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エントリ内容の一覧
伊丹敬之/イノベーションを興す
2011年04月24日
イノベーションを興す / 伊丹敬之
最近読んだイノベーション関連の本で感銘を受けた本第2弾です。伊丹敬之氏の講演を聞いたこともありますが率直でズバリと本質を射抜く眼は確かかと信頼しています。深い洞察にいつも脱帽していますが、本書は論理が明快で説得力があり、随所にその通りと納得させられる箇所が多かったです。備忘録としてここに記録しておきます。2009年。
筆者の技術の定義
「自然が内包しているきわめて豊かな論理の全体の中から人間の認識の中へ体系的に切り取られ、他者による再現や利用が可能なように体系化された論理的知識の総体」
偶然が必然を捕らえる。セレンディピティに対する筆者の説明。
「自然から見れば、自分のもっている必然の論理の中のごく一部を見せたに過ぎない。しかし、きわめて限られた事前知識と認識能力しかない人間には、それが偶然に見える。つまり、自然にとっては必然、人間にとては偶然、なのである。決して、自然そのものが偶然事象とでもいうべき不確実な変動をしているから、偶然に見えるのではない。しかし、そうした偶然のきっかけがあってはじめて、人間はそのきっかけが示す方向へ探索と認識の努力を始める。事前には思いもつかなかった方向へと導かれる。セレンディピティとよく言われる現象である。」
「もちろんそのきっかけは、正解の始まりでしかない。その偶然にめざとく注目し、その現象の背後の論理の解明をしなければ、技術開発には至らない。いわば、一回限りの偶然の現象を、固定化し永続化する作業が必要となる。それは、自然がもっている必然の論理をきちんと人間の認識の中に固定化する作業である。」
「偶然の必然化とは、自己矛盾のような言葉だが、そこに筋のいい技術が育ってくるプロセスの真実がある。バーディーンも「計画された偶然性が必要」と言っている。しかし、偶然の女神は誰にでも微笑むわけではない。偶然の必然化のプロセスには構造がある。有名な細菌学者パスツールに「偶然は準備のある心の持ち主に微笑む」。では、「準備のある心」とは何なのか。それは偶然の必然化につきものの、次の3つのステップへの努力と能力を備えた心、と言えるであろう。
1.偶然が生まれる→偶然の現象がおきる確率を高める努力
2.偶然に眼をつける→その現象を評価する能力
3.偶然を固定化する→その現象の論理を解明する能力」
生物の進化、技術の進化との対比。
「私は、偶然の必然化、あるいは偶然を必然が捕まえる、ということが技術が進化していくプロセスの本質の一つだと思うが、それは生物の進化のプロセスと似ている。すべての生命体の基礎となっているDNAが偶然のゆらぎで突然変異をすることは、広く知られている。その突然変異の累積とその後の淘汰が、実は生物の進化の歴史だそうである。生物は、偶然のゆらぎを自己のDNAの進化に取り込んで、気が遠くなるほどの時間をかけて実は多様な進化をしてきた存在なのである。」
「生物はゆらぎという偶然の中から、有位な情報を選び出す必然的なプロセスをもった、自己改良可能な分子機械だと言える」
「生命現象というのは、偶然の中から情報を汲み出す必然的なメカニズムを内臓している開放物質系の時間発展である」
「技術開発における偶然は、たんなるでたらめな出会い頭ではない。したがって、偶然に身を委ねつつ、しかしいかに偶然に弄ばれないようにするか、偶然の犠牲者となるのではなく、偶然をテコとして使える偶然の受益者にいかになるか。それが偶然の必然化のマネジメントの究極の課題である。」
「技術というものは、偶然のきっかけから有意な情報を選び出す必然的なプロセスを背後にもった、自己改良可能な知識体系である。」
「技術開発、あるいは技術の進化とは、偶然の中から情報を汲み出す必然的なメカニズムを内臓している、技術システムという開放知識系の経時的発展である。」
目次
1部 筋のいい技術を育てる
1章 筋のいいテーマを嗅ぎ分ける
2章 偶然を必然が捕まえる
3章 技術が自走できうる組織
2部 市場への出口を作る
4章 顧客インの技術アウト
5章 外なる障壁、内なる抵抗
6章 死の谷とダーウィンの海を活かす組織
3部 社会を動かす
7章 コンセプトドリブンイノベーション
8章 ビジネスモデルドリブンイノベーション
9章 デザインドリブンイノベーション
4部 イノベーションの発生メカニズム
10章 イノベーションの不均衡ダイナミズム
11章 組織は蓄積し、市場は利用する
12章 アメリカ型イノベーションの幻想
13章 イノベーターたち
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ イノベーションを興す / 伊丹敬之
関連エントリはこちらから。
→イノベーションの神話/スコット・バークン
→イノベーション・マネジメント入門
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投稿者 Jazz Blogger T : 23:42
スコット・バークン/イノベーションの神話
2011年04月23日
イノベーションの神話 / Scott Berkun
今日は最近個人的に興味を持っているイノベーション関係から書籍を一つ。著者のスコット・バークンはマイクロソフトに約5年勤めてプロジェクトを率いた人。現実を踏まえてイノベーションにまつわる神話と思える話題を提供しています。過去のイノベーションの例示の多さに説得力を感じます。2007年。
筆者はマイクロソフト社に5年間在籍しインターネット・エクスプローラーの開発などプロジェクト・リーダーとして活躍した後、文筆業に転進し、自らの経験を元に綴った「アート・オブ・プロジェクトマネジメント」が著名。本書は第2作目に当たる。
印象に残ったのは、9章の記載。問題の解決策よりも問題の発見やその枠組み作りが重要であるという指摘。錬金術という答えのない課題の解決に無駄な時間を費やしたアイザック・ニュートンの例や、エジソンが電球の発明で有名になったのは、電球自体の発明によるのではなく、問題の枠組みを「私の電球が採用されて普及するように電気の配送システムを街に張り巡らせること」と定義したことにあるとしています。彼の発明哲学が1%のひらめきと99%の努力であるというのは、自ら取り組むべき問題を適切に選択できる、すなわち問題の枠組み作りの部分さえ頭でひらめくことができれば、あとは努力と時間の問題であるという不遜なまでの確信とか自信を意味していたのかもしれません。
豊富な例を示して説得力があります。問題の枠組みを作り出すには重要な目標を選び出すことが近道であり、目標を簡潔に表現することが肝要であることも例を示しながら主張しています。
まえがき
1章 ひらめきの神話
2章 神話:私たちはイノベーションの歴史を理解している
3章 神話:イノベーションを生み出す方法は存在する
4章 神話:人は新しいアイデアを好む
