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フランソワ・ジャコブ/内なる肖像

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2005年02月10日

uchinarushozo.jpeg内なる肖像―一生物学者のオデュッセイア
フランソワ ジャコブ (著), 辻 由美 (翻訳)

みすず書房 (1989/10)

 フランソワ・ジャコブは「蛋白質合成における遺伝的制御機構」の研究(オペロン説と呼ばれる遺伝メカニズムの解明)で1965年度のノーベル生理学・医学賞を同僚のアンドレ・ルフォルフ、ジャック・モノーとともに受賞した仏の分子生物学者です。本書はジャコブ氏の半生を描いた自伝です。科学者の自伝としては文学的に異例の高い評価を受け世界各国で翻訳されています。

 内容は単なる科学ものではなく、一人の人間の波乱の半生が瑞々しい感性と詩的な文章で表現されています。一個の文学作品として鑑賞するに堪える内容です。ジャコブ氏にとって本書が処女作ですが、その後も随筆などの著作を通して、科学と人間、そして社会に向けた深い洞察と見識を示されています。現代の賢者と呼ぶに相応しい存在です。

 ジャコブ氏のような優れた直観と広い視野を併せ持つことがよい仕事を残す要件なのかなと私には思われます。それは感受性豊かで内省に富む人間が精一杯に生きること、その日々の積み重ねの結果培われる類のものなのだろうと思われます。そんなことを感じさせる書物です。
 
 科学や研究の世界の人間は特殊と考えがちですが、ノーベル賞級の学者も一個の生の人間です。どんな人間にもそれなりの人生ドラマがあるように、そうした著名人も全く同様な運命を生き抜いているものです。むしろ、人一倍悩みやコンプレックスを持つ人間臭い側面があるのではないかと思います。

 本書は科学に興味のある人だけでなく、人間やその生きざまに興味のある方にとって素敵なプレゼントになることでしょう。世の中や社会に貢献をするという満足な人生をまっとうするためには自分は何をいかになすべきか、またそれを享受する深い喜びがどんなものかを少しだけ共有することができます。そして自分の生き方を見直してみる良い機会になるのではないかと思います。

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