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升永英俊弁護士中村裁判を語る

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2005年01月19日

 今日は、昨日の日経産業新聞(2005年1月18日付け)に掲載された 「仕事人 秘録」から、升永英俊弁護士 「中村裁判4つの画期的意義」 と題された記事をご紹介させていただきます。

 中村修二・米カリフォルニア大教授が開発した青色ダイオード(LED)の発明対価訴訟は、東京高裁の勧告に基づき8億4千万円の和解で決着しました。前回の一審判決200億という額からはかなりのダウンとなります。中村氏の代理人として関わった升永英俊弁護士(62)へのインタビュー記事です。

 升永英俊弁護士は今回の裁判について以下のように語った(抜粋)。
 

 私は、断腸の思いで、和解勧告を受け入れるべきだ、と中村教授に助言した。決定的な理由は、裁判を継続すれば中村教授の研究者生命を失うということだった。和解を拒否し、高裁判決に満足できなければ、最高裁、差し戻し審、さらに二次訴訟など裁判は長期化する。中村教授は相当な期間を、引き続き裁判に割かざるを得なくなる。
 研究者が仕事に没頭できない限り、大発明は生まれない。中村教授は50歳。今、裁判にケリをつければ、もう一度、青色LED以上の大発明をするチャンスがある。4年前、彼と初めて会ったとき、彼は「もう一度発明をしたい」と話した。私も、彼にもう一度、大発明をやってもらいたい。
 私はこう考える。「発明の対価は技術者一人ひとりの自分の問題。ひとごとではない。自らは何もせず、他人が解決してくれることを待っていて済む問題ではない」と。中村教授は、かって勤務先の日亜化学工業で特許1件につき2万円の報奨金をもらっていた。それを8億4千万円まで引き上げたのだ。この先は、中村教授からバトンを手渡された後続ランナー、すなわち、個々の技術者が、さらに前進を続けるべきだと思う。

 さらに、中村裁判の4つの画期的意義として次を挙げられました。
 

 第一は、裁判を経て、「ご褒美」が「対価」に転換したことだ。サラリーマン発明者だった中村教授は訴訟前、特許1件につき2万円の「ご褒美」を会社から押しいただくしかない存在だった。それがサラリーマン発明者が法律に基づき高額の「対価」を受け取れることを示した。8億4千万円の和解金は、本質的には画期的勝訴だ。
 第二は、企業に埋没していた会社員が「個」として権利を主張したこと。終身雇用を採用する日本企業では、「個」の主張はこれまでわがままととらえられてきた。しかしバブルが崩壊し、企業も「自己責任」を言い始めた。会社員も「個」の確立を迫られる。
 第三は、発明の「ご褒美」を「対価」に変えることで、産業振興を目指したということだ。人は周囲からの評価を得ることで向上心をもつ。金銭は評価の一つの尺度だ。会社が億の単位で発明者を評価すれば、必ず画期的な発明が生まれ、企業や産業の振興につながる。中村裁判は企業を訴えたが、決して反企業、反産業振興ではなかった。
 第四は、社会のルール作りにつながったことだ。裁判が始まってから、各企業がこぞって発明報規定を見直した。三菱化学は数人の発明者に対し2億5千万円の報奨金を払った。船井電機は特許ライセンス収入の5%を発明者に支給し始めた。こうした企業の変化は中村裁判なしでは考えられない。

投稿者 Jazz Blogger T : 21:02 | トラックバック

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