5章 神話:たった一人の発案者
6章 神話:優れたアイデアは見つけづらい
7章 神話:上司はイノベーションについてあなたより詳しい
8章 神話:最も優れたアイデアが生き残る
9章 神話:解決策こそが重要である
10章 神話:イノベーションは常によいものをもたらす
付録 参考文献と参考資料
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ イノベーションの神話 / Scott Berkun
関連エントリはこちらから。
→イノベーション・マネジメント入門
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投稿者 Jazz Blogger T : 00:02
大前研一/日本の真実
2005年10月09日
日本の真実/大前研一(著) 小学館 (2004/06/28)
大前研一氏の著作にはいつもながらすがすがしいものを感じます。国家権力と真正面で対峙するその真摯な姿勢にある種の潔さを感じます。類まれな戦略思考の体現者であるご自身の頭で考え抜かれた深い洞察が自信を持って主張されているのです。その姿勢には子供じみた反権力の思想は微塵もなく、真に日本を憂える大人(タイジン)の風格が感じられます。
毎年のように上梓されている氏の著作には政治、経済、ITなどなど国および国民が本当は真剣に考えるべき事柄について、現状の問題点や来るべき未来について、とてもわかりやすく論述されていますので、私は氏の新たな視点や興味をいつもとても楽しみにしています。世の中の諸事が氏にかかるといとも簡単にその矛盾が露呈してしまいますね。
真の信頼されるべき知識人とは氏のように周りのしがらみをもろともせずに常に独自の合理的な視点を貫くことにあるのでしょう。世の中が見通せて論陣を張れる氏のような存在は為政者ではなく、中立的な立場で苦言や箴言を主張することを本意として余りあるほどに世に貢献できることこそまともな世の中のはずなのです。もしその核心が省みられないとすれば世の中が本当におかしくなっていることの証左となるのでしょう。
本作はかなり踏み込んだ一冊だと思います。氏のスタンスがよく理解できますし、氏の憂いもまた痛く共感できるものです。かしこい一市井人としてこの混迷の世をいかに生き抜くか、という中年世代の命題をつくづく考えさせられます。
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投稿者 Jazz Blogger T : 18:15
嶋田淑之、中村元一/Google―なぜグーグルは創業6年で世界企業になったのか
2005年06月17日
Google―なぜグーグルは創業6年で世界企業になったのか 嶋田 淑之、中村元一(著) 毎日コミュニケーションズ(2004/12)
ネット上の検索ではGoogle、Yahoo、MSNと3社がメジャーですが、その中でも検索に特化して最も急成長しているのがGoogleです。ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリムの二人のスタンフォード大の学生が1998年に立ち上げたベンチャー企業です。4年前にエリック・シュミットという辣腕経営者を招いて、今や年商3000億円を越える大企業に成長し現在も拡大を続けています。アドセンスなど検索と広告が巧みに連動された画期的な広告手法を編み出すことにより、単に検索エンジン提供企業から広告企業へと大変身を遂げています。
これまでGoogle社に関する企業本はあまりありませんでした。歴史も浅く情報も限られていたからです。本書の内容は確かに一次情報が少なくて我々でもネット上などで日頃見聞きできる類の内容が中心に展開されているのですが、Googleの特徴をよくまとめ上げているという点では目を通しておいて損のない本だと思います。
最近東京研究所が立ち上がり優秀な頭脳を世界中から集めていますが、Google社の企業としての特徴的な点は技術力と採用を重んじることです。企業文化を共有できる人を徹底的に厳選して採用しているようです。そして独創的な技術を生み出すとともにそれを利益に結び付けてゆくことに注力しているのです。
第1章 18カ月で売上高6倍、税引き前利益23倍
第2章 どこまでも楽しくどこまでも快適に
第3章 なぜグーグルだけに可能だったのか
第4章 最高の創造的環境をつくればよい
第5章 「この半年間であなたが見た最もクールなものはナニ?」
第6章 WOLFGANG SERGEY-LARRY GOOGLE
詳しくはアマゾンでどうぞ。→Google―なぜグーグルは創業6年で世界企業になったのか
そういえば先月5月19日にFactory Tourと題されたGoogleによるプレゼンが行われています。セルゲイ・プリンやエリック・シュミットら経営陣が入れ替わり立ち代り登場して企業戦略などを説明しています。女性マネージャーがかっこいいですね。それらの貴重な動画をこちらのサイトからご覧になれます。→Google Press Center/Google Inc. Factory Tour
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投稿者 Jazz Blogger T : 18:16
大前研一/企業参謀
2005年04月13日
企業参謀―戦略的思考とはなにか
大前研一(著) プレジデント社 (1999/11)
大前研一氏の出世作となった作品『正・続企業参謀』(1975年&77年)の新装版です。著者30才過ぎで米国マッキンゼー社でコンサルタントをしていた時代の作品。世界各国で訳された大ベストセラー。現在も毎年のように著作を活発に続ける氏の自分の頭で徹底的に考え抜くという意思、そして得られた結論は自信をもって主張する姿勢、さらに時代を常に先取りする先見性など、やはり見習うべきものがたくさんありますね。
出版社/著者からの内容紹介
新しい時代の企業戦争を生き残る鍵を握るのは、評論家になり下がったスタッフ集団でも、アイデアを花火のように打ち上げるだけの一匹狼でもない。組織の中にあって、企業の頭取脳中枢として戦略的行動方針をつくりだし、それをラインに実行させる独特の力をもつ「企業参謀」集団──その存在が命運を決める。
著者紹介
1943年生まれ。早稲田大学理工学部応用化学科卒業後、東京工業大学大学院原子核工学科で修士号を、マサチューセッツ工科大学大学院原子工学科で博士号を得る。1970年から2年間、日立製作所原子力開発部技師として、主に高速増殖炉設計に従事。1979年から、マッキンゼー社の日本支社長となり、現在に至る。著書に『大前研一の新・国富論』『世界が見える日本が見える』『トライアド・パワー』、訳書に『エクセレント・カンパニー』など多数。
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投稿者 Jazz Blogger T : 18:17
堀江貴文/稼ぐが勝ち
