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スペース・ジャズ・トリオ/メリディス
2013年05月03日
Space Jazz Trio / Meridies
エンリコ・ピエラヌンツィが80年代に率いていたスペース・ジャズ・トリオ7枚のうちの1枚。ピエラヌンツィが最も乗っていた時期の演奏で、メロディアスで淀みなく流麗なインプロヴィゼーションにはエヴァンス派を超越した個性が光輝いています。数曲でピアノとスキャットのユニゾンが試みられているのも興趣あり。3者の一体感もハイレベル。パーソネルは、エンリコ・ピエラヌンツィ(p)、エンツォ・ピエトロパオリ(b)、ファブリツィオ・スファリ(ds)。1988年1月Rome録音。Gala Records。
エンリコ・ピエラヌンツィ(1949~)の80〜90年代の演奏がやはり気になります。本作はまさに絶好調の彼のピアノの演奏が記録されていると言えましょう。創造性豊かな美しいパッセージが次々と織りなされる流麗なアドリブ・ラインは彼の比類ない才能であり、そのピアニスティックな美をよく捉えた本作は非常に高品質なピアノ・トリオ作品です。
いくつか驚きがあるのですが、一つは、3曲目Some Other Timeの美しさです。何百何千というたくさんのピアノ・ジャズを聴いて来た自分ですが、その中でも5本の指に入るくらいに素敵な演奏と思っています。地中海の明るく温和な陽射しの下で、楽天的で快楽主義的なイタリア人ピアニストが、ジャズという知的な音楽として腕を振るって料理した最高のアンティパスト。
軽快でありながら透徹した美意識がさらりと一筆書きのような儚さで表現されています。4分43秒と意外と長いながらその長さを全く感じさせない潔い演奏です。長めのバースの後に主題が始まってその可憐なメロディが上昇を続けて最高音に達するまでの30秒ほどにエクスタシーがあります。
クラシックの作曲家スクリャービンの「アルバムの綴り Op45-1」や、アントニオ・カルロス・ジョビンの「Anos Dourados(黄金の歳月)」らの佳曲に通じる、一つの印象深い美しい主題メロディで勝負する曲ですね。
もう一つの驚きは、ピエラヌンツィのピアノとスキャットによるユニゾン演奏です。4, 5曲目の2曲で披露されています。楽器とスキャットのユニゾンは、ライオネル・ハンプトンの名盤「スターダスト」(47年)でのベースのスラム・スチュアートが著名ですが、ピアノとのユニゾンを聴いたのはこれが初めてでした。それだけでなく、速弾きのピアノとスキャットが完全に一致している点は、さすがにプロとは言え驚嘆しました。
アドリブ・ラインを頭の中で構築しながら弾いているのが明らかです。私はこうした速いアドリブはある程度は指任せなのかなと勝手に思っていたのですが、実際はそうではなくて、ピアニストが頭で想定して選択した音を確実に鳴らしているのだということです。そうでないと、指で弾く音と声で出す音の音階や長さを完全に一致させることはできません。
スタンダードのTenderlyが4曲目ではユニゾンで、最後の10曲目では普通のピアノのみで演奏されているので同じ曲が異なった演奏として聴けるのも面白い趣向です。とにかく、この4曲目のユニゾン演奏は聴いてみる価値があると思います。ピエラヌンツィの声質が意外にも二枚目美青年の雰囲気なのも二度びっくりです。生声に意表をつかれたビル・エヴァンスの時ほどではありませんが。
ピアノ・トリオ演奏では、通常、スローテンポのバラッド演奏が聞きどころやクライマックスになるものですが、本作でのピエラヌンツィはむしろミディアムテンポやアップテンポでの流麗な音の流れが心地良く、転がるようなピアノの音列がクセになるというか、ジャズのまた違った魅力に開眼させられるのですね。エヴァンス派の一人と目されるピエラヌンツィの個性がエヴァンスの呪縛から逸脱しているという印象を抱かせる、そうした新しい体験というか境地になるものです。
1. Filigrane
2. Altrove
3. Some Other Time
4. Tenderly
5. What Is This Thing Called Love
6. Meridies
7. Blues Per Enzo
8. I Should Care
9. Echi
10. Tenderly Instr.
Enrico Pieranunzi(p), Enzo Pietropaoli(b), Fabrizio Sferra(ds). Recorded at Sonic Studios, Rome,1988.
