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エントリ内容の一覧
チコ・ハミルトン/エリントン組曲
2012年02月02日
Chico Hamilton / The Original Ellington Suite
今日はチコ・ハミルトンですね。エリック・ドルフィーが独立直前にサイドメンとして在籍していた58年の作品。ドルフィーの個性はすでに十分明らかになっていますが、まだ少し伝統的な香りがあり、その微妙なところがおもしろいのですね。ドルフィーの陽性で極めて快調な吹奏を捉えたドルフィー・ファンには貴重で堪らない作品。パーソネルは、エリック・ドルフィー (as,fl,bcl)、ネイト・ガーシュマン (cell)、ジョン・ピサノ (g)、ハル・ゲイラー (b)、チコ・ハミルトン (ds)。Pacific Jazz。1958年LA録音。
エリック・ドルフィー(1928-64)が冴えています。肩を張らず自然体で分かり易いところが好感持てますね。晩年のドルフィーは特にそうですが、ドルフィー名義の作品はいずれも哲学的で小難しいところがあって、それはそれでよいのですがけれど、本作のドルフィーは基本的に明るくてあっさり味で、サイドメンという気易さのためなのかどうか、気負いがないのでしょう。
エリントン作品集になっていまして、実はもう一つのおエリントン集というのがありまして、そちらが本家で、こちらは長くお蔵入りになっていてずっと後になって発掘されたもの。ハミルとンがドルフィーの個性の出た本作をよい出来と感じなかったという説もあるようです。ハミルトンは室内楽クラシックのような格調高いジャズ(チェロ弾きを多用したり?)を求めていて、その中で時にむき出されるドルフィーの本性を快しとしなかったのかもしれません。
その後のドルフィーは、1960年以降大活躍をすることになります。例えば、1960年だけでも、リーダー作として「アウトワード・バウンド」「アウト・ゼア」、ミンガス・グループへの参加、それにブッカー・リトルとの双頭コンボ活動がスタートします。リーダー作では、いかにも室内楽的なチェロ弾き(ロン・カーター)を入れたりして、ハミルトンの影響下にあったように思えます。
全9曲。エリントン・ナンバーが並びます。ドルフィーは、すでに3管を吹き回すことを覚えていたようですね。私はアルトが実に調子よく聞こえます。その艶のある響きはいったい何なのでしょう。エリントン楽団のジョニー・ホッジスを思い出させてくれます。アドリブ・ラインも多くはオーソドックス、多少アクが出ている感じで、後年の全編アクというものとは雲泥の差があります。
たいてい2コ−ラス目で少しはじけるのですね。最初は抑え気味に、そのうちちょっと冒険してみようような。個性を発散したくてしたくてうずうずしている感じが伝わってきますし、その微妙なところが案外おもしろいのですね。吹っ切れて突っ走る、自分の世界に浸ってしまうと付いていけないのですが、自重しながら少しだけはじけるというところが本作のいい味と思われます。
アルト吹奏は2, 4, 7, 9曲目、フルートは1, 3, 5,曲、バスクラリネットは6, 8曲目です。やはりアルト演奏がスリルがあっていいですね。圧倒的な存在感。ギターやチェロとの不可思議な空間ではあります。9曲目などは後年のドルフィーそのままなのですね。コルトレーンよりも早い時期に新主流派らしい音を表現していたと言えるでしょう。面目躍如。
1. In A Mellotone
2. In A Sentimental Mood
3. I'm Just A Lucky So And So
4. Just A-Sittin' And A-Rockin'
5. Everything But You
6. Day Dream
7. I'm Beginning To See The Light
8. Azure
9. It Don't Mean A Thing
Eric Dolphy(as,fl,cl), Nate Gershman (cello), John Pisano (g), Hal Gaylor (b), Chico Hamilton (ds).
