デニー・ザイトリンはシカゴ生れの現役のジャズ・ピアニストであり、また精神科医でもあります。1960年代にサンフランシスコに移り、チャーリー・ヘイデンらと組んで Columbia に上記2枚を含む5枚ほどのアルバムを残しました。残念ながら今のところCDでの再発はないようですが、ザイトリン本人も自身の音楽にとって a marverous platform と位置づけているようにいずれも満足な内容であったのだと思います。
本作は Columbia 時代の最後の作品です。全11曲。ザイトリンのオリジナル4曲。素晴らしいアルバムだと思います。例えば、4曲目 Here's That Rainy Day はキュートなメロディのスタンダード曲。数多い演奏の中でこのザイトリンの演奏が私は最も好きです。同曲はエヴァンスも録音を残しているものの、ザイトリンのこの演奏によって同曲が特別に好きになったほどですので、こちらの方が印象深いのです。ザイトリンのピアノには惹きつけてやまない独特の美学が感じられますが、その秘密は左手の多彩な動きと右手の美音の連なりにあり、左手の動きに意外性があるため曲想が立体的なものになるのではないかと思います。
6曲目 Maiden Voyage がまた素敵な解釈です。私にとっては本家ハンコックのクインテット演奏より好みになりますし、ヴァイブのボビー・ハッチャーソン『ハプニングス』(1966年) の演奏と同じくらいに好印象です。静かに奏されるテーマ紹介直後のザイトリンの最初の1コーラスが実に素敵です。透徹した美意識を感じずにおれません。
1. Dormammu [Denny Zeitlin] (6:38)
2. Put Your Little Foot Right Out [P.D.] (3:12)
3. The Hyde Street Run [Denny Zeitlin] (2:18)
4. Here's That Rainy Day [Burke, VanHeusen] (3:47)
5. I Got Rhythm [Gershwin, Gershwin] (2:11)
6. Maiden Voyage [Hancock] (7:37)
7. Offshore Breeze [Denny Zeitlin] (2:35)
8. Night and Day [Porter] (2:57)
9. Mirage [Denny Zeitlin] (17:14)
Denny Zeitlin (p), Charlie Haden (b), Joe Halpin (b), Jerry Granelli (ds), Oliver Johnson (ds).
Recorded on Apr 11, 1966 & Mar 18, 1967.
1. ワンス・アイ・ラヴド Once I Loved
2. おいしい水 Agua de Beber
3. 瞑想 Meditation
4. アンド・ローゼズ・アンド・ローゼズ And Roses And Roses
5. 悲しみのモロ O Morro (Nao Tem Vez)
6. お馬鹿さん How Insensitive
7. ジンジ Dindi
8. フォトグラフィア Photograph
9. 夢みる人 Dreamer
10. あなたと一緒に So Finha de Ser Come Voce
11. サヨナラを言うばかり All That's Left Is To Say Goodbye
iTunes Music Store では試聴可能です。→ アストラッド・ジルベルト/おいしい水
Astrud Gilberto (vo), Bud Shank (fl,sax), Stu Williamson (tp), Milt Bernhart (Trombone), João Donato (p), Antonio Carlos Jobim (g,vo), Joe Mondragon (b), Marty Paich (arr), Rudy Van Gelder (Mastering), Guildhall String Ensemble, David Hassinger (Engineer), Jack Maher (Original Liner Notes), Michael MalatokCover design), Creed Taylor (Producer).
Recorded at RCA Studios, Hollywood, California; January 27-28, 1965.
ただ、そのモーニンの記憶のおかげで、その後、私が初めて買ったジャズのレコードがジャズ・メッセンジャーズのオリンピア劇場のライブ盤(過去エントリはこちら→ジャズ・メッセンジャーズ/パリ・オリンピアコンサート1958)であり、その中の Whisper Not や I Remember Clifford でのリー・モーガンのソロを聞いてジャズの魅力に開眼したというわけです。
NHK教育「美の壺」という番組の主題曲に使われているMoanin' は大変に有名な曲でピアノ担当のボビー・ティモンズの作曲ですが、Are You Real や Blues March 他多くの印象的な曲はベニー・ゴルソン作です。素晴らしい楽曲とともにファンキーな演奏はジャズの醍醐味を直裁に教えてくれます。ただ残念なことに、ナイアガラ瀑布に譬えられたダイナミックなブレイキーのドラミングにはあまり感激した覚えはありません。
1. Moanin'
2. Are You Real
3. Along Came Betty
4. The Drum Thunder Suite
5. Blues March
6. Come Rain Or Come Shine
Lee Morgan (tp), Benny Golson (ts), Bobby Timmons (p), Jymie Merritt (b), Art Blakey (ds).
