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エントリ内容の一覧
ジョン・コルトレーン/プレイズ・ブルース
2012年08月11日
John Coltrane / Coltrane Plays the Blues
ジョン・コルトレーンの真摯なジャズを聞いてみたいと思う時、私の場合は57年から62年くらいの作品群がその中心になります。本作はその意味で目的に適う最適な一枚。メイン・ストリーム・ジャズらしい堂々と安定したサックス演奏に思わずにんまりさせられます。愛聴盤としていつも座右に置いておきたい渋い作品。パーソネルは、ジョン・コルトレーン (ts)、マッコイ・タイナー (p)、スティーブ・デイヴィス (b)、エルヴィン・ジョーンズ (ds)。1960年10月NYC録音。Atlantic。
コルトレーンのジャズには独特の魅力があるのですが、個人的には50年代後半から60年代初頭のテナー奏者としての自己を確立し、クリエイターとしての音楽性をこれから模索していこうとする時期が好みになります。先端を走る自信と意欲に満ちていること、アフリカ音楽を取り入れた創造性や斬新性、ソプラノ・サックスの新しい試みなど、一人の演奏者から音楽クリエイターへの変貌を模索する過渡期の姿がそのエネルギッシュな音楽とともにまぶしく感じられます。
自身のレギュラー・コンボを率いてサイドメンが充実してくるのもこの時期です。マッコイ・タイナーとエルヴィン・ジョーンズの参加は決定的に重要と思われます。特に、エルヴィン・ジョーンズのたたき出すリズムは重奏的で複雑ないわゆるポリリズムと言われる圧倒的な存在感があって、それによってコンボが醸し出す雰囲気には目の離せない緊張とスリルが内在するようになります。また同時にリズムを刻むことを強要されなくなったベースはより自由に解き放たれ独自のラインを奏することができます。こうしてコンボの音楽は独特の深みのある色と光を映すようになると考えられます。
本作と同じ日に録音されたアルバムが他に2枚あり、あの著名な「My Favorite Things」と「Coltrane's Sound」なのですね。本作はこれら2作と比較して無名に近いアルバムと言えるかもしれません。しかしながら、内容的には充実いや成熟というくらいに引けをとるものではありません。この時期、主にアトランティック・レーベルに録音されたコルトレーンの音楽はどれをとっても高水準にあり、コルトレーン・ジャズと呼べる自己のジャズがほぼ完成していると言えるでしょう。
もう一つ触れておかねばならないのは、マッコイ・タイナーのピアノ演奏の魅力です。本作は題名の通りブルース集なのですが、ブルースを得意とするタイナーの各曲でのソロ演奏が実に心地よいのです。マッコイ・タイナーのこの時期のピアノはまさにコルトレーンのピアノ版といっていいくらいにコルトレーンの影響下にあり、そのモード奏法とリリシズムに裏打ちされたピアノ演奏は、独特のブルージーな気だるい雰囲気と一種の緊張を強いられる独特のリズム背景の中を、孤高に疾走してゆく美しい音列が鮮烈なのです。本作は聞き込むほどにはまさにそうしたマッコイ・タイナーの魅力を味わうべき作品なのだと確信するのです。
全7曲。もちろん全曲ブルースですが、黒っぽさが嫌味になるような類のものではなくて意外にあっさりと感じられます。真摯なジャズが持つ適度な緊張感がバランスよく全体を支配しているのでしょう。繰り返して聞くべきジャズとはまさに本作のようなジャズを言うのに違いありません。
1. Blues To Elvin
2. Blues To Bechet
3. Blues To You
4. Mr. Day
5. Mr. Syms
6. Mr. Knight
7. Untitled Origional (Bonus Track For CD Only)
John Coltrane (ts), McCoy Tyner (p), Steve Davis (b), Elvin Jones (ds).
詳しくはアマゾンでどうぞ。→John Coltrane / Coltrane Plays the Blues
関連エントリはこちらから。
→ セロニアス・モンク/ウィズ・ジョン・コルトレーン (1957)
→ ジョン・コルトレーン/ブルー・トレーン (1957)
→ ジョン・コルトレーン/ソウル・トレーン (1958)
→ ジョン・コルトレーン/ジャイアント・ステップス (1959)
→ ジョン・コルトレーン/マイ・フェイバリット・シングス (1960)
→ ジョン・コルトレーン/オレ・コルトレーン (1961)
→ ジョン・コルトレーン/インプレッションズ (1961)
→ ジョン・コルトレーン/ライブ・アット・ザ・ビレッジ・ヴァンガード (1961)
→ ジョン・コルトレーン/コルトレーン (1962)
→ ジョン・コルトレーン/ジョン・コルトレーンとジョニー・ハートマン (1963)
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投稿者 Jazz Blogger T : 21:12
ジェリー・マリガン/マリガン・ミーツ・モンク
2011年12月25日
Gerry Mulligan / Mulligan meets Monk
ジェリー・マリガンとセロニアス・モンクが共演する世評高い作品をご紹介します。録音時57年後半のモンクはコルトレーンとの歴史的な共演を果たしておりもっとも好調な時期と言えるでしょう。ジャズの本質がよく見えてくるアルバムではないかと思っています。パーソネルは、ジェリー・マリガン (bs)、セロニアス・モンク (p)、ウィルバー・ウェアー (b)、シャドウ・ウィルソン (ds)。1957年NY録音。Riverside。
ジェリー・マリガンはバリトン・サックスの第一人者として著名ですね。困難な楽器を吹きこなすという点では若くして夭逝したサージ・チャロフの方が恐らく上なのでしょうが、いかんせんチャロフには残された作品が少な過ぎました。また、エリントン楽団のハリー・カーネイも有名ですね。ライブ演奏でのエリントンはいつもソロ奏者の名前を口頭で紹介するので主要メンバーの名前はいやがおうにも記憶に残りますね。
私にとってのマリガンのアルバムといえば、長く愛聴した「パリ・コンサート」をまず挙げることになるのですが、レコードのみでCDでの発売がないようなのですね。54年の録音で、ボブ・ブルックマイヤーとの2管編成。典型的なビ・バップでもあり、マリガンの朴訥気味の吹奏が魅力ですね。この朴訥だけれど紡がれる音列に味があるので、その旨味を知ると病み付きになってしまうのですね。マリガンにはそうした独特の雰囲気があると思うのです。
本作はそうしたいわば同類とも言えるマリガンとモンクの組み合わせですから、その特徴が倍加されているということになりますね。洗練とか流暢さは微塵もなく、訥々とした語り口で語られるジャズがここにあるのですが、その演奏から得られる心地よさはまさに極上のジャズ体験と言えるものに違いありません。心に訴えるものは決して楽器演奏テクニックの上手下手が主な要素でないということが分かるというものです。