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Chico Hamilton / The Original Ellington Suite
関連エントリはこちらから。
→エリック・ドルフィー/ファイブ・スポットのエリック・ドルフィーVol.1
→エリック・ドルフィー/アット・ザ・ファイブ・スポットVol.2
→エリック・ドルフィー/ラスト・デイト
→エリック・ドルフィー/アウト・ゼア
→ エリック・ドルフィー/イリノイ・コンサート
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投稿者 Jazz Blogger T : 21:19
ニコラ・コンテ/リチュアルズ
2012年01月31日
Nicola Conte / Rituals
今日はニコラ・コンテですね。クラブ・ジャズで大人気のイタリア人DJであり、ギタリスト、作詞作曲家、プロデューサーですね。本作は彼の3作目のアルバム。ラテン系の快適なボサやサンバ、ジャズワルツのスタイリッシュ・サウンドが新世代ジャズを感じさせます。パーソネルは、ホセ・ジェームス、アリーチェ・リチャルディ、キム・サンダース、キアラ・シヴェロ (vo)、ファブリツィオ・ボッソ、ティル・ブレナー (tp)、ジャンルカ・ぺトレラ (tb)、グレグ・オズビー (as)、ダニエル・スカナピエコ (ts)、ティモ・ラッシー (bs)、ピエトロ・ルッス(p)、テッポマキネン(b)、ロレンツォ・トゥッチ (ds)他。Universal。2008年。
たまには浮気というか、ちょっといつもと違うものを聞いてみたくなるものです。それが案外よかったりして、自分の中に新しい音楽枠ができてゆくのですね。酸いも辛いも甘いも実体験して百戦錬磨の耳が鍛えられてゆくのだと思います。モダン・ジャズは成熟して、ネオ・ハード・バップがもてはやされるけれど、それはマンネリ化の裏返し、新世代の息吹が身近なところにあることを感じます。
本日のニコラ・コンテは私にとって新しい未知のミュージシャンです。クラブ・ジャズの世界では超の付く著名人らしいですが。確かに本作を何度も繰り返し聴いていますと、単に表面的に着飾った子供だましの音楽ではなく、魅力的な楽曲があり、おしゃれなリズムがあり、渋いグルーヴもありと、極上のエンターテイメントであることが明らかなのです。
ただ、売れ線というか、どうすればイカした音楽になるかってことを知り尽くしていて、これでもかという感じで来られるとそれが少し鼻につくということは多少あるかもしれません。スタイリッシュという形容詞にはそういうところがあって、表裏一体、ぎりぎりのところで勝負してくるのですね。マイルス・デイヴィスがやはりいつもそういう目線であったと私は感じています。斬新さ・創造とエンターテイメント・商業的成功。
本作は13曲中、11曲がコンテ作曲のオリジナル。また、11曲がヴォーカルものです。アリーチェ・リチャルディ、キアラ・シヴェロ、キム・サンダース、ホセ・ジェームスの4名の今とてもホットなジャズ歌手がフィーチャーされています。どの曲もメロディとリズムが素敵です。いい雰囲気のカフェで流れているような音楽ですね。ブラスがうまく使われています。それに各ソロもふつうにハード・バップしていて極めてジャジー。
1. Karma Flower (Chiara Civello)
2. The Nubian Queens (Jose James)
3. Like Leaves In The Wind (Jose James)
4. Love In (Kim Sanders)
5. Awakening (Jose James)
6. Paper Clouds (Chiara Civello)
7. I See All Shades Of You (Alice Ricciardi)
8. Macedonia
9. Song Of The Seasons (Alice Ricciardi)
10. Red Sun (Kim Sanders)
11. Black Is The Graceful Veil (Kim Sanders)
12. Caravan
13. Rituals
14. The Nubian Queens (Jose James, Samba Version)
YouTubeから2004年2作目「Other Directions」からKind of Sunshineのプロモーション映像?をピックアップしてみました。新鮮なジャズを感じます。ギターを弾いているのがニコラ・コンテ。壁の写真はゴダールですね。この曲を聴いてビートルズのTommorrow Never Knowsを連想するのは私だけ?
