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エリック・ドルフィー/イリノイ・コンサート

JAZZ Sax 3

2011年04月26日

Eric_Dolphy_Illinois Eric Dolphy / Illinois Concert

 今日はエリック・ドルフィーを聴いて感動したことを書きましょう。本作はハービー・ハンコックとの競演ライブ盤。ドルフィーの吹くバス・クラリネットとアルト・サックス演奏の魅力がここにあります。リズム感覚こそがジャズの醍醐味の源泉であることを改めて実感させられる内容です。パーソネルは、エリック・ドルフィー(bcl,fl,as)、ハービー・ハンコック(p)、エディ・カーン(b) JC・モーゼス(ds)。1963年3月10日録音。BlueNote。

 エリック・ドルフィーはやはりライブがよいですね。ファイブ・スポットでの有名なライブ盤はジャズ音楽の魅力を教えてくれた思い入れのある貴重なアルバムであり、長く自分の中で1番感激したジャズでした。ドルフィーの奏でるジャズの魅力は圧倒的なアドリブ、インプロビゼーションがもたらすジャズ的トランス状態、その渦中に巻き込まれる興奮にあります。そして、そのトランス状態を生むベースとなるものは恐らくはドルフィーの卓越したリズム感覚、タイム感覚なのだと思われます。

 スタジオ録音ものでは、室内楽のクラシック音楽のような静的な印象を醸し出し、何と言うかいかにも閉鎖空間の独特の雰囲気と禁欲的で音楽に真摯に向き合う孤高の精神が感じられるのです。いずれにしてもドルフィーにしかできない一風変わった音楽だと思われます。一方、ライブものではその静的な佇まいと緊張の糸が何かの拍子に切れてしまったような、どこまでも深く掘り下げどこまでも高く飛んでゆくような危険な香りが全体を覆います。
 
 エリック・ドルフィーという人はまじめで口数少なく、いつも練習ばかりしている音楽の求道者のようなタイプであったと聞きます。アドリブ・ソロは伝統的なバップ・ジャズなのですが、その吹く速さが剛速球であったり、メロディ・ラインが異質なために、フリー・ジャズのような印象を与えます。アドリブ・メロディ自体には大した魅惑はなくとも、タイム感覚が秀逸なためにジャズ特有の醍醐味を感じ取ることができます。
 
 本作はハービー・ハンコックと競演したことで話題のライブ盤なのですが、アドリブのできが大変によくて、ファイブ・スポットでの火の玉のような興奮とスリルを再び感じさせてくれます。全7曲中、曲順に、バス・クラリネット3曲、フルート1曲、アルト・サッックス3曲。バスクラでは『馬のいななき』と言われた独特のドルフィー節が随所に聞かれ、1曲目Softly, as in a morning sunriseが特に印象的。ほとんど原曲の主題メロディを感じられない20分の長い演奏です。

 また、アルト・サックスでは、6曲目Red Planetでのソロが圧倒的で素晴らしく、この種の変拍子系ではドルフィーのリズム感覚が最も冴え渡るに違いありません。続くラスト曲のG.W.も同様の演奏で好ましく、いずれもドルフィーの典型的かつ代表的なアルト演奏と言えるのではないかと思えるくらい好きです。これらの成果はハービー・ハンコックとの競演がもたらしたものというより、ドラムのJ.C.モーゼスの参加が大きいように思えます。たたき出されるポリリズムの重量級バッキングはエルヴィン・ジョーンズを彷彿とさせる濃厚な刺激に満ちています。


1 SOFTLY AS IN A MORNING SUNRISE
2 SOMETHING SWEET, SOMETHING TENDER
3 GOD BLESS THE CHILD
4 SOUTH STREET EXIT
5 IRON MAN
6 RED PLANET
7 G.W.

ERIC DOLPHY (bcl, fl, as), HERBIE HANCOCK (p), EDDIE KHAN (b), J.C. MOSES (ds).
Recorded live in March 1963.


 YouTubeから1964年死の数ヶ月前の映像をここにアップさせていただきましょう。チャーリー・ミンガスのグループの一員としてバスクラを吹くライブ演奏です。ドルフィーのバスクラ演奏の一端を垣間見ることができる貴重な映像です。パーソネルは恐らくは以下と思われます。Johnny Coles (tp), Eric Dolphy (bcl), Clifford Jordan (ts), Jaki Byard (p), Charles Mingus (b), Dannie Richmond (d) 。

詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Eric Dolphy / Illinois Concert

関連エントリはこちらからどうぞ。
エリック・ドルフィー/ファイブ・スポットのエリック・ドルフィーVol.1
エリック・ドルフィー/アット・ザ・ファイブ・スポットVol.2
エリック・ドルフィー/ラスト・デイト
エリック・ドルフィー/アウト・ゼア

投稿者 Jazz Blogger T : 20:43 | トラックバック

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