現代のジャズ・プレイヤーの水準からすると考えられないことですが、モンクやマリガンらの個性は際立っています。それと、バリトン・サックスの音色が面白いということも一つありますね。吹く強弱によって音色が微妙にコントロールされているようです。強く吹く時に音が割れる感じが私は特に好きなんですね。
全9曲。別テイクが入っていますので実質的には6曲になります。聞き慣れたモンクの曲が中心ですね。1曲だけマリガンの曲。全体に不思議と飽きが来ないのですね。BGM的に流していてもいいですし、じっくりと聴き込むことも可能です。
マリガンのバリトンの調べというか音色に郷愁があっていいですね。3曲目 Sweet and Lovely がその不可思議だけど愛らしいメロディと不器用そうなバリトンの組み合わせが面白いですね。バリトンサックスの魅力って、不細工だけどそれが可愛らしく思えるというフレンチドックやボストンテリアらの愛玩犬の魅力に通じるものがあるように思われますがいかがでしょうか。
1. 'Round Midnight
2. Rhythm-A-Ning
3. Sweet And Lovely
4. Decidedly (Take 4)
5. Decidedly (Take 5)
6. Straight, No Chaser (Take 3)
7. Straight, No Chaser (Take 1)
8. I Mean You (Take 4)
9. I Mean You (Take 2)
Gerry Mulligan (bs), Thelonious Monk (p), Wilbur Ware (b), Shadow Wilson (ds).
NYC, August 12, 1957,
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Gerry Mulligan / Mulligan meets Monk
関連エントリはこちらから。
→ジェリー・マリガン/ナイト・ライツ
→ジェリー・マリガン/アット・ストリーヴィル
→ジェリー・マリガン&ポール・デスモンド/ブルース・イン・タイム
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投稿者 Jazz Blogger T : 21:38
マックス・イオナータ/コーヒー・タイム
2011年12月12日
Max Ionata / Coffee Time
現代イタリアを代表するテナー・サックス奏者マックス・イオナータの快心のアルバムを紹介しましょう。ファブリツィオ・ボッソをゲストに加え、ルカ・マンヌッツァがピアノでなくハモンド・オルガンを奏するカルテット演奏。これぞ21世紀の今を感じさせ最高のモダン・ジャズではないかと聞き惚れてしまいます。パーソネルは、マックス・イオナータ(ts)、ファブリツィオ・ボッソ(tp)、ルカ・マンヌッツァ(p)、ロレンツォ・トゥッチ(ds)。2010年ローマ録音。Albore Jazz。
マックス・イオナータがリーダーということで、同じネオ・ハードバップ路線とは言えファブリツィオ・ボッソやルカ・マンヌッツァのリーダーものとは多少違ったものになっていると思われます。ハモンド・オルガンを使っていることもあるのですが、単純なファンキーではなくて、新鮮な感覚が明らかに付加されています。
ルカ・マンヌッツァのオルガン演奏はピアノ演奏とはまったく別物のような印象です。足でベースを刻んでいるのでしょう、アドリブ・ラインは右手1本のシングルトーンに聞こえます。ハモンドオルガンのベース音はあの空気が震えるような重厚な音圧感が個人的に好きなのです。マンヌッツァの演奏は、ジミー・スミスのような陽性のファンキー一辺倒ではなくて、渋めにグルーヴするラリー・ヤング系です。
それにしても、ボッソのテクニックというのは恐るべしというか、手の届かない痒いところをいとも簡単に吹き抜けてしまうのですね。自在に操られるアドリブ・ラインは圧倒的なものです。イオナータは太く豪放な演奏がやはり魅力ですが、リーダーとして抑え気味というかよくコントロールされた知的な演奏を行っています。
本作はフロントの二人が全くもって素晴らしいこと、曲想がモーダル調でバップやファンキーというワンパターンを感じさせないこと、オルガンの渋いバッキング、8ビートのハードドライビングなドラミングのバッキングなどなど、今を感じさせる高密度ジャズです。
昔1960年代にマカロニ・ウェスタンというイタリア製西部劇が流行しました。「荒野の用心棒」や「夕陽のガンマン」など懐かしい映画がありました。ジュリアーノ・ジェンマやクリント・イーストウッドらの名優を生み、またエンリオ・モリコーネの哀愁ある音楽が著名ですね。西部劇というのは米国の開拓時代の話で、日本でいえばチャンバラ物や銭形平次、水戸黄門のような位置に当るのですが、なぜかその伊製西部劇が本国の映画以上に世界的にヒットしたわけですね。
今のイタリア・ジャズ界のムーブメントというのは、50年代60年代ハードバップ〜新主流派モード路線のモダン・ジャズの本流を約50年を経て現代風かつ正統的に再現しているという点で何やら似たような構図が見えるわけです。本家を凌ぐ出来映えを示すことが当然に起ってしまうのですから、ここでのボッソ、マンヌッツァ、イオナータらは将来名演奏家としてジャズ史に残って行くのかもしれません。
全9曲。どれも素敵な演奏です。まず1曲目はミディアム調の明朗な曲想で快適なソロが続きます。オルガン伴奏の独特の雰囲気が面白いですね。古さを感じさせない、何か斬新な感覚があるのです。また、3曲目はカリプソ風で明るい陽光が降り注ぐ浮き浮きしてくる演奏であり、ボッソのトランペットの魅力が存分に味わえる演奏。
6曲目がまたクールなジャズです。ロック調のオルガンとドラムのハードで粘っこいバッキングが現代を感じさせてくれますね。マンヌッツァのソロ演奏が素敵です。スティーブ・キューン70年代のローズの演奏を思い起してしまいます。7曲目 Mona Lisa がアップテンポの快演。イオナータのテナーが力強くていい感じ。
8曲目スタンダード曲 All Blues でのマンヌッツァのオルガン演奏がファンキーに弾けています。イオナータがまた渋いソロをとってくれます。9曲目は最後を締める静かなバラッド。オルガン伴奏の雰囲気が素敵です。
1. Coffee Time (Max Ionata)
2. In 'n' Out (Joe Henderson)
3. Donna (Gorni Kramer)
4. Kiss (Prince)
5. E.S.C. (Luca Mannutza)
6. Safari (Luca Mannutza)
7. Mona Lisa (Max Ionata)
8. All Blues (Miles Davis)
9. Chan's Song / Dedicated to Gianni Basso (Herbie Hancock)
Max Ionata (ts), Fabrizio Bosso (tp, flh), Luca Mannutza (org), Lorenzo Tucci (ds).
