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マックス・イオナータ/コーヒー・タイム

JAZZ Sax 3

2011年12月12日

Max_Ionata_Coffee_Time Max Ionata / Coffee Time

 現代イタリアを代表するテナー・サックス奏者マックス・イオナータの快心のアルバムを紹介しましょう。ファブリツィオ・ボッソをゲストに加え、ルカ・マンヌッツァがピアノでなくハモンド・オルガンを奏するカルテット演奏。これぞ21世紀の今を感じさせ最高のモダン・ジャズではないかと聞き惚れてしまいます。パーソネルは、マックス・イオナータ(ts)、ファブリツィオ・ボッソ(tp)、ルカ・マンヌッツァ(p)、ロレンツォ・トゥッチ(ds)。2010年ローマ録音。Albore Jazz。

 マックス・イオナータがリーダーということで、同じネオ・ハードバップ路線とは言えファブリツィオ・ボッソやルカ・マンヌッツァのリーダーものとは多少違ったものになっていると思われます。ハモンド・オルガンを使っていることもあるのですが、単純なファンキーではなくて、新鮮な感覚が明らかに付加されています。

 ルカ・マンヌッツァのオルガン演奏はピアノ演奏とはまったく別物のような印象です。足でベースを刻んでいるのでしょう、アドリブ・ラインは右手1本のシングルトーンに聞こえます。ハモンドオルガンのベース音はあの空気が震えるような重厚な音圧感が個人的に好きなのです。マンヌッツァの演奏は、ジミー・スミスのような陽性のファンキー一辺倒ではなくて、渋めにグルーヴするラリー・ヤング系です。

 それにしても、ボッソのテクニックというのは恐るべしというか、手の届かない痒いところをいとも簡単に吹き抜けてしまうのですね。自在に操られるアドリブ・ラインは圧倒的なものです。イオナータは太く豪放な演奏がやはり魅力ですが、リーダーとして抑え気味というかよくコントロールされた知的な演奏を行っています。

 本作はフロントの二人が全くもって素晴らしいこと、曲想がモーダル調でバップやファンキーというワンパターンを感じさせないこと、オルガンの渋いバッキング、8ビートのハードドライビングなドラミングのバッキングなどなど、今を感じさせる高密度ジャズです。

 昔1960年代にマカロニ・ウェスタンというイタリア製西部劇が流行しました。「荒野の用心棒」や「夕陽のガンマン」など懐かしい映画がありました。ジュリアーノ・ジェンマやクリント・イーストウッドらの名優を生み、またエンリオ・モリコーネの哀愁ある音楽が著名ですね。西部劇というのは米国の開拓時代の話で、日本でいえばチャンバラ物や銭形平次、水戸黄門のような位置に当るのですが、なぜかその伊製西部劇が本国の映画以上に世界的にヒットしたわけですね。

 今のイタリア・ジャズ界のムーブメントというのは、50年代60年代ハードバップ〜新主流派モード路線のモダン・ジャズの本流を約50年を経て現代風かつ正統的に再現しているという点で何やら似たような構図が見えるわけです。本家を凌ぐ出来映えを示すことが当然に起ってしまうのですから、ここでのボッソ、マンヌッツァ、イオナータらは将来名演奏家としてジャズ史に残って行くのかもしれません。

 全9曲。どれも素敵な演奏です。まず1曲目はミディアム調の明朗な曲想で快適なソロが続きます。オルガン伴奏の独特の雰囲気が面白いですね。古さを感じさせない、何か斬新な感覚があるのです。また、3曲目はカリプソ風で明るい陽光が降り注ぐ浮き浮きしてくる演奏であり、ボッソのトランペットの魅力が存分に味わえる演奏。

 6曲目がまたクールなジャズです。ロック調のオルガンとドラムのハードで粘っこいバッキングが現代を感じさせてくれますね。マンヌッツァのソロ演奏が素敵です。スティーブ・キューン70年代のローズの演奏を思い起してしまいます。7曲目 Mona Lisa がアップテンポの快演。イオナータのテナーが力強くていい感じ。

 8曲目スタンダード曲 All Blues でのマンヌッツァのオルガン演奏がファンキーに弾けています。イオナータがまた渋いソロをとってくれます。9曲目は最後を締める静かなバラッド。オルガン伴奏の雰囲気が素敵です。

1. Coffee Time (Max Ionata)
2. In 'n' Out (Joe Henderson)
3. Donna (Gorni Kramer)
4. Kiss (Prince)
5. E.S.C. (Luca Mannutza)
6. Safari (Luca Mannutza)
7. Mona Lisa (Max Ionata)
8. All Blues (Miles Davis)
9. Chan's Song / Dedicated to Gianni Basso (Herbie Hancock)

Max Ionata (ts), Fabrizio Bosso (tp, flh), Luca Mannutza (org), Lorenzo Tucci (ds).
Recorded in Roma, 2010.

 YouTubeからマックス・イオナータの映像をアップさせていただきましょう。渋めの演奏です。ドラミングがやはりいい具合で好きです。ルカ・マンヌッツァのピアノもデリケイトないいソロをとっています。

詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Max Ionata / Coffee Time

 

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