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セロニアス・モンク/ブリリアント・コーナーズ

JAZZ others 3

2011年09月11日

Thelonious_Monk_Brilliant_Corners Thelonious Monk/Brilliant Corners

 セロニアス・モンクの登場です。50年代の定評あるハード・バップの名作ブリリアント・コーナーズ。ロリンズとモンクの組み合わせがスリルある最高のモダン・ジャズを生み出しています。パーソネルは、アーニー・ヘンリー(as)、ソニー・ロリンズ(ts)、セロニアス・モンク(p)、オスカー・ペティフォード、ポール・チェンバース(b)、マックス・ローチ(ds)、クラーク・テリー(tp)。1957年録音。Riverside。

 セロニアス・モンクのジャズを聴くときジャズ特有の醍醐味を感じるのは自分だけではありますまい。モンクの作り出す音楽には、スリルと興奮、それに安らぎというジャズが持つべき最高のパーフォーマンスがいつも示されるのです。特異な演奏スタイル、予想しにくい意外な展開、魅力的な自作楽曲。

 この57、58年頃のモンクは、コンボ演奏では、本作「ブリリアント・コーナーズ」と共に「モンクス・ミュージック」、それにファイブ・スポットでのライブ演奏である「ミステリオーソ」と「イン・アクション」、ソロ演奏では、「セロニアス・ヒムセルフ」と「アローン・イン・サンフランシスコ」と名作を次々と発表しています。本作は特にハード・バップだけでなくモダン・ジャズの傑作として大変に著名な作品。

 モンクのジャズ史における貢献は一人の巨人ピアニストということだけではなく、競演するプレイヤーに多大なインスピレイションを与えたことでしょう。本作のソニー・ロリンズだけでなく、ジョン・コルトレーンやジョニー・グリフィンというジャズ・ジャイアンツたちが成長過程でモンクと競演することで巨人足りえるようなよい影響を受けたと言われています。

 こうしたモンクの秘密はいったいどこにあるのでしょう。彼の音楽の魅力と周囲への影響力がモンク音楽の持つどういった特性に由来しているのか。この課題は恐らくはモダン・ジャズの歴史において、また、ジャズ音楽の魅力とは?といった極めて根源的な問題に発展すべきものに違いありません。

 私自身のモンク体験は大学生の頃に中古レコードで買った「ミステリオーソ」です。大阪の難波にあるワルツ堂というレコード屋さんの中古コーナーです。当時アルバイトで得たお金をレコードと映画に喜び勇んで?費やしていました。その辺の話はさておき、今でも覚えているのは、その買ったばかりのレコードをたまたま立ち寄った友人の家にて初めて聴いたのですが、ミステリオーソという表題の通り、何やら奇妙な音楽であまり関心しなかったのを覚えています。その後繰り返し聴くことで大好きなアルバムになるのですが最初はいい印象ではなかったのです。フロントがテナー1本、そのグリフィンがもうワンコーラス、ワンコーラスとしきりに煽られているのがよく分かるのですね。その期待に応えんとグリフィンは彼本来の持ち味であるところの素晴らしいブローを延々とやってのけるのですね。

 曲想は奇妙な感じですが、各ソロ・プレイヤーの出来はジャズとして最高なものになるというのがモンクのコンボ演奏の特徴でしょう。つまりは、モンクがフロント・ラインに期待する期待度合いが非常に高く、最高のパーフォーマンスを引き出すためにモンクがいろいろ工夫をしているらしいということが考えられるわけです。

 モンク音楽の美学は彼のソロやトリオ演奏を聴けばおおよそ分かります。とても不可思議で奇異な感じのする楽奏と音運びなのですが、ジャズの魅力という点では非常に素晴らしいのですね。ジャズの特有の魅力というものの本質が逆によく見えてくるように思えるのです。それは決して耳障りがいい音の連なり、そうメロディだけの問題でないことを教えてくれます。リズムやハーモニーといったことが複雑に絡み合って一種独特の音楽的な魅力が表現されているに違いないと確信できます。

 例えば、モンクは恐らくは意識的に敢えて不協和音を奏でます。それによって全体にゆらぎというか揺さぶり、不安という波紋が広がります。それはフロントのソロ演奏にもインプロビゼーションの新たな地平というか可能性を与えることになり、よりスリルのある演奏に繋がるように思えるのです。つまりはモンクはコードとその進行を自在かつ微妙に操ることで、各ソロ演奏者の自発的spontaneousで意外性に富んだ演奏を引き出しているように見受けられます。そうした音楽センスや美学がひときわ優れていることこそモンクの巨人たる由縁に違いないだろうと思われます。

 素人っぽいピアノ演奏、誰にでもできそうな拙いように見える演奏の背後には、こうしたいろいろ表面だけ見ていても見えて来ないモンク音楽の秘密が隠されているように思います。自由と即興性、意外性、醍醐味、スリルなど、ジャズ音楽が持つべき魅力をモンクの残したジャズはたくさん有しています。一瞥ではなかなか分からないモンク音楽の深みとか深さ具合を漠然と頭に思い浮かべながら聞き慣れた彼の音楽をまた新たに聴いてみるのもご一興というものです。

 本作で自分が一番好きなのは、3曲目 Pannonica 。ロリンズの自信に満ちた逞しいテナー・ソロを聴いていますと、これぞモダン・ジャズの本流というか、ジャズの醍醐味を実感させられます。軽快なモンクのピアノと豪放なロリンズのテナーの対比、また、テーマメロディのおっとりした感じとロリンズのぐいぐい引っ張ってゆく強引さの対比、いずれもそのバランスがおもしろいのですね。

1. Brilliant Corners
2. Ba-Lue Bolivar Ba-Lues-Are
3. Pannonica
4. I Surrender, Dear
5. Bemsha Swing

 YouTubeからモンクの代表作の一つラウンド・アバウト・ミッドナイトをトリオ演奏でどうぞ。彼の演奏はいつ聞いても独特ですが、こうして演奏風景を見ながら聞くとまた違った印象になります。詩人というか詩的ですね。一つ一つの音が突き刺さります。力のある言葉そのものです。


詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Thelonious Monk/Brilliant Corners

関連エントリはこちら。
 →セロニアス・モンク/ミステリオーソ
 →セロニアス・モンク/ウィズ・ジョン・コルトレーン
 →セロニアス・モンク/プレイズ・デューク・エリントン
 →セロニアス・モンク/セロニアス・ヒムセルフ
 →セロニアス・モンク/アローン・イン・サンフランシスコ
 →セロニアス・モンク/ストレート・ノー・チェイサー


 
 

投稿者 Jazz Blogger T : 13:07 | トラックバック

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