2005年02月27日
稼ぐが勝ち
堀江貴文(著)
光文社(2004/08/07)
今話題のホリエモンことライブドア社長堀江貴文氏の昨年のベストセラー本です。私は今日の休日ハイク(山歩き)の帰り電車の中で約2時間で一気に読みました。面白かったです。昨年は野球球団、そして今年はメディア大手と、その買収劇を演じてライブドアの名が一気に広まりました。ブログやネットの世界では以前よりかなり有名でしたが昨年後半から今年にかけては社長自ら露出場面多く広告塔の役割を担っているかのようです。この本には一見過激に見える堀江氏の行動の背景となる合理的で論理的な考え方が率直かつ明快に記されています。成功体験とその自信に裏打ちされているとはいえ、衒いやはったりのない等身大の一辣腕若手経営者の信条が披露されています。その潔さゆえに読後感はきわめて爽快です。
この本を電車の中で読み出したら止められず、降りるべき駅で降りずに遠くまで行って往復の約2時間で全部読まされてしまいました。主張がはっきりしていて尚且つなるほどと思う部分がたくさんあり、もっと読みたくなるという類です。
目次
はじめに この本を手にとってくれた人へ
第1章 カンタンに壁を破る人・ゼッタイに破れない人…コネ・資金ゼロからの起業術
ライブドアって何の会社?/ピラミッド構造はすでに崩壊した/二〇代は搾取されている/個人も社会も「リセット」/「貯金をしなさい」は間違っている/アルバイトはすぐにやめよう/会社をつくるのはカンタン/会社とは人を使うための道具です/大学は一ヶ月でやめる/成長したいから背伸びをする/フロンティアはどこにでもある/日本のなかに二つの国ができる/老人は若者に金を貸せ/人の心はお金で買える
第2章 堀江流「シンプル・イズ・すべて」……売り上げ100億の経営術
シンプル・イズ・ザ・ベスト/基本に忠実/リスクとリターン/やるべきことはすでに見えている/経済の本質/チャンスに気づく/営業がすべて/気合いと根性で十分/とりあえず一つ売れ/つぶれる会社には法則がある/なぜ請求書にマネージャーのサインが必要か/部下をほめてはいけない/伸びしろの大きい社員に投資を集中する/引きこもりにネット内職を与えよ/資金は一気に集めろ
第3章 いま考えていること・これからやること……100億から300億への未来の種
インターネットビジネスの未来/リンドウズがネット世界を変える/技術を売りに/子どもがゲーム離れしている理由/次は「ネットワークゲーム」/自己中でいこう/若いうちに悟ってはいけない/成功体験をもてるかどうか/成り上がりの手本がなくなった/こだわらない・悩まない・即決する/世の中は常ならず/できるやつはいいレストランで息を抜く/映像メディアの未来はこうなる/ライブドアが目指すもの/気づいた人の勝ち
おわりに 若いうちほどカンタンです
ライブドア年表 ボクがこれまでやってきたこと
より詳しくはamazon.co.jpでどうぞ。→稼ぐが勝ち/堀江貴文
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投稿者 Jazz Blogger T : 18:18
フランソワ・ジャコブ/内なる肖像
2005年02月10日
内なる肖像―一生物学者のオデュッセイア
フランソワ ジャコブ (著), 辻 由美 (翻訳)
みすず書房 (1989/10)
フランソワ・ジャコブは「蛋白質合成における遺伝的制御機構」の研究(オペロン説と呼ばれる遺伝メカニズムの解明)で1965年度のノーベル生理学・医学賞を同僚のアンドレ・ルフォルフ、ジャック・モノーとともに受賞した仏の分子生物学者です。本書はジャコブ氏の半生を描いた自伝です。科学者の自伝としては文学的に異例の高い評価を受け世界各国で翻訳されています。
内容は単なる科学ものではなく、一人の人間の波乱の半生が瑞々しい感性と詩的な文章で表現されています。一個の文学作品として鑑賞するに堪える内容です。ジャコブ氏にとって本書が処女作ですが、その後も随筆などの著作を通して、科学と人間、そして社会に向けた深い洞察と見識を示されています。現代の賢者と呼ぶに相応しい存在です。
ジャコブ氏のような優れた直観と広い視野を併せ持つことがよい仕事を残す要件なのかなと私には思われます。それは感受性豊かで内省に富む人間が精一杯に生きること、その日々の積み重ねの結果培われる類のものなのだろうと思われます。そんなことを感じさせる書物です。
科学や研究の世界の人間は特殊と考えがちですが、ノーベル賞級の学者も一個の生の人間です。どんな人間にもそれなりの人生ドラマがあるように、そうした著名人も全く同様な運命を生き抜いているものです。むしろ、人一倍悩みやコンプレックスを持つ人間臭い側面があるのではないかと思います。
本書は科学に興味のある人だけでなく、人間やその生きざまに興味のある方にとって素敵なプレゼントになることでしょう。世の中や社会に貢献をするという満足な人生をまっとうするためには自分は何をいかになすべきか、またそれを享受する深い喜びがどんなものかを少しだけ共有することができます。そして自分の生き方を見直してみる良い機会になるのではないかと思います。
ご購入はamazon.co.jpでどうぞ。→内なる肖像/フランソワ ジャコブ
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投稿者 Jazz Blogger T : 18:19
イノベーション・マネジメント入門
2005年02月09日
イノベーション・マネジメント入門
一橋大学イノベーション研究センター (編集)
日本経済新聞社(2001/12)
企業で働く理系サラリーマンですので、仕事柄、この種の書物を読む機会が最近増えています。思うに、ノーベル賞受賞者の田中耕一さん(島津製作所)やLED開発で有名な中村修一さん(カリフォルニア大教授、元日亜化学勤務)ら、企業の研究者の中にもピカイチの才能が存在するという事実がこのところ明らかにされてきています。恐らくはこれらの快挙は例外的なこととも思われますが、むしろ氷山の一角であろうと私は解釈しております。
企業活動において新製品開発の占める比重はこのところ大きくなるばかりです。優良企業となるためには新製品開発力が鍵を握っています。本書はそうした研究開発に基づくイノベーションをいかに生み出すかのマネジメント手法について総論的に書かれた良書です。
特に、8章に人材に関するまとまった論文が示されています。研究はヒトと言われるように、大型の成果は間違いなく研究者の質に依存します。この章には創造的な研究者に関するパーソナリティや思考方法について一つの見解が示されています。こうした論文は稀少のため貴重に思われますのでここにご紹介します。
第8章 創造的技術者の論理とパーソナリティ (宮原諒二、一橋大学教授)
・多くのイノベーションは技術革新に基づく
・その技術革新の発端にはたいてい特定できる個人が存在する。個人の革新的な発想がカギを握っている
・彼らは独創的な技術の創造に際してどのような論理を用いているか?