VIDEO
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Nicola Conte / Rituals
関連エントリはこちら。
→ アリーチェ・リチャルディ/カムズ・ラブ
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投稿者 Jazz Blogger T : 21:16
チャールズ・ミンガス/道化師
2011年09月18日
Charlie Mingus / Crown
今日はチャーリー・ミンガスの名盤「道化師」ですね。ジャズはやはりこうでなくっちゃというグルーヴ感に満ちた味わい深いミンガス・ジャズ。ミンガスの重いベースによる強靭なリズム&ブルースと粘っこいフロントのアドリブ・ソロが冴える印象派ジャズ物語。パーソネルは、チャーリー・ミンガス (b)、カーティス・ポーター (as,ts)、ジミー・ネッパー (tb)、ウェイド・レ-ジ (p)、ダニー・リッチモンド (ds)。1957年NYC録音。Atlantic。
「直立猿人」(1956)に続くミンガス・ジャズの2作目ですね。いずれも名盤の誉れ高い作品です。「直立猿人」のフロントは、アルトのジャッキー・マクリーンとテナーのJ. R,モンデローズ、こちら「道化師」のフロントは、アルトのカーティス・ポーターとトロンボーンのジミー・ネッパーです。これらフロント・ラインの力強くブルージーなインプロビゼーションが鍵を握りますが、いずれも素晴らしい内容ですね。
前者の二人は直立猿人だけでミンガスの元を去りましたが、後者の二人はその後もミンガスに気に入られたのかよく使われています。特にジミー・ネッパーのトロンボーンの響きはミンガス・サウンドを形作る象徴的なものとなりました。ちなみにカーティス・ポーターはシャフィ・ハディのことで非常にいいサックス奏者ですね。ほぼミンガスのアルバムでしか聞くことができませんが。
カーティス・ポーター、ジミー・ネッパー、ダニー・リッチモンド、それにミンガスの強靭なバックが揃えば、まさにそこは独特のミンガス・ワールドなのです。時に荒々しく怒り、時に極めて優しく美しく、時にブルージーでグルーヴ感のある素敵なジャズ。スモール・コンボとは思えない分厚いサウンドは、曲名に示されるようなある種の具象性を備えるに足ります。
基本的にミンガスのジャズはブルースがベースですね。作編曲に才のあるミンガスは素敵なメロディラインを埋め込むことにより、ミディアム・テンポのブルースはスマートで魅力に富んだ演奏となります。例えば、チャーリー・パーカーを想起させる3曲目でのグルーヴィーな味わいはミンガス・ジャズの典型的な魅力を表現した演奏です。構成力のあるインプロビゼーションは何度もテイクを重ねた結果であろうことが想像されます。
1. Haitian Fight Song
2. Blue Cee
3. Reincarnation Of A Love Bird
4. The Clown
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Charlie Mingus / Crown
関連エントリはこちらから。
→ チャールズ・ミンガス/直立猿人
→ チャールズ・ミンガス/メキシコの想い出
→ チャールズ・ミンガス/ミンガス・アー・アム
→ チャールズ・ミンガス/ジャズ・ポートレイツ
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投稿者 Jazz Blogger T : 00:08
セロニアス・モンク/ブリリアント・コーナーズ
2011年09月11日
Thelonious Monk/Brilliant Corners
セロニアス・モンクの登場です。50年代の定評あるハード・バップの名作ブリリアント・コーナーズ。ロリンズとモンクの組み合わせがスリルある最高のモダン・ジャズを生み出しています。パーソネルは、アーニー・ヘンリー(as)、ソニー・ロリンズ(ts)、セロニアス・モンク(p)、オスカー・ペティフォード、ポール・チェンバース(b)、マックス・ローチ(ds)、クラーク・テリー(tp)。1957年録音。Riverside。
セロニアス・モンクのジャズを聴くときジャズ特有の醍醐味を感じるのは自分だけではありますまい。モンクの作り出す音楽には、スリルと興奮、それに安らぎというジャズが持つべき最高のパーフォーマンスがいつも示されるのです。特異な演奏スタイル、予想しにくい意外な展開、魅力的な自作楽曲。
この57、58年頃のモンクは、コンボ演奏では、本作「ブリリアント・コーナーズ」と共に「モンクス・ミュージック」、それにファイブ・スポットでのライブ演奏である「ミステリオーソ」と「イン・アクション」、ソロ演奏では、「セロニアス・ヒムセルフ」と「アローン・イン・サンフランシスコ」と名作を次々と発表しています。本作は特にハード・バップだけでなくモダン・ジャズの傑作として大変に著名な作品。
