メイン・ページ > _others > 江上節子/日経産業新聞パネル討論

江上節子/日経産業新聞パネル討論

_others

2004年10月19日

 今日は日経産業新聞10/18号に掲載された「企業における創造性」に関する特集記事から抜粋をご紹介します。別刷の特集号の中に「創造性のある企業とは何か」と題したパネル討論が掲載されておりました。

パネラー: 江上節子(東日本旅客鉄道フロンティアサービス研究所長)
       軽部征夫(東京工科大学バイオニクス学部学部長)
       藤沢義之(メリルリンチ日本証券会長)
司 会 : 高橋 誠(創造開発研究所理事長)

 上記の著名人4名によるパネル討論ですが、江上節子さんという方の発言が的を得ていると思いまして、以下、ここに抜粋してお届けしたいと思います。討論ですので話題・文脈がありまして、その途中だけ抜粋しますと少し違和感があるかもしれませんが、それを承知の上で掲載させていただきます。まっとうな現場感覚といいますかリアルな感触にいたく共鳴したものですから。

〔略歴〕
えがみ・せつこ
早大文学部卒。リクルートで「とらばーゆ」や「週間B-ing」などの編集長を務め、現在は東日本旅客鉄道フロンティアサービス研究所長。公職として、中央教育審議会委員、厚生労働省能力開発分科会審議委員など。

(談)  個人だけが突出した能力を発揮しても、組織の構造化された知識として蓄積されないと常に個人だけが浮き上がる。企業全体としても強くならない。組織が体系化し、個人の能力をどう取り込んでいくか、という仕組みづくりが非常に重要だと思う。  日本の多様性は遅々としてしか進まない。いまの社会集団の仕組みからみれば、個人の強さと集団の強さを両方追わなければいけない。  ただ、個人を排除するような文化や仕組みだけは絶対につくってはいけない。常に個人の創造性や異質な価値観を育て、そこから得たプラスアルファを組織に落とし込む循環型の集団を強くする。個人も強くしていく考え方と企業のマネジメントが必要だと思う。

 情報技術(IT)を活用している産業、企業では戦略的思考性、高度専門知識、革新性という三つの要素が求められている。革新性とは社会の変化に対応して、新しいパラダイムを切り開いていく考え方を持っていることだ。
 インターネットの普及を背景に、世界中の専門的な文書が簡単に入手できるようになり、企業の仕事の知的水準や知識の構造化が高まった。そこで求められるのは高度な専門性だ。構造化、専門化された知識を創造的に事業に組み立てていくために必要なのが戦略性だと思う。
 日本は同質化した社会のため、これまで集団で個人が戦略を前面に押し出しすぎると疎外感を味わうことがよくあった。だが、これからは違う。我々はいま戦略的思考性や戦略力を学ぶ段階にきていると思う。
 
 マネージという言葉は「どう御する」という言葉から出てきている。リーダーは「道を指し示す人」という原義がある。進むべき方向を明確に決め、行くと決定して指し示すことができる人がリーダーではないか。それをいかに実現するかはマネージャーが考えればよい。
 (中国の初代首相)周恩来氏は三千年の歴史を考えた上で、いくべき道を決めたといわれる。リーダーには歴史的な思考力を持つことも必要ではないか。
 自分がかかわるビジネスがこれまでの歴史の中でどういうところに位置し、それがどう変化していくか、常に歴史的思考の中で考えることが重要だと思う。

 囲碁に「着眼大局、着手小局」という言葉がある。物事を大きくとらえ、問題があれば小さいところから改善していくという意味だ。日本では海図がなく、つい業界の問題や目先の利益率に思いが向き勝ちだ。
 経営者の最終選択には必ずその人の人生における生き方の価値観が出る。自分と経営者との役割を割り切ってやることはまずできない。自らの生き方を賭けて何をしようとしているのか。どう生きようとしているのか。それが最終的にその企業の意思決定に表れると思う。

 企業にとって創造性とは何かを考える場合、異質な価値観を持つ人材をどれだけ抱えることができるかどうかが大きなポイントだと思う。創造性は既存の認識や価値、体系に対し、どれだけ新しい価値観や枠組み、視点を提供できるかということ。何よりも違った価値観を持ち、強烈な問題意識をもっていることが重要だ。
 創造性の前提はまず、問題意識を持っているかどうか。問題意識をもてるかどうかは、その人間の価値観に左右される。問題意識を持っていると問題を簡単に発見できる。発見したら、その問題を分析する。その際にも既存の方法ではなく、既存の概念を分解し、異質な方法で再構成してみることが必要だ。
 私はリクルートで転職を中心とした仕事情報誌の編集長をしてきた。供給者が出す情報と生活者が求める情報には大きなギャップがあった。そこに市場があるという発想に立ち、お互いのニーズを情報で集約して「情報誌」というビジネスをつくった。
 創造性にはある程度高い思考密度を持っている人が必要になる。問題を解決するには豊富なアイデアが出てくるような発想力の豊かさが必要だ。創造性を実現する異質な価値観や専門性、技能、技術、経験を持った人たちをいかに企業に抱えることができるかだ。

 受容的な組織文化をつくれるかどうかも創造性の重要なポイントだ。企業は大きくなるほどピラミッド型になる。製造業やサービス産業でも大規模になればピラミッド型でないと動かすことができないため、どうしても権力志向の強い組織になる。
 すると人事システムはどうしても減点主義になる。権力的な上下関係で向き合うから、新しい発想や新しい問題提起は排除するような職場環境になってしまう。
 受動的な組織文化をつくるには、リーダーシップが重要だ。リーダーが創造性を発揮する部隊や組織、方法論、新規事業をある程度守らないと、創造性をつぶしてしまう。リーダーがどんな価値観を持ち、どういう方向に企業や事業を持っていきたいのか、という強いビジョンと指導力が必要だ。

投稿者 Jazz Blogger T : 21:05 | トラックバック

« セロニアス・モンク/ミステリオーソ | メイン | 常盤文克/モノづくりのこころ »

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://dellton.com/cgi/mt/mt-tb.cgi/614

Copyright (C) 2004-2014 MY FAVORITES All Rights Reserved.