詳しくはアマゾンでどうぞ。→Space Jazz Trio / Meridies
関連エントリはこちらから。
→エンリコ・ピエラヌンツィ/バラード
→エンリコ・ピエラヌンティ/ナイト・ゴーン・バイ
→エンリコ・ピエラヌンティ/プレイ・モリコーネ
→エンリコ・ピエラヌンティ/New Lands
→ホロヴィッツ/スクリャービン・アルバム
→アントニオ・カルロス・ジョビン/リオ・リヴィジテド
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投稿者 Jazz Blogger T : 22:21
ビル・チャーラップ/アイム・オールド・ファッッションド
2012年07月03日
Bill Charlap / I'm Old Fashioned
ビル・チャーラップの変則ピアノ・トリオ演奏。ピアノ、ギター、ベースのトリオ。ピーター・バースタインという私にとっては初めてのギタリストに魅了されました。渋いギターです。表題通り古い様式なのだけれど不思議な新鮮な感覚のあるジャズ。パーソネルは、ビル・チャーラップ (p), ピーター・バーンスタイン (g), ピーター・ワシントン (b)。2009年NY録音。Venus Records。
最近、敬愛すべきビル・チャーラップさんとはご無沙汰していまして、チャーラップさんには悪いのですが、このアルバムに魅了された主要素はギターのピーター・バーンスタインにあります。そのくすんだ音色から繰り出されるグルーヴィーなサウンドに心を奪われています。渋いです。クールです。彼の演奏こそがオールド・ファッションなのですよ。
私はバーニー・ケッセルのギターが好きでよく聞くのですが、このバーンスタインさんのギターはそのケッセルに非常によく似ています。レコードをすり切れるほど聴いてしまうような四畳半的なジャズ。音色もフレーズもそっくりな印象です。よくスイングすると同時に渋いフレーズを次々に繰り出してくるギターなのですね。
ビル・チャーラップの演奏もいつもにもまして何かしらオシャレな雰囲気があります。ギターのバーンスタインに触発されているのだと思います。全13曲。いずれもミディアムかそれ以下のゆったりした分かり易いジャズです。最上の寛ぎがあって耳を澄まして聴き入っていると自然と気持ちが落ち着きます。
大好きなスタンダード曲のオンパレード。ここまで名曲が並ぶのは珍しいのではないでしょうか。チャーラップのピアノとバースタインのギターはよくマッチしています。いずれもねっとり絡み付くような粘着質な感覚があって、それでいて愛らしいメロディックなフレージングがあり、さらには適度なグルーヴがあるのですね。
1. I'm Old Fashioned
2. I Can't Get Started
3. Stella By Starlight
4. Ghost Of A Chance
5. All The Things You Are
6. Easy Livin
7. Darn That Dream
8. Angel Eyes
9. What Is This Thing Called Love
10. Body And Soul
11. Gone With The Wind
12. Everything Happens To Me
13. These Foolish Things
Bill Charlap (p), Peter Bernstein (g), Peter Washington (b).
Recorded at The Avatar Studio in New York on December 17&18, 2009.
