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デニー・ザイトリン/ザイトガイスト

JAZZ Piano 3

2008年10月31日

Denny Zeitlin Zeitgeist Denny Zeitlin / Zeitgeist

 今日はデニー・ザイトリンの渋いピアノ・トリオ演奏を紹介します。正統かつ典型的なエヴァンス派と目されたデビュー当時のデニー・ザイトリンの美学は長く私の好みのど真ん中に位置しています。パーソネルは、デニー・ザイトリン(p)、チャーリー・ヘイデン(b)、 ジョー・ハルピン(b)、ジェリー・グラネリ(ds)、オリバー・ジョンソン(ds)。1966&67年録音。Columbia。

 デニー・ザイトリン(1938~)の本アルバムは学生の頃から長く私の愛聴盤です。その魅力は粘っこい粘着質のタッチと知的なリリシズムの美学にあると思います。エヴァンスほど内省的でもなくむしろさらりとしたあっさり味のところがあり、その薄味の中にデニー・ザイトリン特有の一本の透徹した美が貫かれています。

 私が初めてデニー・ザイトリンのそんなピアノを聴いて感動したのは、ジェレミー・スタイグ『フルート・フィーバー』(1963年)でした。この作品はデニー・ザイトリンの初レコーディングに相当しますが、スタイグの爆走するフルート演奏の特異さと同時にザイトリンのきらりと光る知的で美しいピアノには唸らせられました。
 
 デニー・ザイトリンはシカゴ生れの現役のジャズ・ピアニストであり、また精神科医でもあります。1960年代にサンフランシスコに移り、チャーリー・ヘイデンらと組んで Columbia に上記2枚を含む5枚ほどのアルバムを残しました。残念ながら今のところCDでの再発はないようですが、ザイトリン本人も自身の音楽にとって a marverous platform と位置づけているようにいずれも満足な内容であったのだと思います。

 本作は Columbia 時代の最後の作品です。全11曲。ザイトリンのオリジナル4曲。素晴らしいアルバムだと思います。例えば、4曲目 Here's That Rainy Day はキュートなメロディのスタンダード曲。数多い演奏の中でこのザイトリンの演奏が私は最も好きです。同曲はエヴァンスも録音を残しているものの、ザイトリンのこの演奏によって同曲が特別に好きになったほどですので、こちらの方が印象深いのです。ザイトリンのピアノには惹きつけてやまない独特の美学が感じられますが、その秘密は左手の多彩な動きと右手の美音の連なりにあり、左手の動きに意外性があるため曲想が立体的なものになるのではないかと思います。

 6曲目 Maiden Voyage がまた素敵な解釈です。私にとっては本家ハンコックのクインテット演奏より好みになりますし、ヴァイブのボビー・ハッチャーソン『ハプニングス』(1966年) の演奏と同じくらいに好印象です。静かに奏されるテーマ紹介直後のザイトリンの最初の1コーラスが実に素敵です。透徹した美意識を感じずにおれません。

 レコードではB面になりますが、7曲目 Offshore Breeze と9曲目 Mirage の2曲は盟友チャーリー・ヘイデンが参加した1966年の録音。前者はボサノバ風の寛いだ雰囲気の中にさりげないリリシズムが匂い立つような素敵な演奏。後者は17分に及ぶ長尺演奏で本アルバムのハイライトと言っていいと思いますが、哲学的なヘイデンのベースとザイトリンのピアノ美学が真っ向から対話するようなイマジネーション溢れる演奏になっています。やはりザイトリンのピアノには特有の匂いがあって、好みの問題でしょうが、私のようにそれが好きな人には堪らない魅力を感じることができます。

1. Dormammu [Denny Zeitlin] (6:38)
2. Put Your Little Foot Right Out [P.D.] (3:12)
3. The Hyde Street Run [Denny Zeitlin] (2:18)
4. Here's That Rainy Day [Burke, VanHeusen] (3:47)
5. I Got Rhythm [Gershwin, Gershwin] (2:11)
6. Maiden Voyage [Hancock] (7:37)
7. Offshore Breeze [Denny Zeitlin] (2:35)
8. Night and Day [Porter] (2:57)
9. Mirage [Denny Zeitlin] (17:14)

Denny Zeitlin (p), Charlie Haden (b), Joe Halpin (b), Jerry Granelli (ds), Oliver Johnson (ds).
Recorded on Apr 11, 1966 & Mar 18, 1967.

デニー・ザイトリンのオフィシャル・サイト→Denny Zeitlin

投稿者 Jazz Blogger T : 18:44 | トラックバック

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