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マイルス・デイヴィス/サムデイ・マイ・プリンス・ウィル・カム

JAZZ Trumpet

2005年02月05日

miles_someday_my_prince.jpg Miles Davis / Someday My Prince Will Come

 今日はマイルス・デイヴィスの「サムデイ・マイ・プリンス・ウィル・カム」です。50~80年くらいのおよそ30年の長きにわたり常に革新を追求しながら先端を走ってきたマイルス、私にとっては60年前後から65年くらいの諸作に洗練されたモダン・ジャズの醍醐味が感じられて最も好ましく思われます。パーソネルは、マイルス・デイヴィス(tp)、ハンク・モブレイ、ジョン・コルトレーン(ts)、ウィントン・ケリ-(p)、ポール・チェンバース(b)、ジミー・コブ、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)。1961年NY録音。

 ジャケットに写っている女性はマイルスの当時の夫人、フランシス・テイラーです。いつか王子様が、というアルバム名とこのジャケットは何やら意味ありげですね。また、このディズニーの名曲を初めてジャズの題材にしたのはデイブ・ブルーベックですが、マイルスの演奏以降スタンダードとして定着していくことになります。

 59年の「カインド・オブ・ブルー」でモード奏法という、コードの制約から解き放ちスケールに基づく自由な即興を可能とするスタイルを提示したマイルスにとって、60年前後からショーターが加わる64~5年くらいまでの期間はモード奏法の確立とさらには次ステップのための試行錯誤の時期だったように思われます。

 この時期、本作もそうですが、バラード系のスタンダード曲と斬新な新曲とを組み合わせて、前者では従来のコード主体、後者でモード主体という構図が見えます。新旧の調和点が絶妙な音空間を演出しています。こうした大衆性と芸術性の絶妙なバランス感覚は、ブルーなミュート・トランペット演奏と相まって高いポピュラリティの獲得に繋がっていると思われます。これはヨーロッパや日本を含む一連のライブ演奏で繰り返し確認されることになります。

 60年代前半のマイルスの作品を並べてみました。「マイルス・アヘッド」以降、ギル・エヴァンスとのコラボレーションが①④⑤で継続されてます。その他はコンボですが、本作②と⑥以外はすべてライブ演奏となります。また、テナー奏者がショーターに固定するまで交代してゆきます。

①Sketches of Spain 60.3.10&11
②Someday My Prince will Come 61.3.21
③In Person at the Blackhawk 61.4.21&22 Mobley,Kelly,Chanbers,Cobb
④At Carnegie Hall 62
⑤Quiet Night 62
⑥Seven Steps to heaven 63.3.14 Coleman,Feldman,Hancock,Carter,Butler,Williams
⑦In Europe 63.7.27 Coleman,Hancock,Carter,Williams
⑧My Funny Valentine 64.2.12 Coleman,Hancock,Carter,Williams
⑨Four&More 64.2.12 Coleman,Hancock,Carter,Williams
⑩In Tokyo 64.7.14 Rivers,Hancock,Carter,Williams
⑪In Berlin 64.9.25 Shorter,Hancock,Carter,Williams

 独立したコルトレーンが1曲目と5曲目に参加しています。レギュラーの地位を獲得したモブレイが貧弱に見えるのはやはりモードを独自のスタイルに昇華しはじめたコルトレーンの実力からして当然のことでしょう。その後テナー奏者は次々と入れ替わることになりますが危機感を持ったモブレイは次作ブラックホークでは発奮した演奏を聞かせてくれます。

 全6曲、大変楽しめる内容です。偶数曲はバラード。あの大人の雰囲気を持ったアルバム「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」の原型がここにあることが感じれられます。1や6はその後しばらくライブ演奏で頻繁に取り上げる定番です。また、ウィントン・ケリーのピアノがモード的な香りを少し感じさせてとても輝いていることを付け加えておきます。

1. Someday My Prince Will Come
2. Old Folks
3. Pfrancing
4. Drad-Dog
5. Teo
6. I Thought About You

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