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エマニュエル・アックス/ハイドン・ピアノ協奏曲

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2011年05月21日

emanuel_ax_haydn_concert Emanuel Ax / Haydn Piano Concertos

 今日はハイドンのピアノ協奏曲集です。この素晴らしい音楽に出会ってからこの数週間毎日のように熱心に耳を傾けてきました。なぜこんなに素敵なのでしょう、今日はハイドン音楽の賛歌オンパレードになりそうです。パーソネルは、エマニュエル・アックス(p)、フランツ・リスト室内管弦楽団。1992年録音。

 ハイドン(1732-1809)の楽曲が好きです。そのきっかけはピアノ協奏曲なのですね。ハイドンのピアノ協奏曲には3曲あり、これまで私はニ長調のみアルゲリチ、ルイサダ、キーシンらの演奏を聴いてよく知っていたのですが、今回、本作のエマニュエル・アックスの全3曲をすべて聴いていずれも素晴らしい音楽なのでハイドンへの興味が一気に広がったのでした。

 ハイドンはよく知られるように多作の大家でしたので、交響曲、弦楽四重奏、各種協奏曲(ピアノ、ヴァイオリン、チェロ、フルートなど)などを量産していますね。ピアノ協奏曲は3曲だけであり、本アルバムに納められているものがすべてなのですが、モーツァルトのピアノ協奏曲を目の当たりにして創作意欲を失ったという説もあるようです。モーツァルトは早熟な天才であり夭折したためハイドンよりも24才も年下であったにもかかわらず、長生きしたハイドンと同時代を生き、逆にハイドンに多くの影響を与えていたようです。

 ハイドンは様式的にはバロックの名残りが濃厚にありいくぶん古めかしいのですが、バッハやヴィヴァルディらが独特の魅力を失わないように、ハイドンにはハイドンの魅力があって、もっと多くのピアノ協奏曲を作曲してほしかったなあと残念に思われます。ピアノに限らず、ハイドンの協奏曲にはヴァイオリン、チェロ、フルートなどもあり、それぞれに輝く魅惑の優しいメロディと快活なオーラがあり、私にはどれもこれも魅力的に映るのです。いかにハイドンの音楽が自分にとって好ましいものであるかがよく分かるというものです。

 私にとってのハイドン音楽の魅力は、美しくよく謳うメロディに加えて、端正な佇まいに落ち着きと調和のある世界。どこまでも優しく清らかな音楽。押し付けるところが無くあっさりと通り過ぎてゆくような音楽。決して暗くならず明るい太陽の輝きを感じさせ、一歩一歩天上の高みへと誘(いざな)ってくれる音楽なのです。決して陰鬱に沈み込むことを潔しとしない陽性の音楽。悲しみや嘆きは多少はあるにしても決して表面に出さず明るい前向きな響きを貫き通す大人な音楽。

 日常のストレスや不条理に心が荒んでいる時にハイドンの音楽はそっと寄り添って優しく包み込んでくれることでしょう。孤独と誰かを希求する気持ちがあれば、それをさらに深め確かなものにしながら、どこかでそれを許してプラスの思考にしてくれるのではないでしょうか。モーツアルトの音楽が、一時、一般向けに、脳によいとか、リラックスするとか、そんなイメージで宣伝されていたけれど、ハイドンの音楽こそがまさにそんな音楽そのものでしょう。少なくとも私的にはぞう思われます。

 とにもかくにも、休日前等のリラックスしたい夜に、一人の時間を享受すべくそんなハイドンを聴くという行為が私は大好きなのです。ハイドンに出会えて本当に幸せなのですね。著名で膨大な交響曲群、弦楽四重奏群はまだまだこれからですが、ピアノ、ヴァイオリン、チェロ、ホルンなどの各協奏曲が今の私の大のお気に入り音楽です。

 バッハやベートーベンのような深刻な表情を、一瞬たりとも垣間見せないところが安心できてよいのです。私は音楽を聴くときは無意識についつい集中して聞いてしまうのですが、特にバッハは深奥に響き過ぎるのでちょっとしんどい音楽なのですね。よっぽど精神的に充実していないと聞けない音楽です。

 アックスのハイドン演奏は丁寧かつ美音であることが実にいいです。ピアノ・ソナタでのアックスも美音で自然なフィ-リングが良かったですが、本作の協奏曲でもバランスとセンスの良さを感じずにおれません。3曲いずれにおいても、第1楽章でのきびきびと軽やかな雰囲気、第2楽章でのキュートで端正な佇まいがもう素敵過ぎるのですよ。深い闇もハイドンの音楽があればきっと救われるに違いないという確信、よくぞ出会えたという安堵感に満たされています。

1. ピアノ協奏曲ヘ長調: I. Allegro
2. 同: II. Largo cantabile
3. 同: III. Presto
4. ピアノ協奏曲ト長調: I. Allegro
5. 同: II. Adagio
6. 同: III. Rondo. Presto
7. ピアノ協奏曲ニ長調: I. Vivace
8. 同: II. Un poco Adagio
9. 同: III. Rondo all'Ungarese. Allegro assai

 YouTubeからヴァイオリン協奏曲第1番の第2楽章から。ハイドンのデリケイトなメロデイック・センスがよく伝わってくる美しい曲です。こうした数々の名曲に次々触れることでハイドンへの信頼はますます厚くなるのでした。

 アックスのピアノ協奏曲のCDについては詳しくはアマゾンでどうぞ。
 → Emanuel Ax / Haydn Piano Concertos

 ハイドンのヴァイオリン協奏曲第1番はキーシンのピアノ協奏曲CDに入っていたのを偶然初めて聴いて感激したのが最初のきっかけです。詳しくはアマゾンでどうぞ。
 → キーシン / Haydn Piano Concerto in D

投稿者 Jazz Blogger T : 23:17 | トラックバック

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