・彼らはどのようなパーソナリティの持ち主なのか?
・それらを技術開発にどのように生かしたらよいのか?
1.創造的技術者
・新しい技術が技術革新として成立するには、「個人」、「環境」、「時間」の3つの要因が必要
・技術革新の芽は「技術そのものへの没頭から生まれ、芸術的手腕や職人的熟練の感覚、物事をうまく調和させる感覚が、
その没頭と結びつくことによって生ずる」と創造的技術者は考えている
・創造的技術者はビジネスの実務家というよりむしろ芸術家のセンスに近い
2.創造的技術者の論理とは
①創造の発端
・技術開発の現場では個人のアイデアやひらめきをもとに多くの実験が行われ、新技術創出のための仮説が次第に形成されていく
・実験とは自ら作った仮説を検証するために行うものである
・創造的技術者は、それまでの知識をもとに、まず最初に混沌とした状況を解決する特定の要因を思いつき、
それに従って少数のスマートな実験をし、仮説と実験を繰り返し、短時間でよい研究成果をあげる
・創造的技術者はなぜスマートな実験を行ったのかを"論理的"に説明できない
②アブダクション
・アブダクションという思考法による仮説形成が発見や発明の重要な発端になる
・アブダクションとは「演繹」「帰納」とは異なる思考法で、結論として説明しうるような仮説を構想し提起する推論
・具体的には、「驚くべきCが観測される」→「しかし、もし仮説Aが真であるとするならば、事実Cは起きるべくして起きる事実である」
→「したがって、仮説Aは真であると考える理由がある」というもので、仮説Aはあくまでも事実Cを説明するためのひとつの候補である
③3つの論理
・演繹的推論(deduction) 仮説→事例→結果
・帰納的推論(induction) 事例→結果→仮説
・アブダクション(abduction) 結果→仮説→事例
・演繹的推論、帰納的推論、アブダクションの3つはそれぞれスタートを「仮説」におくか、個々の「事例」におくか、「結果」におくかにより推論の形式が異なってくるに過ぎない
・アブダクションによる推論で得られた仮説は主観的なものであり、第三者にはわかりにくい暗黙知
・創造的な営みにはこのような飛躍が大きく不安定な推論が通常それと気づかれずに用いられている
3.創造的技術者のパーソナリティとは
①創造的技術者の行動
・創造的技術者は主流でなく辺境に存在することが多く、従来の常識の擁護者でなく主流からは非常識に見える
・創造的な人はアブダクションによる推論を行う(すなわち論理の飛躍が大きい)ので、従来の演繹的推論や帰納的推論を信奉する人
にとって論理的に理解しがたく、非常識に見られる。常識的な環境には生息しにくい状況が発生する
②パーソナリティの理解
・TA分析(交流分析)では、「親」、「大人」、「子供」の3つの自我状態を各人がどのような割合で有するかでパーソナリティを理解しようとする
・より詳しくは、「支配的な親」、「養育的な親」、「理性的な大人」、「自由な子供」、「順応した子供」の5つ
・創造的な研究者は一般的に「理性的な大人」と「自由な子供」が高く、特に「自由な子供」が高いことが知られている
③パーソナリティと論理の関係
・パーソナリティによって得意とする論理が異なる
→ 演繹的推論 「親」 大前提(仮説)をもとに演繹的に論理展開 (例)あるべき姿の話
→ 帰納的推論 「大人」周囲の種々の事実をもとに帰納的に論理を展開 (例)現実的な話
→ アブダクション 「子供」他の価値観や周囲の状況にとらわれずに主観的な飛躍した推論を行う (例)夢のような話
4.創造のプロセスとは
①DNA2重らせんモデル発見の経緯
・周囲に存在した実験事実と各自の知識によりDNAモデルを作成(アブダクションによる仮説の形成)
・DNAモデルを模型で表現(演繹的推論による仮説の一般化)
・最終の仮説に至る途中の予備的な仮説は帰納的推論によって検証され、最終的な本物の仮説に達した(帰納的推論による仮説の検証)
②創造のプロセス
・C.S.バース「発見における仮説の三段階」に基づくと創造のプロセスは3つのステップより行われる
第1ステップ アブダクションによる仮説の形成
第2ステップ 演繹的推論による仮説の一般化
第3ステップ 帰納的推論による仮説の検証
③創造のプロセスと技術開発組織
・企業における技術開発の場は大きく2つに分けることができる
→ 「技術創出の場」 発明とか発見に関わる
→ 「商品開発の場」 革新的技術やその他の技術を適用して商品に仕上げる
・技術創出の場 ここでは「イノベーションとは従来の常識を変革し、新しい常識を作り上げること
→ HOWよりもWHAT、定量的より定性的
→ 「アブダクションによる仮説の形成」と「演繹的推論による仮説の一般化」のステップが重要
→ 「自由な子供」と「理性的な大人」の共同体制が必要
→ 技術開発部門では通常、「理性的な大人」が多く、「自由な子供」は少ない
→ 「自由な子供」を選び資質を吟味して、「技術創出の場」に重点的に配置する
→ 創造の「場」での暗黙知を共有する仕組みを作り、「場」を理解できるマネージャーを配置する
・商品開発の場 ここでは「イノベーションとは経済成果をもたらす革新」
→ WHATよりHOW、定性的より定量的
→ 「演繹的推論による仮説の一般化」と「帰納的推論による仮説の検証」のステップが重要