Recorded in Roma, 2010.
YouTubeからマックス・イオナータの映像をアップさせていただきましょう。渋めの演奏です。ドラミングがやはりいい具合で好きです。ルカ・マンヌッツァのピアノもデリケイトないいソロをとっています。
VIDEO
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Max Ionata / Coffee Time
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投稿者 Jazz Blogger T : 00:11
アート・ペッパー/ロンドン・ライブ1980
2011年11月25日
Art Pepper / London Live 1980
アート・ペッパーの晩年の作品から最近気に入ってよく聴いているアルバムを紹介します。70年代以降の復帰後のペッパーは多くのアルバムを出していますが、このロンドン・ライブこそは最高の寛ぎパーフォーマンス。パーソネルは、アート・ペッパー(as)、ミルチョ・レビエフ(p), ボブ・マグヌソン(b), カール・バーネット(ds)。1980年ロンドン録音。
ジャズ・ファンにとってアート・ペッパー(1925-1982)は非常に大きな存在ですね。50年代の天才的なきらめきを印したアルバム群はサックス・ジャズの金字塔と言えましょう。70年代以降の復帰後も素晴らしい演奏を残していますが、復帰前があまりに神懸かり的であったばかりに、多少損をしていると思われます。
私は復帰後のペッパーは凡人らしくなって親近感があったり、ジャズを聴いて寛ぐという点においてはまったくもって復帰後の方がその目的に合うように思います。例えば、バド・パウエルに「バド・パウエルの芸術」という47年と53年の演奏を記録した名盤がありますが、特にA面の47年の方は芸術という表現も妥当かと思われるような格調高く品格ある天才そのものの演奏ですね。晩年のパウエルはそうした神懸かり的なものが希薄になった分だけ、楽しめるといいますか、気楽に寝転がって聞き流して適当に楽しめるわけです。
ペッパーの場合も似たようなところがあって、切れ味鋭い一本勝負とも言える隙のない完璧な演奏をしていた頃よりも、少し凡庸さや冗長さが加わることよって聞く側にも余裕というか遊びみたいなものが生じてくるのですね。芸術鑑賞ではなくて、エンターテイメントとして聞く状況が整っているわけなのです。録音時間が長くなっていたり、ライブ演奏が多くてより臨場感があったり、ジャズ本来の魅力を堪能できる環境下での演奏が多くなっているのです。
そうした意味で本作のロンドンでのライブ演奏は最高の一枚です。日常的に聴くジャズはやはりこういう寛ぎをもたらしてくれるお気楽で元気の元になるジャズがよいですね。特にライブ盤であることはジャズ特有の臨場感や即興性を楽しむ上で必須の要素です。ペッパーほどの実力者にとってはライブ演奏の方が上で主張してきた私好みの演奏を繰り広げることができ、結果的に寛ぎのあるエンターテイメントな作品となるのだと思います。
77年のヴィレッジ・ヴァンガードでのライブ盤がやはり復帰後の代表作なのでしょうが、発掘される形で後年になって日の目を見た本作の方に私は愛着があります。音質も悪くなく、バックのレギュラー・メンバーとの息もぴったりで、切れのよい元気溌剌なサックス・プレイは実に壮快です。同じ時期、同じメンバーでのパリ・ライブってのもありますが、残念ながら音質が劣るためにこちらロンドン・ライブが数段上でしょう。
このペッパーの快演を聴いていますと、やはり愛聴盤であるところのマイルス・デイヴィスのライブ盤「プラグド・ニッケル」を想起させられます。ともに過去を払拭、いや刷新するような高エネルギーに満ち溢れていて、その内面の充実や輝きがよく伝わってくるというか、心に深く分け入ってくる強烈な演奏なのです。こういうジャズこそ一番に愛すべきと私は思っています。
全5曲。2曲目ミシェル・ルグラン作「思い出の夏」の美しいメロディを料理するペッパー節がなかなか渋いですね。レビエフのピアノもいい感じです。3局目スタンダード Stella By Starlight も同様な路線で、渋柿のようにしわがれたバラッド演奏に凄みを感じさせられます。4曲目のジョビンの名曲「イパネマの娘」もメリハリの効いた鋭いアクセントの中にしなやかな黒豹のような品格と機敏さを漂わせています。このクセになる粘っこさは私が求めて止まない本流のジャズそのものなのですね。
1.Cherokee
2.The Summer Knows
3.Stella By Starlight
4.A Girl From Ipanema
5.This Blues of Mine(Blues In E-Flat)
Art Pepper (as), Milcho Leviev(p), Bob Magnuson(b), Carl Burnett(ds).
