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ロバート・ラカトシュ/Never Let Me Go

JAZZ Piano 3

2008年10月07日

Robert Lakatos/Never Let Me Go

 今日は澤野工房の注目ピアニスト、ロバート・ラカトシュの2枚目のトリオ作品を紹介します。ラカトシュのピアノが冴え渡り、ピアノ、ベース、ドラム3者のバランスが素晴らしい作品。パーソネルは、ロバート・ラカトシュ(p)、ファビアン・ギスラー(b)、ドミニク・エグリ(ds)。2006年10月チューリッヒ録音。澤野工房AS066。

 ロバート・ラカトシュは1975年ハンガリー・ブタペスト生れ。澤野工房からこの数年ですでに3枚の作品を残し、今年夏にもライブ演奏のために来日しています。音楽一家に育ってクラシックの素養を持ち、ジャズ・ピアニストではウィントン・ケリー、ビル・エヴァンスやキース・ジャレットに感銘を受けたとのこと。
 
 本作は粒立ちがよくて変幻自在に歌う感性豊かなラカトシュの個性が光る秀逸な作品。ベースとドラム3者の緊張感あるインタープレイを堪能できる理想的なピアノ・トリオ作品でもあります。また、「ジャズ批評」のジャズオーディオ・ディスク大賞2007銀賞という録音の良いCDです。

 スタンダード中心の全12曲収録。まずは1曲目 All Or Nothing At All を聞けば、このトリオ演奏が高度に連携のとれた密度の高い音楽であることがすぐに分ります。ベースのファビアン・ギスラーの動きが激しく刺激的で、ドラムが細やかにリズムを刻みます。

 続く2曲目 Never Let Me Go は素敵なソローなバラッド。ラカトシュの余韻たっぷりの粘着質の音の連鎖が魅力的。エヴァンスほど内省的でないけれどひたすら耽美的なピアノです。3曲目 My Favorite Things はミディアム・テンポでやはり3者のインタープレイがなかなか好印象で、終始、前のめりに攻めの姿勢のラカトシュのピアノが心地よいです。 

 4曲目 Last Time Together が本作品の中で私が最も好む演奏。ラカトシュの父、ピアニストの Bela S. Lakatos の作品。スポンテイニアスで特徴的なベースとドラムの複雑なリズムに乗って、ラカトシュのピアノが淀みなく美音の連鎖を繋いでゆきます。ラカトシュの唸り声が聞こえる頃に絶頂を迎えますが、時を忘れさせるこの快感はなんて素敵なのでしょう。全くもって新鮮な感激。私がヨーロッパのピアノ・ジャズに求めてきたものがまさしくこの演奏にありそうです。

 8曲目 Estate の演奏も決して甘さに流されずに音と音を巧みに紡ぎながら深い情念を描き切ります。情緒的でオーソドックスなルイス・ヴァン・ダイクの演奏が思い起こされるけれど、ラカトシュの方は知的かつクールであり張り詰めた緊張感あるトリオ演奏が印象的です。

 11曲目 Till There Was You はビートルズで有名な可憐なポピュラーソング。テーマメロディを慈しむような素敵なバラッド演奏。糸を引くように粘っこいピアノは限りなく美しい。最後の12曲目 You're My Everything はアンコール曲のように肩の力を抜いた寛いだ雰囲気の演奏。

 ロバート・ラカトシュ、凄くいいピアニストですね。キース・ジャレットやブラッド・メルドーのように独自の世界を持つ大器に違いありません。またもや澤野工房さんには脱帽です。他の作品も早く聞いてみたいと思っています。

robert_lakatos.jpeg
1. All Or Nothing At All
2. Never Let Me Go
3. My Favorite Things
4. Last Time Together
5. Weaver Of Dreams
6. Ray's Idea
7. The More I See You
8. Estate
9. Waltz for Sue
10. When Will The Blues Leave
11. Till There Was You
12. You're My Everything

Robert Lakatos (p), Fabian Gisler (b), Dominic Egli (ds). Recorded on Oct.22&23, 2006 in Zulich.

澤野工房では試聴可能です。→Robert Lakatos/Never Let Me Go

詳しくはHMVでどうぞ。→Robert Lakatos/Never Let Me Go

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