→ 「理性的な大人」と「批判的な親」とが必要
→ 「自由な子供」は不適
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投稿者 Jazz Blogger T : 18:20
中谷巌、田坂広志/若きサムライたちへ
2005年02月08日
若きサムライたちへ/中谷巌、田坂広志(著)
PHP研究所(2001.10)
この本は、中谷巌氏と田坂広志氏とが、これから未来を切り拓いていく若者に向けて、「サムライ」のごとく、「いかに生きるか」「いかに死すべきか」という深き死生観を持ち、「答えのない問い」を問い続ける魂の強さを持って人生を歩んで頂きたいとの願いを込めて書かれた本です。
筆者の中谷巌氏は一橋大学教授からソニーの社外重役に就任し、現在は多摩大学学長と三和総合研究所理事長を兼務されている大変著名な方。最近はTV東京のニュース番組(平日23時)にレギュラー出演されいます。田坂広志氏は米のシンクタンク・バテル記念研究所の客員研究員を経て現在日本でシンクタンク・ソフィアバンクの代表を務め、また多摩大学大学院で教鞭を執られている、やはり多数の著作をお持ちの方。
私にとっては田坂広志氏の方がむしろその本やホームページ「未来からの風」を通じてとても親近感のある方です。組織人や経営者の仕事や生き方について示唆に富んだ卓見を発信されてきました。現代のような先の読めない時代に、希薄な哲学しか持ち合わせていない我々寄る辺のない市井人にとっては大変貴重な存在です。一種の思想家や宗教家のようにさえ映ります。真っ当に生きること、真摯に仕事に取り組むことの重さを常に直球で説かれています。
本書では、中谷氏と田坂氏の「青春論」や「人生論」が多くのエピソードとともに語られています。妥協せずに精一杯生きてきたからこそ現在の自分がここにあるという自信。若い頃に必死に生きて時代と格闘すること、それによって我々は逞しく成長でき深い思考力を身に付けることができるのだと。
そして、現代の若者をして期待を込めて敢えてサムライと呼び、この疾風怒涛の激動の時代をサムライらしく生きることによって乗り越えてゆくべきと訴えられています。若きサムライたちに対して次のメッセージが送られています。
過去はない。未来もない。
あるのは永遠に続く「いま」だけだ。
「いま」を生きよ。「いま」を生き切れ。
目次
1 青春時代をどう過ごすか
2 大学で何を学ぶか
3 学ぶ者の姿勢はどうあるべきか
4 いかに学ぶか、何を学ぶか
5 いかにして就職先を選ぶか
6 いかにして仕事のプロになるか
7 組織の中でどう処するか
8 仕事の真の報酬とは何か
9 人生の転機にいかに処するか
10 いかにしてこの人生を生きるか
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投稿者 Jazz Blogger T : 18:21
野中郁次郎、勝美明/イノベーションの本質
2005年02月07日
イノベーションの本質/野中郁次郎、勝美明(著)
日経BP社 (2004年5月)
本書はここ数年のヒット商品の開発物語が13例登場します。「物語編」をジャーナリストの勝美明氏が、「解釈編」をアカデミアの野中郁次郎氏が各々担当執筆しイノベーションの本質を明らかにしようという趣旨の本です。「ナレッジ・マネジメント」理論で著名な野中氏の鋭い体系的抽象化が光る一冊です。
結局のところ、野中氏がこれまで提案されていること、すなわち暗黙知と形式知をいかにスパイラルアップさせて創造的な成果に結びつけるかという着地点に落ち着くのですが、今回はそのためにはミドルのアップダウン・マネジメントが重要との結論になっています。そして、それには個人及び組織の「我々は何のために存在するのか」という存在論への根源的な主体的問いかけが必要との考察がなされています。一方で、それは「現在搾取」のアメリカ型経営とは対極にあるものであると。
目次
序 章 知識経営とクリエイティブ・ルーティン
第一章 製品の「コンセプト」にとことんこだわる
ケース1 サントリー カラダ・バランス飲料「DAKARA」
ポカリとアクエリアスの牙城を崩したコンセプトの勝利
~「場」=顧客との共体験が真のコンセプトを生む~
ケース2 本田技研工業「アコードワゴン」
絶対価値追求型のホンダの車づくり
~「弁証法」と「仮説設定」でコンセプトを磨く~
第二章 組織の「知」を徹底的に活用する
ケース3 デンソー「二次元レーザーレーダーシステム」
“隠れた巨人”の驚くべき知識創造力
~深堀りの技術屋と横串のシステム屋のせめぎ合いが力を生む~
ケース4 キヤノン デジタルカメラ「IXY DIGITAL」
「知」を切らないリストラがヒット商品となって花開く
~「サムライ・モデル」が可能にするキヤノンの強い綜合力とは~
ケース5 スズキ 五〇ccスクーター「チョイノリ」
「一cc=一〇〇〇円」を実現したものづくりの知
~本質を極めるコスト意識を「型」として定着させる~
第三章 「個」のコミットメントを限りなく高める
ケース6 富士通「プラズマディスプレイパネル」
個とネットワークとの「共創」により夢を実現する
~アメリカ型“傍観者の経営”と異なる“人間原理の経営”とは~
ケース7 ヤマハ「光るギター」