YouTubeからピーター・バーンスタインの演奏を1本拝借してきました。ブラッド・メルドーらとのトリオ演奏です。バースタインのギターは本アルバムの演奏とはかなり差がありますが、実にスインギーかつグルーヴィー、また現代的でもあり、実にいい感じですね。メルドーのオルガン演奏もクールでカッコいい。一瞬ディープ・パープルのスモーク・オン・ザ・ウォーターっぽいフレーズが出てきてびっくりさせられますが。
VIDEO
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Bill Charlap / I'm Old Fashioned
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投稿者 Jazz Blogger T : 22:03
ティエリー・ラング/プライベート・ガーデン
2012年01月24日
Thierry Lang / Private Garden
最近一番感激してここ1週間ずっと聞いているジャズ・ピアノです。ティエリー・ラングのトリオもの。奥行き感のある品よいタッチ、繊細でしなやかな感性、静かで熱いロマンティシズム。いわゆる癒し系なのですがジャズ特有のきりりとした美意識と緊張感が芸術性を表出しています。パーソネルは、ティエリー・ラング (p)、イヴォール・マレベ (b)、マルセル・パポー (ds)。1993年スイス録音。Plainis Phare。
4曲目のジャイアント・ステップスがまず耳を奪います。コルトレーンの名作が実は非常に美しい音楽であったことがスローテンポによるコード進行を噛み締めることで示されています。何とみずみずしい美しさに溢れた音楽なのでしょう。思わずため息が出る夢見るような心地よい音楽にうっとりさせられます。こんな感動は久しぶりです。
同曲のトミー・フラナガンやテテ・モントリューのピアノ演奏とは全く異質の世界ですね。途中からベース&ドラムを伴いながらミディアム・テンポで壮快に幸福の讃歌を歌い上げます。主題メロディが最後の方にスロー・テンポでほんの少し顔を出して、ああ、ジャイアント・ステップスだったことが思い起こされます。憎いけど素敵すぎる演奏です。
ティエリー・ラング(1956〜)はスイス生まれですでに50代半ばのヨーロッパ中堅実力派ピアニスト。90年代からコンスタントにアルバムを発表していますが、知る人ぞ知るっていう感じでそれほど著名ではないですね。私も昨年はじめて彼のアルバムを聴いて、すぐにお気に入りフェイバリット・ピアニストになりました。その後、今年にかけて彼のアルバムを何枚も聴いてきましたが、本作がその中でも高い完成度のアルバムであると感じています。
ジャイアント・ステップスがあまりに印象深いので、とにかくそれを書くという勢いで書いていますが、他の曲にもそれぞれに味わいがあってよい具合なのです。ラングのピアノには、ビル・エヴァンスに通じる深い静による恍惚があり、エンリコ・ピエラヌンツィに近い流麗なエレガンスがあります。
1 A Ster To My Father
2 Nunzi
3 Stella By Starlight
4 Giant Steps
5 Boulevart Perolles
6 Private Gerden
7 I Hear A Rhapsody
8 Nane
Thierry Lang (p), Ivor Malherbe (b), Marcel Papax (ds).
YouTubeからLangさんにご登場願いましょう。
VIDEO
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Thierry Lang / Private Garden
関連エントリはこちら。
→ ティエリー・ラング/リフレクションズ I
→ ジョン・コルトレーン/ジャイアント・ステップス
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投稿者 Jazz Blogger T : 21:02
レニー・トリスターノ/鬼才トリスターノ
2012年01月15日
Lennie Tristano / Tristano
