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アート・ペッパー/ザ・リターン・オブ・アート・ペッパー

JAZZ Sax 1

2005年02月26日

return of art pepper.jpeg Art Pepper / The Return of Art Pepper

 今日はアート・ペッパーです。生涯の絶頂期50年代半ばの先鞭を切る名盤『ザ・リターン・オブ・アート・ペッパー』です。パーソネルは、ジャック・シェルドン(tp)、アート・ペッパー(as)、ラス・フリ-マン(p)、ルロイ・ヴィネガー(b)、シェリー・マン(ds)。1956年LA録音。Jazz West Records。

 アート・ペッパー(1925~82)は私にとって最もお好みのアルト・サックス奏者です。本作はペッパー絶頂期の魅力を捉えた大切な愛聴盤です。このアルバム、リターン=復帰という言葉が使われていますが、これは麻薬悪習のために53~56年の間、全く表舞台に出て来れなかったということで、本作がその復帰第1作ということでその名が付けられています。

 それにしましてもこの時期集中的に、本作の録音56年8月から翌57年1月までの約半年という短い期間に、アート・ペッパー生涯の名作が立て続けに世に送り出されています。いずれも高水準の素晴らしい内容で、これは驚くべき密度といえましょう。

①The Return of Art Pepper (Jazz West) 1956.8.
②Marty Paich Quartet Featuaring Art Pepper (Tampa) 1956.8~9.
③Playboys/Chet Baker & Art pepper 1956.10.
④Art Pepper Quartet (Tampa) 1956.11.
⑤Modern Art (Intro) 1956.12~57.1
⑥Art Pepper Meets the Rythm Section (Contemporary) 1957.1.

 ジャズ・ウェスト、タンパ、イントロといったレーベルは西海岸のマイナー・レーベルでありアート・ペッパーを録音するためだけに設立されたような存在であったようで、それらペッパーのアルバムはその入手の困難さから一時期'幻の名盤'の扱いを受けていたものです。この6枚は甲乙付け難い内容ですが、個人的な好みでは本作①、それに②と⑤をよく聴きます。

 ペッパーの魅力はあの独特の甘く切ない陰翳のあるソロ、その情緒的哀歓に満ちたブルージーなフレージングにあり、多くのジャズ・ファンが最大の賛辞を惜しみなく送ってきました。その天才的な語り口は少しアップ・テンポのマイナー・ブルースで最大の興趣を生みますが、決して俗に流されない情緒や感性は品格のある芳香をあたりいったいに放ちます。

 さて本作は全10曲。8曲がペッパーのオリジナル。ジャック・シェルドンという達者なテクニシャンのペットとの2管。リズムはラス・フリーマンにルロイ・ヴィネガー、シェリー・マンと最高の組み合わせです。3と8、10が少しスローな曲調ですが他はミディアムからアップ・テンポです。私にはワン・ホーン演奏の8.パトリシアが最もグッときますね。後半の倍テンポでのペッパーのソロには毎度唸らされます。10も渋い名演です。本作はペッパーの真髄を堪能できるお勧めのアルバムです。

 それにしても麻薬とジャズというのは当時切ってもきれない関係があったようで多くのジャズ・ジャイアツが良くも悪くも何がしかの影響を受けています。音楽芸術、特に1回きりの即興の瞬間に自己の音楽性すべてを賭けるジャズマン、しかもペッパーのように繊細な感性を持つ(これは優れた芸術家が大抵そうであると思われます)者にとって、束の間の安息や刺激、さらには演奏自体にも好結果をもたらしてくれるという、麻薬はそんな頼るべき存在であったことも事実だったのでしょう。

1. Pepper Returns
2. Broadway
3. You Go to My Head
4. Angel Wings
5. Funny Blues
6. Five More
7. Minority
8. Patricia
9. Mambo de la Pinta
10. Walkin' Out Blues

amazon.com では試聴可能です。→ The Return of Art Pepper

詳細はamazon.co.jp でどうぞ。→  The Return of Art Pepper

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