モンクのジャズ史における貢献は一人の巨人ピアニストということだけではなく、競演するプレイヤーに多大なインスピレイションを与えたことでしょう。本作のソニー・ロリンズだけでなく、ジョン・コルトレーンやジョニー・グリフィンというジャズ・ジャイアンツたちが成長過程でモンクと競演することで巨人足りえるようなよい影響を受けたと言われています。
こうしたモンクの秘密はいったいどこにあるのでしょう。彼の音楽の魅力と周囲への影響力がモンク音楽の持つどういった特性に由来しているのか。この課題は恐らくはモダン・ジャズの歴史において、また、ジャズ音楽の魅力とは?といった極めて根源的な問題に発展すべきものに違いありません。
私自身のモンク体験は大学生の頃に中古レコードで買った「ミステリオーソ」です。大阪の難波にあるワルツ堂というレコード屋さんの中古コーナーです。当時アルバイトで得たお金をレコードと映画に喜び勇んで?費やしていました。その辺の話はさておき、今でも覚えているのは、その買ったばかりのレコードをたまたま立ち寄った友人の家にて初めて聴いたのですが、ミステリオーソという表題の通り、何やら奇妙な音楽であまり関心しなかったのを覚えています。その後繰り返し聴くことで大好きなアルバムになるのですが最初はいい印象ではなかったのです。フロントがテナー1本、そのグリフィンがもうワンコーラス、ワンコーラスとしきりに煽られているのがよく分かるのですね。その期待に応えんとグリフィンは彼本来の持ち味であるところの素晴らしいブローを延々とやってのけるのですね。
曲想は奇妙な感じですが、各ソロ・プレイヤーの出来はジャズとして最高なものになるというのがモンクのコンボ演奏の特徴でしょう。つまりは、モンクがフロント・ラインに期待する期待度合いが非常に高く、最高のパーフォーマンスを引き出すためにモンクがいろいろ工夫をしているらしいということが考えられるわけです。
モンク音楽の美学は彼のソロやトリオ演奏を聴けばおおよそ分かります。とても不可思議で奇異な感じのする楽奏と音運びなのですが、ジャズの魅力という点では非常に素晴らしいのですね。ジャズの特有の魅力というものの本質が逆によく見えてくるように思えるのです。それは決して耳障りがいい音の連なり、そうメロディだけの問題でないことを教えてくれます。リズムやハーモニーといったことが複雑に絡み合って一種独特の音楽的な魅力が表現されているに違いないと確信できます。
例えば、モンクは恐らくは意識的に敢えて不協和音を奏でます。それによって全体にゆらぎというか揺さぶり、不安という波紋が広がります。それはフロントのソロ演奏にもインプロビゼーションの新たな地平というか可能性を与えることになり、よりスリルのある演奏に繋がるように思えるのです。つまりはモンクはコードとその進行を自在かつ微妙に操ることで、各ソロ演奏者の自発的spontaneousで意外性に富んだ演奏を引き出しているように見受けられます。そうした音楽センスや美学がひときわ優れていることこそモンクの巨人たる由縁に違いないだろうと思われます。
素人っぽいピアノ演奏、誰にでもできそうな拙いように見える演奏の背後には、こうしたいろいろ表面だけ見ていても見えて来ないモンク音楽の秘密が隠されているように思います。自由と即興性、意外性、醍醐味、スリルなど、ジャズ音楽が持つべき魅力をモンクの残したジャズはたくさん有しています。一瞥ではなかなか分からないモンク音楽の深みとか深さ具合を漠然と頭に思い浮かべながら聞き慣れた彼の音楽をまた新たに聴いてみるのもご一興というものです。
本作で自分が一番好きなのは、3曲目 Pannonica 。ロリンズの自信に満ちた逞しいテナー・ソロを聴いていますと、これぞモダン・ジャズの本流というか、ジャズの醍醐味を実感させられます。軽快なモンクのピアノと豪放なロリンズのテナーの対比、また、テーマメロディのおっとりした感じとロリンズのぐいぐい引っ張ってゆく強引さの対比、いずれもそのバランスがおもしろいのですね。
1. Brilliant Corners
2. Ba-Lue Bolivar Ba-Lues-Are
3. Pannonica
4. I Surrender, Dear
5. Bemsha Swing
YouTubeからモンクの代表作の一つラウンド・アバウト・ミッドナイトをトリオ演奏でどうぞ。彼の演奏はいつ聞いても独特ですが、こうして演奏風景を見ながら聞くとまた違った印象になります。詩人というか詩的ですね。一つ一つの音が突き刺さります。力のある言葉そのものです。
VIDEO
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Thelonious Monk/Brilliant Corners
関連エントリはこちら。
