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イリアーヌ/夢そよぐ風

JAZZ Vocal

2010年10月27日

eliane elias dreamer Eliane Elias/Dreamer

 今日は癒し系のジャズ&ボサノヴァ。ブラジルはサンパウロ出身のジャズ・ピアニスト、イリアーヌの弾き語りボサノヴァです。エレガンスでしっとりしなやか、シンプルながら極上の豊穣な音楽。この余韻に浸るのに秋の夜長は好ましい時節です。パーソネルは、イリアーヌ・イリアス (p, vo)、マーク・ジョンソン (b)、ポウリンホ・ブラガ (ds)、マイケル・ブレッカー (ts)、マイケル・マイニエリ jr (vib)、ロブ・マテス (orchestral arrang)。2004年NYC録音。

 イリアーヌのジャズは穏やかで優しいですね。音楽にもきっと人柄がにじみ出るのでしょう、そんな雰囲気を感じさせます。最近私はそんなイリアーヌの音楽に魅せられたのか、CDアルバムを立て続けに6枚ほど入手して愛用のiPodに入れて日常的に聞いています。80年代後半のデビュー作から2000年以降のヴォーカル主体の音楽まで、自分的には、やはり、ボサノヴァ系がお好みで、本作Dreamer(2004年)と Plays Jobim(1989年) の2枚が今のところお気に入りです。どちらもボサノヴァの魅力を再認識させられるような体験であり、ボサノヴァこそ最強の癒し音楽だと確信させられる類のものです。

 本アルバムはダイアナ・クラーク「ルック・オブ・ラブ」(2001年リリースして大ヒット)と同じ路線であり、ボサノヴァを売れ筋のポップなジャズ・ボーカルに仕上げていますね。でも、大きな違いは、イリアーヌの持ち味であり美点と思われますが、過剰な装飾を極力排して、さりげなく、かつ、音楽を慈しむように、イリアーヌの歌とピアノが全面にフィーチャーされている点です。

 イリアーヌのピアノはさすがに十分なグルーヴ感がありツボを押さえたソロが全曲で聞かれます。歌はあくまで鼻歌のごとき自然体で、これはボサノヴァであれば許されるというか、巧さと素人っぽさの境目が微妙なのですが、雰囲気で聞かせてしまうところがありますね。ボサノヴァ歌手としても高く評価されているようですが、確かに少しハスキーな声質とけだるい感じが魅力ではあります。

 特筆すべきは、さりげない伴奏に徹しているオーケストレーションのその何とも上品な味わいです。裏を刻むボサノヴァの独特のリズムが当然のごとくにほんわかと心の芯まで癒してくれますが、それに加えて、この静かにバックに流れるストリングスの音の流れに耳を澄ましますと、その絶妙な音の並びにうっとりさせられます。裏の和声といいますか、かゆいところに手が届くような快適さです。ロブ・マテスというアレンジャーの音楽を聴くのはこれが初めてですが、なかなか渋くていいセンスだと思いました。著名なクラウス・オガーマンももちろんいいですが、こちらのロブ・マテスさんは静かで穏やかなバランス感覚がよいですね。

 全11曲。味わい深いアルバムです。秋の夜長にしっぽりと浸れる大人の音楽に違いありません。1曲目、3曲目、5曲目、7曲目、9曲目、11曲目と素敵な演奏が目白押しです。3曲目 Fotografia はジョビンとエリス・レジーナの演奏が有名ですが原曲の美しさを知る人にはイリアーヌのこのさりげない演奏で十分に心地よいのです。5曲目 Samba De Verao ではおなじみのメロディがこんなにも美しい音楽だったっけかなと不思議な気にさせられます。7曲目ミディアムテンポの Tangerine がまた印象的で、途中のイリアーヌのピアノソロが非常にいい感じです。9曲目 Time Alone の静溢で美しい演奏には夢心地のように魅せられます。11曲目はバカラック作の可憐な曲を上品な歌なしボサノヴァに料理していますね。

1. Call Me
2. Baubles, Bangles And Beads
3. Photograph (Fotografia)
4. Movin' Me On
5. So Nice (Samba De Verao)
6. That's All
7. Tangerine
8. Dreamer (Vivo Sonhando)
9. Time Alone
10. Doralice
11. A House Is Not A Home

Eliane Elias (p & v), Guilherme Monteiro (g), Marc Johnson (b), Michael Brecker (ts), Oscar Castro-neves (g), Paulinho Braga (ds & perc), Michael Mainieri, Jr. (vib), Rob Mathes (Orchestral Arrang).

YouTubeからコンボによるライブ演奏を一つピックアップしておきましょう。本CDにも納められているジョビンの名曲Fotografia。本CDの演奏からストリングスを差し引いたような演奏で、スローでけだるい雰囲気は本CDの世界を映しています。

詳しくはアマゾンでどうぞ。→ Eliane Elias/Dreamer

関連エントリはこちら。
DIANA KRALL/ Look of Love
Elis Regina&Antonio Carlos Jobim/ Elis&Tom

投稿者 Jazz Blogger T : 22:41 | コメント | トラックバック

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