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スティーヴ・キューン/リメンバリング・トゥモロウ

JAZZ Piano 3

2006年03月19日

remenbering_tomorrow.jpeg Steve Kuhn/Remenbering Tomorrow

 今日の昼下がりは飛石だけれど4連休の私にとっては昼食からアルコールを飲りながらの自宅でのんびりジャズ&PCのリラックスタイムです。久しぶりにスティーヴ・キューンに耳を傾けています。95年ECM録音の「Remenbering Tomorrow」はキューン独自の耽美的なピアノが美しいピアノ・トリオ作品です。パーソネルは、スティーヴ・キューン(p)、デヴィット・フィンク(b)、ジョーイ・バロン(ds)。1995年録音。ECM。

 スティーヴ・キューンというピアニストは今は結構に名が売れていますが私がジャズに嵌り出した80年代は耽美的なジャズ・ピアニストとしてまさに知る人ぞ知るジャズマンでした。私はキューンのあまりスイングしないその凡庸なジャズ・ピアノの中に、たまに垣間見せられる透徹した美しいクセのある音楽に限りなく魅了されているのでした。内省的で清らかで美的な音楽を作り出すことで知られたECMレーベルの代表的な典型を見ていたのでした。

 特に70年代の「エクスタシー」や「トランス」、それに60年代ピアノ・トリオ「スリー・ウェイブス」らの淡白な中にきらりと光る美を私は密かに愛していました。2000年以降のヴィーナス・レーベルでの活躍は孤高のピアニストの名をポピュラーに知らしめたという点では評価できるものの、キューン音楽の鋭角的な美意識の角が無残にもそぎ落とされており昔の芸術を知る者にとっては全くさびしい限りのものです。

 というわけで、前振りが長くなりましたが今も聞きながら書いている本作、ECMで10年以上の時の隔たりを経て録音されたというアルバム「Remenbering Tomorrow」は、過去の自曲の再演集となっていますね。まだヴィーナスの気配は無くてキューン独自の美意識をそこはかとなく発散させると同時に過去の記憶と郷愁を感じさせる内容です。キューンのすぐに彼と分かるクセのあるフレージングが懐かしくて心地よいのです。

 やはり最後11曲目の「シルヴァー」の懐かしいメロディが私の魂を震えさせてくれます。学生時代に自己との対峙に疲れ果ててはこのシルヴァーの桃源鏡に逃避して救われていたことを思い出します。閉ざされた精神の内的世界を優しく癒してくれた懐かしのメロディです。全11曲、どの曲にもキューンの透徹したピアノに一本筋が通っていて真摯な音楽観を感じることができます。8曲目アルバム表題曲と9曲目でのキューンらしい流麗であっさり味の刹那的美的ピアニズムが印象に残ります。

1.ザ・レイン・フォレスト
2.オーシャンズ・イン・ザ・スカイ
3.ララバイ
4.トランス
5.ライフズ・バックワード・グランス
6.オール・ザ・レスト・イズ・ザ・セイム
7.エマニュエル
8.リメンバリング・トゥモロウ
9.ザ・フィーリング・ウィズイン
10.ビタースウィート・パッセージズ
11.シルヴァー

詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Steve Kuhn/Remenbering Tomorrow

関連エントリはこちら。
 →  スティーヴ・キューン『エクスタシー』
 →  スティーヴ・キューン『スリー・ウェイブス』

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投稿者 Jazz Blogger T : 09:30 | トラックバック

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