→セロニアス・モンク/ミステリオーソ
→セロニアス・モンク/ウィズ・ジョン・コルトレーン
→セロニアス・モンク/プレイズ・デューク・エリントン
→セロニアス・モンク/セロニアス・ヒムセルフ
→セロニアス・モンク/アローン・イン・サンフランシスコ
→セロニアス・モンク/ストレート・ノー・チェイサー
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投稿者 Jazz Blogger T : 13:07
ラリー・ヤング/イントゥ・サムシン
2010年08月19日
Larry Young/Into Somethin'
今夜はジャズ・オルガンを堪能しています。グルーヴィにスイングするラリー・ヤングのジャズは快適でウォーム。ギター、テナーとのコラボがいい具合で典型的なご機嫌ハード・バップ。アシッド・ジャズとしてはかなり著名なアルバムとのこと。パーソネルは、ラリー・ヤング (org)、サム・リヴァース (ts)、グラント・グリーン (g)、エルヴィン・ジョーンズ (ds)。1965年録音。Blue Note 4187。
私はハモンド・オルガンの音が大好きです。くすんでいて明朗でないけれどモワっと温もりのある感覚が妙にしっくりくる時があります。足で弾くベースの音も重いながら躍動感があって好ましく思われます。本作はラリー・ヤングのBlueNote初リーダー作。ラリー・ヤングは1940年米国NY生、1978年没。
バップ系ジャズ・オルガニストではやはりジミー・スミスが代表格でしょうが、このラリー・ヤングが自分的には好みにぴったりです。ジミー・スミスのジャズは明るく派手でソウルフル、一方、ラリー・ヤングは日本人好みの陰影や微妙な起伏がありますね。同じブルースでもヤングの方がマメマメしくしつこくって湿っぽく感じられますが、よりブルージーでグルーヴ感があると思います。
同類のブルージーな感覚を有するギターのグラント・グリーンとの共演はまさにぴたりとマッチしていますし、サム・リヴァースのテナーも当時流行の前衛的な要素は微塵もなく楽しくグルーヴしていて好ましく思います。そして、エルヴィン・ジョーンズのドラムがあくまで渋く、オルガンの奏でる安定的なウォーキング・ベースと協力しながら時に刺激的に的確なバッキングをしています。
全5曲。いずれもミディアム・テンポでなじみ易い主題メロディを持つ快適なジャズです。2曲目がアシッド・ジャズとして著名だとか。自分的には3、4、5曲目が好みです。親しみのある愛らしい主題がじっくりと展開されてゆきます。典型的なご機嫌ハード・バップ・ジャズ。グラント・グリーンとラリー・ヤングのソロがグルーヴィーで実によいですね。
1. Tyrone
2. Plaza De Toros
3. Paris Eyes
4. Backup
5. Ritha
Larry Young (Organ), Sam Rivers (Tenor Sax), Grant Green (Guitar), Elvin Jones (Drums).
詳しくはアマゾンでどうぞ。試聴も可。→ Larry Young/Into Somethin'
関連エントリはこちら。→ ジミー・スミス/アット・ザ・オルガンVol.1
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投稿者 Jazz Blogger T : 22:07
モダン・ジャズ・カルテット/コンコルド
2009年04月20日
MJQ/Concorde
今日はモダン・ジャズ・カルテット MJQ 初期の傑作です。グルーヴィーなミルト・ジャクソンのヴィブラフォンが上品なジョン・ルイスを中心とした落ち着いたバックに支えられて渋くスインングします。パーソネルは、ミルト・ジャクソン(vib)、ジョン・ルイス(p)、パーシー・ヒース(b)、コニー・ケイ(ds)。1955年7月2日録音。Prestige。
モダン・ジャズ・カルテットのジャズは室内楽のようなアンサンブルが魅力ですね。ミルト・ジャクソンのグルーヴィーな感性が大のお気に入りの私にとっては少々物足りないところではありますが、本作は結成まもなくメンバーもやっと固定した時期ですので、後年の特徴がやや希薄でミルト・ジャクソンのいぶし銀のような演奏に満足できる一枚です。
本作が録音された1955年は、ミルト・ジャクソンにとって絶好調の年だったに違いありません。名作ぞろいです。
①「ジャンゴ」1955.1.9. ミルト・ジャクソン(vib)、ジョン・ルイス(p)、パーシー・ヒース(b)、ケニークラーク(ds)
②「Classic Concepts」1955.1.20~30. ミルト・ジャクソン(vib)、ジョン・ルイス(p)、パーシー・ヒース(b)、ケニークラーク(ds)
③「ミルト・ジャクソン・カルテット」 1955.3.20. ミルト・ジャクソン(vib)、ホレス・シルバー(p)、パーシー・ヒース(b)、コニー・ケイ(ds)
