカーティス・ポーターの2本の個性的なサックスが交差して妙に魅力的なアルバムに仕上がっているのです。もちろん、ビル・ハートマンの明瞭なトランペットもアクがなく申し分ない出来です。私にとって繰り返し聴いても聴くたびに新たな味わいが滲み出てくるような類の最上のハード・バップ・アルバムなのです。
カーティス・ポーターは後にシャフィ・ハディの名でチャールズ・ミンガスのグループに参加して確かな足跡を残すことになりますが、なぜか今一歩メジャーになりきれずとても残念な存在です。私はこのポーターのサックス、そう、マクリーンのような四角張った音色と少しぶきっちょに前に押し出してくる鋭角的なところが大変好ましいと感じています。このアルバムではそうしたポーターのバッパーとしての素敵な面が如実に露わになっていまして、ポーターをじっくり聴くアルバムと言えるかもしれませんね。あの朴訥だけれど忘れがたい印象を残すテナーのJR.モンテローズに通じる面を私は感じます。1曲目でのメリハリのある凄いソロは特筆ものです。すぐにポーターの音と分かるほど個性的ですし、憂いのある表情が実に見事だと思います。
それに西海岸からNYにやってきたソニー・クラークのBN初録音という記念すべきアルバムでもあるのですね。この後、ソニー・クラークはアルフレッド・ライオンに気に入られてBNのハウス・ピアニストのような存在となって次々とリーダー作を録音する機会を与えられることになります。本作でも独特のアーシーなアドリブを披露していまして、すでに個性が確立されていることがよくわかります。
そうそう、主役のモブレイでしたよね。なぜか、お人よしの臭いのするハンク・モブレイさんはいつも後回しになるのですね。それでいて、確かにその個性はじっくり聞かないと希薄ではありますが、その味を一度占めるとなかなか捨てがたいボディブロウのように後々にずっしりと利いてい来る類の謂わば最もたちの悪い吸引力があるのですよ。
全5曲。渋い直球のハードバップです。ファンキー色が薄くて私の大のお好みの世界です。3.Bag's Grooveや5.Newsでのミディアム曲での流麗で淡々とした演奏でありながらそこはかとないグルーヴを発散する音楽、これぞブルーノート・ジャズの真髄だろうと感じます。ハンク・モブレイとソニー・クラークの組み合わせは本作の直後に録音されたソニー・クラークの初リーダー作『ダイアル・S・フォー・ソニー』(BN1570)でも聴くことができます。この後、数多い録音をこの両者は各々に残してゆくことになるのですが、これら初期の作品における真摯で直截な輝きに私は妙に心地よい魅力を感じることができるのです。
1. Mighty Moe And Joe (6:52)
2. Falling In Love With Love (5:29)
3. Bag's Groove (6:00)
4. Double Exposure (7:47)
5. News (8:12)
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Hank Mobley / Hank Mobley
関連エントリーはこちら。→ ソニー・クラーク『ダイアル・Sフォー・ソニー』
→ ハンク・モブレイ『ソウル・ステイション』
→ チャールズ・ミンガス『メキシコの思い出』
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投稿者 Jazz Blogger T : 21:39
エリック・ドルフィー/アット・ザ・ファイブ・スポットVol.2
2005年06月25日
Eric Dolphy / At The Five Spot Vol.2
今日はエリック・ドルフィーの『アット・ザ・ファイブ・スポットVol.2』です。今週は仕事でずっと東京方面に出張していたのですが時間に余裕があったもので、東京にある老舗のジャズ喫茶、四谷『いーぐる』と吉祥寺『メグ』を訪問してきました。今日ご紹介するドルフィーの名盤は実を言いますと学生時代京都でよく通ったジャズ喫茶「52番街」で何度も聴いた思い出のアルバムなのです。パーソネルは、ブッカー・リトル(tp)、エリック・ドルフィー(fl.bcl)、マル・ウォルドロン(p)、リチャード・デイヴィス(b)、エド・ブラックウェル(ds)。1961年7月16日、NY、Five Spotでのライブ録音。
前回は東京都内のホテルから記事更新しましたが今週6/21(火)から24(金)までの4日間東京方面に仕事のため出張しておりました。夕方時間がありましたので、ふと思い立って東京のジャズ喫茶を訪問してみたのでした。6/22(水)はジャズ評論家としても著名な後藤雅洋氏の経営する四谷『いーぐる』に16時頃から19時くらいまでバーボンのロック一杯で頑張りました。ホーム・ページに示された簡便な地図を頼りにJR四谷駅から近いその場所はすぐに見つかりました。地下にある店内は存外に広いスペースでとても落ちついたくつろぎのある空間なのでした。入ってすぐに感じられましたことは、その立派なJBLのスピーカーから流れ出る音が存外に小さ目で騒がしくない品のよいものであるということでした。昔聞いた京都や現在も通う神戸のジャズ喫茶の音量に比べて明らかに一段小さいもので、これは関西との文化的な違いかも知れぬと翌日訪れた『メグ』での小音量の事実からも強く印象付けられたのでした。
その日『いーぐる』で聴いたアルバムは、リー・モーガン『Vol.3』、アート・テイラー『テイラーズ・テナー』、アート・テイタム『テイタム&ベン・ウェブスター』、ビル・エヴァンス『エブリバディ・ディグス』、他にカーメン・マクレエやコルトレーン、その他アーティスト及びアルバム名を確認できない数枚というものでした。その内容にとても満足しました。また、最初少し物足りなく感じられたその音量にも慣れてくるのでした。