Recorded on Oct 30, 1958.
全7曲。1曲目 IF THERE IS SOMEONE LOVELIER THAN YOU からアップテンポの快調なピエラヌンティのソロが堪能できます。ピエラヌンティの音楽は聞き流せばさっと過ぎ去ってゆくほどさりげなくあっさりしているのですが、繰り返して聞くことでアドリブのメロディが耳に慣じんだ頃にようやくその心地よさが深く味わえるのだと思います。そういう類の音楽に私はなぜか愛着を抱きます。
2曲目 I FALL IN LOVE TOO EASILY はスローバラッド。粘っこいピアノが魅力的です。 ピエラヌンティのバラッド演奏は印象的なシングルトーンで独特な音列を並べる意外性のあるものですが、そこにある美意識には説得力があります。
3曲目 THE MOOD IS GOOD はミディアムテンポでやはり私はこうしたピエラヌンティがお好みのようです。リズムに乗って次々に繰り出されてくる音の連なりに身をゆだねるようなそんな快感です。5曲目 A CHILD IS BORN では粘っこくしっとりしていている上にリズムに乗る快適なピアノが素敵です。この演奏が本CDで一番のお勧めかな。
1. IF THERE IS SOMEONE LOVELIER THAN YOU
2. I FALL IN LOVE TOO EASILY
3. THE MOOD IS GOOD
4. NEW LANDS
5. A CHILD IS BORN
6. ALL THE THINGS YOU ARE
7. I LOVE YOU
Enrico Pieranunzi (p), Marc Johnson (b), Joey Baron (ds). Recorded on Feb 17, 1984.
iTunes Music Store では試聴可能です。→ Enrico Pieranunzi / New Lands
スタンダード中心の全12曲収録。まずは1曲目 All Or Nothing At All を聞けば、このトリオ演奏が高度に連携のとれた密度の高い音楽であることがすぐに分ります。ベースのファビアン・ギスラーの動きが激しく刺激的で、ドラムが細やかにリズムを刻みます。
続く2曲目 Never Let Me Go は素敵なソローなバラッド。ラカトシュの余韻たっぷりの粘着質の音の連鎖が魅力的。エヴァンスほど内省的でないけれどひたすら耽美的なピアノです。3曲目 My Favorite Things はミディアム・テンポでやはり3者のインタープレイがなかなか好印象で、終始、前のめりに攻めの姿勢のラカトシュのピアノが心地よいです。
4曲目 Last Time Together が本作品の中で私が最も好む演奏。ラカトシュの父、ピアニストの Bela S. Lakatos の作品。スポンテイニアスで特徴的なベースとドラムの複雑なリズムに乗って、ラカトシュのピアノが淀みなく美音の連鎖を繋いでゆきます。ラカトシュの唸り声が聞こえる頃に絶頂を迎えますが、時を忘れさせるこの快感はなんて素敵なのでしょう。全くもって新鮮な感激。私がヨーロッパのピアノ・ジャズに求めてきたものがまさしくこの演奏にありそうです。
1. All Or Nothing At All
2. Never Let Me Go
3. My Favorite Things
4. Last Time Together
5. Weaver Of Dreams
6. Ray's Idea
7. The More I See You
8. Estate
9. Waltz for Sue
10. When Will The Blues Leave
11. Till There Was You
12. You're My Everything
Robert Lakatos (p), Fabian Gisler (b), Dominic Egli (ds). Recorded on Oct.22&23, 2006 in Zulich.