詳しくはアマゾンでどうぞ。
→ Art Pepper / London Live 1980
関連エントリはこちら。
→アート・ペッパー/モダン・アート
→アート・ペッパー/ザ・リターン・オブ・アート・ペッパー
→アート・ペッパー/ミーツ・ザ・リズム・セクション
→アート・ペッパー/ジ・アート・ペッパー・カルテット
→アート・ペッパー/ゲッティン・トゥゲザー
→アート・ペッパー/ジ・アート・オブ・ペッパー
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投稿者 Jazz Blogger T : 22:54
エリック・ドルフィー/イリノイ・コンサート
2011年04月26日
Eric Dolphy / Illinois Concert
今日はエリック・ドルフィーを聴いて感動したことを書きましょう。本作はハービー・ハンコックとの競演ライブ盤。ドルフィーの吹くバス・クラリネットとアルト・サックス演奏の魅力がここにあります。リズム感覚こそがジャズの醍醐味の源泉であることを改めて実感させられる内容です。パーソネルは、エリック・ドルフィー(bcl,fl,as)、ハービー・ハンコック(p)、エディ・カーン(b) JC・モーゼス(ds)。1963年3月10日録音。BlueNote。
エリック・ドルフィーはやはりライブがよいですね。ファイブ・スポットでの有名なライブ盤はジャズ音楽の魅力を教えてくれた思い入れのある貴重なアルバムであり、長く自分の中で1番感激したジャズでした。ドルフィーの奏でるジャズの魅力は圧倒的なアドリブ、インプロビゼーションがもたらすジャズ的トランス状態、その渦中に巻き込まれる興奮にあります。そして、そのトランス状態を生むベースとなるものは恐らくはドルフィーの卓越したリズム感覚、タイム感覚なのだと思われます。
スタジオ録音ものでは、室内楽のクラシック音楽のような静的な印象を醸し出し、何と言うかいかにも閉鎖空間の独特の雰囲気と禁欲的で音楽に真摯に向き合う孤高の精神が感じられるのです。いずれにしてもドルフィーにしかできない一風変わった音楽だと思われます。一方、ライブものではその静的な佇まいと緊張の糸が何かの拍子に切れてしまったような、どこまでも深く掘り下げどこまでも高く飛んでゆくような危険な香りが全体を覆います。
エリック・ドルフィーという人はまじめで口数少なく、いつも練習ばかりしている音楽の求道者のようなタイプであったと聞きます。アドリブ・ソロは伝統的なバップ・ジャズなのですが、その吹く速さが剛速球であったり、メロディ・ラインが異質なために、フリー・ジャズのような印象を与えます。アドリブ・メロディ自体には大した魅惑はなくとも、タイム感覚が秀逸なためにジャズ特有の醍醐味を感じ取ることができます。
本作はハービー・ハンコックと競演したことで話題のライブ盤なのですが、アドリブのできが大変によくて、ファイブ・スポットでの火の玉のような興奮とスリルを再び感じさせてくれます。全7曲中、曲順に、バス・クラリネット3曲、フルート1曲、アルト・サッックス3曲。バスクラでは『馬のいななき』と言われた独特のドルフィー節が随所に聞かれ、1曲目Softly, as in a morning sunriseが特に印象的。ほとんど原曲の主題メロディを感じられない20分の長い演奏です。
また、アルト・サックスでは、6曲目Red Planetでのソロが圧倒的で素晴らしく、この種の変拍子系ではドルフィーのリズム感覚が最も冴え渡るに違いありません。続くラスト曲のG.W.も同様の演奏で好ましく、いずれもドルフィーの典型的かつ代表的なアルト演奏と言えるのではないかと思えるくらい好きです。これらの成果はハービー・ハンコックとの競演がもたらしたものというより、ドラムのJ.C.モーゼスの参加が大きいように思えます。たたき出されるポリリズムの重量級バッキングはエルヴィン・ジョーンズを彷彿とさせる濃厚な刺激に満ちています。
1 SOFTLY AS IN A MORNING SUNRISE
2 SOMETHING SWEET, SOMETHING TENDER
3 GOD BLESS THE CHILD
4 SOUTH STREET EXIT
5 IRON MAN
6 RED PLANET
7 G.W.
ERIC DOLPHY (bcl, fl, as), HERBIE HANCOCK (p), EDDIE KHAN (b), J.C. MOSES (ds).
Recorded live in March 1963.
YouTubeから1964年死の数ヶ月前の映像をここにアップさせていただきましょう。チャーリー・ミンガスのグループの一員としてバスクラを吹くライブ演奏です。ドルフィーのバスクラ演奏の一端を垣間見ることができる貴重な映像です。パーソネルは恐らくは以下と思われます。Johnny Coles (tp), Eric Dolphy (bcl), Clifford Jordan (ts), Jaki Byard (p), Charles Mingus (b), Dannie Richmond (d) 。
VIDEO
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Eric Dolphy / Illinois Concert
関連エントリはこちらからどうぞ。
→エリック・ドルフィー/ファイブ・スポットのエリック・ドルフィーVol.1
→エリック・ドルフィー/アット・ザ・ファイブ・スポットVol.2
→エリック・ドルフィー/ラスト・デイト
→エリック・ドルフィー/アウト・ゼア
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投稿者 Jazz Blogger T : 20:43
アート・ペッパー/ジ・アート・オブ・ペッパー
2009年04月21日
Art Pepper/The Art of Pepper
今日はアート・ペッパーの傑作です。いつでもどこでも聞けるようぜひ座右に置いておきたい1枚。可憐な歌もの佳曲での絶好調ペッパー節がジャズの魅力を如実に伝えてくれます。パーソネルは、アート・ペッパー(as)、カール・パーキンス(p)、ベン・タッカー(b)、チャック・フローレス(ds)。1957年4月1日LA録音。Omegatape。
アート・ペッパーの作品は本ブログですでに5作品についてご紹介していますが、その絶頂期の典型的な演奏に聞かれる陰影に富んだ麗しいフレージングと品格あるブルース・フィーリングなどはまさに天才的と言えるものですし、いつ聞いても痛く感激させられるのです。本作はペッパーが得意とするミディアム・テンポやラテン味の愛すべき歌曲が並んでいまして、ペッパーのアルト・サックスの妙技を構えることなく寛ろいで楽しむにはもってこいの素敵な内容です。ピアノのカール・パーキンスもきりりとメリハリある好サポート。そのピアノの音色が適当に重くてバランスのいいのも高評価に寄与しています。
やっぱりアート・ペッパーっていいですね、と久しぶりにじっくり聴き入りますと心がじんわり溶けて心底にそう思えるのです。露骨な甘っちょろい主題メロディもペッパーの自在なアルトにかかりますと、決して俗に流れずに香り高い芳香となって訴えかけてくるのですね。まるで魔法のようです。それにしましても56年後半から57年前半にかけて地元米西海岸の小レーベルに次々に吹きこまれたアルバム群を眺めてみますと、どれもこれも名品ばかりなのには驚かされます。
①The Return of Art Pepper (Jazz West) 1956.8.
②Marty Paich Quartet Featuaring Art Pepper (Tampa) 1956.8~9.
