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オレグ・ボシュニアコーヴィチ/ショパン:作品集2

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2011年04月17日

karin _krog_jazz_moments Oleg Boshnyakovich / Chopin

 今日は最近たまたま出会って衝撃を受けたクラシック・アルバムから。ショパンのピアノ曲集。DENONの『ロシア・ピアニズム名盤選』シリーズの中に、ボシュニアコーヴィチという聞き慣れないピアニストの作品が数枚あります。その中でも世評の高い本アルバムはその瑞々しいタッチと芳醇な香によって私を魅了してやみません。

 最近、クラシック・ピアノを好んでいろいろたくさん聴いています。そのきっかけの一つが本作との出会いにあることは間違いありません。ボシュニアコーヴィチの奏でるショパンは、瑞々しく香ばしく、よく知る曲がとても新鮮に聞こえるのでした。繊細だけど力強く、一音一音が丁寧ながらとても流麗な感じがあります。素晴らしいとしかいいようがないですね。クラシック・ピアノ音楽の楽しみ方の一つに、きっと、自分が好ましいと思う曲の新たな演奏との出会いや発見というものがあるのでしょう。

 また、本作の録音が私の好みにぴったり合っていることも一役かっているようです。ピアノ演奏の録音には本当にいろいろあって、時代やロケーションにもよるのでしょうが、最新技術を駆使していても好みの問題で賛否が別れますね。私の場合は、表現が難しいのですが、ピアノから少し物理的距離を置くとでも言うのでしょうか、俯瞰全体的な音響がよく感じ取れて、太いというより多少軽い目の音だけれど高音にしっかりとした艶や鮮明さが感じられるような録音がよいように思います。本作はまさにそんな録音です。

 ボシュニアコーヴィチが本作で演奏する、舟歌、幻想ポロネーズ、バラード第4番らは実に素敵です。これらはいずれも数多くあるショパンの名曲の中でも指折りの名曲なだけに、他の著名演奏家の演奏を聞く機会も多々ありますが、ボシュニアコーヴィチの演奏はトップクラスに素敵なのではないでしょうか。ルービンシュタイン、リパッティ、ホロヴィッツ、フランソワ、ポリーニ、アシュケナージ、アルゲリッチ、ブーニン、ツィマーマン、キーシンなど著名人の演奏をいろいろ聴いてきましたが。あと、マズルカの演奏がまたいいですね。大のお気に入り曲、作品17-4がきわめて詩的に歌われます。作品24-4も青春を思い出させてくれる苦く優しい懐かしのメロディ。

 『ロシア・ピアニズム名盤選』シリーズについては、すでに本ブログにおいて、ソフロニツキーとヴェデルニコフの二人の巨匠に触れています。ソ連時代に国外に知られる機会の少なかったロシアの巨匠ピアニスト達の演奏がこのシリーズで聞くことができます。共産支配が崩壊してから知られるようになりましたが、それ以前は西側に亡命するしかその演奏に触れることはできなかったのですね。ロシア・ピアニストにはホロヴィッツ、リヒテル、アシュケナージ、ブーニン、キーシンなど有名人が目白押しですね。ちなみに、ショパン生誕200周年に当る昨年2010年のショパン・コンクールでの優勝アヴデーエヴァもそうでしたし、入賞者10人中5人がロシア人ということでした。

 本日のオレグ・ボシュニアコーヴィチ(Oleg Boshnyakovich,1920-2006)はネイガウスの弟子にあたり、ソフロニツキーやヴェデルニコフらとは同世代に当たります。ネイガウス、ソフロニツキー、ヴェデルニコフ、ボシュニアコーヴィチは現在でこそ名が知れ渡るようになりましたが、その実力はホロビッツら世界的な巨匠と同等レベルであったかと思われます。

1. 舟歌嬰ヘ長調 作品60
2. マズルカ イ短調 作品17の4
3. マズルカ 変イ長調 作品59の2
4. マズルカ 嬰ハ短調 作品50の3
5. マズルカ 変ロ短調 作品24の4
6. マズルカ 嬰ハ短調 作品30の4
7. マズルカ イ短調 作品68の2
8. ポロネーズ第1番嬰ハ短調 作品26の1
9. ポロネーズ第2番変ホ短調 作品26の2
10. 幻想ポロネーズ変イ長調 作品61
11. バラード第4番ヘ短調 作品52

 ショパンの音楽が好きだということを人前で公言するのは男子としては少々憚れることではあります。少女趣味のようで軟弱な人と思われるかもしれないと危惧するからですが、それはまあクラシックにあまり縁のない人達に対してであって、ショパンの音楽をよく知るクラシックに詳しい人相手には特にそういう態度を取る必要がありません。実は私がジャズ音楽に開眼したのは丁度20才の時ですが、ショパンは中学生の頃から聞きはじめそれ以来ずっと魅了され続けてきました。

 昔、FM-NHKで大音楽家の時代という番組があって、私が中学生の時にショパン特集が1年かけて放送されていました。それを毎週聞いて紹介される曲をエアチェック(テープレコーダーに録音)することで、有名曲だけでなく本当にたくさんのショパンのピアノ曲を知ると同時に多くの感激を味わうことができました。テープレコーダーなんてもう何十年も見たりしていませんが、その時の録音ボタンを押す感触やテープを巻き戻したりの操作を今でもはっきりと思い浮かべることができます。思えば、私の青春は、未知の音楽の美しさに少しでも多く触れたいという欲求にその一部が支配されていました。

 今はiPodはじめ音楽を聞く環境が大変便利になりました。ソニーのウォークマンが出た頃は音楽を聞きながら野外を歩いたり電車に乗ったりすることが可能となり、見慣れた風景が音楽を伴うことで違って見えたり、いつも音楽が聞ける幸せ感に心底感激したことを思い出します。レコードやテープで音楽を聞き保存するという行為は今から思うと大変な作業と労力を伴うものでしたね。今ではPCやiPodで音楽を聞くのが当たり前なんですよね。

 音楽美に対するどん欲さと情熱は、今もなお私の中に根付いて残っており、近頃は感激の頻度も深さも減じてはいますが、たまには想定外の発見があったりして、そういうことがやはり楽しみであるのです。今日ご紹介したアルバムはそんな発見の一枚だということです。好みのショパン曲をこんなにも素敵に弾くピアニストがいたとは、驚きと共に嬉しい悲鳴でした。また、自身のアンテナの力不足を痛感し、もっとどん欲に追求せねばという戒めを感じました。

本作品の詳細はアマゾンでどうぞ。
 → オレグ・ボシュニアコーヴィチ/ショパン:作品集2

関連エントリはこちらから。
 → ポリーニ/ショパン24の前奏曲
 → マルタ・アルゲリッチ/The LEGENDARY 1965 RECORDING
 → ルービンシュタイン/ショパン・マズルカ集
 → ソフロニツキー/スクリャービン・リサイタル
 → アナトリー・ヴェデルニコフ/ロシア・ピアニズム名盤選10

投稿者 Jazz Blogger T : 23:10 | トラックバック

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