ジャズ喫茶に行きますと私は大抵の場合にそうしているのですが、その際もお店にあるジャズ関係の本を読んだのでした。店主である後藤雅洋氏が書かれたものや、寺島靖国氏との対談が掲載されているものなど興味深く拝見いたしました。後藤氏のことは勿論名前は知っていましたが、あまり深くは知らず、その日いろいろ読みまして、実のところ、その真っ当な感覚にとてもとても共感を覚えるのでした。ジャズが大好き、そしてその好きなジャズをできるだけたくさん聞いてその本質に少しでも迫りたい、できれば論理的に解き明かしたい、という欲求、若輩である私が言うのも何ですがそうした基本的な姿勢に深く共鳴するものを感じたのでした。それにジャズの好みが結構一致するように思います。寺島氏との対談を読んでいますと寺島氏よりもずっとずっと親近感を覚えるのでした。その後藤さんが18時頃に店に出て来られました。お客さんとのお話がよく聞こえまして、夕方から大抵お店に出ているとのこと。そのよく通る明瞭な声が印象的です。
というわけで、もう1軒の『メグ』のことはまた明日にでも続きとして書くことに致しまして、主題はエリック・ドルフィーでしたですね。ジャズ喫茶で一番印象に残っているアルバムが今日のアルバムということでして、20年少し前に京都で通ったお店が寺町今出川にあった『52番街』。アルテックのスピーカーとマッキントッシュのアンプ、それに店内がレンガ風の作りになった今は亡き思いで深いお店です。その店でこのアルバムを何度か聴いたことが鮮明に記憶に残っているのです。レコードのB面、ドルフィーがフルートを吹く「Like Someone In Love」を、おそらく4回とか5回くらいこの店でかかったことをよく覚えているのです。数年間毎週のように通って毎回10枚くらい聞くわけですから、重複するのは当然出てくるのですが、4回以上になるのはそうそうないですから厭でも印象に残ります。あと、グラント・グリーンのブルー・ノート盤も同様によくかかってましたね。特に『マタドール』。
このアルバム、ブッカー・リトルのトランペットの音程が幾分外れていると思われるのですが、その妙な違和感が克明に記憶に刻まれているのです。それは例えば、ドルフィーのフルートとマル・ウォルドロンのピアノが一層美しく感じられるという効果をもたらしていることを考慮しますと、リトルは敢えていつも外しているのではないかと実は私は密かに思ったりしているのです。このアルバムに限らずリトルの音程はいつも大抵明らかに低目に外されていまして、それによりあの独特の雰囲気が醸し出されているように思われます。全2曲。
1. Aggression (17:30)
2. Like Someone in Love (19:50)
amazon.comでは試聴可能です。→At The Five Spot Vol.2
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ At The Five Spot Vol.2
関連過去エントリー→ エリック・ドルフィー『アット・ザ・ファイブ・スポットVol.1』
エリック・ドルフィー『ラスト・デイト』
エリック・ドルフィー『アウト・ゼア』
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投稿者 Jazz Blogger T : 21:40
キャノンボール・アダレイ/イン・シカゴ
2005年06月20日
Canonnball Adderley /Cannonball Adderley Quintet in Chicago
今日はキャノンボール・アダレイの『イン・シカゴ』です。59年当時のキャノンボールとコルトレーンという絶好調サックス2管はジャズ史上でも最強のフロントと言って過言ではありません。それに当時のマイルス・グループのリズム隊とくればこれはもう楽しいというだけでなく何かスリルのあるジャズが生れないわけがないという垂涎の組み合わせです。パーソネルは、キャノンボール・アダレイ(as)、ジョン・コルトレーン(ts)、ウィントン・ケリー(p)、ポール・チェンバース(b)、ジミー・コブ(ds)。1959年2月Sutherland Hotel in Chicago録音。Mercury Records。
キャノンボール・アダレイのアルバムはどれも高水準ですが、本作も間違いなく最高水準のジャズ・アルバムではないかと私は密かに思っております。全6曲、レコードではA面に1~3、B面に4~6です。前半のA面はキャノンボール主体、後半のB面はコルトレーン主体という色分けがなされているようです。
4曲目Grand Central が実にいいです。これはコルトレーンの曲で、まさにほぼ同時期の『ジャイアント・ステップス』(59年4~5月)のあの隙と遊びのない世界です。キャノンボール→コルトレーンという順でソロがありますが、キャノンボールが圧倒的なアドリブプレイを披露しています。凄まじいテクニックで一気に吹き切っていまして、コルトレーンも真っ青となるような新鮮なソロです。コルトレーンに刺激を受けた結果でしょうが、あのジャイアント・ステップスをキャノンボールが録音していたら従前の斬新さに加えてさぞかし楽しいものになったでしょうにとふと思ってしまうのは私だけでしょうか。
2曲目「アラバマに陽は落ちて」でのキャノンボールのソロはさすがにこれは素晴らしいものです。完全にコントロールされたアルトは至芸の域に達しています。5曲目You're a Weaver of Dreamsはコルトレーンのあのバラッドの味のある世界ですね。この2&5曲目は各々が単独のソロをとりまして、それぞれに持ち味を最大限に出した名演と言えるものです。ただ繰り返しになりますがやはりこの両雄が火花を散らすという点では4曲目が実に興味深い演奏だと思うのですね。また、一方で、6曲目Sleeper、これもコルトレーン作の魅力的なブルースですが、こちらでは残念ながら我らがキャノンボールはオーソドックスなキャノンの枠を越えておらず今一歩の感を持ちます。コルトレーンのソロのあと、キャノンかなと思いきやケリーのピアノが出てきて、このまま終わるかに見えた頃にキャノンが登場しまして、曲調と流れからこう演奏するしかなかったんですというようなexcuseを感じさせる内容です。