③Playboys/Chet Baker & Art pepper 1956.10.
④Art Pepper Quartet (Tampa) 1956.11.
⑤Modern Art (Intro) 1956.12~57.1.
⑥Art Pepper Meets the Rythm Section (Contemporary) 1957.1.
⑦The Art of Pepper (Omegatape) 1957.4.
この時期のペッパーは、麻薬が原因の2年間の服役から復活した時期に当り、それまでの不遇をぬぐい去るような快演を繰り広げています。特に本作は力みがないというか、実に抜けがよくてしかも切れ味抜群の演奏になっていまして、何気なく聞くにはもってこいのお気軽で明朗なジャズに仕上がっています。スローなバラッドよりも快調なミディアムからアップ・テンポの演奏に魅力があります。有名過ぎる⑥ミーツ・ザ・リズム・セクションや⑤モダン・アートのアート・ペッパーがちょっと「よそ行き」のペッパーだとすれば、こちら⑦本作はずっと身近なアルト吹きの兄さん的雰囲気ですよ。
付言すれば、カール・パーキンスのピアノが小気味よくスインギーで実にいい味わいであることです。幼い頃に左手が不自由になって左はコードしか弾けないにもかかわらず、その独特の奏法から生み出される演奏にはジャズ・テイストが横溢しています。リーダー作の「イントロデューシング」やサイドメンとしては本作以外にもクリフォード・ブラウン&マックス・ローチ・クインテットの『イン・コンサート』があります。惜しくも自動車事故で29才で夭逝。
全12曲。7曲目 Summertime や11曲目 Breeze and I らのべたっとした曲調ながらその美味を味わい尽くす処理具合、9曲目 Body and Soul での哀感の中に力ある生命力を感じさせる豊かな表現などは素晴らしい。また、例えば、5曲目 I Can't Believe That You're in Love With Me や10曲目 Without a Song での主題の紹介やその後の展開部分に耳を傾けますと、その底知れぬ表現力の深味に恐れ入ります。麗しい音色で媚態を誇示するような吸引力。アニダ・オデイが何気なく歌いながらテクニックと色香発散を周到に計算駆使しているような具合です。
1. Holiday Flight
2. Too Close for Comfort
3. Long Ago (And Far Away)
4. Begin the Beguine
5. I Can't Believe That You're in Love With Me
6. Webb City
7. Summertime
8. Fascinating Rhythm
9. Body and Soul
10. Without a Song
11. Breeze and I
12. Surf Ride
Art Pepper(as), Carl Perkins(p), Ben Tucker(b), Chuck Flores(ds). Recorded in LA, on April 1, !957.
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Art Pepper/The Art of Pepper
関連エントリはこちら。
→アート・ペッパー/モダン・アート
→アート・ペッパー/ザ・リターン・オブ・アート・ペッパー
→アート・ペッパー/ジ・アート・ペッパー・カルテット
→アート・ペッパー/ミーツ・ザ・リズム・セクション
→アート・ペッパー/ゲッティン・トゥゲザー
→カール・パーキンス/イントロデューシング
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投稿者 Jazz Blogger T : 20:13
ソニー・ロリンズ/アルフィー
2009年04月01日
Sonny Rollins / Alfie
今日はソニー・ロリンズとオリバー・ネルソンのちょっと意外な組合せ。映画「アルフィー」の音楽です。いかにも英国人らしくシニカルな印象の名優マイケル・ケイン主役。全曲ソニー・ロリンズの作曲。パーソネルは、ソニー・ロリンズ(ts)、ケニー・バレル(g)、ロジャー・ケラウェイ(p)、ウォルター・ブッカー(b)、フランキー・ダンロップ(ds)、フィル・ウッズ(as)、J.J.ジョンソン(tb)、オリバー・ネルソン(arr)、他。1966年1月26日録音。Impulse。
ソニー・ロリンズの60年以降のアルバムは実は日常的に聞く対象ではないですし、ほとんど感心して聞いたことがないというのが正直なところですが、本作に限っては、ロリンズのテナーが以前の自信に満ちた豪快かつ流暢なものとは言えないものの、マイペースでバッキングを無視したように吹きまくるアドリブには流石にロリンズの魅力を感じるのですね。それに、サイドメンのケニー・バレルとロジャー・ケラウェイがとてもいい味を出していることも印象に残るものです。
不安定であいまいに聞こえる吹奏はジャズ潮流が急激に変わる中でロリンズがロリンズなりにその流れに乗ろうともがき苦しんでいるようにも聞こえます。50年代後半の演奏が金字塔のように確立されたものでありあまりに素晴らしいものだっただけにその呪縛から逃れることは容易なことではないのでしょう。まあでも、そういう歴史的なことは音楽を楽しむ分には実はどっちでもよいことであって、本作を前提なしで純粋に聞く分にはメロディよく快調なアドリブの続く楽しいジャズそのものなのですよ。
あと、オリバー・ネルソンのアレンジするサウンド自体は何やら行儀よすぎるのか私にはいまいちのめりこめないところがあります。あの著名な「ブルースの真実」では、エリック・ドルフィーの参加によってその律儀なブルースに自由な即興性の遊びというか醍醐味が加わることで妙なバランスの良さがありましたっけ。
その意味ではロリンズが生来持つ奔放さが同様な作用を及ぼすかと思いきや、どうもどこまで行ってもなじまない水と油という感じがするのです。恐らくはロリンズというアーティストはリズム隊以外のサイドのサポートをプラスに受けるタイプではなくて、いつも自分の独自のインプロヴィゼーションのみで聞くものを圧倒するタイプなのでしょう。
