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フランク・カニモンド/イントロデューシング・リン・マリーノ

JAZZ Vocal 2

2007年02月11日

lynn_marino.jpeg.jpg Frank Cunimondo / Introducing Lynn Marino

 米ピッツバーグのローカル色のあるジャズですがリン・マリーノという女性ボーカルの独特の可憐な歌声とリズミックな楽曲で私のお気に入りアルバム。ボーカルものとして結構にハイレベルでポップな内容です。リン・マリーノ(vo)、フランク・カニモンド(p)、マイク・テイラー(b)、ロジャー・ハンフリーズ(ds)。1971年録音。Monds Records。

 この不思議な魅力に満ちたCDに出くわしたのはかれこれ3年くらい前の三宮センター街HMVのジャズCD試聴コーナーでした。最初の曲でリン・マリーノという知らぬ歌手の歌声を聴いた瞬間にこの異常なほど可憐で個性的な彼女の声色に魅了されたのでした。2曲目を聴いてノックアウトされ、すぐに購入することにしたのですが、私がその時に受けた印象は、本作のフランク・カニモンドが彼女リン・マリーノに初めて出会った時に受けた印象と近いものであったに違いありません。CDに付けられたライナーノーツにフランク・カニモンド自身がその時のことを書いていますので、以下に少し訳して引用してみましょう。

「私がリン・マリーノに出会ったのは、ピッツバーグにある夜ごと彼女自身がピアノを弾くトリオと現れる多くの美しく居心地のいいカクテル・ラウンジの一つだった。彼女の歌を聴いて、私はすぐに彼女の暖かくユニークなスタイル、それに彼女の繊細で素晴らしい個性的な魅力に深い印象を受けた。ライブ・パーフォーマンスでは、彼女は催眠術的な効果を観客に与えていた。彼女は聴衆の心を掴む能力があり、聴衆を冷たい部屋から暖かく受容力のある部屋に移動させることができるのである。」

 カニモンドはこの19才のリン・マリーノの特別な個性にやはり魅せられたんだなと。そして、彼女にレコード・デビューさせるために本作を録音したのでした。ただしリン・マリ-ノのアルバムは本作以外にはほとんど知られていませんので、本作が唯一の彼女のメジャー・アルバムということになるのかもしれません。私はこのCDを繰り返し聴くたびに、リン・マリーノの歌声に癒されるとともに、彼女を世に送り出してくれたカニモンドの慧眼と目利きのセンスに最大の拍手を贈りたくなるのです。

 ジャケットに垣間見えるリン・マリーノ女史の風貌からは想像しえない歌声。少女のように清らかで穢れを知らない処女を匂わせるこの種の声質に、きっとホルモン過多気味の男性連は弱いのですよ。それを見かけの装いと知りつつもあっさりと騙されてしまうのですが、それでも本望と思うかどうかが岐路となります。私は圧倒的に本望と思うタイプだと思うのです。アニー・ロスやブロッサム・ディアリーらと似ていてもマリーノにはすがすがしい佇まいがあって大変に好ましく思えるのです。

 全10曲。どの曲も素敵な内容です。1曲目イントロが始まって間も無く飛び出してくるマリーノ女史の人なつこい声に思わず唸ります。お隣のお姐さんが優しく鼻歌を歌う素人的な感触なのです。カニモンドのピアノは粘っこく絡みつきながらもさりげなくポイントを押えたアドリブを披露しますが、あくまでマリーノに花を持たせるスタンスなのですね。きっと、カニモンドさんもマリーノの魅力を示すことが本作の使命と心得ていてマリーノを前面に押し上げることに気を配っている風情です。
 
 本当にどの曲も素敵なのですね。特に2曲目や表題曲6曲目などに聞かれるリズミカルでミディアム調の曲想での軽やかに宙を舞うマリーノがいい感じなのです。まろやかで心優しい声質に癒されます。爽やかで一回きりの儚い美が感じられます。それに、3、7、9曲目のようにしっとりと歌うマリーノも彼女の魅力的な声がじっくりと味わえて実によい具合です。最後の10曲目には私の大好きなバート・バカラック作カーペンターズのヒット曲で有名なWe've only just begunが収められていまして心底に楽しめます。

1. Love So Fine
2. Beyond The Clouds
3. House Is Not A Home, A
4. Animal Crackers In My Soup
5. What Are You Doing The Rest Of Your Life
6. Feelin' Good
7. Until It's Time
8. Pretty Pretty
9. Soon It's Gonna Rain
10. We've Only Just Begun

 詳しくはアマゾンでどうぞ。→  Frank Cunimondo / Introducing Lynn Marino

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投稿者 Jazz Blogger T : 23:39 | トラックバック

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