いずれにしましても、圧倒的なキャノンボールのアルトです。その早弾きと、かつ音色までをも自在にコントロールするテクニック、その一種の個性にまで昇華された技巧を持ってすれば、本来はオーソドックスなバッパーであっても、シーツ・オブ・サウンドとか新主流派とか言ったくくり方をされる新興ミュージシャンと対等に渡り合えるということです。もし60年代にチャーリー・パーカーがそのまま出現したとしてもその個性でもってやはり天才とはいかずとも最高の評価がなされたことでしょうが、その種の個性と実力をキャノンボールは持っていて、このアルバムで油の乗ったコルトレーンと共演する中できっちり証明しているのではないのかなと思うのです。こうしたキャノンとコルトレーンの両雄の微妙な関係性を念頭に入れつつ、各々の芸に舌鼓を打つ、これもまた楽しからずやというところです。
1. Limehouse Blues
2. Stars Fell on Alabama
3. Wabash
4. Grand Central
5. You're a Weaver of Dreams
6. Sleeper
Amazon.comでは試聴可能です。→Cannonball Adderley Quintet in Chicago
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Canonnball Adderley /Cannonball Adderley Quintet in Chicago
関連エントリーはこちら。→ジョン・コルトレーン『ジャイアント・ステップス』
→キャノンボール・アダレイ『ノウ・ホワット・アイ・ミーン』
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投稿者 Jazz Blogger T : 21:41
ソニー・ロリンズ/テナー・マッドネス
2005年06月12日
Sonny Rollins / Tenor Madnes
今日はソニー・ロリンズの56年絶好調時の名作『テナー・マッドネス』。マイルス・バンドの最強のリズム隊を迎え、かつジョン・コルトレーンが1曲のみ参加の記念すべき好アルバムですね。パーソネルは、ソニー・ロリンズ(ts)、ジョン・コルトレーン(ts,1のみ参加)、レッド・ガーランド(p)、ポール・チェンバース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)。1956年5月24日録音。Prestige Records。
当時のマイルス・バンドのリズム隊であるレッド・ガーランド、ポール・チェンバース、フィリー・ジョー・ジョーンズは、先日アート・ペッパーの『ミーツ・ザ・リズム・セクション』をご紹介しましたが、サックスがアート・ペッパーのアルトからソニー・ロリンズのテナーに変わったというのが本作ということになります。また録音が当然ながら東海岸です。と言いつつも、ソニー・ロリンズはサイドメンに関係なくマイ・ペースを通すことのできる稀少なジャズマンでして、サイドが誰であろうがいつも自分自身の演奏をするのですね。そういう意味では予想外のスリルというものは希薄になります。
56年のロリンズは5月にかの名作『サコソフォン・コロッサス』を録音し、本作は同年同月の録音です。57年3月には 「ウエイ・アウト・ウエスト」、4月にBlueNoteに 「ソニー・ロリンズVol.2」、9月に 「ニュークス・タイム」、11月には 「ライブ・アット・ザ・ヴィレッジバンガード」と定評ある作品を立て続けに世に送り出しています。56~57年はロリンズにとって名声を確立した時期に当りますね。
というわけで、本作は意外なスリルは少ないかもしれませんが圧倒的なロリンズの豪放かつ奔放なテナーを十分に満喫することができるのです。小気味良いガーランドのピアノや重心の安定したチェンバースのベースを従えて、これはもう典型的なハード・バップの醍醐味なのですね。1曲目にジョン・コルトレーンが参加しているのですが、ロリンズの強烈で卓越した演奏の前では後年の個性が未だ確立していずロリンズの亜流というような没個性的な印象にも映ります。まあ努力の人コルトレーンがやっとロリンズと遜色ない高レベルに至っているということではありますが。
全5曲。1曲目の12分に及ぶ標題曲がやはりいいですね。コルトレーンの硬質なソロが新鮮です。ロリンズはさすがに凄みがありますがいつもながらの野暮ったさも若干ですが目立ちますね。これはコルトレーンの無駄や隙のないソロとは微妙に好対照を示しています。この録音元々はロリンズのワン・ホーンで撮るところがひょっこり現れたコルトレーンがゲスト参加することで実現したとのこと。他の4曲、極端に言えばこれらはロリンズのテナーを満喫するためにあるような録音です。4曲目ドビュシーのMy Reverie、こうした歌ものはまさにロリンズに任せておいて、よしなに取計らっておいてもらえればよろしという感じなのですよね。ガーランド以下も本来の地味目なバックに徹しておりまして、持分をわきまえていらっしゃるというところです。
1. Tenor Madness
2. When Your Lover Has Gone
3. Paul's Pal
4. My Reverie
5. The Most Beautiful Girl In The World
JR.comでは試聴可能です。→Sonny Rollins / Tenor Madnes
amazon,comでも試聴可能です。→Sonny Rollins / Tenor Madnes
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Sonny Rollins / Tenor Madnes