クール・ジャズで有名なレニー・トリスターノの代表作と知られる名作。地味ながらその調和のとれた端正な風情が確かにいいんですね。淡白であっさりとしたいわゆる飽きの来ない魅力があります。粋なジャズBGMとしては最高の1枚かもしれません。パーソネルは、レニー・トリスターノ (p)、リー・コニッツ (as)、ジーン・ラメイ、ピーター・インド (b)、アート・テイラー、ジェフ・モートン (ds)。1955年録音。Atlantic。
レニー・トリスターノ(1919-78)は盲目の白人ピアニスト。クール・ジャズというムーブメントがバップからハード・バップに移る時期の1940年代後半から50年代前半にありました。その代表選手がこのレニー・トリスターノとその一派ですね。
ビル・エヴァンスやデイブ・ブルーベックはじめその後の白人著名ジャズマンが大勢いますが、黒人のジャズとは明らかに異なる雰囲気、その白人(正確にはユダヤ人と言い切った方がより正しいのかもしれません)のイカしたジャズの原点を形作ったのがレニー・トリスターノであったと言えるのでしょう。あのマイルス・デイヴィスもまさにその影響下に独自のジャズ・スタイルを築き上げたと言って過言ではありません。
しかしながら、クールと一括りにした場合はそうであっても、個別的に見ればトリスターノ派のジャズは孤高のそれであり、クールの先鞭をつけたという意味では先駆者なのでしょうが、その個性を受け継いだのは、L.コニッツ、W.マーシュ、P.インド、B.バウアー、J.モートンら直系のジャズマンのみでした。適切な例ではないですが、ネアンデルタール人が現代人の祖先でなく、現代人とは支流の関係にある別の種ということに今の学説は落ち着いていますが、混血があったりということでは少なからず影響を与えているようです。トリスターノ一派は、そういう意味では、モダン・ジャズのクールという分野の先駆者には違いないのですが、その先は別れて細い支流になってしまったということだと思われます。
ところで、cool っていう英語は、格好いいとかイカしたという意味で使われますが、ここで使われているクール・ジャズという表現も、ソウルとかセンチメントとかの情念世界とは対極にある、さらりと凛とした涼やかな雰囲気を示す、やはり粋で格好いいということに繋がっているのだと思います。
トリスターノ派のクール・ジャズの中で最もポピュラリティの高い作品を残してきたのはアルト・サックス奏者のリー・コニッツです。トリスターノが残した作品が決して多くないので仕方ないのでしょうが、やはりトリスターノのピアノ演奏は独特の雰囲気があります。コニッツ名義の名作「サブコンシャス・リー」では当然ながらトリスターノがリーダーのような感じですね。
全9曲。前半4曲がピアノ・トリオ、後半5曲がライブでコニッツを含むカルテット演奏です。前半のトリオ演奏はトリスターノの典型的個性的な演奏が聞かれます。その中低音域を中心とした明晰で冷徹な音の連なりが新鮮です。このアドリブ・ラインはまさにコニッツのそれであることが思い起こされます。1、3、4曲目はまさにそういうトリスターノですね。
2曲目はブルース曲。トリスターノのブルース演奏というとこんな風になるのですね。やはり感情を極力排したものですが、それでもメロディ・ラインから感じられるフィーリングはブルースのそれであり、これも十分ありだと思われます。
コニッツが加わった後半の5曲は、コニッツが他の作品で表現してきたものの上質なものが示されていると言えるでしょう。私はこれらの演奏が好きです。ジャズ史的には前半の演奏が価値あるのでしょうが、後半5曲はそういう意味では、トリスターノ御大が自ら参加したにもかかわらず、ライブ聴衆を意識した寛いだセッションという印象です。
コニッツの加わった演奏は、前半の求道的な要素が無く、エンターテイメントとして十分に楽しめるものになっています。55年の録音ですので、ハード・バップが全盛になりつつある時期だけに、コニッツのアルト吹奏には、クール一辺倒ではない明らかに温かい情が音楽の中に宿っています。トリスターノのピアノにもずっと小さいながら同様なものが感じられます。
やはりコニッツのくすんだアルトの音色と独特ながら愛らしいメロディ構築が魅力です。トリスターノのピアノは明らかに通常の冷厳な演奏とは異なるエンターテイメントを前面に押し出した分かり易い演奏になっています。それがなかなかよい感じなのですね。クール的な中に適度な温もりがあって聞き易いジャズなのですね。BGMに流しておくのに丁度よい具合なのではと思います。