特に未発表だったボーナス・トラックのうちの6曲目 Everything Happens To Me でのソプラノ・サックスが素晴らしい出来だと思います。溢れでる歌心が見事なのですね。続くデューク・ジョーダンのソロも哀愁があってよいです。1曲目 Besame Mucho はご存知の通りいかにもケニー・ドーハム好みの曲調ですが、やはり期待通りのきめ細やかなソロが聞かれます。ドーハムは私の好みにぴたりとくるのですね。続くウィランのソロも起伏とスリルに富んだイマジネーションある好演です。
そして、タッド・ダメロン作の4曲目 Lady Bird がとてもよい具合です。少し早めのミディアム・テンポに乗って3者のこれぞハード・バップと言える快調なソロが聞けるのですね。会場からも掛け声が起こるようないい雰囲気になってます。特にウィランのテナーはメリハリがきいて豪快ながら繊細にメロディを紡ぐ好演。
1. Besame Mucho
2. Stablemates
3. Jordu
4. Lady Bird
5. Lotus Blossom *
6. Everything Happens To Me *
7. I'll Remember April *
8. Temoin Dans La Ville * (彼奴らを殺せ)
Barney Wilen (ts), Kenny Dorham (tp), Duke Jordan (p), Paul Rovere (b), Daniel Humair (ds), Recorded on Aipl. 24&25, 1959.
例えば、5曲目 Blue Seven でのベース次いでドラムとによる長いイントロの後に満を持して出てくるロリンズの渋いテーマ提示とそれに次ぐリズムに乗った圧巻のアドリブ・ソロには素晴らしいジャズのみが有する品格が端的に示されているように思います。何てイカした音楽でしょう。バッキングのトミー・フラナガンのピアノがまた背後で微妙な陰翳を刻んでいます。
2曲目 You Don't Know What Love Is ではいきなりロリンズのテナーからスタートしてテーマ紹介後に聞かれるソロは起伏に富んだ何と凄みのあるテナーでしょう。その後のフラナガンのソロは対照的に優しく美しいものです。
いずれにせよバラード演奏は依然に独特の魅力を放っていまして、やはり素晴らしいとしか言いようがないのです。例えば、3曲目 'Tis Autumn や6曲目 Body and Soul、7曲目 Stars Fell on Alabama、12曲目 These Foolish Things らのスローバラッドでの美しいフレーズと優しい音色にはただただ感激するのみです。
多少の違いを感じるのは少しアップテンポの曲調では力強いブローをしていることでしょうか。1曲目 Stella by Starlight や2曲目 Time on My Hands、4曲目 Way You Look Tonight などでは心地よいハードバップのセンスが光っていると思うのですね。 ゲッツほどの天性の卓越した技量をもってすれば、より自由にホットに吹きまくるというのが自然な姿なのだと思われます。
1. Stella by Starlight
2. Time on My Hands
3. 'Tis Autumn
4. Way You Look Tonight
5. Lover, Come Back to Me
6. Body and Soul
7. Stars Fell on Alabama
8. You Turned the Tables on Me
9. Thanks for the Memory
10. Hymn of the Orient
11. These Foolish Things
12. How Deep Is the Ocean?
Stan Getz (ts), Jimmy Raney (g), Duke Jordan (p), Bill Crow (b), Frank Isola (ds). Recorded at NYC on Dec. 12&29 1952.
まずもって、9曲目 In the Wee Small Hours の後半のピアニズムが美しくて大好きです。鋭いタッチながら極めてリリカルな演奏です。シナトラやアン・バートンでお馴染みのメロディ。何度でも聞きたくなります。ライオネル・ハンプトンのスターダストのようなビブラフォンの鋭く美的なアタック音を思い出させてくれます。
それに、2曲目 My Favorite Things でも同様な見事なソロを聞かせてくれます。グッと溜めて一気に魅惑のラインを力強くかつスピーディーに吐き尽くす感じ。決して緊張が緩みません。 有名曲がとても新鮮に聞こえます。5曲目 Spring is Here でもその種の快適なソロ、美しいシングルトーンに惹かれます。
1. Isn't It Romantic
2. My Favorite Things
3. You Are Too Beautiful
4. With A Song In My Heart
5. Spring Is Here
6. Things Ain't What They Used To Be
7. Close Your Eyes
8. Con Alma
9. In The Wee Small Hours Of The Morning
With A Song In My Heart/Tonu Naissoo(P) Trio(Aterlier Sawano AS046) - Recorded February 20 and 21, 2003. Jorma Ojanpera(B), Petteri Hasa(Ds).