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バド・パウエル/ポートレイト・オブ・セロニアス

JAZZ Piano 3

2006年01月17日

portrait_thelonious.jpeg Bud Powell / Portrait of Thelonious

 ご無沙汰してしまいました。やっと今年2本目のエントリです。バド・パウエルのアルバムを聞いていましたら急に書いてみる気になったのでした。『セロニアスの肖像』と題された本作は60年代晩年のパウエルの味わい深いピアノ・トリオ作品。パーソネルは、バド・パウエル(p)、ピエール・ミシェロ(b)、ケニー・クラーク(ds)。61年Paris録音。

 パウエルの音楽はクセになりますね、とは普通思わないのですが、本作は妙な吸引力があって気がついたら選曲してじっくり聞き入っていたということがよくあるのです。セロニアス・モンクの曲をバド・パウエルがパウエル調に淡々と弾いているのですが、モンクの特徴ある曲調とパウエルの独特のピアニズムが絶妙に調和した魅力的な音世界が形づくられているのですね。

 1曲目のモンク代表作の「オフ・マイナー」などでの快調なスイング感は流石パウエルと拍手を贈りたくなります。確かに当時一世を風靡しつつあったエヴァンスのような深い美意識とは全く異なるバップの響きではありますが、パウエルの美学がほのかに臭い立ってくるのですね。50年前後の近寄りがたい切れ味は希薄でむしろ枯淡な感じなのですが、そのエッセンスは共通のものがあると思われるのです。続く2曲目冒頭などは耳にタコができるかのような懐かしいイディオム。やはりいいものはいいって感覚になりますですね。

 3曲目「ルディ・マイ・ディア」や6曲目「モンクス・ムード」などは最高に素敵なピアノ・ジャズです。モンク的な雰囲気が満ち満ちており、モンク自身の演奏とはまた違った一つの完成された世界が広がっているのです。ジャズ音楽の奥深さを思い知らされる演奏とも言えるかもしれません。晩年パリで孤高の世界を貫いたパウエルの面目を示す快演でしょう。4曲目でのドライブ感ある快調なアドリブなどにも私はパウエルの錆びることのない真価を聞くことができます。

 iPodに入れて雑踏の中で繰り返し聞きます。するとその特色ある各メロディが耳に焼き付いてますますその虜になってゆくのです。そして、何ヶ月ぶりかにまた聞き返したときに、その音の記憶が感動とともに呼び覚まされることになるのですね。それがまた何とも言えぬ贅沢な快楽であります。音の記憶、印象ということを噛み締めさせてくれる音楽。これこそはモンク音楽の最大の特質であり、パウエルはそのモンクス・ミュージックをパウエル独自の美学でもって美しくも儚く再現してくれたのでした。

1. OFF MIRROR
2. THERE WILL NEVER BE ANOTHER YOU
3. RUBY, MY DEAR
4. NO NAME BLUES
5. THELONIOUS
6. MONK'S MOOD
7. I AIN'T FOOLIN'
8. SQUATTY

Bud Powell (p), Pierre Michelot (b), Kenny Clarke (ds).

amazon.comでは試聴可能です。→Bud Powell/Portrait of Thelonious

詳しくはamazon.co.jpでどうぞ。→Bud Powell/Portrait of Thelonious

関連エントリはこちら。
 →バド・パウエル『バド・パウエルの芸術』
 →バド・パウエル『バド・パウエル・イン・パリ』
 →バド・パウエル『アメイジング・バド・パウエル Vol.2』

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投稿者 Jazz Blogger T : 09:31 | トラックバック

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