関連エントリはこちら。
→ソニー・ロリンズ/サキソフォン・コロッサス(1956)
→ソニー・ロリンズ/ヴィレッジバンガードの夜(1957)
→ソニー・ロリンズ/ウエイ・アウト・ウエスト(1957)
→ ソニー・ロリンズ/ソニー・ロリンズVol.2(1957)
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投稿者 Jazz Blogger T : 21:42
アート・ペッパー/ミーツ・ザ・リズム・セクション
2005年05月28日
Art Pepper /Art Pepper Meets The Rythm Section
今日はアート・ペッパーの傑作『ミーツ・ザ・リズム・セクション』です。当時東海岸を代表するマイルス・デイヴィス・クインテットのリズム隊と、西海岸を代表するアルト・サックス奏者のアート・ペッパーとが共演した異色の作品。当日の朝まで録音のことを知らされなかったペッパーですが最高の演奏を残すことになりました。パーソネルは、アート・ペッパー(as)、レッド・ガーランド(p)、ポール・チェンバース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)。1957年LA録音。Contemporary Records。
56年秋にの歴史的なマラソン・セッションをプレスティッジに録音したマイルス・デイヴィス・クインテットがその直後57年1月西海岸に巡業に来た折に、コンテンポラリー・レコードのレスター・ケーニッヒは機敏にその機を捉えて、その人気のリズム隊とやはり当時絶好調のアート・ペッパーとを組み合わせる企画を実行に移しました。いわばウエスト・ミーツ・イーストという趣向です。ケーニッヒは、同年3月にソニー・ロリンズがロスを訪れた折にも、西海岸のレイ・ブラウンとシェリー・マンを組み合わせて名作『ウェイ・アウト・ウェスト』をプロデュースしています。
当時56年後半から57年にかけてのアート・ペッパーは『アート・ペッパー/ザ・リターン・オブ・アート・ペッパー』に書いた通り生涯最高の録音を続けざまに残していまして、その最後尾を飾るアルバムが本作です。ペッパーといえば、繊細なセンスに裏づけられた情緒豊かで陰翳感のある、日本人好みの最高のアルト奏者。そして白人サックス奏者としては異例の黒人的なブルース・フィーリングを有しています。本作でのペッパーは、その際立った個性が強靭なリズム・セクションに触発される形で火花を散らすようにスリルをもって発散されている、そんな印象があります。同時期の名作『モダン・アート』がペッパー・ファン受けする渋い陰のアルバムとすれば、こちらの『ミーツ・ザ・リズム・セクション』は万人受けする明るい陽のアルバムといえるかもしれません。
全10曲。得意とするマイナー系を中心とした内容です。まず、7.Tin Tin Deoが最高に素晴らしい。フィリー・ジョーの叩き出すラテン・リズムに鼓舞されたペッパーの多彩で自在のアルトは圧巻です。また、スタンダード曲、1.You'd Be So Nice~、3.Imagination、8.Star Eyesの3曲はいずれもペッパーの特徴が否が応でもにじみ出てくる好選曲で、ペッパーの連綿たるデリカシーと次々と湧き出るイマジネーションが圧倒的です。レッド・ガーランドのピアノもまさにマイルス・グループを彷彿とさせるものがあり、その粒だった音やコードの響きには興趣を誘われます。また、本来ディキシー曲である6.Jazz Me Bluesで展開されるアルト・ソロなども聴きもののひとつで十分に堪能させられる内容です。
1. You'd Be So Nice To Come Home To
2. Red Pepper Blues
3. Imagination
4. Waltz Me Blues
5. Straight Life
6. Jazz Me Blues
7. Tin Tin Deo
8. Star Eyes
9. Birks' Works
10. Man I Love, The - (bonus track)
JR comでは試聴可能です。→Art Pepper Meets The Rythm Section
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Art Pepper Meets The Rythm Section
関連エントリーはこちら。→ 『アート・ペッパー/ザ・リターン・オブ・アート・ペッパー』
→ 『アート・ペッパー/モダン・アート』
→ 『レッド・ガーランド/グルーヴィー』
→ 『ソニー・ロリンズ/ウェイ・アウト・ウェスト』
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投稿者 Jazz Blogger T : 21:43
ポール・デスモンド/ファースト・プレイス・アゲイン
2005年05月15日
Paul Desmond / First Place Again
今日はポール・デスモンドの渋い名作『ファースト・プレイス・アゲイン』です。デスモンドはご存知デイブ・ブルーベック・カルテットのアルト・サックス奏者。名曲「テイク・ファイブ」の作曲者でもありますね。本作はピアノレスのギター・トリオをバックに最上級の寛ぎとイマジネーションに溢れる名演奏なのです。パーソネルは、ポール・デスモンド(as)、ジム・ホール(g)、パーシー・ヒース(b)、コニー・ケイ(ds)。1959年録音。
ポール・デスモンドを無性に聞きたくなる夜があるのです。そのクールながら心地よいアドリブに身を委ねていますと本当にじんわりと寛ぎタイムが静かに流れてゆくのですね。本作はデスモンド同様に渋くてクールなジム・ホールとの共演ということで一層に期待が持てるのです。実際のところ、ブルーベックと演るよりもこうしたギターとの組み合わせは最高と思えるのです。デスモンドの奏でる美しい音色と横溢するアドリンブ・プレイはもう独壇場です。ジム・ホールのあっさりとしたコードやアクセントが否が応でもデスモンドのソロを盛り立てるのですね。
