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ヴァレリー・アファナシエフ/ブラームス後期ピアノ作品集

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2008年09月18日

ヴァレリー・アファナシエフ/ブラームス後期ピアノ作品集 Valery Afanassiev / ブラームス後期ピアノ作品集

 実は最近クラシック音楽を聞く機会が増えていまして、ブラームスの音楽はあまり好みではなかったのですが、本作はじめ晩年の飾り気のないピアノ曲にはいつも感銘を受けています。ピアニストのヴァレリー・アファナシエフ氏は1947年ロシア生れ、74年ベルギー亡命。一音一音を慈しむようなゆっくりした独特の演奏スタイルが人気です。本作は1992年のレコード・アカデミー賞受賞作品。

 もう昨年のことになりますが12月7日に東京オペラシティでアファナシエフ氏のピアノ・リサイタルを聴きました。内容はオール・シューマン・プログラムと題してシューマンの3作品「子供の情景 op.15」、「3つの幻想的小曲 0p.111」、「交響的練習曲 op13」。いずれも斬新な演奏でしたが、最後の交響的練習曲が特に印象深い演奏で感激した記憶が鮮明に残っています。高音のピアノの音がいまだに耳にこびりついているようです。ホロビッツの演奏で聞きなれている子供の情景はかなり違和感のあるものでしたね。そして、ご一緒した女友達に今日ご紹介するこのCDをプレゼントしたのでした。

 さて、本作はアファナシエフさんの深い情念が宿る重みのある音楽なのです。例えば、印象深い2曲目の作品117-2にはすぐに耳を奪われますが、その悲しくも美しいメロディが生命を持って心に突き刺さってくるのです。暗い哀愁の中に淡白な美がひっそりと息づいています。同様に、3曲目作品117-3では、主題が暗い情念を抱くメロディなのに対し、途中から流れる優しいピアニスティックな副主題はそれとは対照的にとても優しいメロディなのです。

 また、作品118-2は典型的なブラームスの優れた作品だと思いますが、やはりそうした悲哀感と優しさに満ちたメロディが交錯する感銘深い演奏です。私はこの種の露骨な旋律には必ずしも心を動かされないはずなのでした。恥ずかしさが先に立つとでも表現すればよいのでしょうか。露骨な旋律だけでなく、優しくいとほしい可愛げのある旋律が配されていることが救いです。

 ブラームスの晩年の作品にはそうしたひっそりと佇んでいるような優しさ可愛さがときどきふと垣間見えるのです。私はそうした可憐なイディオムに癒されるのだと思います。アファナシエフの演奏はそうしたブラームスの情念と優しさをともに慈しむように大切に表現しています。秋の静かな夜に、この一見淡白だけれど深く心に響く音楽に耳を傾ける時、想いは千里を駆け巡る。

1~3.  3つの間奏曲op.117-1~3
4~9.  6つのピアノ小品op.118-1~6
10~13. 4つのピアノ小品op.119-1~4

詳しくはアマゾンでどうぞ。→ ヴァレリー・アファナシエフ/ブラームス後期ピアノ作品集

投稿者 Jazz Blogger T : 18:37 | トラックバック

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