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ジョン・コルトレーン/プレイズ・ブルース
JAZZ Sax 3
2012年08月11日
John Coltrane / Coltrane Plays the Blues
ジョン・コルトレーンの真摯なジャズを聞いてみたいと思う時、私の場合は57年から62年くらいの作品群がその中心になります。本作はその意味で目的に適う最適な一枚。メイン・ストリーム・ジャズらしい堂々と安定したサックス演奏に思わずにんまりさせられます。愛聴盤としていつも座右に置いておきたい渋い作品。パーソネルは、ジョン・コルトレーン (ts)、マッコイ・タイナー (p)、スティーブ・デイヴィス (b)、エルヴィン・ジョーンズ (ds)。1960年10月NYC録音。Atlantic。
コルトレーンのジャズには独特の魅力があるのですが、個人的には50年代後半から60年代初頭のテナー奏者としての自己を確立し、クリエイターとしての音楽性をこれから模索していこうとする時期が好みになります。先端を走る自信と意欲に満ちていること、アフリカ音楽を取り入れた創造性や斬新性、ソプラノ・サックスの新しい試みなど、一人の演奏者から音楽クリエイターへの変貌を模索する過渡期の姿がそのエネルギッシュな音楽とともにまぶしく感じられます。
自身のレギュラー・コンボを率いてサイドメンが充実してくるのもこの時期です。マッコイ・タイナーとエルヴィン・ジョーンズの参加は決定的に重要と思われます。特に、エルヴィン・ジョーンズのたたき出すリズムは重奏的で複雑ないわゆるポリリズムと言われる圧倒的な存在感があって、それによってコンボが醸し出す雰囲気には目の離せない緊張とスリルが内在するようになります。また同時にリズムを刻むことを強要されなくなったベースはより自由に解き放たれ独自のラインを奏することができます。こうしてコンボの音楽は独特の深みのある色と光を映すようになると考えられます。
本作と同じ日に録音されたアルバムが他に2枚あり、あの著名な「My Favorite Things」と「Coltrane's Sound」なのですね。本作はこれら2作と比較して無名に近いアルバムと言えるかもしれません。しかしながら、内容的には充実いや成熟というくらいに引けをとるものではありません。この時期、主にアトランティック・レーベルに録音されたコルトレーンの音楽はどれをとっても高水準にあり、コルトレーン・ジャズと呼べる自己のジャズがほぼ完成していると言えるでしょう。
もう一つ触れておかねばならないのは、マッコイ・タイナーのピアノ演奏の魅力です。本作は題名の通りブルース集なのですが、ブルースを得意とするタイナーの各曲でのソロ演奏が実に心地よいのです。マッコイ・タイナーのこの時期のピアノはまさにコルトレーンのピアノ版といっていいくらいにコルトレーンの影響下にあり、そのモード奏法とリリシズムに裏打ちされたピアノ演奏は、独特のブルージーな気だるい雰囲気と一種の緊張を強いられる独特のリズム背景の中を、孤高に疾走してゆく美しい音列が鮮烈なのです。本作は聞き込むほどにはまさにそうしたマッコイ・タイナーの魅力を味わうべき作品なのだと確信するのです。
全7曲。もちろん全曲ブルースですが、黒っぽさが嫌味になるような類のものではなくて意外にあっさりと感じられます。真摯なジャズが持つ適度な緊張感がバランスよく全体を支配しているのでしょう。繰り返して聞くべきジャズとはまさに本作のようなジャズを言うのに違いありません。
1. Blues To Elvin
2. Blues To Bechet
3. Blues To You
4. Mr. Day
5. Mr. Syms
6. Mr. Knight
7. Untitled Origional (Bonus Track For CD Only)
John Coltrane (ts), McCoy Tyner (p), Steve Davis (b), Elvin Jones (ds).
