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クララ・ハスキル/モーツァルト・ピアノ協奏曲23番

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2008年10月02日

クララ・ハスキル/モーツァルト・ピアノ協奏曲9番・23番 クララ・ハスキル/モーツァルト・ピアノ協奏曲23番

 今日はモーツァルトのピアノ協奏曲23番イ長調K488です。クララ・ハスキルがウィーン・フィルと共演する20番と23番がカップリングされたフィリップスのレコードは学生時代からの愛聴盤。CDでの発売はないようですので、23番のみ収録された本CDを掲げています。クララ・ハスキル(p)、パウル・ザッヒャー指揮ウィーン交響楽団、1954年10月録音、Philips。

 モーツァルトはたまに思い出したように聞きますが、ピアノ協奏曲が一番のお好みです。最近はピアノ・ソナタも聞くようになりました。モーツァルトのその淡白な味わいはジャズなどの饒舌で複雑な音楽に辟易したときに聞くと一種の清涼剤のように心と身体にすっと入り込んできて不要なものを洗い流してくれるかのようです。

 よく聞くのは23番、20番、19番、13番、27番、26番、21番など。モーツァルトのピアノ協奏曲はいずれも3つの楽章からなり、荘重で華麗な第1楽章、優しく美しい第2楽章、軽やかで溌剌たる第3楽章。ポピュラーになるくらいにメロディが印象的な第2楽章がやはり分りやすく魅力的ですね。

 好んで聞く演奏はクララ・ハスキルのものが中心です。ハスキルの演奏はまろやかでしなやか、モーツァルトの微妙な陰翳や明朗さをシンプルかつ詩的に表現してくれます。録音が古いので音質がいま一歩という難がありますが、それを余すに足る興趣があると思うのですね。

 この23番イ長調は魅惑のメロディが満載の分りやすい音楽です。第1楽章アレグロの主題はモーツァルトらしい生命力と快活さを感じさせる素敵なメロディ。ピアノによって次々にいろいろな変奏が施されて高みに登ってゆく感覚が素晴らしい。ジャズの優れたインプロヴィゼーションを聞いているようです。

 第2楽章アダージョは第1楽章とは対照的に憂いに満ちた物悲しい主題メロディ。それがまた映画音楽のようにとても印象深いものです。ちょっと俗っぽい感じは否めないけれど、馴染みやすくて繰り返し聞きたくなるのですね。ピアノのみで静かに始まり、弦楽器が重なってゆくにつれ悲しさが倍増してゆきます。若い時にこんな音楽を聞いていったい何を考えていたのだろうとふと昔を懐かしくなりますね。

 第3楽章はまた対照的にとっても元気です。跳ねるような主題が印象的。悲しみを背負いつつも力強く遠くへ走り去ってゆくようなイメーシです。ピアノは縦横に装飾的に動き回りつつある収束に向かってゆくようです。元のテーマ・メロディに舞い戻ることで落ち着きとバランスを取り戻すと、曲はあっけなく終わります。

 フィリップスに1950年代に残されたクララ・ハスキルのモーツァルトのピアノ協奏曲やソナタは私にとって大切な宝物になっています。悩みや時を忘れてひと時の安らぎに心身を委ねることができるせいかもしれません。

1. ピアノ協奏曲 第23番 イ長調 K.488 第1楽章:Allegro <モノラル録音>
2. ピアノ協奏曲 第23番 イ長調 K.488 第2楽章:Adagio <モノラル録音>
3. ピアノ協奏曲 第23番 イ長調 K.488 第3楽章:Allegro assai <モノラル録音>
4. ピアノ協奏曲 第9番 変ホ長調 K.271≪ジュノム≫ 第1楽章:Allegro <モノラル録音>
5. ピアノ協奏曲 第9番 変ホ長調 K.271≪ジュノム≫ 第2楽章:Andantino <モノラル録音>
6. ピアノ協奏曲 第9番 変ホ長調 K.271≪ジュノム≫ 第3楽章:Rondeau (Presto) <モノラル録音>
7. コンサート・ロンド イ長調 K.386 <モノラル録音>

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クララ・ハスキル Philips歴史的名盤シリーズ → クララ・ハスキル Philips

投稿者 Jazz Blogger T : 11:24 | トラックバック

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