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キース・ジャレット/アップ・フォー・イット

JAZZ Piano 1

2004年10月29日

キース・ジャレット/アップ・フォー・イット Keith Jarrett/ Up for It
 
 こんにちは。今日はキース・ジャレットのスタンダード・ライブ盤です。今や大御所のキース・ジャレットのピアノは安心して耳を傾けらる類のジャズ音楽ですね。若い頃の妥協のない斬新な演奏も悪くはないのですが昨今の少しアクのとれたリラックスしたスタンダード演奏に私はずっと拍手を送ってきました。このアップ・フォー・イットはそうしたキースの絶妙なバランスあるピアノ・トリオ・ジャズの凝縮されたエッセンスが聴ける最右翼の名盤だと思います。パーソネルは、80年代からのレギュラー・トリオで、キース・ジャレット(p)、ゲイリー・ピーコック(b)、ジャック・デ・ジョネット(ds)。2002年7月フランスのアンティーブ・ジャズ祭におけるライヴ録音。

 キース・ジャレットの70年代の音楽にはあの有名なケルン・コンサートなど何枚かのソロ・アルバムが典型としてありますが、私にはなぜかあまり感心がなく、"生と死の幻想"とかよりジャジーな音楽に興味を持っておりました。その自由な即興性と長いフレージング構築にはなるほど天才とうならせるものを感じましたが日常的に愛好する類のものではありませんでした。それがこの90年代以降のスタンダード演奏には私の求める何かが確かに感じられるのでした。そこには耳になじんだメロディーが達人の手さばきで料理されていまして、そのピアノ・トリオから放たれる音楽は、決して俗に流されることがなくしかも芸術的な品があり、かつ極上のエンターテイメントがそこはかとなく香り立っているのでした。

 例えば、3曲目の有名なバラード My Fanny Valentine を聴いてみていただけるとよいかと思います。フレーズのディテイルがスパイラル状に少しづつ深まってゆくさまが手にとるようにわかりますが、聴く側はその尋常でない混沌の海に引き込まれてゆくことになるのですね。そして終いには引くに引けずに身を任せて漂うしかないのですが、その心地良さといったら何というのでしょう、この境地は即興音楽としてのジャズの魅力が存分に実感できるというものです。これこそがキース・ジャレットの真骨頂なのでしょう。私はこの世界を今まで認知しなかったことに後悔しています。もっと早くに浸るべきであったと。

 今年もあと2ヶ月くらいとなりまして年々1年が短くなるなあと実感していますが、2004年はこのキース・ジャレットの名盤と、あとアーマッド・ジャマルのポインシアナ・リビジッテドに出会えたことが記念すべきこととなりそうです。年々感動の機会は減ってゆきますが、新たな地平を見出してゆくこと、発見の喜びは尽きることのない楽しみです。今日もウイスキーを片手にパソコンに向かいバックにキースの今日のアルバムを聴きながら書いているのですが、金曜で明日と明後日は休みという背景もあって、夜更けの深まりとともにじんわりと気分が高揚してくるのでした。最後の枯葉まで約70分が過ぎようとしています。キースさんご苦労さん、ありがとね。拍手々々。

1. If I Were A Bell
2. Butch & Butch
3. My Funny Valentine
4. Scrapple From The Apple
5. Someday My Prince Will Come
6. Two Degrees East, Three Degrees West
7. Autumn Leaves
8. Up For It

Keith Jarrett (p), Gary Peacock (b), Jack DeJohnette (ds).



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投稿者 Jazz Blogger T : 21:21 | トラックバック

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