1. Line Up
2. Requiem
3. Turkish Mambo
4. East Thirty-Second
5. These Foolish Things
6. You Go To My Head
7. If I Had You
8. Ghost of a Chance
9. All The Things You Are
YouTubeから1965年当時のソロ演奏をピック・アップしてみました。
VIDEO
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Lennie Tristano / Tristano
関連エントリはこちらから。
→リー・コニッツ/サブコンシャス・リー
→リー・コニッツ/モーション
→リー・コニッツ/ヴェリー・クール
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投稿者 Jazz Blogger T : 01:08
ティエリー・ラング/リフレクションズ I
2011年12月31日
Thierry Lang / Reflections I
ティエリー・ラングというピアニストのことをご存知でしょうか。スイス出身のジャズ・ピアニスト。ジャズ・ファンの
方ならきっとご存知の方も多いに違いありません。私にとっては本作が初めてのラング体験。その深く濃厚なリリシズム溢れるピアノに魅せられてこのところ繰り返し聞いています。パーソネルは、ティエリー・ラング (p)、へイリ・ケンジッヒ (b)、ペーター・シュミドリン (ds)。2003年録音。i.d.Records。
ティエリー・ラング(1956~)はスイス出身のジャズ・ピアニスト。ビル・エヴァンスの流れを汲む思索的な粘っこいピアノ・タッチとヨーロッパのピアニストらしい耽美的で清澄感のあるリリシズムが印象的です。単に甘く優しいというだけでなく、ジャズ・ピアニストが基本的に具備すべきジャズ魂やメロディック・センス、それにそれらを表現できるテクニックがありますね。従って、当然のごとくにハイレベルなジャズを味わわせてくれることになるのです。
音楽探検を続けていてよかったと思うことがたまにありますが、ティエリー・ラングとの出会いは後年になってみるときっと今年一番の収穫になっているのかもしれません。新たな音源を求めなくても今の守備範囲内でそこそこに楽しめているわけなのですが、貪欲にハングリーに探検していますと、やはり確実にヒットしていくのだと思いますし、それがそうした努力の継続の賜物だと思っています。求めるものに出会うべくして出会うというのは現代のような世界的情報社会では当然のことに違いありません。
例えば、6曲目 Moon Princess に聞かれる深い情感は音楽、特にジャズでこそ得られる最高の悦楽の一つであると私は信じており、この種のジャズにずっと憧れを持って待ち望んでいたことを思い知らされています。エヴァンスはじめ、デニー・ザイトリン、エンリコ・ピエラヌンツィ、スティーヴ・キューンら私が敬愛するジャズ・ピアニスト達に終始求め続けてきたある特定のリリシズムがここにはしっかりと根付いていることを発見するのです。
4曲目 Private Garden や5曲目 Waiting For A Wave、それに8曲目 Nostalgie らはミデイアム・テンポの流麗な音列が清涼感とその中に潜むラングの美意識を感じさせてくれます。ピエラヌンツィに通じる上品で優美な感性。ヨーロッパのジャズ・ピアニストが持つ最も良質な部分。淀みなく流れる魅惑のパッセージの連続はブルース精神と対極にあるけれど同種のグルーヴ感を醸し出しています。
1. Le Sablier
2. Three Lines
3. Wounds
4. Private Garden
5. Waiting For A Wave
6. Moon Princess
7. Your Notes
8. Nostalgie
Thierry Lang (p), Heiri Kaenzig (b), Peter Schmidlin (ds).