④「コンコルド」1955.7..2. ミルト・ジャクソン(vib)、ジョン・ルイス(p)、パーシー・ヒース(b)、コニー・ケイ(ds)
⑤「マイルス・デイヴィスとミルト・ジャクソン Quintet/Sextet」1955.10.28. マイルス・デイヴィス(tp)、ジャッキー・マクリーン(as)、ミルト・ジャクソン(vib)、レイ・ブライアント(p)、他
⑥「オパス・デ・ファンク」 1955.10.28. ミルト・ジャクソン(vib)、フランク・ウェス(ts,fl)、ハンク・ジョーンズ(p)、エディ・ジョーンズ(b)、ケニー・クラーク(ds)
全6曲。まず、2曲目 All of You の静的な佇まいがいいですね。ミルト・ジャクソンのまさにグルーヴィーなヴァイブが堪能できる演奏です。最初は音少なく静かに始まり、徐々に熱くなって多弁になりゆくスイング感にはさすがにジャズの醍醐味が感じられます。5曲目 Softly, As In a Morning Sunrise は後にMJQの重要なレパートリーになりますが、最初の出だしはすでに独特のアンサンブルが成り立っており、その後には渋くて苦みばしった素敵なブルース演奏が繰り広げられます。
4曲目のガーシュイン・メドレーではジョン・ルイスの静楚なピアノがいい味わいです。ミルト・ジャクソンも戸惑い気味なのかなと思わせるような少し違和感のあるやりとりです。不思議な音の組み合わせもありまが、ジョン・ルイスの洗練された音選びと稟とした涼やかな指使いがぞくっとするような素敵な瞬間を生み出しています。
MJQといえば、20年以上前にMJQ来日公演を大阪フェスティバルホールに聞きに行った覚えがあります。当時ジャズ・ファンではあるもののMJQはあまり好んで聞いていなかったのですが、会社の先輩に強引に連れられて行ったようです。会場にはその先輩の父上と先輩の奥さんの妹さんが一緒にいらっしゃってまして、どうもその妹さんのパートナー探しというかなんかそんな作戦にまんまと乗っかっている自分の置かれた状況を感じるのでした。雰囲気を察知した私は一番前の席(壁が立ちはだかって見えにくい)だったこともあってかMJQの演奏に身が入らずほとんど記憶に残らなかったのでした。
1. Ralph's New Blues
2. All of You
3. I'll Remember April
4. Gershiwn Medley: Soon/For You/ Forevermore/Love Walked In/ Our Love is Here To Stay
5. Softly, As In a Morning Sunrise
6. Concorde
Milt Jackson (vib), John Lewis (p), Percy Heath (b), Connie Kay (ds).
Recorded in New Jersey, on July 2,1955.
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ MJQ/Concorde
iTunes Store では試聴可能です。→MJQ/Concorde
関連エントリはこちら。
→ミルト・ジャクソン/ミルト・ジャクソン・カルテット
→ミルト・ジャクソン/オパス・デ・ジャズ
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投稿者 Jazz Blogger T : 19:54
チャールズ・ミンガス/ジャズ・ポートレイツ
2009年04月12日
Charles Mingus / Jazz Portraits
今日はチャールズ・ミンガスのシンプルな一枚。2サックスのクインテットによるワークショップでの演奏。ミンガス・ジャズの力強さとリリカルな面がともに心地よいのです。パーソネルは、チャールズ・ミンガス(b), ジョン・ハンディ(as), ブッカー・アーヴィン(ts), リチャード・ワイアンズ(p), ダニー・リッチモンド(ds)。1959年1月16日NYC録音。United Artists。
ミンガスは50年代半ばから60年代前半を通じて多くのリーダー作を残していますね。50年代だけでも、ざっと挙げてみますと、1956年「直立猿人」、57年「道化師」、「ミンガス・スリー」、「メキシコの想い出」、「イースト・コースティング」、58年「The Werry Blues」、59年本作「ジャズ・ポートレイツ」、「ブルース&ルーツ」、「ミンガス・アー・アム」、「ミンガス・ダイナスティ」と、いずれも聞きごたえのある濃い内容のアルバムばかりですね。