やはり私はポール・デスモンドの美学に深く共鳴できるのです。デスモンドが一音でもその憂いのあるアルト音を吹けばそこには一種独特の世界が醸しだされます。そして数音の音が響き渡るだけでポール・デスモンドと即座に分かるのですね。それくらい圧倒的な音楽性とテクニック、まさにアルトを吹くためる生れてきたようなと形容したくなりますね。こういうプロ中のプロが私は好きなのです。自分の分をわきまえて期待された役割をきっちりこなすという。
全7曲。ジム・ホールがしっかり締めています。そのジャズ・フィーリングが素晴らしい。間違いなくこの二人のこの組み合わせは最高の成果を生んでいると言えるでしょう。きわめてクールだけれど、聞く側を内側からほのかにホットにしてくれる素敵な演奏。スイング・ジャーナル誌選定ゴールド・ディスク。その価値は十分にあります。このアルバムはその魅力に取り付かれると恐らく病み付きになる類です。ポール・デスモンドは駄作が見当たらないくらいに常に高水準の演奏を残していますが、本作はそれらの中でも最上位に位置する会心の作だと思います。
1. I Get A Kick Out Of You
2. For All We Know
3. Two Degree East, Three Degree West
4. Greensleaves
5. You Go To My Head
6. East Of The Sun
7. Time After Time
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Paul Desmond / First Place Again
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投稿者 Jazz Blogger T : 21:44
ジャッキー・マクリーン/ジャッキーズ・バッグ
2005年04月23日
Jackie McLean/ Jackie's Bag
今日はジャッキー・マクリーンのブルーノート初リーダー作の『ジャッキーズ・バッグ』です。パーソネルは、1~3がドナルド・バード(tp)、ジャッキー・マクリーン(as)、ソニー・クラーク(p)、ポール・チェンバース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)。1959年1月録音。4~6がブルー・ミッチェル(tp)、ジャッキー・マクリーン(as)、ティナ・ブルックス(ts)、ケニー・ドリュー(p)、ポール・チェンバース(b)、アート・テイラー(ds)。1960年9月録音。BlueNote4051。
レコードで言うB面4~6曲目が昨日ご紹介したティナ・ブルックス『バック・トゥ・ザ・トラックス』の2曲目と同じです。断然こちらのマクリーンがいいということで、恐らくはブルックス盤に収められたのは余りのものではないかと思われるのですね。このB面、ブルクスもミッチェルもそれにドリューも実にいい具合です。
それにA面1~3曲目にはソニー・クラークが参加してドナルド・バードとの2管です。マクリーンはどれもク好調ですので申し分ないものですが、クラークがヘロイン中毒が悪化しているようで少しヘロヘロ気味ですが、さすがに3曲目でのソロはクラーク節の面目が保たれておりグッと来る演奏になっます。
というわけで、これはいろいろ楽しめる面白いアルバムだと思いますね。四角張ったマクリーンの香ばしいアルトの響きが全回ですので、マクリーン目当てで十分に満足がえられましょう。プラスアルファとしてのブルックス、ドリュー、ミッチェル、それにクラークということになります。4曲目でのマクリーン→ミッチェル→ブルックス→ドリューの各ソロはいずれも素晴らしい内容でこの流れはまさしくブルーノート・サウンドの真骨頂を感じることができます。私はファンキー調よりもこうした真摯な直球系のバップが断然に好みなのです。
5曲目は、一瞬ウエィン・ショーターかなと思わせるようなモード系の響き、それにソロはドリューのピアノのみという興味深い演奏です。このドリューの美意識はとても共感できるものですね。本アルバム中ひときわ印象に残る曲です。6曲目も4曲目同様にスピード感のある心地よいハード・バップです。やはり私にとってここでもブルックスのテナーが味があって目が離せないという感じですね。憂いがあって繊細な音色とフレージング。ペッパーやゲッツらの白人系哀愁感に通じる何かがありますね。
1. Quadrangle
2. Blues Inn
3. Fidel
4. Appointment In Ghana
5. A Ballad For Doll
6. Isle Of Java
7. Street Singer - (bonus track)
8. Melonae's Dance - (bonus track)
9. Medina - (bonus track)
JR.comでは試聴可能です。→Jackie McLean/ Jackie's Bag
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Jackie McLean/ Jackie's Bag
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投稿者 Jazz Blogger T : 21:45
ティナ・ブルックス/バック・トゥ・ザ・トラックス
2005年04月20日
Tina Brooks/ Back to the Tracks