全6曲。表題曲の1や6では、魅惑のテーマメロディが魅力的な上にロリンズの豪快なソロがなかなか冴えています。ケニー・バレルのブルージーなギターがいいアクセントとして効いていますね。静かな雰囲気の2曲目ではロリンズのソロに深みある味わいがあっていいですし、続くケラウェイのピアノも内省的かつ可憐で素敵です。
4曲目のブルース、ここでのバレルのギター・ソロにはいつも感激させられます。流石の完璧なプルース演奏。クールでモダンな響きがイカしてます。その後のロジャー・ケラウェイのソロもバレルに感化されたのか実にいい具合で何やら新鮮な感覚がありますね。最後に満を持して出てくるロリンズのテナーが短いながらパッションに溢れています。
5曲目のジャズ・ワルツ風アレンジでのロリンズが本作では一番の好みかもしれません。安心して耳を傾けられる類の力を少し抜いたロリンズ節なのです。そのリズムに乗った自在のインプロヴィゼーションは実に魅力的。曲自体の楽想にほのかにショーター音楽の影を感じるのは自分だけではありますまい。
それにしましても、サイドメンの存外のいい演奏に出会うことは往々にしてよくあることですが、本作のケニー・バレルとロジャー・ケラウェイには本当に感激させられます。ロジャー・ケラウェイというピアニストは、私にとってはシンガーズ・アンリミテッドとの共演盤があまりに印象深く、本作のようにブルース主体の演奏でこんなにいい味が出せるピアノであったことは嬉しい発見ではありました。
1. Alfie's Theme
2. He's Younger Than You Are
3. Street Runner With Child
4. Transition Theme for Minor Blues or Little Malcolm Loves His Dad
5. On Impulse
6. Alfie's Theme Differently
iTunes Storeでは試聴できます。→Sonny Rollins/Alfie
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Sonny Rollins / Alfie
関連エントリはこちら。
→ソニー・ロリンズ/ヴィレッジバンガードの夜
→ソニー・ロリンズ/ウエイ・アウト・ウエスト
→ソニー・ロリンズ/ソニー・ロリンズVol.2
→ソニー・ロリンズ/テナー・マッドネス
→ソニー・ロリンズ/サキソフォン・コロッサス
→オリバー・ネルソン/ブルースの真実
→シンガーズ・アンリミテッド/ジャスト・イン・タイム
→ケニー・バレル/ミッドナイト・ブルー
→ケニー・バレル/アット・ザ・ファイブ・スポット
→ジョン・ジェンキンス/ジョン・ジェンキンスとケニー・バレル
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投稿者 Jazz Blogger T : 21:47
サージ・チャロフ/ブルー・サージ
2009年03月20日
Serge Charoff/Blue Serge
今日はサージ・チャロフというバリトン・サックス奏者のワン・ホーンの名作を紹介します。バリバリ吹きまくる豪快というよりもソフトでメロディアスな流麗かつ渋い演奏。パーソネルは、サージ・チャロフ(bs)、ソニー・クラーク(p)、ルロイ・ヴィネガー(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)。1956年3月4日ロサンジェルス録音。Capitol。
ジャズのバリトン・サックスといえば、私の中では、ジェリー・マリガンがダントツで、次にデューク・エリントン楽団のハリー・カーネイとこのサージ・チャロフ、あとペッパー・アダムスやセシル・ペインというところでしょうか。でも本作を聞いていますと、実力的にはこのサージ・チャロフの方がマリガンよりも上じゃないかとも思われます。34才という若さで脊椎ガンのために亡くなったために残された録音数はごく限られており、夭逝が本当に惜しまれる才能あるジャズマンの一人です。
サージ・チャロフ(1923-1957)は、47年から49年までウッディ・ハーマン楽団にて活躍し、50年代に入って病気のために第一線を引いていましたが、晩年の54年に再起、そして、55年56年にキャピトルに2枚のリーダー作を残すことによってチャロフの名はジャズ史に永遠に刻まれることになりました。本作は56年の録音で、サージ・チャロフというジャズマンの貴重な卓越した演奏が記録されています。
昔の名のあるジャズマンの多くが若死にしていますが、繊細な芸術家が過酷な現実に対峙しつつ少しでも優れた芸を残すためについつい手を染めがちな麻薬やアルコールへの耽溺というものがその遠因であった場合が多いようです。でもこのサージ・チャロフの場合はガンという病気で状況はかなり異なっています。不可抗力というか運命のようなものですから。でも表現者として後世の人に感銘を与えることができる芸術エンターテイメントを残せたこと、それは素敵なことだと思うのですね。自身の運命を悟った芸術家の渾身の演奏だったのかもしれません。白血病で逝ったリパッティのピアノ演奏のように。
醜くくてどうしようもないと思えるブルドックを喜んで飼っている人の気持ちを私は全く想像さえできないけれど、何とかしてあげたいという母性をくすぐるものがあると昔付き合っていた女性から聞いたとき妙に納得した覚えがありますが、バリトン・サックスって楽器をジャズで聞くとき私は同種の感覚を感じることがあります。ただチャロフの場合にはそれが例外的に当てはまらないかもしれません。あまりに流調にこの困難な楽器を吹きこなしているからです。
お気に入りのエリック・ドルフィーが吹くバス・クラリネットの吹っ切れそうで吹っ切れないけれどたまにものすごくぶち切れる瞬間があって、その際に強いエクスタシーを感じたりする、そんな印象に近いですね。バリトン・サックスも労多くじっくりと紡いできたソフトなメロディラインをたまに巨象が咆えるように裏返った音色でエネルギッシュにぶち切ることがあるのですね。その刹那がとっても気持ちいいと感じるんです。それも、チャロフの場合にはごくたまにしか起こらないのです。テナーサックスのように流麗なんですね。でもバリトン独特の中高音を強く吹いたときの音色の興趣は同じく魅力的ではあります。
