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ソニー・ロリンズ/アルフィー

JAZZ Sax 3

2009年04月01日

ソニー・ロリンズ/アルフィー Sonny Rollins / Alfie

 今日はソニー・ロリンズとオリバー・ネルソンのちょっと意外な組合せ。映画「アルフィー」の音楽です。いかにも英国人らしくシニカルな印象の名優マイケル・ケイン主役。全曲ソニー・ロリンズの作曲。パーソネルは、ソニー・ロリンズ(ts)、ケニー・バレル(g)、ロジャー・ケラウェイ(p)、ウォルター・ブッカー(b)、フランキー・ダンロップ(ds)、フィル・ウッズ(as)、J.J.ジョンソン(tb)、オリバー・ネルソン(arr)、他。1966年1月26日録音。Impulse。

 ソニー・ロリンズの60年以降のアルバムは実は日常的に聞く対象ではないですし、ほとんど感心して聞いたことがないというのが正直なところですが、本作に限っては、ロリンズのテナーが以前の自信に満ちた豪快かつ流暢なものとは言えないものの、マイペースでバッキングを無視したように吹きまくるアドリブには流石にロリンズの魅力を感じるのですね。それに、サイドメンのケニー・バレルとロジャー・ケラウェイがとてもいい味を出していることも印象に残るものです。

 不安定であいまいに聞こえる吹奏はジャズ潮流が急激に変わる中でロリンズがロリンズなりにその流れに乗ろうともがき苦しんでいるようにも聞こえます。50年代後半の演奏が金字塔のように確立されたものでありあまりに素晴らしいものだっただけにその呪縛から逃れることは容易なことではないのでしょう。まあでも、そういう歴史的なことは音楽を楽しむ分には実はどっちでもよいことであって、本作を前提なしで純粋に聞く分にはメロディよく快調なアドリブの続く楽しいジャズそのものなのですよ。

 あと、オリバー・ネルソンのアレンジするサウンド自体は何やら行儀よすぎるのか私にはいまいちのめりこめないところがあります。あの著名な「ブルースの真実」では、エリック・ドルフィーの参加によってその律儀なブルースに自由な即興性の遊びというか醍醐味が加わることで妙なバランスの良さがありましたっけ。

 その意味ではロリンズが生来持つ奔放さが同様な作用を及ぼすかと思いきや、どうもどこまで行ってもなじまない水と油という感じがするのです。恐らくはロリンズというアーティストはリズム隊以外のサイドのサポートをプラスに受けるタイプではなくて、いつも自分の独自のインプロヴィゼーションのみで聞くものを圧倒するタイプなのでしょう。

 全6曲。表題曲の1や6では、魅惑のテーマメロディが魅力的な上にロリンズの豪快なソロがなかなか冴えています。ケニー・バレルのブルージーなギターがいいアクセントとして効いていますね。静かな雰囲気の2曲目ではロリンズのソロに深みある味わいがあっていいですし、続くケラウェイのピアノも内省的かつ可憐で素敵です。

 4曲目のブルース、ここでのバレルのギター・ソロにはいつも感激させられます。流石の完璧なプルース演奏。クールでモダンな響きがイカしてます。その後のロジャー・ケラウェイのソロもバレルに感化されたのか実にいい具合で何やら新鮮な感覚がありますね。最後に満を持して出てくるロリンズのテナーが短いながらパッションに溢れています。

 5曲目のジャズ・ワルツ風アレンジでのロリンズが本作では一番の好みかもしれません。安心して耳を傾けられる類の力を少し抜いたロリンズ節なのです。そのリズムに乗った自在のインプロヴィゼーションは実に魅力的。曲自体の楽想にほのかにショーター音楽の影を感じるのは自分だけではありますまい。

 それにしましても、サイドメンの存外のいい演奏に出会うことは往々にしてよくあることですが、本作のケニー・バレルとロジャー・ケラウェイには本当に感激させられます。ロジャー・ケラウェイというピアニストは、私にとってはシンガーズ・アンリミテッドとの共演盤があまりに印象深く、本作のようにブルース主体の演奏でこんなにいい味が出せるピアノであったことは嬉しい発見ではありました。


1. Alfie's Theme
2. He's Younger Than You Are
3. Street Runner With Child
4. Transition Theme for Minor Blues or Little Malcolm Loves His Dad
5. On Impulse
6. Alfie's Theme Differently

iTunes Storeでは試聴できます。→Sonny Rollins/AlfieSonny Rollins - Alfie (Impulse Master Sessions)

詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Sonny Rollins / Alfie

関連エントリはこちら。
 →ソニー・ロリンズ/ヴィレッジバンガードの夜
 →ソニー・ロリンズ/ウエイ・アウト・ウエスト
 →ソニー・ロリンズ/ソニー・ロリンズVol.2
 →ソニー・ロリンズ/テナー・マッドネス
 →ソニー・ロリンズ/サキソフォン・コロッサス
 →オリバー・ネルソン/ブルースの真実
 →シンガーズ・アンリミテッド/ジャスト・イン・タイム
 →ケニー・バレル/ミッドナイト・ブルー
 →ケニー・バレル/アット・ザ・ファイブ・スポット
 →ジョン・ジェンキンス/ジョン・ジェンキンスとケニー・バレル

投稿者 Jazz Blogger T : 21:47 | トラックバック

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