YouTubeからトリオ演奏をピック・アップしてみました。佳曲ミディアム・テンポの軽快な演奏。溢れ出る美的センスにとても共鳴するとともに、ジャズ・ピアノの愉しみを感じて心浮かれてきますね。
VIDEO
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Thierry Lang / Reflections I
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投稿者 Jazz Blogger T : 10:39
アントニオ・ファラオ/ソーン
2011年12月11日
Antonio Farao / Thorn
最近はじめて聴いたイタリア人ピアニスト、アントニオ・ファラオの作品を紹介しましょう。現ジャズ界において、中堅どころでは最も注目されている実力派ピアニストの一人、アントニオ・ファラオの2000年の録音。テクニックに裏打ちされた感性と音楽性が高いレベルで表出された上質で豊かなジャズ音楽です。パーソネルは、アントニオ・ファラオ(p)、クリス・ポッター(sax)、ドリュー・グレス(b)、ジャック・デジョネット(ds)。2000年NY録音。Enja。
アントニオ・ファラオ(1965〜)は、98年に初リーダー作「Black Inside」以降、次々とリリースされる作品を通じて、今最も旬のジャズ・ピアニストの一人と目されているようですね。私にとっては本日エントリの「ソーン」がファラオ初体験になるのですが、何度も聞き返してはその評判に違わぬ優れたピアニストという認識を持ちつつあります。
このところ、イタリア・ジャズを集中的に聴く毎日を過ごしています。2000年以降のイタリア・ジャズ界はその才能あるタレント達の活躍と彼らが創り出す高品質のアルバム群によって、それはまさに世界の中心的な発信地になっているようですね。
ピアニストでは、アントニオ・ファラオ(1965〜)、ルカ・マンヌッツァ(1968〜)、ステファーノ・ボラーニ(1972〜)らがこの世代に当り、その前の世代には、著名なエンリコ・ピエラヌンツィ(1949〜)やレナート・セラーニ(1958〜)がいますね。
私の最近の興味は、特にルカ・マンヌッツァとアントニオ・ファラオの2人にあり、彼らがどんなピアニストであり、どんな音楽を作り出そうとしているのか、その辺りのことを明らかにしたいと思っていまして、その探索は始まったばかりです。
マンヌッツァは、ファブリツィオ・ボッソやマックス・イオナータらと共に50年代60年代のハード・バップや新主流派の典型的な王道モダン・ジャズ路線を、自分達の理想とする現在最高の洗練さて持って再構築しているように見えます。
アントニオ・ファラオについては、本日現在、私はまだ本作しか聴いていない状況ですので何も言えないと思いますが、やはり何と言うか、その磨き抜かれた技量と音楽性に立脚して、モダン・ジャズの持つ普遍的な魅力を極めたい、あるいは、その高みに達したいという、強靭な魂や意志を感じますね。
ファラオのピアノは時に激しくパワーとテクニックで聴く者を圧倒するような力があります。本作ではジャック・デジョネットが加わることでそれを後押ししていますね。それとは対照的に、数曲の学曲においては、鎮静した美しく粘っこい演奏が繰り広げられています。この深い思索的なピアニズムが私的には非常に魅力的です。
全9曲。トリオ演奏とマルチ・サックス奏者のクリス・ポッターが加わったカルテット演奏があります。一番印象に残った演奏は4曲目 Epoche です。ポッターのソプラノ・サックスとファラオのピアノが織りなす退廃的なムードが素敵です。神秘的というか悪魔的というか、音楽には何らかの隠された暗部のようなものがあると一層魅力的になるものなのです。クラシックでは作曲家のスクリャービンが、また、ジャズ界でもウェイン・ショーターがそれを的確に示しています。
女性のイニシャルと思われる曲名の7曲目 B.E. が次に好きです。エヴァンス・ライクな内省的な美しいバラッド演奏です。ファラオのピアノには、ジャズ・ピアノが持つべき香(かぐわ)しい芳香がありますね。少し強めの体臭の方がクセになるというか、引きつけて止まないものがありますが、それほどでもなく中庸で適度な感性を感じます。
9曲目も同様な路線で、ファラオがヨーロッパのピアニストであることを思い起こさせる内容です。短調のメロディが品よく流麗に紡がれてゆくエレガントなピアノです。2曲目 Time Back もやはりトリオ演奏ですが、デジョネットのエンカレッジングなバッキングを伴って、ファラオのピアノが縦横無尽にジャズ的奔放さとしなやかな音楽性を披露してみせます。これぞジャズという素敵なジャズ・ピアノです。
1. Thorn
2. Time Back
3. Preludio
4. Epoche
5. Caravan
6. Arabesco
7. B.E.
8. Tandem
9. Malinconie
Antonio Farao (p), Chris Potter (sax), Drew Gress (b), Jack DeJonnette (ds).
