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マイルス・デイヴィス/ザ・マン・ウィズ・ザ・ホーン

JAZZ Trumpet

2005年10月07日

man_with_the_horn.jpeg Miles Davis/The Man With The Horn

 今日はマイルス・デイヴィスの『ザ・マン・ウィズ・ザ・ホーン』です。6年のブランクを経た1981年復帰第一作のエネルギーに満ちたポップな内容のアルバムです。ほぼリアルタイムの同時代音楽として受け止めてきた私としては今だによく聴く大好きなアルバムです。パーソネルは、マイルス・デイヴィス(tp)、ビル・エヴァンス(ss)、ランディ・ホール(vo)、ロバート・アーヴィング(p)、マイク・スターン、バリー・フィナーティ(g)、マーカス・ミラー、フェルトン・クルーズ(b)、アル・フォスター、ヴィンセント・ウィルバーン(ds)、サミー・フィグエロア(perc)。1981年録音。

 マイルス・デイヴィスの時代の先端を走ることへの執着とその結果としての先見性といいますのは尋常なものではありますまい。40年代後半にチャーリー・パーカーのクインテットに参加することで桧舞台に立つ機会を得たマイルスにとって、パーカーの先駆性とそれへの絶大なる賞賛を身近に脇役として接すること、そうした刷り込み体験によって時代の先頭を行くことが宿命づけられたに違いないと思うわけです。

 Cool(カッコいい)へのこだわりには才能というより、そうした生き様が反映されているような気がしてなりません。そんなに器用なわけでなく凡庸なトランペット奏者でスタートしたマイルスがいかにしてcoolなジャズマンとしての賞賛を勝ち得るかという一点に集約されていると。確かに演奏家としてでなく音楽家としては天性の才があったに違いないと思います。ただ、そこには、常に先端を走ることへのこだわり、下手なりにもトランペットをかっこよく響かせるバランス感覚、最高の若手サイドメンを集めてとにかくカッコよいジャズを創るといったプロデューサーとしての才など、通常のジャズメンとは全く異なった評価軸を当てはめる必要があります。

 しかも、大衆性と革新性の両立という普通にはなかなか受け入れられないスタンスをいとも簡単に成し遂げているということ、このバランス感覚は音楽家としての才能が際立っていることを明示していると思われます。一演奏者としてでなく、真の創造者(クリエイター)としての才が桁外れということでありましょう。50~80年代ジャズ芸術について、常に変遷してゆくことを宿命として予言して、その体現者としてそれを証明し続けてきた芸術家、それがマイルス・デイヴィスです。常にフロンティアを開拓すること、それこそ最大の賛辞を与えられるべきであり、マイルスは大衆性を味方につけながらそれを成し得た稀代の芸術家と呼べるに違いありません。

 前置きが長くなりましたが、マイルスは50年代、60年代と常に時代の先端をひたすら走り続けてきまして、80年代初頭においてもそうした期待を本作によって裏切ることはなかったということです。本作に聞かれる際どいながらも十分に許せるcoolな音に耳を傾けますと、マイルスの本質を少しは感じ取れるような気になるというものです。マイク・スターンのアブストラクトなギターやビル・エヴァンスのソプラノ・サックスの麗しいながらも過激な音、その手本を示すようなマイルスの気合のこもったトランペットの雄叫び、そしてそれらを支える強靭なリズムと魅力的なメロディが交錯する広大な音宇宙、ここには底知れぬ魔界が広がっているかのようでです。

1. Fat Time
2. Back Seat Betty
3. Shout
4. Aida
5. The Man With The Horn
6. Ursula

Miles Davis (trumpet); Randy Hall (vocals, celeste, Moog synthesizer, guitar); Bill Evans (soprano & tenor saxophones); Robert Irving III (piano, keyboards); Mike Stern, Barry Finnerty (guitar); Marcus Miller, Felton Crews (electric bass); Al Foster, Vincent Wilburn (drums); Sammy Figueroa (percussion).

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