個の挑戦が組織に「ミドルアップダウン」の動きを巻き起こす
~「友だちの友だちはみな友だち(スモールワールド・ネットワーク)」
的な人脈をいかに生み出すか~
ケース8 黒川温泉観光旅館協同組合「黒川温泉」
「個と全体」のバランスをとり、独特の世界を醸し出す
~「主語論理」と「述語論理」の矛盾をいかに解消するか~
第四章 人の「才」を存分に発揮させる
ケース9 日清食品 高級カップめん「具多 GooTa」
「起業家ミドル」が生み出した大ヒットブランド
~自社製品を否定する最初の会社になる~
ケース10 松下電器産業「遠心力乾いちゃう洗濯機」
「理想を追い求める執拗さ」が持続的競争優位をもたらす
~理想の洗濯機は「中華鍋」から生まれた~
ケース11 ミツカングループ「におわなっとう」
「知的体育会系」社員が市場と商品を結びつける
~仮説を崩され到達した「真実」は予想外のものだった~
第五章 日々の「生活」や「実践」を根底から大切にする
ケース12 スタジオジブリ 「千と千尋の神隠し」
すべてのネタは「日常の対話」の中にある
~「主客一体」のジブリと「主客分離」のディズニーの違い~
ケース13 海洋堂「食玩」
競争戦略ではなく「創発」的戦略でヒットを生む
~成功と失敗を反復する中から戦略が湧き上がる~
まとめ
自分は何をやりたいのか
―脱・傍観者の経営をめざして
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投稿者 Jazz Blogger T : 18:22
松本晃一/アマゾンの秘密
2005年02月06日
アマゾンの秘密──世界最大のネット書店はいかに日本で成功したか
松本 晃一 (著) ダイヤモンド社 (2005/01/28)
アマゾンやデルコンピュータなど、リアルなお店を持たずにオンライン上だけで商売をしている企業が多くあります。そういう企業の多くはアフィリエイトを活用ししかもそれにより収益を大幅に向上させてきました。世界で最初にアフィリエイトを開始した企業が今や世界最大手の書店に急成長したアマゾン(amazon.com)です。当サイトもamazon.co.jpとアフィリエイト提携(アマゾンではアソシエイトと呼ぶ)をしており、CDや本などを当サイト経由でアマゾンで購入した場合に売上の数%が当サイト管理者に支払われるシステムを活用しています。
1996年にアフィリエイト(アマゾンではアソシエイトと呼ぶ)を開始してまたたく間に数多くのウェブサイト運営者をパートナーとする販売促進ネットワークを築くことに成功し、至るところにamazon.comへの扉が設置されていったのです。その結果、競合を大きく引き離し急成長を遂げることができました。その背景にはこれら個人サイトをはじめとするアフィリエイトサイトの協力があったということです。
この書籍は、そうしたアマゾンが日本で営業を開始しはじめた2000年秋にアマゾンに入社してマーケティング・キャンペーンの立案から巨大サイトのシステム構築に至るまで、約2年間にわたってマーケティングやシステム関連のスタッフとして関わった著者がアマゾンの秘密を明かした貴重な本です。創業者ジェフ・ベゾスの哲学、サイトの品質に徹底的にこだわる企業文化、社内で活躍する興味深い人々など、大成功したネット企業の内部が明らかにされた興味ある本です。
目次
プロローグ――存在しない人たちとのパーティ
第1章 長谷川氏からの電話
僕にとっての始まりの始まり
アマゾン初体験!
二〇〇〇年元日の初夢
アマゾンの日本上陸は果たして成功したのか
秘密のオフィスに初出勤
年内立ち上げ、という至上命令
【コラム】アマゾン、その秘密主義の背景
第2章 アマゾンの考え方
本屋に欲しい本がないことへの解決
地球上で最もお客さまを大切にする企業と呼ばれたい
事欠かないサービスの伝説
性別も年齢も関係ないアマゾンのCRM
目標は一年で一〇〇万人の顧客獲得
【コラム】アマゾンのルーツ
第3章 マーケティングシナリオの作成
サイトの外からいかに顧客を引きこむか
アマゾンのやり方――マーケティング指標
生きているイソギンチャク
日本のビジネスを伝える作業
一年殺しの選択。幻のブックデータベース
ベイシス
アメリカの先兵として、出版社回り
初代ブックスGM、Shin
コンペティターの足音
【コラム】アマゾンからのメール
第4章 カスタマーキャンペーンをやろう
カスタマーレビューこそアマゾンの成功の要因
大胆な消費者リサーチ
カスタマーレビューキャンペーンの立案
キャンペーンどころではない?
妙に神経質だった公正取引委員会
【コラム】カスタマーレビューを巡る攻防
第5章 コンピュータ書の品揃え
ブックス部門への参加
エディトリアルスタッフの帰還
アマゾンエディトリアルの仕組み
『誰のためのデザイン?』を選ぶ
コピーエディターの苦悩
キャンペーンの危機
第6章 アマゾン日本上陸
ローンチ当日。立ち上げの日
カスタマーレビューキャンペーンの始まり
怒涛のキャンペーン最終日
戦い終えて
【コラム】アマゾンに集まった人たち
第7章 品質との闘い
サイトを支えるネット裏の人々
巨大ソフトウェアの構築
トラブル発生! 初めてのリメディ
エディターを一喜一憂させる売上情報
一年殺しのボディブロー
プログラムマネジメント
ベゾスの夢は宇宙船を作ること?