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Antonio Farao / Thorn
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投稿者 Jazz Blogger T : 11:55
ローマ・トリオ/チャオ・チャオ・バンビーナ
2011年12月07日
Roma Trio / Ciao Ciao Bambina
今日は最近集中的に聴いているイタリア人ピアニスト、ルカ・マンヌッツァのピアノ・トリオ作品をご紹介しましょう。21世紀に入ってイタリアのジャズが熱く燃えていますね。ネオ・ハード・バップとも呼べるこの潮流は本物のモダン・ジャズです。このトリオ・メンバーはその中心的ミュージシャン達。私のお好みに名を連ねるルカ・マンヌッツァとの出会いは今年後半の個人的な発見となりました。新鮮な感覚が魅力です。パーソネルは、ルカ・マンヌッツァ (p)、ジャンルカ・レンツィ (b)、ニコラ・アンジェルッチ(ds)。Venus。2007年ローマ録音。
ルカ・マンヌッツァ(1968〜)は40才代前半の中堅どころ。ファブリツィオ・ボッソらのグループのメンバーとして著名です。そのピアノの魅力は、小気味よく歌う右手の新鮮なフレージング感覚。誰と似ているのでしょう。例えば、ウィントン・ケリーからブルース臭さが抜けて洗練だけを取り出したような、とでも表現しましょうか。あるいはラス・フリーマンの淡白系エレガンスを能弁にしたような。エヴァンス的な演奏もできるのだけれど、バップ系の強い打鍵とアクセントを伴ったハード・ドライビングな演奏により魅力がありそうです。
本トリオのリーダー格のドラム、ニコラ・アンジェルッチの演奏が刺激的でいいですね。本作あるいは本トリオの新鮮な感覚は彼のドラミングと精妙なアレンジにかなり依存していそうですね。べースを含めて3者の関係性と調和が素晴らしいですね。密度の濃い上質なジャズが出来上がっています。
ヴィーナス・レーベルの中にあって、このローマ・トリオのものは斬新かつ高い音楽性ゆえ目立っていますね。芸術を感じさせる音楽であること、ある種の緊張を強いられたりスリリングな感覚を味わうことなど本作が持つ魅力は、ジャズを聴く醍醐味そのものであります。
全11曲。素敵な演奏が並びます。繰り返し聴くほどにどの曲にも平板でない何か新しいものが埋め込まれているのがわかります。お気に入りは、5曲目の Moon And Sand。ベース・ソロの後のマンヌッツァのソロが渋くて美しくて好みです。うねる指使いと繊細なタッチが素晴らしいですね。標題曲9曲目 Ciao Ciao Bambina は有名なイタリアのカンツォーネ曲。斬新なアレンジで独特のジャズに仕上げており、マヌッツァの軽快なピアノが快活なドラムの上を駆け巡ります。
2曲目 Solar、4曲目 Anche Un Uomo、8曲目 Maramao Oerche Sei Morto、10曲目 That's Allでは新鮮なドラミングが冴え渡り、本ピアノ・トリオの真骨頂を聞くことができます。新鮮なジャズ・フィーリング。
1. All Of You
2. Solar
3. Amarsi Un Po'
4. Anche Un Uomo
5. Moon And Sand
6. Just One Of Yhose Things
7. Torna A Surrient
8. Maramao Oerche Sei Morto
9. Ciao Ciao Bambina
10. That's All
11. Celestina's Waltz
Luca Mannutza (p), Gianluca Renzi (b), Nicola Angelucci (ds).
Rec. July 16,2007,Rome (Venus Records VHCD1002)
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Roma Trio / Ciao Ciao Bambina
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投稿者 Jazz Blogger T : 22:16