共演者のソニー・クラークはまだ西海岸にいる頃の参加て、東に出てアルフレッド・ライオンに気に入られてブルーノートで活躍するのはこの後のことです。本作でクラークの奏でるブルースにはやはり臭みがあまり無くて気品といえるような品があるのですね。それにカウンターを的確にとらえるかのような生来の一音一音の重いタッチはすでに顕在化しています。まあでも幾分まだ西海岸ジャズ独特の軽さというか明るさが漂っていることは確かで、アート・ペッパーと共演したラス・フリーマンの繊細なセンスを思い起こさせます。
全7曲。いずれも質の高い快適なジャズです。何気なく聞くには最高のジャズ。疲れた夜に恋人と聞く大人のジャズ。癒しのジャズですね。特にバラッド演奏が素敵で、3曲目Thanks for the Memory と7曲目 Stairway to the Stars が個人的にお好み。ビブラートが効いた余韻のあるバリトンが実に渋いのです。繊細な歌い回しが味わい深く、それに一瞬だけ感極まって豪放にうねりますがそれがまたいい表情を見せてくれます。4曲目 All the Things You Are や5曲目 I've Got the World on a String も曲本来の持つ快調具合がうまく表現されていてとてもいい塩梅。また、全体に、ソニー・クラークのピアノがつぼを押さえた憎いやつそのものであり、ルロイ・ヴィネガーのベース、これがまた腰の重い重量級で実に心地よいです。
1. Handful of Stars
2. Goof and I
3. Thanks for the Memory
4. All the Things You Are
5. I've Got the World on a String
6. Susie's Blues
7. Stairway to the Stars
詳しくはアマゾンでどうぞ。試聴可。→ Serge Charoff/Blue Serge
iTunes Storeでも試聴可。→
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投稿者 Jazz Blogger T : 20:47
バルネ・ウィラン/バルネ
2008年10月05日
Barney Wilen/Barney
今日は50年代のモダン・ジャズのちょっと変わった名作を紹介しましょう。仏のテナー奏者バルネ・ウィランの若き日のリーダー作。ケニー・ドーハムやデューク・ジョーダンをパリの名門クラブ・サンジェルマンに迎えたライブ盤です。パーソネルは、バルネ・ウィラン(ts,ss)、ケニー・ドーハム(tp)、デューク・ジョーダン(p)、ポール・ロヴェール(b)、ダニエル・ユメール(ds)。1959年4月、パリ・クラブ・サンジェルマン録音。
映画「死刑台のエレベーター」でマイルスに抜擢されて一躍有名になったバルネ・ウィラン(1937-1996)20代前半時のリーダー作。ケニー・ドーハムやデューク・ジョーダンら米国の著名なハード・バッパーと組んで典型的なモダンジャズを残してくれました。本作は幻の名盤と言われていたアルバム『バルネ』に未発表4曲を加えて初CD化されたもので、私も4~5年前にCD屋さんの試聴コーナーで聞いてすぐに気に入ったのでした。
バルネ・ウィランは当時ジャズが取り入れられた「殺られる」、「彼奴らを殺せ」や「危険な関係のブルース」などの映画サウンドトラックにも参加しています。仏を代表するモダン・ジャズ・テナーと言えるでしょう。80年代以降も活躍していましたがまだまだ若いうちに逝去しています。
内容的にはやはりケニー・ドーハムの影響が色濃く、ブルージーな黒っぽいジャズ世界になっていると思いますし、パリの有名クラブでのライブということで熱心な聴衆の臨場感が伝わってきます。バルネ・ウィランのサックスはオーソドックスな正統派なのですが、尽きることなく紡がれてゆくアドリブ・ラインが魅力です。
特に未発表だったボーナス・トラックのうちの6曲目 Everything Happens To Me でのソプラノ・サックスが素晴らしい出来だと思います。溢れでる歌心が見事なのですね。続くデューク・ジョーダンのソロも哀愁があってよいです。1曲目 Besame Mucho はご存知の通りいかにもケニー・ドーハム好みの曲調ですが、やはり期待通りのきめ細やかなソロが聞かれます。ドーハムは私の好みにぴたりとくるのですね。続くウィランのソロも起伏とスリルに富んだイマジネーションある好演です。
2曲目 Stablemates はベニー・ゴルソン作でジャズ・メッセンジャーズのファンキー節を彷彿とさせるイントロですが、落ち着いたドーハム、続く幾分か異質なウィラン、そして明朗なジョーダンの各々のソロが引き継がれてゆきますとまあ独特の演奏になっていることが分ります。そして、ウィランの神経質そうな曲紹介の声とともに、ジョーダン作の3曲目 Jordu のカッコよい序奏が始まりますが、その後のジョーダンのソロがなかなか素晴らしく、また続くウィランも冷ややかに醒めつつもメロディックに歌い上げまして、ドーハムがまたいつものごとくブルージーに渋いソロを聞かせてくれるのですね。
そして、タッド・ダメロン作の4曲目 Lady Bird がとてもよい具合です。少し早めのミディアム・テンポに乗って3者のこれぞハード・バップと言える快調なソロが聞けるのですね。会場からも掛け声が起こるようないい雰囲気になってます。特にウィランのテナーはメリハリがきいて豪快ながら繊細にメロディを紡ぐ好演。
1. Besame Mucho
2. Stablemates
3. Jordu
4. Lady Bird
5. Lotus Blossom *
6. Everything Happens To Me *
7. I'll Remember April *
8. Temoin Dans La Ville * (彼奴らを殺せ)
Barney Wilen (ts), Kenny Dorham (tp), Duke Jordan (p), Paul Rovere (b), Daniel Humair (ds), Recorded on Aipl. 24&25, 1959.