今日はティナ・ブルックスの『バック・トゥ・ザ・トラックス』ですね。ジャケット・デザインや曲順まで決まっていながら85年まで発売が見送られた幻の作品。パーソネルは、ブルー・ミッチェル(tp)、ティナ・ブルックス(ts)、ケニー・ドリュー(p)、ポール・チェンバース(b)、アート・テイラー(ds)。2のみジャッキー・マクリーン(as)参加。1960年NY録音。BlueNote4052。
ティナ・ブルックスの初リーダー作『トゥルー・ブルー』(BN4041)はすでに以前に本ブログでご紹介していまして正直言ってべた褒めの内容でした。本作も甲乙つけ難いほど十分に素晴らしいアルバムだと思っています。ブルックスならではの憂いのある音色とフレーズが本作でも十分に発揮されており、長くお蔵入りになっていたことが不思議でなりません。
メンバーは、トランペットがフレディ・ハバードからブルー・ミッチェル、ピアノがデューク・ジョーダンからケニー・ドリュー、それにベースがサム・ジョーンズからポール・チェンバースにそれぞれ替わっていますのと、1曲だけですがあのジャッキー・マクリーンが参加しているのですね。マクリーンが参加した2曲目Street Singerがブルージーで実に素敵な演奏なのです。ブルックスのソロが圧巻です。マクリーンのアルトが野暮ったく聞こえるほど繊細で粋で洗練されたフレージンングなんですね。この2曲目のみ『ジャッキーズ・バック』(BN4051)と同日録音で、メンバーは全く同じなのですね。なぜにこんなことに?と思いますね。というわけで、『ジャッキーズ・バック』の方も近々聞き比べた結果をご紹介いたしましょう。
それに、4のスロー・バラッドFor Heaven's Sakeがまた素敵な演奏なのですね、これが。ブルックスの研ぎ澄まされた感性がほとばしるようですね。このテナーはほんとイカしてます。ブルー・ミッチェルもこの当りはお手のものでして負けずにキュートなソロをとっています。ブルー・ノート・レーベルのファンキー色の少ない典型的なハード・バップ、しかも微妙な色合いのある日本人好みの内容だと思います。
1. Back To The Tracks
2. Street Singer
3. The Blues And I
4. For Heaven's Sake
5. The Ruby And The Pearl
JR.comでは試聴可能です。→Tina Brooks/ Back to the Tracks
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Tina Brooks/ Back to the Tracks
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投稿者 Jazz Blogger T : 21:46
ソニー・ロリンズ/ソニー・ロリンズVol.2
2005年04月18日
Sonny Rollins/ Sonny Rollins Vol.2
今日はソニー・ロリンズです。ロリンズ絶好調の代表作の一つ『ソニー・ロリンズVol.2』。シルバーとモンク両巨人ピアニストが参加した貴重で興味深い録音です。パーソネルは、ソニー・ロリンズ(ts)、J.J.ジョンソン(tb)、ホレス・シルバー(p)、セロニアス・モンク(p)、ポール・チェンバース(b)、アート・ブレイキー(ds)。1957年録音。BlueNote1558。
ロリンズは56年にモンクの名品『ブリリアント・コーナーズ』ですでにモンクとの共演を果たしていますが、本作でもモンクが参加した2曲で素晴らしい名演を残しています。2曲とは、3.Misteriosoと
4.Reflectionsです。特にリフレクションズでのモンクに触発された2度目のソロは圧巻です。跳躍した自由なソロなのです。こういうのを目の当たりにしますとさすがにモンクの影響力は凄いなと感心します。コルトレーンに対してもこの時期に同様なイマジネーションを与えていますよね。
ちなみにミステオリオーソと言えばアルバム名にもなっているジョニー・グリフィン参加のリバーサイドのライブ盤を思い起こしますが本作ロリンズとの共演の方が時系列では先なのですね。私にとってはリバーサイド盤を先に買って長く聴いていますのでどうしてもそちらを基準に考えてしまいますね。
このアルバムはモンク以外にもホレス・シルバーにアート・ブレイキーと57年といえばすでに自身のコンボを率いている大御所、それに当時No.1のベースのチェンバースを迎えて、これはほとんど巨匠たちによるブローイング・セッションの体をなしています。ところが、明らかに異色のモンクが2曲で参加することでそうした単なるブローとは一味違う波紋を投げかけています。不思議な魅力のあるアルバムというわけです。しかも、ミステリオーソではピアノが途中モンク→シルバー→モンクと代わっているのですね。シルバーがモンク曲であってもやはりシルバー節のファンキー調を奏でるところなど興味深いものがありますね。
いずれにしましても、この時期のハード・バップ・テナーの王道を怖いものなしでひた走るロリンズの自信に満ちた豪放かつ自在な素晴らしいテナーを堪能できるアルバムです。56~58年のロリンズの残したジャズ・アルバムはモダン・ジャズの一つの典型的な象徴として不変の価値があると思いますが、本作はまさにそうした一枚なのです。
1. Why Don't I
2. Wail March
3. Misterioso
4. Reflections
5. You Stepped Out Of A Dream
6. Poor Butterfly
JR.comでは試聴可能です。→Sonny Rollins Vol.2
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Sonny Rollins/ Sonny Rollins Vol.2
関連エントリはこちら。
→ ソニー・ロリンズ/テナー・マッドネス(1956)
→ソニー・ロリンズ/サキソフォン・コロッサス(1956)
→ソニー・ロリンズ/ヴィレッジバンガードの夜(1957)
→ソニー・ロリンズ/ウエイ・アウト・ウエスト(1957)
