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ビル・エヴァンス/ポートレイト・イン・ジャズ
JAZZ Piano 2
2006年04月30日
ビル・エヴァンスのベストの一枚と言えばやはりこれでしょうか。連休前の先日金曜に2泊3日の東京出張からの帰路にこのビル・エヴァンスを繰り返し聞いたのでした。飛行場や飛行機中など非日常の空間でどっぷりとエヴァンス世界を堪能しました。パーソネルは、ビル・エバンス(p)、スコット・ラファロ(b)、ポール・モチアン(ds)。1959年12月NY録音。Riverside Records。
ビル・エヴァンスが私はやはり好きなのですね。気乗りしないときは何でもないのですが、その気になって聴くとやはり格別に深い音楽だと思うのです。音と音の間がずしりと重く心の奥底に訴えかけてきます。その官能的な敏感な内奥の微細な肉襞が露になって麗しく輝き出しますと、その芳香はやがて全体を覆いつくしてエヴァンス世界が果てしない恒久の宇宙のように広がって行くのです。
この感覚はなかなかうまく説明しがたくとてももどかしいものです。でも多くの人は同じような感覚を抱いているに違いないとも思うのです。自分の場合はアルコールが少し入ったり、飛行機の中のような異質空間にいる際などにすぐにその世界に浸ることができます。このポートレイト・イン・ジャズは聴けば聞くほど重い音楽だと思います。私にとってはバド・パウエルのアメイジング・バド・パウエルVol.1のような印象になりますが、共通するものは才気が溢れていて独自の境地をまさに開かんとしている、近寄りがたい印象を形作っているのですね。
ジャズを聞き出した最初の頃はこのエヴァンスの魅力がいまいち分からなくて、今から思い返しましても不思議なくらいです。私の場合、その直観力が弱いと思います。最初の一回や二回聴いたくらいではすぐに好きにはなれず、何回も繰り返し聞くうちに少しずつ分かってきて深く深く好きになってゆくのです。最初からすぐに好きになったものは逆に飽きてゆくことが多いですね。最近ではブラッド・メルドーのピアノなどもそうした聞くほどに好きになってゆく類の音楽ですね。脳の中で音の流れの記憶がある程度定着してくれないとその魅力を感じることができないのです。その記憶作業に時間がかかるということだと思います。
全11曲(うち別テイク2)。1曲目からいきなり最もエヴァンスらしいスロー・バラッドCome Rain or Come Shineからスタートします。帳の下りた粘調な深夜の音楽に突入です。2&3曲目は枯葉の2テイク。こちらはミディアム・テンポで幾分明るいながらやはりそれはエヴァンスの典型的なハーモニックな演奏です。私のお好みは、5曲目When I Fall in Loveや8曲目Spring Is Hereなどのしっとりした美しいバラッド系の演奏です。ピアノ・トリオと思えない深みと広がりを感じます。特に、Spring is Hereでの斬新なアドリブ・ラインにはため息が出るほどです。私は限りない美をそこに観ることができます。9曲目Someday My Prince Will Comeや10&11曲目のBlue in Greenも本当に素敵な演奏です。エヴァンスは何て美しい音楽を創造したのでしょうか。
この一年余り毎月神戸の自宅から東京方面に仕事で数回出張する生活が続いています。神戸空港が開港して以来、新幹線のぞみから飛行機に完全にシフトしましたですね。3時間の密閉感と1時間のそれを比ぶれば後者の方が飽き症の私には圧倒的にいいみたいですね。最初は飛行機に乗ることが命がけの緊張ものでしたが、4~5回くらいで完全に馴れました。年に数回しか乗らなかったものが2週間空けずに乗るようになりますと慣性の法則が成り立つのですね。離着陸時や少しくらいの揺れにも緊張や動揺をしなくなりました。今回は飛行機の出発時間が30分くらい遅れたおかげで過剰のアルコールとエヴァンスの名演に埋没するよい機会となりましたとさ。
1.Come Rain or Come Shine
2.Autumn Leaves [Take 1]
3.Autumn Leaves [Take 2]
4.Witchcraft
5.When I Fall in Love
6.Peri's Scope
7.What Is This Thing Called Love?
8.Spring Is Here
9.Someday My Prince Will Come
10.Blue in Green [Take 3]
11.Blue in Green [Take 2]
Bill Evans (p), Scott Lafaro(b), Paul Motian(ds). Recorded Dec 28 1959.
アマゾンでは試聴もできます。詳しくはこちら。
→Bill Evans/Portrait in Jazz
iTunes Music Store では試聴可能です。→Bill Evans/Portrait in Jazz
関連エントリーはこちら。
→ アート・ファーマー『モダン・アート』(1958)
→ ビル・エヴァンス『エブリバディ・ディグス』(1958)
→ ビル・エヴァンス『オン・グリーン・ドルフィン・ストリート』(1959)
→ ビルエヴァンス『ポートレイト・イン・ジャズ』(1959)
→ キャノンボール・アダレイ『ノウ・ホワット・アイ・ミーン』(1961)
→ ビル・エヴァンス『エクスプロレイションズ』(1961)
→ ビル・エヴァンス『ムーン・ビームス』(1962)
→ デイブ・パイク『パイクス・ピーク』(1962)
→ ビル・エヴァンス『シェリーズ・マンホールのビル・エヴァンス』(1963)
→ スタン・ゲッツ『スタン・ゲッツ&ビル・エヴァンス』(1964)
→ モニカ・ゼタールンド『ワルツ・フォー・デビー』(1964)
投稿者 Jazz Blogger T : 09:23 | トラックバック
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