詳しくはアマゾンでどうぞ。→John Coltrane / Coltrane Plays the Blues
関連エントリはこちらから。
→ セロニアス・モンク/ウィズ・ジョン・コルトレーン (1957)
→ ジョン・コルトレーン/ブルー・トレーン (1957)
→ ジョン・コルトレーン/ソウル・トレーン (1958)
→ ジョン・コルトレーン/ジャイアント・ステップス (1959)
→ ジョン・コルトレーン/マイ・フェイバリット・シングス (1960)
→ ジョン・コルトレーン/オレ・コルトレーン (1961)
→ ジョン・コルトレーン/インプレッションズ (1961)
→ ジョン・コルトレーン/ライブ・アット・ザ・ビレッジ・ヴァンガード (1961)
→ ジョン・コルトレーン/コルトレーン (1962)
→ ジョン・コルトレーン/ジョン・コルトレーンとジョニー・ハートマン (1963)
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投稿者 Jazz Blogger T : 21:12
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クリス・ボッティ/クリス・ボッティ・イン・ボストン
JAZZ Trumpet 2
2012年08月09日
Chris Botti / Chris Botti in Boston
クリス・ボッティの素敵な世界へようこそという感じです。たまにはこうした幻想の世界に遊ぶのもいいものですね。ジャズという枠に捕われずにヨーロッパ音楽の伝統というか深みを伝えてくれる音楽でもあります。スムーズ・ジャズ。夕暮れ時の物寂しいけど安らかな一時。パーソネルは、クリス・ボッティ(tp)他。2008年Boston Symphony Hall録音。Sony。
ポピュラー色の強いジャズです。汗臭い臭いが希薄です。ヨーロッパの洗練された哀愁が漂います。クリス・ボッティのトランペットの響きはかなり衝撃でした。空中高く鳴り響くような音色は独特の郷愁を含んでいます。中性ヨーロッパの街のラッパ吹きのような何か懐かしく貧しくて、でも人間的な香りを感させる魅惑的な世界。
俗っぽさというか媚びた印象があります。トランペットのオープンで空間に伸び上がる孤独な響きは多少マイルスの音楽を思い出させてくれます。マイルスの場合はア−トとか即興という自由な印象があって大衆色が希薄になるのですが、こちらは恥じらい無くその色香をにじませています。真摯なジャズ愛好家からはきっと負のイメージになるでしょう。
中世のラッパという素朴な印象に救われます。このクリス・ボッティの音楽は精神状態によって優しい音楽が心に沁みるときがあるでしょう。本作中のしっとりした曲たちはそんな音楽です。泣かせ上手なものと分かっていても深く沁み渡るときというのは相当に参っている証拠なのだろうとも思います。
ゲストに、スティング、ジョン・メイヤー、スティーヴン・タイラー、ヨーヨー・マ、ドミニク・ミラー、ルシア・ミカレリ、キャサリン•マクフィーなど多彩な著名音楽家が参加しています。全13曲。スティーヴン・タイラーをフィーチャーしたスマイルが一番好きです。
1. Ave Maria
2. When I Fall In Love
3. Seven Days (featuring Sting and Dominic Miller)
4. Emmanuel (featuring Lucia Micarelli)
5. I've Got You Under My Skin (featuring Katharine McPhee)
6. Cinema Paradiso (featuring Yo-Yo Ma)
7. Broken Vow (featuring Josh Groban)
8. Flamenco Sketches
9. Glad To Be Unhappy (featuring John Mayer)
10. Hallelujah
11. Smile (featuring Steven Tyler)
12. If I Ever Lose My Faith In You (featuring Sting and Dominic Miller)
13. Time To Say Goodbye
YouTubeからスマイルを引用させていただきましょう。こちらは別に販売されているDVDからの映像のようです。音源はCDと同じです。こういう可憐なメロディを個性的なロック・シンガーが歌うのって割と好きなんですが、このトラックは特にその典型です。
VIDEO
こちらはキャサリン・マクフィーが歌うジャズ・スタンダード I've Got You Under My Skin。この曲は自分の中ではダイナ・ワシントンのものがお気に入りだったのですが、このマクフィーのリズミカルなトラックが新たな標準になる気配濃厚です。
VIDEO
詳しくはアマゾンでどうぞ。→Chris Botti in Boston
DVDはこちらです。→Chris Botti in Boston
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投稿者 Jazz Blogger T : 22:20
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