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ バルネ・ウィラン/バルネ
関連エントリはこちら。
→バルネ・ウィラン/エッセンシャル・バラード
→ルイ・マル/死刑台のエレベーター
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投稿者 Jazz Blogger T : 18:10
ソニー・ロリンズ/サキソフォン・コロッサス
2008年10月04日
Sonny Rollins / Saxophone Colossus
今日はソニー・ロリンズの名盤『サキソフォン・コロッサス』です。ロリンズの豪放でブルージーなテナーにこってりと浸かること、それは私にとってジャズ的恍惚感にいざなう最高の良薬。パーソネルは、ソニー・ロリンズ(ts)、トミー・フラナガン(p)、ダグ・ワトキンズ(b)、マックス・ローチ(ds)。1956年6月NY録音。Prestige。
50年代後半のソニー・ロリンズのテナーサックスはモダン・ジャズの典型と言えるでしょう。この時期のロリンズは多くの録音を残していますが、本作はそれらの中でも定評ある名盤中の名盤ですね。個人的にも『ビレッジバンガードの夜』や『ウェイ・アウト・ウエスト』らのピアノレス演奏と同等の位置を占めます。
この『サキソフォン・コロッサス』の魅力は、やはりロリンズの圧倒的なインプロビゼーションの素晴らしさにありまして、ブルース調の早めのテンポの曲を男らしく縦横に吹き切る、その気風のよさとソロ演奏のかっこよさですね。
例えば、5曲目 Blue Seven でのベース次いでドラムとによる長いイントロの後に満を持して出てくるロリンズの渋いテーマ提示とそれに次ぐリズムに乗った圧巻のアドリブ・ソロには素晴らしいジャズのみが有する品格が端的に示されているように思います。何てイカした音楽でしょう。バッキングのトミー・フラナガンのピアノがまた背後で微妙な陰翳を刻んでいます。
2曲目 You Don't Know What Love Is ではいきなりロリンズのテナーからスタートしてテーマ紹介後に聞かれるソロは起伏に富んだ何と凄みのあるテナーでしょう。その後のフラナガンのソロは対照的に優しく美しいものです。
ドラムはマックス・ローチですが、この時期のロリンズはエルヴィン・ジョーンズやシェリー・マンなどいろいろな名手と共演していまして、ロリンズ名義のアルバムにおいてはその全体の特徴に彼らドラマーの個性がある程度反映しているように思えます。本作の印象は私にとって硬派で精密な感じとなりますが、それはまさにローチのドラミングの性質のように思われるのです。
とにかくサムライのような潔さを感じるアルバムです。無駄をいっさい除いて直球の真剣勝負のみ。ロリンズの自信が全体を覆いつくしています。自分こそテナーの第一人者であり、最高のジャズを提供できると。
50年代後半のハード・バップがモダン・ジャズの最も実り多い時代だと私は思っていますが、ロリンズを代表とする10人程度のジャズ・ジャイアンツが優れた録音を残すことでジャズの歴史を刻みました。本作はそうした秀逸な一枚に違いありません。
数年して60年代に入ると回りの状況も一変し、ロリンズ自身の音楽も変わってゆかざるを得なかったというのですから、時代の流れに逆らえないとはいいながらちょっとかわいそうな気がします。
1 St. Thomas
2 You Don't Know What Love Is
3 Strode Rode
4 Moritat
5 Blue Seven
Sonny Rollins (ts), Tommy Flanagan (p), Doug Watkins (b), Max Roach (ds). Recorded on Jun 22 1956.
iTunes Music Store では試聴可能です。→
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Sonny Rollins / Saxophone Colossus
関連エントリはこちら。
→ソニー・ロリンズ/ヴィレッジバンガードの夜 (1957)
→ソニー・ロリンズ/ウエイ・アウト・ウエスト (1957)
→ ソニー・ロリンズ/ソニー・ロリンズVol.2 (1957)
→ソニー・ロリンズ/テナー・マッドネス (1956)
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投稿者 Jazz Blogger T : 17:14
スタン・ゲッツ/スタン・ゲッツ・プレイズ
2008年10月03日
スタン・ゲッツ/スタン・ゲッツ・プレイズ
今日はスタン・ゲッツの名盤「スタン・ゲッツ・プレイズ」をご紹介します。プレスティッジ、ルーストではクールだった演奏スタイルがヴァーブ移籍第1作目の本作で少しホットな路線にシフトしています。パーソネルは、スタン・ゲッツ(ts)、デューク・ジョーダン(p)、ジミー・レイニー(g)、ビル・クロウ(b)、フランク・イソラ(ds)、1952年12月NY録音、Verve。
スタン・ゲッツ(1927-1991)こそは長く白人テナーの王様でしたが、50年前後の 「スタン・ゲッツ・カルテット」(Prestige)、「ザ・サウンド」、「コンプリート・ルースト・セッション」(Roost)らのアルバムで触れなば折れん風情のクールで美しいフレーズを奏でていましたが、52年にVerveに移籍してから豊かなイマジネーションはそのままに徐々にホットで豪放な奏法へとシフトしてゆくのでした。
本作ではその変遷しつつあるゲッツの過渡期の演奏が聞かれます。私はクールなゲッツが大好きなのですけれど、多少ホットになってもメロディアスでアイデアに富んだインプロヴィゼーションは全く健在なわけで、後年のボサノバでの大ヒットに繋がりゆく片鱗が伺えるというものですね。
いずれにせよバラード演奏は依然に独特の魅力を放っていまして、やはり素晴らしいとしか言いようがないのです。例えば、3曲目 'Tis Autumn や6曲目 Body and Soul、7曲目 Stars Fell on Alabama、12曲目 These Foolish Things らのスローバラッドでの美しいフレーズと優しい音色にはただただ感激するのみです。
多少の違いを感じるのは少しアップテンポの曲調では力強いブローをしていることでしょうか。1曲目 Stella by Starlight や2曲目 Time on My Hands、4曲目 Way You Look Tonight などでは心地よいハードバップのセンスが光っていると思うのですね。 ゲッツほどの天性の卓越した技量をもってすれば、より自由にホットに吹きまくるというのが自然な姿なのだと思われます。
若きデューク・ジョーダンのソロはほとんどありませんが、素敵なイントロ部分やバッキングで聞かれるピアノにその個性を少しは感じ取れるようです。やはりジョーダンのピアノは生来のデリカシーが光る演奏になっていると思うのですね。ゲッツが当時ずっと連れ添ったアル・ヘイグに少し近い感覚。ジミー・レイニーは以前よりゲッツの盟友、当然のごとく脇役に徹しています。
ジャケットが印象的です。このアルバム、ジャケットでだいぶ得してるなと思う。
1. Stella by Starlight
2. Time on My Hands
3. 'Tis Autumn
4. Way You Look Tonight
5. Lover, Come Back to Me
6. Body and Soul
7. Stars Fell on Alabama
8. You Turned the Tables on Me
9. Thanks for the Memory
10. Hymn of the Orient
11. These Foolish Things
12. How Deep Is the Ocean?
Stan Getz (ts), Jimmy Raney (g), Duke Jordan (p), Bill Crow (b), Frank Isola (ds). Recorded at NYC on Dec. 12&29 1952.
iTunes Music Store では試聴可能です。→
詳細はアマゾンでどうぞ。→ スタン・ゲッツ/スタン・ゲッツ・プレイズ
関連エントリはこちら。
→ スタン・ゲッツ/スタン・ゲッツ・クァルテット (1949, 50)
→ スタン・ゲッツ/ザ・サウンド (1950, 51)
→ スタン・ゲッツ/スタン・ゲッツ・プレイズ (1952)
→ スタン・ゲッツ/スタン・ゲッツ&ビル・エヴァンス (1964)
→ スタン・ゲッツ/スウィート・レイン (1967)
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投稿者 Jazz Blogger T : 00:05