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ジョン・コルトレーン/マイ・フェイバリット・シングス

JAZZ Sax 2

2005年10月08日

myfavoritethings.jpeg John Coltrane / My Favorite Thing

 今日はジョン・コルトレーンの『マイ・フェイバリット・シングス』ですね。アトランティック時代のコルトレーンの音楽にはとても惹かれます。特にリズムが斬新です。本作はその典型的なもの。パーソネルは、ジョン・コルトレーン(ss,ts)、マッコイ・タイナー(p)、スティーヴ・デイヴィス(b)、エルヴィン・ジョーンズ(ds)。1960年録音。Atlantic。

 アトランティック時代のコルトレーンは50年代末~60年代初の数年ですが、従来のハードバップからコルトレーン独自のシーツ・オブ・サウンドと呼ばれるモード手法のスタイルが確立された重要な時期に当ります。音楽自体も斬新でスリルに満ちた面白みのあるジャズの一世界を形作っていると言えましょう。私にとりましても機会ある毎に耳を傾ける愛着のある音楽です。ただ凡庸なジャケットのデザインだけは許しがたいものがありますが。

『ジャイアント・ステップス』(1958.3)
『コルトレーン・ジャズ』(1959.11)
『マイ・フェイヴァリット・シングス』(1960.10)
『アフリカ・ブラス』(1961.3)
『オレ!コルトレーン』(1961.3)

 こうして列挙してみますと、コルトレーンの独特の体臭が発散されてくるのがわかります。努力の末に早吹きの超テクを身に着けて、その先に見つけたものはアフリカやインドなどへの回帰路線でありました。そして、そこには付随する新鮮なリズムの発展形が認められます。ベースやドラムに聞かれる従来にはない興味深い複雑性はコルトレーン音楽を際立った個性に仕立て上げる思わぬ副産物であったに違いありません。特に、スティーブ・デイヴィス、レジー・ワークマン、ジミー・ギャリソンらに受け継がれてゆくベースによる土着的な新しい響きにはコルトレーン音楽の哲学的な側面を顕在化させる一助になったと思われるものが感じられるのです。

 それに、そのリズムの複雑性を確実に魅力的な音楽的なものとするのがエルヴィン・ジョーンズのドラムの卓越性にあります。ポリリズムと呼ばれるドラミングにはコルトレーンのサックスと対等に渡り合える華があります。表題曲のリズムに耳を傾けてみてください。「サウンド・オブ・ミュージック」の素敵な歌曲には到底似つかわしいとは思えないアフリカというか土の香りのする重いリズムなのですね。ベースとドラムとで形成するそのリズムにはよく聞けば聞くほどに不可思議な雰囲気がかもし出されていることに感心させられます。その上をコルトレーンのソプラノ・サックスが美しいメロディを分解しながら凄まじいソロを披露してゆきますが、その組み合わせの妙といいますか、そこには純然たる独自のコルトレーン音楽の存在を感じずにはおれません。

 さらに、個人的な好みを加えさせていただけるなら、マッコイ・タイナーのピアノが私にとってはその美意識に共鳴することができるものであるということです。コルトレーンかマッコイかのいずれかが大抵の場合にソロを執っているのですが、たくさん出てくるマッコイのソロも実に魅力的だということです。例えば、1曲目の後半に聞かれるマッコイの長いソロなどは不思議な魅力のあるリズムを背景にしたとても興味ある新しい響きのピアノ・トリオ演奏になっています。本当に素敵な印象です。さらに、2曲目の可憐なマッコイ・タイナーのピアノには参ってしまいます。快調なリズムの上をひた走る右手のピアニズムに私はマッコイの好ましい美学を感じ取ることができます。

1. My Favorite Things
2. Everytime We Say Goodbye
3. Summertime
4. But Not For Me

John Coltrane (soprano & tenor saxophones); McCoy Tyner (piano); Steve Davis (bass); Elvin Jones (drums). Recorded at Atlantic Studios, New York, New York on October 21, 24 & 26, 1960.


iTunes Music Store では試聴可能です。→John Coltrane - My Favorite Things


詳しくはアマゾンでどうぞ。→ John Coltrane / My Favorite Thing


関連エントリーはこちら。
セロニアス・モンク/ウィズ・ジョン・コルトレーン(1957)
ジョン・コルトレーン/ブルー・トレーン(1957)
ジョン・コルトレーン/ソウル・トレーン(1958)
ジョン・コルトレーン/ジャイアント・ステップス(1959)
ジョン・コルトレーン/プレイズ・ブルース(1960)
ジョン・コルトレーン/オレ・コルトレーン(1961)
ジョン・コルトレーン/インプレッションズ(1961)
ジョン・コルトレーン/ライブ・アット・ザ・ビレッジ・ヴァンガード(1961)
ジョン・コルトレーン/コルトレーン(1962)
ジョン・コルトレーン/ジョン・コルトレーンとジョニー・ハートマン(1963)

投稿者 Jazz Blogger T : 21:21 | トラックバック

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