ミンガスは一ベース奏者というよりまさにクリエイターなのですね。あくまでリーダーとして、メンバーを集めグループを率いて自分が納得できるジャズを作ってゆくというスタンスです。ですので、アルバムの内容に統一感があったりしますね。この時期のジャズでは非常に稀なケースであり先進的であったと言えるでしょう。また、デューク・エリントンを尊敬していたということですが、まさにスモール・エリントン楽団を目指していたのでしょう。
ただ、本作「ジャズ・ポートレイツ」は、当時ジャズ・ワークショップという形のセッションを定期的に聴衆の前で行っていたものを録音したもので、思想性のあるものもでなく、スタンダード曲を演奏した、この期に通常よくみられるジャズ・アルバムの体裁です。でも、そこはミンガス音楽ですので、それなりに聞かせどころがありまして、本作の場合は、ジョン・ハンディのアルト・サックスの旨みにあろうかと思います。
ミンガスの音楽では、多くの場合フロントにトランペット、トロンボーン、サックスを配するのですが、その中でやはりサックスに重きが置かれているように思われます。サックスはハードバップ含むモダンジャズにおいて最も説得力のある楽器に違いありません。ミンガスがサックス奏者に求めたことはさぞ厳しいものであったと思われます。
J. マクリーン、J.R. モンテローズ、S. ハディ、J. ハンディ、B. アーヴィン、E. ドルフィー、Y. ラティーフら次々に多くのサックス奏者が入れ替わり参加していますが、いずれもクセがあるものの力量のあるサックス奏者ばかりで、ここぞという時に印象的なアドリブ・ソロを決めていますね。よりよいものを作るためにテイクを何度も重ねたと言われるミンガスのアルバム制作ですが、アドリブにおける即興性の醍醐味だけは演奏者の実力に依存せざる得なかったのでしょう。
本作のフロントはジョン・ハンディのアルトとブッカー・アーヴィンのテナーですが、ジョン・ハンディのアルトが抜群にいい具合です。J. ハンディは59年のミンガス・アルバムにほとんど参加し、60年にエリック・ドルフィーが参加するまでミンガスのグループに属していました。その音色はジャッキー・マクリーンのように角ばっていて適度にしなやか、しかもフレージングが流麗でジャズテイストに溢れています。
全4曲。2曲目スタンダード・バラッド I Can't Get Started でハンディのそんな素晴らしいソロが聞かれます。4曲目の Alice's Wonderland においても、リリカルながら単調にならないスリルある演奏を繰り広げていまして、ミンガスの期待に十分応えたであろうことが容易に想像されます。しばらくの間とはいえレギュラーの位置を占めたことも頷けます。
1. Nostalgia in Times Square
2. I Can't Get Started
3. No Private Income Blues
4. Alice's Wonderland
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Charles Mingus / Jazz Portraits
関連エントリはこちら。
→チャールズ・ミンガス/直立猿人
→チャールズ・ミンガス/メキシコの想い出
→チャールズ・ミンガス/ミンガス・アー・アム
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投稿者 Jazz Blogger T : 20:49
ジミー・スミス/アット・ザ・オルガンVol.1
2009年04月11日
Jimmy Smith / At The Organ Vol.1
モダンジャズのオルガン奏者の第一人者と言えばジミー・スミスですね。本作は、サックスとギターを加えたカルテットによるハードバップの快演です。パーソネルは、ジミー・スミス(org), ルー・ドナルドソン(as), ケニー・バレル(g), アート・ブレイキー(ds)。1957年NYC録音。BlueNote 1551。
ハードバップを無性に聞きたくなるときって突然ふいにやってくるものですね。シミー・スミスのオルガンはよくスイングするし適度なグルーヴ感があるので最初の1発目には最適です。本作は、当時気鋭のアルト奏者ルー・ドナルドソンとギターのケニーバレルが参加して典型的なハードバップ作品に仕上がっています。
ジミー・スミス(1925-2005)は50年代ブルーノート・レーベルの看板アーティスト、リーダー作が10枚以上あります。オーナーのアルフレッド・ライオンに大変に気に入られていたようですね。ジャズのオルガンは普通ハモンド・オルガンなのですが、手だけでなく足も使ってベースの役割も自分でしますので、通常ベース奏者の参加が必要ありません。
全4曲。快調な演奏です。全体にルー・ドナルドソンの明るいアルトの響きとジミー・スミスとケニー・バレルのブルージーな演奏が印象的です。3曲目ブルース曲 All Day Long でのドナルドソンのアルトがチャーリー・パーカー直系の明朗なフレージングでいい具合、続くバレルのギターが流石に渋いジャズ的雰囲気を醸します。スミスの長いソロもジャス・オルガンの魅力を伝える本領発揮の演奏です。