恵まれたコンピュータ環境
【コラム】ソフトウェアとしてのアマゾン
第8章 究極のeコマースを目指して
EDIへの挑戦
正月休みの宿題
長谷川氏の辞任
小さな出版社での実験
突然のプロジェクト中止
終章 アマゾンで学んだこと
何も教えてくれない、しかし何でも学べる会社
社員を大人として扱う
ベゾスが作った組織文化
あとがき
ご購入は、amazon.co.jpでどうぞ。→アマゾンの秘密/松本 晃一 (著)
1500円以上購入で送料無料。
(↑これがamazonアソシエイトです)
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投稿者 Jazz Blogger T : 18:23
ハロルド・ジェニーン/プロフェッショナル・マネージャー
2004年10月21日
プロフェッショナル・マネージャー/ハロルド・ジェニーン(著) (2004/05/15)
こんにちは。今日もビジネス書です。ITTという世界的巨大企業の社長兼最高経営責任者(CEO)として58期(約15年間)連続増益を成し遂げ、超優良企業に仕立て上げた経営者ハロルド・ジェニーン氏の自叙伝のような経営回想録です。1985年刊行のものが今年になって復刊されたもの。
今をときめく柳井正氏(ファーストリテイリング会長)が「これが私の最高の教科書だ」と推薦の巻頭文を記しています。柳井氏は84年にユニクロ1号店をオープンし翌年2号店をオープンさせた丁度その頃にこの本に出会い、一読して、「僕がやってきた経営は違う」「僕の経営は甘い」「経営するとはこれだ」と衝撃を受けたとのことです。
そこには、次のような概念が示されていたのです。「本を読むときは初めから終わりへと読む。ビジネスの経営はそれとは逆だ。終わりから始めてそこへ到達するためにできる限りのことをするのだ」と。すなわち、「経営はまず結論ありき」であって、最終的に何を求めて経営していくかを決め、そこから逆算して、結論に至る方法を考えられる限り考え、いいと思う順に実行する。そして、実行の足跡と結論を比較し、修正していく。「そうすれば、大概のことはうまくいくんだよ」というジェニーン氏のメッセージを柳井氏は確かに受け取りました。
柳井氏は「わが社を今までにない革新的な企業にしたい」という願望を持ち、社員に宣言します。「今から本格的にユニクロを全国にチェーン展開します。毎年30店舗ずつ出店し、3年後には100店舗を超えるので、株式公開を目指します。」と。そして、実際、次々と目標を達成し、今のユニクロの大成功につながってゆくのです。
柳井氏はさらに言います。本書には「経営はまず結論ありき」という経営を実践するためのノウハウや対処法、心構えが具体的に記されています。組織の活かし方や経営者の条件、リーダーシップ、企業家精神といった大局観に基づく話から、「エクゼクティブの机」(第7章)といった情報の見方の話まで、飽くことなく、一気に読み進められるでしょう、と。
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投稿者 Jazz Blogger T : 18:24
常盤文克/モノづくりのこころ
2004年10月20日
モノづくりのこころ/常盤文克(著)
こんにちは。今日はビジネス書です。常盤文克氏は90年に花王(株)の社長、97年に会長、2000年から02年まで特別顧問となられ、現在はあおぞら銀行などの社外取締役をなされています。ビジネス書もここ数年毎年のように出版されており、メーカー企業の名経営者としての経験とそれに基づく卓見を名文でもってご開帳されています。
この「モノづくりのこころ」という本は、今話題の技術経営(MOT)の解釈として、技術に軸足を置くモノづくりのあり方を経営の立場から問うものと定義し、日本の文化や伝統、さらには東洋の英知や思想を踏まえたモノづくりの原点について著者なりの論考を示されたものです。いわば、新規事業立ち上げや新製品開発というメーカー企業にとっての重要経営課題におけるマネジメント方法論についてわかりやすく説かれている本というわけです。
花王(株)といえば高収益を続ける日本を代表するエクセレント・カンパニーの一つです。洗剤のアタック、クイックルワイパー、食用油エコナなど、革新的な大型ヒット商品が生まれています。また一時はフロッピーディスクの大手でもありました。これらの成果の源を辿りますと、サイエンスを大事にする、研究とマーケッティングが一体であるといった、先駆的な企業文化に行き着くようです。これは先代の丸田芳郎というカリスマ経営者がその基礎を築いたといわれています。
この本は優良企業のトップが自らその種明かしをしているという側面があるわけです。根本をなす思想的な部分が重要です。小手先でなく信念にまで昇華されてはじめてそのほんの一部が実を結ぶのでしょう。それと特筆すべきは達意の名文だということです。本意が自然に伝わってきます。あと、著者の積極的な発信の姿勢には感謝と敬意を表したいと思います。
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投稿者 Jazz Blogger T : 18:25
ロバート・キヨサキ/金持ち父さん貧乏父さん
2004年10月12日
金持ち父さん貧乏父さん/ロバート・キヨサキ(著)
こんにちは。今日はお金の本です。ロバート・キヨサキ氏の一連の金持ち父さんシリーズの第1作にして大々ベストセラーです。すでにお読みになった方が多いのではないかと思います。私も半年ほど前に遅ればせながら読みましてお金に対する考え方を改めさせていただきました。大変に貴重な本です。
ネット上でサイトを運営しておりますと他所さんのサイトが気になるものです。最近よく目にするのはサイトでちょこっと小銭稼ぎです。週末企業家やアフィリエイトが今や一種のブームのようになっていますね。そうした流れの思想的というとちょっと大げさかもしれませんが、バックボーンになっているのが、お金に対する価値観の変化です。20世紀後半の高度成長期の年功序列や終身雇用という就業形態が薄れてきた21世紀の日本の社会では、個人一人一人が生活や老後のための資金をしっかり確保してゆかねばなりません。そして極端には一流大学を出て大企業に就職というパターンよりも自らベンチャーや企業家を目指すことの方がリスクが小さくかつより大きな成功パターンとなりつつあります。
サラリーマンではいつまで経ってもお金に縛られています。この本はお金に縛られない人生を送ることの勧めとそのための方法論を説いている本です。お金でお金を生み出すシステムを運営することで真に自由な人生を送れるということ、そしてできればそれを目指すべきであるということです。日本の会社組織ではたとえ社長になったとしてもある意味で雇われ者です。オーナー・資産家として生きる別の道があるのです。
ネット上のいろいろなサイトを多数見ていますと、この本に影響を受けて資産を築く手段としてネット上で事業を起したり将来に備えている方が大勢いるようですね。週末起業家や情報起業という言葉がネットを前提にしてよく聞かれます。この10年でインターネットが社会インフラとして急速に発展しネット上で多くの革新が起りつつあります。一個人がキヨサキ氏のいう金持ち父さんになるチャンスがこの成長するネット社会にたくさんあるということだと思います。行動力とアイデアがあれば何か特別なことができるかもしれません。
