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野中郁次郎、勝美明/イノベーションの本質
_books (business&life)
2005年02月07日
イノベーションの本質/野中郁次郎、勝美明(著)
日経BP社 (2004年5月)
本書はここ数年のヒット商品の開発物語が13例登場します。「物語編」をジャーナリストの勝美明氏が、「解釈編」をアカデミアの野中郁次郎氏が各々担当執筆しイノベーションの本質を明らかにしようという趣旨の本です。「ナレッジ・マネジメント」理論で著名な野中氏の鋭い体系的抽象化が光る一冊です。
結局のところ、野中氏がこれまで提案されていること、すなわち暗黙知と形式知をいかにスパイラルアップさせて創造的な成果に結びつけるかという着地点に落ち着くのですが、今回はそのためにはミドルのアップダウン・マネジメントが重要との結論になっています。そして、それには個人及び組織の「我々は何のために存在するのか」という存在論への根源的な主体的問いかけが必要との考察がなされています。一方で、それは「現在搾取」のアメリカ型経営とは対極にあるものであると。
目次
序 章 知識経営とクリエイティブ・ルーティン
第一章 製品の「コンセプト」にとことんこだわる
ケース1 サントリー カラダ・バランス飲料「DAKARA」
ポカリとアクエリアスの牙城を崩したコンセプトの勝利
~「場」=顧客との共体験が真のコンセプトを生む~
ケース2 本田技研工業「アコードワゴン」
絶対価値追求型のホンダの車づくり
~「弁証法」と「仮説設定」でコンセプトを磨く~
第二章 組織の「知」を徹底的に活用する
ケース3 デンソー「二次元レーザーレーダーシステム」
“隠れた巨人”の驚くべき知識創造力
~深堀りの技術屋と横串のシステム屋のせめぎ合いが力を生む~
ケース4 キヤノン デジタルカメラ「IXY DIGITAL」
「知」を切らないリストラがヒット商品となって花開く
~「サムライ・モデル」が可能にするキヤノンの強い綜合力とは~
ケース5 スズキ 五〇ccスクーター「チョイノリ」
「一cc=一〇〇〇円」を実現したものづくりの知
~本質を極めるコスト意識を「型」として定着させる~
第三章 「個」のコミットメントを限りなく高める
ケース6 富士通「プラズマディスプレイパネル」
個とネットワークとの「共創」により夢を実現する
~アメリカ型“傍観者の経営”と異なる“人間原理の経営”とは~
ケース7 ヤマハ「光るギター」
個の挑戦が組織に「ミドルアップダウン」の動きを巻き起こす
~「友だちの友だちはみな友だち(スモールワールド・ネットワーク)」
的な人脈をいかに生み出すか~
ケース8 黒川温泉観光旅館協同組合「黒川温泉」
「個と全体」のバランスをとり、独特の世界を醸し出す
~「主語論理」と「述語論理」の矛盾をいかに解消するか~
第四章 人の「才」を存分に発揮させる
ケース9 日清食品 高級カップめん「具多 GooTa」
「起業家ミドル」が生み出した大ヒットブランド
~自社製品を否定する最初の会社になる~
ケース10 松下電器産業「遠心力乾いちゃう洗濯機」
「理想を追い求める執拗さ」が持続的競争優位をもたらす
~理想の洗濯機は「中華鍋」から生まれた~
ケース11 ミツカングループ「におわなっとう」
「知的体育会系」社員が市場と商品を結びつける
~仮説を崩され到達した「真実」は予想外のものだった~
第五章 日々の「生活」や「実践」を根底から大切にする
ケース12 スタジオジブリ 「千と千尋の神隠し」
すべてのネタは「日常の対話」の中にある
~「主客一体」のジブリと「主客分離」のディズニーの違い~
ケース13 海洋堂「食玩」
競争戦略ではなく「創発」的戦略でヒットを生む
~成功と失敗を反復する中から戦略が湧き上がる~
まとめ
自分は何をやりたいのか
―脱・傍観者の経営をめざして
投稿者 Jazz Blogger T : 18:22 | トラックバック
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