4曲目 Yardbird Suite は心地よいミデイアム・テンポのパーカーの曲。やはりドナルドソンが先頭を切ってクリアでシャープな短いソロを聞かせたのち、バレルが技巧を凝らしたスインギーなソロを披露、続くスミスも負けずと余裕のある愉快なソロを示してくれます。2曲目 There's A Small Hotel は、私などはすぐにクロード・ソーンヒル楽団のほのぼのとした演奏を思い出してしまいますが、ここでは、スミス、バレル、ブレイキーのトリオによる地味ながら味のある演奏がじっくりと堪能できまして、その雰囲気は実にいい感じなのです。おまけ的にアート・ブレイキーの豪快なドラム・ソロも久しぶりにたっぷりと聞きました。
1. Summertime
2. There's A Small Hotel
3. All Day Long
4. Yardbird Suite
詳しくはアマゾンでどうぞ。試聴も可。→ Jimmy Smith / At The Organ Vol.1
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投稿者 Jazz Blogger T : 15:39
アート・ブレイキー/モーニン
2008年10月23日
Art Blakey / Moanin'
今日はアート・ブレイキーとジャズ・メッセンジャーズの代表作、モーニンですね。ジャケットのブレイキーの顔写真が強烈です。お洒落なブルーノートにしては斬新すぎです。パーソネルは、リー・モーガン(tp)、ベニー・ゴルソン(ts)、ボビー・ティモンズ(p)、ジミー・メリット(b)、アート・ブレイキー(ds)。1958年10月NYC録音。BlueNote4003。
このジャズ・メッセンジャーズのアルバムに初めて接したのは高校生のとき、まさにジャズ初体験でした。でも残念ながら何度か聞いたものの全くの不感症で、聞いたことのある有名なメロディのモーニンという曲が脳裏に刻みこまれただけに終わりました。このアルバムと同時にビル・エヴァンスのモントリューのライブ盤も聞きましたが、こちらはもっとチンプンカンプンの有様でしたね。
いずれも2才年上の姉がボーイフレンドから借りたものだと思います。恐らくはジャズファンであろうそのボーイフレンドが姉のために一般受けするジャズアルバムを紹介してくれたのでしょう。同じ時期に借りて聞いた荒井由美『ひこうき雲』や井上陽水『氷の世界』にはたいへん感激しましたっけ。
ただ、そのモーニンの記憶のおかげで、その後、私が初めて買ったジャズのレコードがジャズ・メッセンジャーズのオリンピア劇場のライブ盤(過去エントリはこちら→ジャズ・メッセンジャーズ/パリ・オリンピアコンサート1958 )であり、その中の Whisper Not や I Remember Clifford でのリー・モーガンのソロを聞いてジャズの魅力に開眼したというわけです。
前置きが長くなりましたね。まあ私にとりましてこのアート・ブレイキーとジャズメッセンジャーズ、殊に、リー・モーガン、ベニー・ゴルソン、ボビー・ティモンズが在籍した58年頃のジャズ・メッセンジャーズは特別な存在だということです。ゴルソン作編曲の素敵な楽曲とリー・モーガンのいかしたトラペット演奏がジャズ初級者の私には格別に馴染みやすかったのです。
NHK教育「美の壺」という番組の主題曲に使われているMoanin' は大変に有名な曲でピアノ担当のボビー・ティモンズの作曲ですが、Are You Real や Blues March 他多くの印象的な曲はベニー・ゴルソン作です。素晴らしい楽曲とともにファンキーな演奏はジャズの醍醐味を直裁に教えてくれます。ただ残念なことに、ナイアガラ瀑布に譬えられたダイナミックなブレイキーのドラミングにはあまり感激した覚えはありません。
1. Moanin'
2. Are You Real
3. Along Came Betty
4. The Drum Thunder Suite
5. Blues March
6. Come Rain Or Come Shine
Lee Morgan (tp), Benny Golson (ts), Bobby Timmons (p), Jymie Merritt (b), Art Blakey (ds).
Recorded on Oct 30, 1958.
iTunes Music Store では試聴可能です。→ Art Blakey/Moanin'
詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Art Blakey / Moanin'
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投稿者 Jazz Blogger T : 21:21