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投稿者 Jazz Blogger T : 18:26
中村 修二/ Wild Dream―反逆、闘い そして語ろう
2004年09月01日
「 Wild Dream―反逆、闘い そして語ろう 中村 修二 (著)
最近発明対価をめぐる裁判で200億円という途方もない額を一審で勝ち取った元日亜化学(株)研究員、現在カリフォルニア大学教授の中村修二氏の本です。中村氏の関連本はすでに10冊前後出版されており、ご存知の方、読まれた方も多いと思います。世紀の発明とされる青色ダイオードの開発に成功し、ノーベル賞を取るのは時間の問題と言われています。米国の有名大学に教授として高額の報酬で招かれ転身しました。
元いた会社日亜化学から訴訟を起こされそれに逆切れして今回の一連の訴訟へと発展しているようです。日亜化学はこの発明のおかげで莫大な利益を得ています。一審での判決結果について賛否両論があるようですが、最高裁での審議がどうなりますか興味のあるところです。
10冊くらいある氏のどの本にも大抵生い立ちがある程度書かれてありまして、大学時代や就職のこと、仕事のこと、青色ダイオード開発の経緯などが2~3冊読めばだいたい把握できます。そのバイタリティーやハングリー精神は研究という職業に就いている者すべてが見習うべきものでしょう。コンチクショーと思って必死に取り組むようなことにならないと、無から有を生じるような大きな成果はそう易々と得られないということでしょう。
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投稿者 Jazz Blogger T : 18:27
本田健/スイス人銀行家の教え
2004年08月19日
「スイス人銀行家の教え―お金と幸せの知恵を学ぶ12のレッスン」本田 健 (著) 価格: ¥1,470 (税込) 単行本: 253 p ; サイズ(cm): 19 x 13 出版社: 大和書房 ; ISBN: 4479790926 ; (2004/05/20)
本田健という人をご存知の方も多いと思います。お金に関する著作や公演活動でここ数年の間に著名人となられました。昨年のベストセラー「ユダヤ人大富豪の教え」の著者ですね。その続編とも呼べるのが本書です。前書では20歳そこそこの学生がアメリカに旅立ち老富豪・ゲラー氏から人生とお金に関する知恵について学ぶという半自叙伝的なお話でしたが、本書では、その後、スイス人銀行家ホフマンさんにさらのお金に関する知恵を学ぶという同様なお話になっています。前書と同じくストーリーが面白く、一気に読ませてくれます。行動力あるれる情熱的な若者の目を通してお金に関する著者の主張が展開されています。前書は40万部のヒットでしたが、本書もすでに発売数ヶ月で12万部の売上だそうです。
本田健さんの著作には他にも億万長者やお金にまつわるものが多いのですが、思うに、ご自身の目指す方向を自らが実践しながら、そこで得られた知恵を情報として著作などの形で利益に結び付けてゆくという、いわば一石二鳥のスパイラル的なきわめて効率のよい自立システムを安定軌道に乗せられつつあるというふうに小生は捉えるのです。自分のやり方を売り物にして第3者が求める同じ目的を完遂するというものです。このシステムというのは案外王道かもしれないと最近よく思うのです。ネット上でも個人で成功している人というのは、自分が成功したまたは成功しつつあるノウハウや方法論を売り物にしてもっと大きな成功を勝ち取るパターンが多いように思います。
本田氏はホームページを開設されていますのでご興味のある方はこちらにアクセスしてくてください。→本田健の公式サイト
本田健の本
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投稿者 Jazz Blogger T : 18:28
稲盛和夫/生き方ー人間として一番大切なこと
2004年08月18日
「生き方―人間として一番大切なこと」稲盛和夫(著) 価格: ¥1,785 (税込)
単行本: 246 p ; サイズ(cm): 19 x 13 出版社: サンマーク出版 ; ISBN: 4763195433 ; (2004/07)
京セラやKDDIの創設者として有名な稲盛氏の本です。この方の本は結構多数出版されています。私も何冊かすでに読んでいます。そんな中でこの「生き方」という本は氏の人生観、仕事観、哲学、が凝集された一冊として密度の濃いものとなっています。これまでの本でもすでに書かれていることがいくつもありますし、繰り返しもあると思いますが、贅肉を殺ぎ落とした筋肉質な濃い内容になっているように思います。稲盛哲学のエッセンスというところでしょうか。
成果=考え方×情熱×才能、という方程式を以前から示されおり、能力も大事だけど情熱の方がもっと大切であること、凡人がパッションを持って精進することで創造や大事を果たせることを強く訴えられています。今回の本では、特に最初の「考え方」の重要性を前面にして正しい人生観や哲学を持つことがすべての大前提であることを強く主張されているように思います。
宗教、特に仏教とのつながりを著者の他の著作でも感じますが、生き方ということを主題にする本書ではそれほど特有の匂いはありません。個人の考え方や哲学にまで立ち返りますと、宗教観や死生観というものは避けて通れないものです。その宗教観も体験に裏打ちされて自然に培われたもののようですので違和感はほとんど感じません。
京セラという会社は稲盛氏のカリスマ性が強く、馴染めずに途中退社する人が多いということをどこか何かで聞いたことがありますが、仕事=生き方、とする氏の考え方は職場やビジネスという現実の場面では妥協のないとても厳しいものになるのだと思います。ちょっと穿った見方かもしれませんが、なぜ仕事に打ち込まない、なぜ精励しないのかということが、生き方や考え方がおかしいのではないか、という人間の根源のところにまで疑義が及ぶということにもなりかねないのですから。
いずれにせよ、この本は、不自由なく充足した生活を容易に享受できる21世紀の日本の社会人一般にとって、まじめにまっとうに生きるということの大切さ、基本となる己の魂と哲学を磨くことの重要性、などについてじっくり考え直すよい機会を与えてくれる、たいへん意義深い著作であると思います。
プロローグ(混迷の時代だからこそ「生き方」を問い直す魂を磨いていくことが、この世を生きる意味 ほか)
第1章 思いを実現させる (求めたものだけが手に入るという人生の法則 寝ても覚めても強烈に思いつづけることが大切 ほか)
第2章 原理原則から考える (人生も経営も原理原則はシンプルがいい 迷ったときの道しるべとなる「生きた哲学」 ほか)
第3章 心を磨き、高める (日本人はなぜその「美しい心」を失ってしまったか リーダーには才よりも徳が求められる ほか)
第4章 利他の心で生きる (托鉢の行をして出会った人の心のあたたかさ 心の持ち方ひとつで地獄は極楽にもなる ほか)
第5章 宇宙の流れと調和する (人生をつかさどる見えざる大きな二つの力 因果応報の法則を知れば運命も変えられる ほか)
稲盛和夫の本
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投稿者 Jazz Blogger T : 18:30