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投稿者 Jazz Blogger T : 21:46
ジョン・コルトレーン/ジャイアント・ステップス
2005年04月14日
John Coltrane/ Giant Steps
今日はジョン・コルトレーンの名作『ジャイアント・ステップス』です。シーツ・オブ・サウンズと呼ばれるコルトレーンのサックス・プレイがほぼ完成した記念すべきアルバム。異常な緊張感に満たされたコルトレーン・ジャズの美学が凝縮された一枚。パーソネルは、ジョン・コルトレーン(ts)、トミー・フラナガン(p)、ポール・チェンバース(b)、アート・テイラー(ds)。6と9のみ、ウィントン・ケリー(p)、ジミー・コブ(ds)。1959年録音。Atlantic。
今でこそコルトレーンの偉大さをよく理解していますが、ジャズ入門期の頃にその評判を本か何かで知って購入したこのレコードは何やらやたらに速いサックスだけれど余裕という遊びが無いなあとあまり感心しなかったことを記憶しています。ただ、6曲目のネイマだけは妙に惹きつけられる何かを感じとっていましたっけ。あまりに速いアドリブについていけなかった、音の連なりをしっかりと追えず、よくわからなったということです。
ただ、真摯で切迫感のある印象は今も変わりません。ハングリーな求道者の姿勢には聴く側に対して音楽を楽しんでもらうという本来の自然な意図を微塵も感じることができないのです。これはまさに至高の芸術的な境地であって、聴衆に対するへつらいや媚びを排除した徹底した美学追及の求道的スタンス、これはやはりあっぱれというものでございましょうぞ。
そう、多くのジャズを、娯楽として、また、俗な快楽として、ジャズを聴くことが当たり前なのですが、チャーリー・パーカーがバップのスタイルを築いたように、コルトレーンはパーカーの流れを踏襲しながら60年代以降の新主流の大きな支流を形作ったという意味で、革新を生真面目に追求した、それは大衆性とは無縁の世界であったということなのでしょう。
今の私にとっては、このコルトレーンの音楽は以前とは比較にならないほどに楽しめる対象になってきています。そこそこジャズ遍歴を重ねて、特に50年代ハードバップに飽和された耳には新鮮で凄みのある音楽として共鳴できる、理解できるという感じです。
レコードでは全7曲、CDではさらにプラス5曲です。1や4、それに5や7などの直球勝負にはある種の鮮烈な覚悟のような切迫感と緊張感を受けるとともに、洪水のような音の連なりとその構築美に従来のバップにはない異様な心地よさを感じることができます。さらに3などは剛速球の決め球という感じですね。美学の存在を感じずにはおれません。それに、トミー・フラナガンのピアノが実に素晴らしいということも記しておく必要があります。コルトレーンの雰囲気を敏感に感じ取って緊張とバランス感覚のある絶妙なピアノ・ソロを各曲で披露しています。あと、やはり6のネイマ、つかの間の安息、これはいつ聴いても納得の内容です。ピアノもウィントン・ケリーに代わっています。コルトレーンはソロをとらず、ケリーのピアノ・ソロのみが聴けますが、実に詩的で美しいものです。コルトレーンがやっと少しこっちを向いてくれてうれしい。この曲があって本アルバムは救われたという気がします。
1. Giant Steps
2. Cousin Mary
3. Countdown
4. Spiral
5. Syeeda's Song Flute
6. Naima
7. Mr. P.C.
8. Giant Steps - (alternate take, version 1)
9. Naima - (alternate take, version 1)
10. Cousin Mary - (alternate take)
11. Countdown - (alternate take)
12. Syeeda's Song Flute - (alternate take)
iTunes Music Store では試聴可能です。→
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ John Coltrane/ Giant Steps
関連エントリーはこちら。
→ セロニアス・モンク/ウィズ・ジョン・コルトレーン(1957)
→ ジョン・コルトレーン/ブルー・トレーン(1957)
→ ジョン・コルトレーン/ソウル・トレーン(1958)
→ ジョン・コルトレーン/マイ・フェイバリット・シングス(1960)
→ ジョン・コルトレーン/プレイズ・ブルース(1960)
→ ジョン・コルトレーン/オレ・コルトレーン(1961)
→ ジョン・コルトレーン/インプレッションズ(1961)
→ ジョン・コルトレーン/ライブ・アット・ザ・ビレッジ・ヴァンガード(1961)
→ ジョン・コルトレーン/コルトレーン(1962)
→ ジョン・コルトレーン/ジョン・コルトレーンとジョニー・ハートマン(1963)
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投稿者 Jazz Blogger T : 21:47
ソニー・スティット/スティット、パウエル&JJ
2005年04月07日
Sonny Stitt/ Sonny Stitt, Bud Powell, and J.J. Johnson
今日はソニー・スティットのテナーの名盤です。絶頂期のバド・パウエルが参加していることで有名な『スティット、パウエル&JJ』です。パーソネルは、①ソニー・スティット(ts)、バド・パウエル(p)、カーリー・ラッセル(b)、マックス・ローチ(ds)、②ソニー・スティット(ts)、J.J.ジョンソン(tb)、ジョン・ルイス(p)、ネルソン・ボイド(b)、マックス・ローチ(ds)。1949年、1950年録音。Prestige。
このブログでソニー・スティットのことをまだ触れていなくて結構気にしていたのです、実は。名モダン・ジャズ・サックス・プレイヤーとして大変に著名ですが、私にとっては座右に置いて愛聴するほど好きということでもないのですね。手元にあって折に触れて聴くアルバムは本作含めて数枚です。
本作の『スティット、パウエル&JJ』は日本でモダン・ジャズが騒がれだした頃に熱狂的に聞かれたとのことです。それにバド・パウエルの名演盤ということでも有名なんですね。その後、幻の名盤として長く入手困難であったことがその人気を高める遠因になったのかもしれません。いずれにせよ、バップからクールへの歴史的な転機の中で、ハード・バップへの道をひたむきに歩んでいる姿が鮮明にかつ名演として捉えられているという点が特筆されます。
ソニー・スティットはチャーリー・パーカーに似ているといわれるのがいやで、パーカーの存命中はアルトでなくテナーを吹いていたとのことで、それほどに豪快で流暢で49年の録音とは思えないくらいにモダンな感覚なのですね。このアルバムのもう一つの特徴は、スティットのようなテクニシャンのワンホーン・カルテット演奏ですと通常はホーン+リズムという図式になるところが、パウエルの参加によってピアノが例外的に対等にメロディックなソロを繰り広げるのですね。パウエルの独創的な演奏がシングル・トーンでホーン・ライクといわれる所以です。
全12曲。パーソネルは①が1~9、②が10~17です。お勧めは、まず、3. Bud's Bluesがファンキーなセンスがすでに見られて興味あるものです。それに、10.パリの午后、これはジョン・ルイスの名曲。スティットとJJのトロンボーンが美しいアンサンブルを聞かせてくますし、スティットのソロもいいですね。13. Eloraや16. Blue Mode - (take 1)でのスティットも素晴らしいと思います。
1. All God's Chillun Got Rhythm
2. Sonny Side
3. Bud's Blues
4. Sunset
5. Fine And Dandy - (take 1)
6. Fine And Dandy - (take 2)
7. Strike Up The Band
8. I Want To Be Happy
9. Taking A Chance On Love
10. Afternoon In Paris - (take 1, bonus track)
11. Afternoon In Paris - (take 2)
12. Elora - (take 1, bonus track)
13. Elora - (take 2)
14. Teapot - (take 1, bonus track)
15. Teapot - (take 2)
16. Blue Mode - (take 1)
17. Blue Mode - (take 2)
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投稿者 Jazz Blogger T : 21:48
リー・コニッツ/モーション
2005年03月27日
Lee Konitz/ Motion
今日はリー・コニッツの代表作『モーション』です。アドリブの極限に挑んだコニッツのワン・ホーン&ピアノレス・トリオ演奏の名盤です。パーソネルは、リー・コニッツ(as)、ソニー・ダラス(b)、エルヴィン・ジョーンズ(ds)。1961年録音。Verveレコード。
リー・コニッツのアルトはいつも気になっています。もっと凄い演奏があるのではないかと。チャーリー・パーカーと同等の技術レベルにあった白人アルトとしてリー・コニッツ、アート・ペッパー、ポール・デスモンドの3人の名前がすぐに思い浮かびます。そして、コニッツ→ペッパー→デスモンドの順でメロディスト、逆の順で抽象的な凄みのある純アドリブ奏者というイメージがあります。
本作はエルヴィン・ジョーンズとソニー・ダラスという2人の黒いエモーショナルなピアノレスのリズムをバックに、意外にもクール派のコニッツのアルトがこの異色の顔合わせにもかかわらず水を得た魚のごとくにエキサイティングかつスリリングなジャズを形造っています。エルヴィン・ジョーンズの加わったピアノレスといいますとソニー・ロリンズのライブ盤『ヴィレッジ・ヴァンガードの夜』が有名ですが、本作は同等レベルの秀作でしょう。やはりロリンズやコニッツくらいの卓越したインプロヴァイザーでないとこうはいかないと思います。鑑賞に堪えるアドリブ・ソロを延々5分も10分も続けるというのは決して容易なことではないですから。
全8曲ですがCD化されて3曲のボーナス・トラックが追加されています。4,6,8です。いずれの曲にも高水準のジャズの醍醐味があります。力量ある3者が濃厚な密度でインタープレイを繰り広げます。どれも凄みを感じる演奏ですが、特にお勧めは5.「帰ってくれればうれしいは」でしょうか。この甘いスタンダード曲をミディアム・アップでスリルのある仕上がりの快演にしてみせてくれています。エルヴィンのポリリズムのドラミングにはいつもながら肝心させられますが、それに煽られてかコニッツはいつもにまして極めて大胆なアルトになっているのだと思います。
1. I Remember You (4:31)
2. All Of Me (7:42)
3. Foolin' Myself (7:02)
4. You Don't Know What Love Is (6:48)
5. You'd Be So Nice To Come Home To (10:46)
6. Out Of Nowhere (8:08)
7. I'll Remember April (8:07)
8. It's You Or No One (7:49)
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